「・・・起きなさい。もうすぐ到着よ」
髪を金に染めた白衣姿の女性に肩を揺すられ、白いシャツに青いジャンパースカート姿の少女は身を捩り目を覚ます。
「
寝ぼけ眼を向ける少女に女は己の耳を指し何かを外す動作をして見せる。
「・・・はい」
か細い返事で、緩慢な動作で指示に従う少女は何とか居住まいも正し、膝上で崩れていたコンビニのレジ袋も抱え直す。
だが、少女の声が白衣の女に届くことはない。
「私も耳栓代わりに何か持ってくれば良かったかしら・・・」
太平洋上空。
空母、オーバー・ザ・レインボーを目指す Mil - 55d 輸送ヘリ内。
響く騒音に眉をひそめる白衣の女性、赤木リツコの独り言もまた、青いスカートの少女、綾波レイに届くことはなかった。
「 Hello. あなたがエヴァ開発の総責任者、赤木リツコ博士ね」
「そういう貴女はエヴァ弐号機パイロット、セカンドチルドレンの惣流・アスカ・ラングレーで間違いないわね」
「ええそうよ。よろしく。リツコで良いかしら?」
「そうね。私もアスカって呼ばせてもらうわ。よろしく」
輸送ヘリから空母甲板へと降り立ったリツコへ、レモンイエローのワンピースを纏った金髪の少女、惣流アスカは緊張気味に近寄り、されどそれを悟られまいと胸を張り笑顔で手を伸ばす。
その手を微笑ましげに、あるいは懐かしげに握るリツコは落ち着いたもので、「急に予定を変えてしまって悪かったわね」と、本来は彼女がする必要もない謝罪も軽く済ませてしまう。
そんな、大人へではなく小さな子供へする様な気負いのない対応に、アスカは少しばかり自尊心を傷付けられてしまう(勿論、彼女が一方的にそう感じているだけであり、実際、彼女はまだ子供である)。
プライドの高いアスカは何となく自身を下に見られている様に感じてしまい、ついつい眉間に力を入れてしまう。
「いいわよ、別に。パイロットの監督不行き届きで謹慎処分なんか喰らう管理能力の低い作戦部長が出迎えなんて、こっちから願い下げ」
「事実なだけに擁護できないわね」
アスカの些細な苛立ちは流石に初対面のリツコへと向けられることはなかったが、これ幸いと此処には居ない、自身にとっては直轄の上司である女性へと向けられることに。
リツコもリツコでアスカの内心に薄々気が付きつつも、やはり初対面であるからして、まだまだ仕事以外の事柄には我関せずといった少々冷たいものに。
結果、アスカからばっさりと下される友人への評価にリツコも事実ではあるしまあいいかと気にも留めずうんうんと頷く。それでも一概に彼女だけの、葛城ミサト一尉だけの責任とは言い切れないのだと、その事実を伝えれない歯痒さに彼女は友人としてフォローの姿勢を見せる。
「現場ならではの理由、とでも言えばいいのかしら」
「なによ、その理由ってのは?」
「・・・そうね。その事に関しては実例を見せた方が早いわね」
どこか諦め気味の、遠い目を見せるリツコは風に翻る白衣もそのまま半身に、自身の後ろで興味も無さげにぼんやりと待機しているであろう少女へ、アスカと共に顔を向ける。
「・・・・・・ヒック」
赤ら顔のほろ酔いで、無表情のままサワー缶を片手に立つレイへと。
「そこの
「ヒクッ・・・よとひく」プシュ
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」ゴクゴクゴク・・・・・・
「・・・・・・」
「「「・・・・・・」」」ゴクッ・・・プハ
甲板上、一際強く吹く風が少女達のスカートをめくるまで沈黙は続いた。
「・・・え、えっとぉ」
アスカはアルコール缶を持つ全体的に色素の薄い真顔の少女と、懐からタバコを取り出し吹かし始めた金髪でやはり真顔の女性との間で視線を右往左往させる。
まるで女性の、リツコの口から「冗談よ」という言葉が発せられるのを待つかのように。
しかし、待てど暮らせど自身が望む言葉は得られない。
リツコがタバコを携帯灰皿に押し付け二本目を口に。少女も、レイもそれに合わせるかのように手元のレジ袋から二本目の缶を取り出し慣れた様に片手だけでプルタブを起こし口へ。
そのシュール過ぎる光景に顔を引きつらせつつも何とか口元に笑みを形作ったアスカは恐る恐る手を伸ばす。
「な、仲良くしましょ」
お世辞にも仲を深めたい意志があるとは言えない顔に、本心では関わり合いたくないと見て取れる程のぎこちない挙動。
( 無様ね )
先程までの威勢の良さは何処へやら。
腰が引けやや前傾姿勢のまま、距離を取ろうとするかの様に握手を求めた腕も真っ直ぐに伸ばしてしまうアスカへリツコは哀れみの目を向ける。
( まあ、いきなり十四才の子供に同い年の、
未成年者飲酒禁止法により未成年の飲酒は禁じられてます。