「シンクロ率の如何に問わず、ほぼ確実にエヴァ本体の損傷がパイロットの身にも引き起こされるわ」
いやらしい目つきと手つきで採寸する眼鏡の女性職員を下着姿で睨み付けるアスカはミサトに身体を支えられつつ、リツコの口頭からフィードバックについての説明を改めて受けていた。
「この事実は総司令や副司令は勿論、開発総責任者の私でさえ予期していなかったものよ」
非人道的欠陥兵器。
ネルフ本部内で実務系、実働系を問わず方々の職員からそう揶揄される現状をリツコは甘んじて受け入れていた。
「確かに LCL を用いた A10 神経の接続によるエヴァとのシンクロ操縦法は E 計画当初から不安視されてきたわ」
それでもと、リツコは苦々しく語る。
「人が乗り込み操縦するのよ。数え切れない程の演算や安全テストを何年もの間、何度も何度も繰り返して来たにきまってるじゃない。どれだけ多くの失敗と代えられない犠牲を積み重ねてここまで来たと思ってるのよ。ダミーを用いた実験だって・・・・・・いいえ、何でもないわ」
隣に寄り添うレイに白衣の袖を引かれ漸く我に返るリツコは「ただの愚痴よ。忘れてちょうだい」と、愚痴と言うにはあまりにも鬼気迫るそれに、女性職員と一緒に一歩後退るアスカとミサトへ呟く。
「まあ、原因不明の不測の事態だってことは理解出来たわよ。それで?」
どさくさに紛れてブラを外そうとする女性職員を牽制しつつ、解決の目処は立ったのかと訊ねるアスカにリツコとミサトは首を振る。
「どれだけデータを精査しても原因はおろかバグさえ見付からない状況よ」
「車をオーバーホールするみたいに生体部品を取り外しする訳にもいかないし、そもそもそんな余裕も時間もないわ」
「現在建造中の第二支部肆号機と北極基地の伍号機を本部に取り寄せ改造する案もあるけど、正直な所、十年近く掛けて創り上げた設計を二ヶ月そこらで書き換えることは不可能よ・・・だから覚悟してちょうだい」
「事後承諾の形になるけど、今後もエヴァに乗って使徒戦に参加するのなら諸々の書類にサインと・・・それと遺書の作成が義務付けられることになったわ」
とっくに採寸も済ませアスカにちょっかいを出すだけだった、ふざけた女性職員も流石に空気を読んでか何時の間にか姿を消していた。
「・・・・・・一つ、聞きたいんだけど」
「・・・ええ」
「何でも聞いて良いわよー・・・答えられることしか話せないけど」
分厚い書類束とペンを手渡す二人に一瞥することなく、アスカは手元のそれをパラパラと捲りざっと目を通して行く。
「別に、技術的に不透明だとか機密に触れるような話でもないわよ」
顔を見合わせる二人を他所にアスカは書類束をレイに持たせ何でもない調子で話す。
「エヴァとそのパイロットの移動は政治的にも色々大変だってことは知ってるから、こんな切羽詰まった状況にも関わらず、こっちに呼ばれるまで時間がかかるのは理解できるのよ。・・・ただね」
そのままレイが書類を捲りアスカがペンを走らせる。
「ただ、どーしてネルフ
それは疑問というにはあまりにも断定的な口調で。
「・・・もしかして、ビビッてエヴァを降りられでもしたら大変だから~~とか、言わないわよね?」
一瞬の沈黙。
たったそれだけで二人に書類束とペンを投げ返し、松葉杖を突いて部屋を飛び出したアスカは着替えを抱えたレイに追いかけられつつ、下着姿のまま本部の廊下を歩く羽目になった。