忘れた頃に書いてます。
因みに彼女が出てくるのは二回目です。
ケイジ内に響く警報音と第一種警戒態勢のアナウンスに驚く加持が首を上げるよりも早く LCL の水飛沫が上がった。と同時に元気過ぎる声も上がった。
「へい大将!!怪獣退治の時間だぜい!!」
「・・・誰だ?」
「うちの縫製課職員。今プラグスーツ関連を一手に担ってる変わりモンだ」
「ご紹介に与り~!技術部縫製課室長の謎の美少女だよん。シクヨロッ♪」
「・・・・・・」
「マジで名前も経歴も分からん謎の女だから気を付けろよ」
何時の間にか隣に現れバチコーン☆とポーズをとり、場違いな明るさを見せつける眼鏡をかけた年若い職員の勢いに押され加持は高雄の方へとのけぞってしまう。
「本当に人材不足らしいな」
「腕は良いんだが頭がなあ」
俄かに騒がしくなるアンビリカルブリッジ。
そこへ LCL の中から少年、碇シンジがブリッジの上へ、手摺に掴まり器用に片腕と片足だけで這い上がって来る。
「報告じゃあカナヅチの筈だったが・・・」
「あー・・・、三匹目の後位からよくここに突き落とされててな」
「・・・誰に?」
「誰に似たんだか、見かけによらず結構スパルタだよねぇ~あの子」
女性職員から向けられるからかいを含んだその視線にシンジは言葉にもならない唸り声を溢す。
ケロイド状の細い首から発せられたそれは痩せた野良犬の鳴き声を思わせるものだった。
「レイちゃんと新入りの子は重傷で出れないから代わりに時田君とこの量産型がスタンバってるよ」
「初号機の主要パーツは換装済みだが装甲部ははっきり言って心許ない。無茶するんじゃねえぞ」
ソファに座る水着姿のシンジは返事もおざなりに、ブランケットの下になっていたほぼ透明のプラグスーツを引っ張り出すと緩慢な動作で着込み始める。
「迎撃システムの復旧率は二十パー以下。市街戦は無理だから私達のサポートも無し」
「量産型 JA も撹乱か陽動、足止めが精々だな」
「まあ小型の無人機だし、高望みは出来ニャいよねえ」
黙々と左腕に上肢固定帯、左脚に義足を装着するシンジへ二人は口々に状況を告げる。
そこに悲壮感はないものの疲労感は確かに見て取れた。
( 破れかぶれ、か・・・ )
その二人の後ろ姿に、満身創痍の少年を戦わせることへの罪悪感と忌避感に苦しむ段階は疾うに過ぎ去っていることを加持は肌で感じる。
( ま、一番の重症はこの状況に抗う素振りも見せない彼な訳だが )
移動直後で特にやる事も無く手持ち無沙汰な加持は再び煙草を口に。
( 取り敢えず今日はお手並み拝見と ─── )
するも、ふと視線を感じ加持は火を点ける手を止め顔を上げる。
絞め落とされてからというもの一瞥も無かった左目がこちらを見詰めていた。
「えっと」
「ああ、こいつは加持リョウジ。ドイツの第三支部から飛ばされた・・・?」
興味がなかったのか高雄の紹介を遮る様に、しかし注意深げにシンジは指の欠けた右手を前に突き出す。
「・・・こいつかい?」
逸早くその真意に気が付いた加持は苦笑いを浮かべつつも人差し指と中指の間に挟んでいたそれを手渡す。
「相っ変わらず似合わないね~~」
ここにそれを見咎める者は誰一人としていない。
「これから似合う男になるんだろうが」
隈の付いた目元。
淀んだ生気の無い左目。
しかし、確かに火は燈った。
「そうそう!私もコイツを届けに来たんだった」
抉れた窪みへ、既に新しい皮膚の張ったその箇所へ女性職員はピッタリと嵌まるモノアイカメラを押し付け眼帯で固定する。
「いよっ、おっとこまえ!」
「厳つ過ぎやしねえか?」
「今時って感じはするな」
「シャァラァップ!感想なんてあとあと。それじゃあイッチョいってみようか、ワンコ君!」
伸ばされた手を掴み、背中を押され。
小さな白い溜め息を吐きつつ。
少年は漸く立ち上がった。
未成年者喫煙禁止法により未成年者の喫煙は禁止されています。