「・・・防水じゃなかったのね」
壊れて使えなくなった支給品の携帯電話を感慨もなくプールへ放り捨てるレイは周囲を見渡す。
濡れた制服のまま通路を歩き、スタッフオンリーと書かれたドアを見つけては遠慮なく開け中を物色していく。
「ダクトテープ・・・ビニールロープ・・・カッターとハサミ」
「後はプラグ内の救急セット頼み・・・」
先程まで真顔で嘔吐いていたとは思わせない厳しい表情を浮かべるレイは横たわる弐号機を睨み付け呟く。
「・・・お酒が飲みたい」
「どうせ飲むんなら、祝勝会の時にしましょ」
レイの独り言に答えたのはエナメル質の真っ赤なボストンバッグを抱えたアスカだった。
「これは?」
「見たら分かるでしょ。私のプラグスーツとその予備よ」
何時まで酔っぱらってんのよと、軽い調子でプラグスーツをレイに押し付けるアスカは不敵な笑みを浮かべている。
「さっさとあんたも着替えなさい。二人で行くわよ」
「二人?」
「そ。二人で弐号機に乗ってあれをやっつけんのよ」
乗組員の姿も見えず、目の前に居るレイも同性なためかアスカは気にもせずワンピースに手をかけ下着姿に。
しかし、レイは制服に手を付けるどころかプラグスーツをプールへ放り投げてしまう。
「ちょっ、あんた何してんのよ?!」
いきなりの行動に怒りよりも困惑を見せるアスカにレイは淡々と答える。
「本部の最新式じゃないなら着るだけ無駄」
「む、無駄ですって!?」
まるで自分までもが旧式で使えないと言われたかの様に感じてしまうアスカは目を剝き、先程までのやり取りからもレイがそのようなことを言う性格では無いことが理解出来るも、頭に血を上らせ食い掛かってしまう。
反対にレイの顔は血の気が失せたかのように段々と冷たさを増していく。
「ええ。邪魔になるくらいなら着ない方がまし」
「邪魔って、その最新式ってヤツじゃなくても着なかったらシンクロ率に影響が出るでしょ!!」
「・・・そう。貴女は知らないのね」
「それ、どういう ─── 」
一段と強い揺れを受け二人はたたらを踏む。
悠長に話している暇は無いことを悟るアスカは舌打ちを飛ばし会話を切り上げることに。
「ああもう!着たくないならそのままの格好でいいからさっさとエヴァに乗るわよ!」
切羽詰まった状況に加え慣れない海上、しかも初戦という、アスカにとって否が応でも緊張し焦る場面。なんとか取り繕おうとするも、マイペースな同僚に調子を狂わされ苛立ちも最高潮に達していた。
「いいえ」
そしてレイが次に放つ一言でアスカは爆発することに。
「私一人で戦うから、貴女は乗組員と一緒に避難してちょうだい」