前話の補足説明みたいな感じです。
ちょっと解り辛い箇所があったので書き直しました。
「アルコール摂取時における酩酊初期状態でのシンクロ率低下とフィードバックの軽減?」
空き缶の下、ローテーブルのクロス扱いになっていたよれよれのレポート束を引き抜き、そのタイトルと概要にざっと目を通したアスカは鼻で笑うと、そのままグシャリと丸めクズカゴへ放り投げてしまう。
「欺瞞ね、こんなの。詐欺の手口じゃない」
ジオフロント内、ネルフ職員用宿舎の一室。
手狭で私物が少ないからか散乱するゴミが余計に目立つ部屋で、未だ第三新東京市立第壱中学校の制服をネルフ本部付女性エヴァパイロットの制服だと勘違いしたままそれを着込むアスカは鼻息も荒く備え付けのベッドへ背中から倒れ込む。
一瞬、傷に響くも痛みが理由で顔を顰める事はない。
アスカは忌々し気に吐き捨てる。
「意識的にアルコールでシンクロ率を、技術的に神経系の接続数を下げるのは痛みを抑えるため。ついでにアルコールの摂取で気分を高揚させ、恐怖心でハーモニクスが乱れ操縦不能に陥らせない様にコントロール。だけど最大の問題に対する解決策は無し」
シンクロ率の如何に問わず、ほぼ確実にエヴァ本体の損傷がパイロットの身にも引き起こされる。リツコの説明通り、海中戦闘時における両パイロットの負傷箇所は間違いなく弐号機の破損箇所と一致していた。
無茶な二人乗りという、シンクロ率の低下が確実に認められる状況下にも関わらずだ。
「こんな気休めの戯言、何も知らない外部の人間は騙せても内部じゃ通用しないわよ」
「・・・そうね」
クズカゴに入らず手前で落ちていたレポートを拾い上げ皺を伸ばし、それを見返す部屋の主たるレイはアスカの言葉を否定しない。
「だから、彼は今でも降りずエヴァに乗っている」
「・・・三度も死に掛けてんだし、うすうす勘づいてんじゃない?」
否定も肯定もなく、レイはレポートを二度三度裂くと改めてクズカゴへ。酔いの所為か松葉杖の所為かも分からない、覚束ない足取りで小型冷蔵庫から新しい缶を取り出すとアスカの隣、そのベッドの縁へと背中を預け腰を下ろす。
響く鈍い痛みにも眉一つ動かさずレイは一口呷り呟く。
「それでも彼は降りない・・・・・と思う」
「自信持ちなさいよ。一応命の恩人で戦友なんでしょ」
「・・・恩人で・・・戦友」
「そっ。あんたとネルフ本部と上の街と世界を三度に渡り救い続けた大英雄であり大恩人の戦友!」
茶化す様に、まるでそんなこと大したことじゃないと言わんばかりの物言いで眉を吊り上げるアスカに対し、二口目を呷りそのまま天井を見詰めるレイは何処か腑に落ちた様子で。
「そう・・・。後ろめたかったのね、私達は」
「・・・・・・警報!!」
遠くで響く警報音と第一種警戒態勢のアナウンスに、ベッドで寝転びうとうとと微睡んでいたアスカは一気に意識を覚醒させ身体を跳ね起こすも、その急な動きに今度こそ傷口が悲鳴を上げてしまう。
「がぁ・・・ッ?!」
ベッドの上で身体を引きつらせ蹲る姿に目を丸くするレイは痛みを和らげようと取り敢えず飲みさしの缶をアスカの口元へ差し出すも振り払われてしまう。
「アルコールで誤魔化されてる意志薄弱なサードと一緒にしないでちょうだいッ」
痛みで全身に脂汗が滲み、次の戦闘への焦りと不安も加わった鬼気迫る声での宣言。
しかし酔っぱらいに響くわけもなく。
「痛みが抑えられるのなら飲んだ方が良い。麻酔と一緒」
「~~~そうかもだけどぉッ!」
痛みよりも怒りで体が熱くなるのを感じるアスカは努めて冷静に息を整え様とするも、床にひっくり返った缶の残りを名残惜しそうに見詰める酔っぱらいはそれを許さない。
「貴女は気休めと言ったけれど、実戦で有効なのは事実」
「はあッ?!」
「シンクロ率が高ければラグも少なく、痛みと怪我の衝撃が一度に襲ってくる。前の戦闘で気を失った貴女が良い例。元々高い数値で減少幅がそんなになかった」
「だから!・・・それがなんだってえのッ」
「一度エヴァが負った破損は確実にパイロットを襲うけれど、酩酊初期状態でシンクロ率が下がっていればそれまでに対処する時間と負傷を受け入れる心的余裕が生まれる」
「・・・つまりぃ?」
荒かった息も治まり緊張していた身体も弛緩し始め、再び口元に差し出されるストローの刺された新しい缶へ首を振る余裕も生まれた。
故意ではなかったにせよ、痛みから意識を逸らし別の事を考えさせる切っ掛けになったレイの話へアスカは耳を傾ける。
「シンクロ率が低ければ先に弱い痛みと熱が来て、一拍置いてから強い痛みと熱が襲い皮膚が爛れ脂肪が焦げ縮小する筋肉と筋の下から胸骨が露しゅ「あー!!あー!!聞こえなーい!!」・・・ダブルエントリーでは傷の深さも「聞こえないって言ってんでしょ!!」」
傷病人にアルコールをすすめるのは控えましょう。
感想ありがとございます。