イレギュラーで何が悪い 〜影の無敵ウマ男〜 作:気まぐれな富士山
ウマ娘関連をなぜか2個も作ってしまった男。
「え?兄さん今日来てないのか?」
「ああ、そうみたいだ。せっかくあのシンボリルドルフが走るというのに。」
「トレーナー君なら今日は急用が入ったとかで来ないらしい。聞いてないのか?ビワハヤヒデ。」
「私は聞いてないな。」
「まあ、兄貴はあんまり仕事のこと話さないし。」
「そうか・・・」
あれはそう、いつぞやの有馬記念だ。
「姉貴、早く行け。そろそろだぞ。」
「あ、ああ。見送りありがとうブライアン。」
私は、今日も勝つ気でいた。
計算通りの走りをして、あの皇帝に勝つ。
『さあ、ウマ娘たちがゲートに入りました!』
「ちょ、ちょっとキミ!ダメだよ、もうレースは始まるんだから!」
「そこの君!ターフから出なさい!」
「なんだ?騒がしいな・・・」
『まもなくスタートです!』
その時は無視をした。
レースに集中したかったからだ。
スタートを決め、いつものように差しでいく。
スタートの合図が響きわたったときだった。
『さあ、スタートしました!』
思いっきりスタートを切った。
はずだった。
『おおっと、1人のウマ娘が飛び出した!あれは・・・誰だ?誰だ?誰だ?』
『見たことの無い勝負服ですね。しかもあれは今までのレースで見たことの無いウマ娘です。』
『と言うことは乱入だ!謎のウマ娘が後ろから、先頭を2バ身ほど引き離して独走中!』
『しかし最初にしてはペースを上げているように見えます。この試合にはシンボリルドルフだけでなく、ビワハヤヒデ、マルゼンスキー、エアグルーヴと期待のウマ娘たちが出場しています。ここからわからないですよ。』
(なんだアイツ・・・しかし、計算に狂いは無い!)
『第3コーナーを回る!先頭は変わらず謎のウマ娘!おおっとここでビワハヤヒデとシンボリルドルフが仕掛けた!』
(ここからなら・・・)
(ここからなら・・・)
((行ける!))
『謎のウマ娘が追いつかれる!第4コーナーを回った!』
『いえ、様子がおかしいですよ・・・』
ボゴォッ!!
(なぜだなぜだ!)
(近づいていたはずなのに・・・)
『謎のウマ娘ものすごい追い上げだ!後ろをものともしない!その差はなんと5バ身、いや6バ身!』
『いえ、さらに離れています!このままいくと・・・』
(だめだ・・・完全に離される!)
(圧倒的、圧倒的すぎる!)
『謎のウマ娘!物凄い勢いでとばす!今1着でゴールイン!』
『信じられません!2位のシンボリルドルフと10バ身差です!これは、日本ウマ娘界の新星ですよ!』
「ハァッ、ハァッ、ハァッ・・・」
「あの、ウマ娘は・・・」
『シンボリルドルフが謎のウマ娘に近づきます!』
「君、名前だけでも・・・あっ。」
『謎のウマ娘!手を払い除けました!ああっ!謎のウマ娘が走っていきました!あれ程の走りでなお帰る力が残っているのか!』
こうして謎のウマ娘騒動は始まった。
彼女は何者なのか。そしてあの速さ。
誰もが息を飲み、異常だと言った。
全てが謎のまま、記憶に消えていった。
だが、私は予期せぬところで真実に辿り着く。
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「ただいま・・・」
「おう、おかえりナリ、ビワ。あ、ルドルフも。いらっしゃい。いやー、大変だったな有馬記念。変なやつに負けちゃってさ。」
「全く、何者だったんだ・・・」
「いや、その事で話がある。」
「兄貴、私からもだ。」
2人はなぜか真面目そうな顔をしていた。
「あの謎のウマ娘、兄貴だろ。」
「へ?いやいやいや何言ってんだよお前ら。」
「隠しても無駄だトレーナー君。」
「シンボリルドルフ、ブライアンも、一体何を言ってるんだ?あの走りが兄さん?・・・そもそも、兄さんは人間だぞ。」
「そうだよ!それに、今日はトレーナー同士の会議で俺はここにいなかった!それに、俺が出た所でウマ娘のお前らに勝てるわけないだろう。な、お前らちょっと疲れてるんじゃないか?」
「確かに疲れてはいるが、それとこれとは関係ない。実際に裏を取ってある。秋川理事長に対しては休暇をとっているそうじゃないか。」
「うぐっ・・・」
「それに何かを隠す時、兄貴は頭を搔くクセがある。」
「いや、何を言って・・・」
「トレーナー君、もう無理だぞ。大人しく観念したまえ。」
「・・・はぁ、わかったよ。」
「兄さん・・・本当なのか?」
「ああ、本当だ。あのレースにいたのは正真正銘、俺だよ。」
「その話、もうちょっと詳しく聞かせてもらえるかしら?」
「マルゼン?おいおい、なんでお前までいるんだよ。」
「御託はいい。話してもらうぞトレーナー君。」
「・・・ビワとナリは大体わかるな?」
「ああ。」
「・・・うん。」
「よし、ならまずは俺の正体からだ。」
俺は自分の事情を話した。
今回の経緯、胸の内を吐き出した。
最初は喋りたくなかったが、少しづつ話すと、一気に吐いてしまった。
「耳も、尻尾もある。長ズボンばかり履いていたのは脚の筋肉を悟られないようにする為だ。」
「本当に・・・本当なのね。飾りだったとか無いわよね。」
「そんな訳ないだろ。あーあ、長い間秘密にしてたのによ。こんな形でバレるとはな。」
「しかし、なぜレースに出なかったんだ?」
「よーく考えてみろ。世界初のウマ男。歴史的にも稀、次はいつかなんてわからない。そんなの、実験の対象にならないとでも?そうでなくてもマスコミに取り上げられることは間違いない。」
「でも、出たかったんでしょ?」
「・・・ああ出たかったさ。ウマ娘の本能ってやつなんだろう。大観衆の前でのレース、ライブ、みんなのアイドル、目指したいさ。一時は性転換だって考えた。だが、しかし体は受け付けてくれなかった。手術をしようとする度に体が反応し手術にならない。生まれつきの麻酔アレルギーで麻酔も効かない。・・・だから羨ましかった、憎たらしかったんだよお前らが。」
「トレーナー君・・・」
「でもなぁ、なんでだろうなぁ。上っ面は憎んでてもお前らが大切だった。大好きだった。妨害や無理のあるメニューも考えたけどお前らにやらせる訳にはいかなかった・・・だから、女装して走ったんだ。当然、お前らに黒星をつけてな。」
「トレーナー君。」
「笑えよ。哀れなトレーナー兼ウマ娘だよ。どうした?お前は皇帝とかだったよなルドルフ。何か言うことがあるんじゃないか?」
「トレーナー君!」
ビクッ!
「君は君じゃないか!なぜそんなに思い悩んでいた事を相談してくれないんだ!私やマルゼンだけじゃない!妹2人にだって押さえ込んで!」
「・・・お前らに、わかるわけねぇだろ!俺の気持ちなんて!」
「君にもわからないだろう!?私たちがどれ程君に救われ、助けられ、今ここにいるのか!私たちが・・・どれだけ、君を好きだと思っているんだ・・・」
ルドルフは泣いていた。
無力感なのか、なんなのか、ただただ泣いていた。
「トレーナー君。ルドルフちゃんが今伝えたことが私たちの全てよ。」
「・・・兄貴。昔、私と走った時のことを覚えているか。私は未だに兄貴に勝てていないんだ。そんな事で悩んでいるなよ。」
「そうだ兄さん。私たちは、家族じゃないか。何か悩んでいたら話してくれ。そうじゃないと、私は心配で・・・心配で・・・」
「・・・姉貴。」
「ありがとよ。お前ら。・・・俺、ちっせぇことで悩んでたんだなぁ。ありがとうルドルフ、マルゼン、ビワ、ナリ。」
「まったく・・・君になにかあったら、困るのは私なのだからな・・・?」
「うん。ありがとう。」
事件というより、もしかしたら俺は思春期を引きずっていたのかもしれない。
恥ずかしい話だが、今では笑い話だ。
変わったことといえば、ナリとビワが何かと甘えてくるようになったこと、後は・・・
ルドルフと付き合ったことかな。
それに関しては、また今度話そう。
文脈変かな?多分大丈夫。(自問自答)