「そいつあ・・・ここに居る誰もがそう思ってる、だが誰もそれは口にしねえ。暗黙の了解ってヤツだ」
全面的にお前が悪いと、そう高雄に窘められる加持は赤くなった首元を擦りつつ新しい煙草を取り出す。
気を失いジットリと湿ったソファの上で魘されていた加持は第三支部で知り合った友人の高雄に叩き起こされ説教を受けていた。
「だとしても御命覚悟はないだろ?」
「それも仕方なしだ。なんせ何度も部外者がこの辺りにまで入り込んでいやがる」
「本当か、それ」
煙草を落とす加持はアンビリカルブリッジの手摺に肘を付き頷く高雄の横に並ぶ。
機密の塊であるエヴァの眠るケイジに部外者が入り込む。それは立場が保証され、ある程度の技術を持つ加持ならば確かに無断での侵入も容易い。しかし、それは一般人であればまず不可能な行為という証明に他ならない。
ではどんな人物ならば可能か。
加持以上に立場が保証された者。
ある程度以上の技術を持つ者。
或いは。
「若い連中の出入りが激しい、ねえ」
「・・・ほとんどの連中は思い詰めてたところ、上手いこと唆されてだ」
呆れたと言わんばかりの加持とは違い、落ちた煙草を拾い銜え火を点ける高雄の表情は渋い。
「大抵はジャーナリストだの宗教団体だのだが、本物も紛れ込んでな・・・整備部も一人やられた」
「・・・それであの容赦の無さか」
「二匹目を殺って直ぐだった。廊下でシンジと居合わせたうちのモンが庇ってな」
「侵入者はどうなった?」
「偶々通り掛かった作戦部長様がズドンだ」
米神に人差し指と中指を当てる高雄はそれ以上詳しくは語らない。
加持は目の前で二人の人間が撃ち殺される瞬間を見ることになった十四歳の少年にただ同情する。
「お前みたいな融通の利かないヤツが本部に呼ばれる訳だ」
「俺以外にも色々いるぜ。町工場の職人から国連軍の工兵、果てには元傭兵だとか吹いてるヤツも」
「随分とまあ楽しそうな職場だな」
「・・・ああ。悪くねえ」
「・・・そうか」
予想以上に酷いネルフ本部の現状を知った加持だったが、その言葉を否定する気にはなれなかった。
直立するエヴァの胸元までなみなみ注がれた LCL の独特な臭いに満たされたケイジの中、高雄は口の中でもう一度、悪くないと呟いた。
「聴いてた性格と大分違うな」
「俺が
「内向的であまり他人と積極的関わらない、ナイーブで物静か・・・だったかな」
「ナイーブ、ねえ」
L C L で満たされたケイジの中、二人の視線の先には揺れるゴムボートの上で横になり、顔にアダルト誌を被せビール缶片手に眠るナイーブらしき少年パイロットが。
「レイの間違いじゃねえか?」
その言葉に加持は太平洋上での青い少女を思い出す。
「・・・いや、あの子もあまり変わらないような」
「そうか?」