「・・・知らなかった。弐号機は赤いのね」
「違うのはカラーリングだけじゃないわよ」
エヴァ専用に作られた輸送船に乗り移った二人は甲板に迫り出た大きな幌の屋根を捲り覗く。
中は大きく四角に刳り貫かれ空洞に、室内プールの様な作りになっていた。
プールには水ではなく、二人とってはプールの水よりも慣れ親しんだ L C L が注がれている。
深い L C L のプールにはアスカ専用のエヴァ、弐号機が横たわっていた。
二人は船内に入り込みプールに浮かぶ桟橋から弐号機に近づき、アスカは慣れた足取りでうつ伏せに横たわるエヴァに駆け上がりプラグ挿入部からレイを見下ろす。
「所詮、零号機と初号機は開発過程のプロトタイプと ─── 」
「ぅえろろろろ」
「キャーーーっ??!!」
転げ落ちる様にエヴァから降りたアスカは桟橋の上でうずくまり真顔で L C L へと吐き出すレイへ駆け寄った。
「・・・吐くぐらい弱いなら飲むの止めなさいよ」
桟橋からプールの淵へと移動し、並んでしゃがみ込む二人。
真顔ではあるものの尚えずく、白目を赤く充血させ白ウサギの如く眼全体を真っ赤にした涙目のレイの背中をぼやくアスカが摩っていた。
「飲まないとやってられないもの」
「エヴァのパイロットが?」
「・・・色々なことが」
最初こそエヴァが汚れると騒いだアスカだが、レイの口から吐き出されるものが全て液体であることを見て、その依存具合を知り仕方なく手を貸すことに。
「あんた本当に予備軍? もう、結構ギリギリなんじゃないの」
「ギリギリでも予備軍は予備軍・・・死んでもアル中だなんて呼ばせない」
「なんなのよ、そのこだわりは」
どこから持ってきたのか、ビンのミネラルウォーターを手渡すアスカは何故か強い決意を見せるレイの口を呆れながらハンカチで拭ってやる。
「あ~あ。そのシャツも染みになってるじゃない」
可愛い服着てるんだからもう少し気を付けなさいよと、同性としても心配するアスカにレイは小さくありがとうと応える。
「でも問題ないわ。制服だもの」
「・・・本部の制服ってこんな少女趣味なの?」
「?」
上司の謹慎処分から始まりアルコール依存症予備軍の同僚パイロットと更には親の七光りでパイロットに選ばれたらしき少年との黙認される晩酌等々、本部に対する信用が段々と落ちるところまで落ち、更には地を這い始めるも、アスカにきちんと弁明できる大人は周囲に居なかった。
「ま、確かにアルコール依存症の少年パイロットだなんて外聞が悪すぎるものね。こんなことがマスコミにでも知られた日にはどんな記事を書かれるか・・・・・・ねえ、まさかとは思うけど」
「・・・・・・」
恐る恐るレイに訊ねるもその答えは沈黙と合わない視線でもって返される。
「・・・マジでネルフの印象、最悪な状態じゃない」
「・・・街は良いところだと思うわ」
がっくりとプールの淵に手を突き項垂れるアスカの背を今度はレイがぎこちなくさする。
と、その時。
船全体が大きな揺れに襲われた。
「「え?」」
それが何の揺れか確認する間もなく、プールの淵に乗り出していた二人は仲良く L C L の飛沫を上げることになった。
色々とすみませんでした