日下部鎮守府の物語 ~工学者だったけど艦娘に恋したので、提督になりました~ 作:天空のトロイカ
ご注意下さい。
恋は空腹で生き、満腹になって死ぬ。
正規空母・赤城は認識齟齬個体が発見される割合が他の艦娘と比べ、比較的多いとされる。
もちろん「比較的」だ。どの鎮守府にも早期に任務で着任する赤城だが、真っ先に認識齟齬個体であることを疑わないといけないというほどではない。
ほとんどの赤城の言う「頭の中で何かが」は単なる実艦じみた振る舞いであって、実際はきちんと自分と帝国海軍の末路を認識している。
日下部鎮守府の赤城だってそうだ。本当に自分の最期を覚えていないわけではない。
いっそ覚えていない方が良かったのに、と。
そんな自嘲めいた感傷と共に、赤城は今夜も自らの下半身に指を伸ばす。
自分でもどうしようもない誘惑に抗うべく、厳密にはまったく別の欲求である性的快楽を充足させてごまかすために。
――もう限界が近いことには、全力で気付かないフリをしながら。
日下部鎮守府の執務室。
秘書艦である川内が演習標的艦の任務で席を外している間に、代わりに一人の艦娘が日下部の下を訪れていた。
「なんとか年内に間に合ったな。おめでとう赤城」
「ありがとうございます」
2045年の終わりまで数日を残すばかりとなったその日、日下部鎮守府の赤城は最大練度に達した。
先日の第三夫人候補こと秋雲に続き、第四夫人候補が立て続けにケッコンの条件を満たしたことになる。
「赤城。私とケッコンしてくれるか?」
「はい、喜んで。とはいえもう年末ですし秋雲さんとのケッコンも終わってませんから、年明けにするべきではないでしょうか?」
「それはそうだな。指輪は来年渡そう」
嬉しそうに顔を綻ばせながらも、なおも冷静に言葉を紡ぐ姿は、あの春の日から変わらぬ理性の化物っぷりだった。
「が、それはそれとして。条件は満たしたんだから、もういいだろ。お前のことを、抱かせろ」
「それは……」
「お前だって限界ぎりぎりだろ。最大練度が近付くごとに、明らかに浮ついてたぞ」
あの頃と違うのは、赤城ではなく日下部だ。
一年足らずとはいえ艦娘と過ごす濃密な日々は、日下部の精神性にも成長を与えていた。他人の心を理解できない、ではなく、理解できないなりに推し量れるように。
「そうでしたか。修行が足りませんね」
「お前みたい奴じゃ仕方ないかもな。何考えて戦闘してやがんだこの駄空母が」
不意に。
あまりにも不意に、何の前触れもなく日下部の口から、辛辣極まりない言葉が飛び出した。
それは提督がさしたる落ち度もない麾下の艦娘にかけるには、あまりにも酷薄としか言いようのない言葉で、案の定それを耳にした赤城はあからさまに表情を変える。
「あっ……」
頬を紅潮させ、目を蕩けさせ、唇をだらしなく半開きに……わかりやすく言えば性的に興奮した表情に。
「提督。すっかり私という存在をご理解いただいているようですね」
「SやってるとM女は寄ってくるし、何なら最初はノーマルな子も気付けばそういう風に調教してたりするんだが、その中に稀にいるんだよ。どうしようもない本物のド変態が」
一口に
とはいえその多くは罵倒されたり、物みたいに扱われることに興奮するといった程度で、
川内や時雨の場合は、日下部が人為的にその機能異常を引き起こさせた。今や日下部が与えた物であれば、どんな苦痛であれ快感に変化させて受け入れることができる。
だが赤城の場合は、日下部は何もしていない。単に地球意志に生み出された時から「そういうもの」だっただけだ。そしてそれを強靭すぎる理性で律して、今まで平常に振る舞っていたのだ。
「お前日本を代表する正規空母のくせに、恥ずかしくねーの? 一航戦の誇りが聞いて呆れるな。この埃」
「あっ……あんっ……申し訳ありません、私」
その堅固な理性の壁が、ついに崩壊を迎えている。
日下部の罵倒に、赤城はもはや隠すことなく喘ぎ声を上げる。普段から口癖のように言っている「一航戦の誇り」を踏みにじられたというのに、そのことに対して明らかに性的な快感を得ていた。
「お前みたいなドスケベを使ってやるって言ってるんだから、四の五の言わずに来い」
日下部はそのまま赤城を自室に誘おうとするのだが、直後に思い直して訂正する。
「いや、気が変わった。最初の一発はここでスる」
「執務室、ですよここ?」
「見ればわかることいちいち言うな。いいから脱げよ。そんでもって四つん這いになってこっちにケツ向けろ」
金剛に言われるまでもなく、日下部は
だが公的な場所でスるような変態的な行為に経験がないわけではないし……率直に言って、そういうのも嫌いではない。単に普段は自重しているだけだ。
そして今は、特大の変態とシようとしているのだ。ならこちらだって変態になるくらいがちょうど良いだろう。
「はい……」
ついに赤城は理性の最後の一線を投げ捨てた。
日下部の命令のままに一糸まとわぬ姿になり、普段は土足で歩いている床の上に四つん這いになる。ここは執務室であり、いつ川内が戻ってくるともわからないというのに。
「ったく、もうグチャグチャじゃねーか」
「ずっと、ずっとこうされることを想像してました。もっと私をめちゃくちゃにして下さい」
日下部の指に敏感なところをかき回されながら、赤城は浅ましく懇願する。
それまで抑えていた分、その反動は激烈で。
「
ついに赤城は、絶対にこれだけは口にするまいと決めていた自分の本当の望みを言葉に変える。
さすがにそれは日下部にとっても想定外の言葉で、激しく動かしていた指先を思わずぴくりと止めた。
ミッドウェー海戦で沈んだとはいえ、赤城の最期は加賀や蒼龍とはやや異なる。
ダメージコントロールしきれない数の爆撃を浴びて轟沈したその2艦と異なり、赤城が被弾したのは爆弾2発に過ぎない。元が戦艦である赤城にとって、その程度のダメージは本来であれば十分に耐えられるものなのだ。
しかし艦載機の発艦直前に攻撃を受けたことにより、敵の攻撃ではなく自艦の弾薬が誘爆して艦体は炎上。燃え盛る炎によって内側から焼き尽くされ、ついには自力航行不可と判断した艦長の命により総員退去となる。
そしてその赤城を雷撃によって自沈処分した駆逐艦こそ、第四駆逐隊の舞風と萩風なのだ。
「前世から私に自我があったかは、やはり私にもわかりません。生まれる時に情報は与えられましたが、多くの赤城はそれを単なる情報として客観的に捉えています。慢心しないよう、戦訓として活かそうとはしてますけどね」
赤城は全裸のまま、しかしいったん体勢を変えて日下部と向き合って言葉を紡ぐ。
先程まで得ていた肉体的な興奮がわずかに冷めた一方で、概念核の奥から別種の快楽がにじみ出して来るのを感じる。
「ですが私はその情報を、完全に自分自身の記憶として受け取りました。艦娘のこの身体に当てはめるなら、上半身が燃え盛る炎に包まれながら18時間も海上でのたうち回っているようなものです。そんな感覚をまともに感じてしまったら……
一種の
「艦娘として肉体を得た時に自分の特性を知った私は、必死でそれを律しようと思いました。だってそうしなければ、私はきっと戦闘中に……もう一度あの爆撃を浴びて悶え苦しみながら味方に雷撃処分されたいと思ってしまいます」
かつて舞風に告白された時。「今度こそ赤城さんを守りたいと思うようになりました」ではなく、「もう一度雷撃処分してあげます」と言われていたら。
――きっと赤城は、舞風の告白を受け入れていた。
「こんなの、艦娘としては最悪の欠陥ではありませんか。性癖で片付けて良いことではありません」
もしぎりぎりの戦いの中で「死にたい」と願ってしまったら。そのせいで、ほんのわずかでも戦闘にためらいが生じてしまったら。
自分が死ぬだけならまだいい、それは愚かな艦娘が愚かな最期を遂げただけだ。だが正規空母は間違いなく艦隊の要となる存在だ。つまり、味方全体をその死の巻き添えにすることになる。
「だから本当は、誰にも言うつもりはありませんでした……」
でも、本当の自分を偽るのはもう限界だった。
日下部はこんな欠陥を持つ自分の存在を、どう思うだろうか。
危険視して解体に踏み切るなら、それはそれでひとつの答えだ。愛する人の手で「終わり」を与えてもらえるなら、それは真性の
日下部はそんな赤城の告白を、黙って聞いていた。
むせ返るような淫靡な臭いが充満しているのに、まるで何かが遮断しているかのように空気が重たい。
ややあって、日下部は口を開く。
「前世のトラウマさえ快楽のスパイスに使っちまうか。最低だなお前。日本の敗北の原因になった反省ってねーの?」
「も、申し訳ありません」
「こんなどうしようもない最低の艦娘なのに、普段から空母代表みたいな顔してるんだもんな。救えねーよ」
刺すような日下部の言葉を、赤城は唇を噛みしめて俯いて聞いている。
だが、そんな仕草は今はどうでもいい。大事なのは、
「で……
「あっ……」
赤城からは指でこねくり回していた時と遜色ないほどの蜜が溢れて、太腿をべっとりと濡らしていた。
「赤城。それがお前という生物の在り方だ、否定したって仕方ない。だからまずそのまま受け入れろ」
「……よろしい、のでしょうか」
「
およそ知的生物であれば誰でも、自我の奥底では「生きたい」と願っていると同時に「死にたい」と願っている。明らかに矛盾しているのだが、そんな相反する衝動を抱くからこそ複雑な精神活動を行うことができるのだ。
「
日下部は赤城を抱き寄せた。
豊かな乳房を盛大に自分の胸板で押し潰すと、一瞬だけ甘い声が赤城の口から漏れる。
「お前一人でもう自分の性癖をコントロールできないというなら、私が手伝ってやる。お前が本当に死んでしまわない程度に、けれども十分に満足できるように。そんな風に使ってやる」
言いながら、日下部はわざと舌を大きく突き出して赤城の頬を舐める。
びくっと赤城が身体を震わせたのは、決して嫌悪感からではないだろう。
「提督……」
「今はシてるんだから御主人様と呼べ。空母のくせに頭が悪いな」
「はい、申し訳ございません御主人様。空母としても女としてもどうしようもない私ですが、せめて御主人様のお情けをいただきたく存じます」
日下部の言葉が、届いた。
同じ自らを卑下する言葉を吐き出していても、そこには悲壮感はない。ただただ気持ちよくなるため、絶頂を迎えるための自虐。
「貴重な私の時間をお前みたいな奴に割いてやると言ってるんだから、せめて精一杯奉仕してもらおうか。普段から無駄飯食らいの大食艦のくせにこんなこと言われて喜んでる雌豚なんだから、その程度は当然だからな?」
「は、はい。かしこまりました……」
「じゃあさっきの続きだ。四つん這いになってこっちにケツ向けろ」
赤城はその命令の通りに体勢を変える。
ぴちゃぴちゃとした音が室内に響き、
後から聞いた話によると、川内は日下部と赤城が致し始めた辺りでとっくに執務室前まで帰ってきていたらしい。
赤城は「最初の六人」の一員だから浮気と咎める立場ではないのだが、だとしてもさすがに執務室でシているのは止めた方がいいのか……そんな風に葛藤している間に赤城が自分の本当の性癖を語り始め、その機会を失ってしまったそうだ。
結局室内に踏み込まなかったばかりか、大淀や他の嫁艦候補たちなどが執務室に立ち入らないようにそれとなく見守っていてくれたらしい。なんとも頭の下がる話だ。
だがいずれにせよそれを日下部が知ったのは、もっと後のことになる。
「……限界更新した。54発……さすがにもう出ないぞ」
執務室で3発ほど赤城の中に精を注いだ後、我に返って赤城の部屋に場所を移し、そのまま夜どころか翌日の朝まで夢中で腰を振り続けた。
途中で水分と栄養の補給はさすがにしたが、それ以外の時間はほぼ交わっていたようなものだ。
「言葉責めではともかくうちの赤城ってあまり大食艦のイメージ強くなかったけど、こっちの方向で大食すぎるな」
クリスマス・イヴの夜の乱交パーティの時に出したよりも多くの精を、赤城一人に注いだことになる。もし妊娠機能を除去していなかったら、確実に孕んでいたことだろう。提督の間でも賛否両論あるこの措置だが、少なくとも日下部鎮守府にはおいては必須なようだ。
その時、赤城がぱちっと目を開いた。視線と視線が交錯する。
「おはようございます……提督」
赤城は日下部を提督と呼んだ。どうやら眠ったことで理性を回復できたらしい。
「おはよう赤城。そこは名前で呼んでくれよ」
「厳密にはまだケッコンしてませんから。提督、私とても満たされました。ありがとうございます。ふふ、提督があそこまで的確に精神を抉って下さるとは。思い出したらまた昂りそうです」
このド変態め。
などと罵ったら喜ばれそうなので、日下部は黙って呑み込む。
「私の方針はわかってるな? ベッドの上ではどれだけ乱れてもいいが、日常ではしゃんとしろよ。普段自立してる女を乱れさせるからいいんであって、ただの性奴隷はいらんからな。そんなのは学生時代に卒業したんだ」
「まぁ。なかなかに鬼畜な発言ですね。了解いたしました」
ここで時雨のことを持ち出さなかったのは、さすがにデキる女だと褒めるべきところか。
「ですが……私たちはまだ、ベッドの上にいますね」
「おっと?」
理性を回復した赤城は、本当にデキる女だった。
情欲を巧みに刺激され、日下部の下半身がむくむくと動き出す。さすがに完全な屹立ではないが、昨晩あれだけ出したのに半分ほどまで起き上がったのは驚嘆の一言だろう。
「ふふ、提督。回復力も素敵です。昨晩あれだけ出したのに、もう臨戦態勢ではありませんか」
「自分でも少し驚いてる。ちゃんと勃たせてくれれば行けるぞ。朝から追加でってのもなかなか背徳的でいいな。じゃあほら、心を込めて奉仕しろ」
「ありがとうございます……」
嬉しそうに顔をほころばせて、赤城は舌を伸ばす。
――彼女はもう、自分の性癖に嘆くことはない。
※嫁艦候補マリッジブルーシリーズ、赤城編です。
割と酷いタイトルですが、狭義の性癖(性的嗜好)ではなく広義の「性質・気質」という意味で用いています。
艦これ本編での台詞に忠実に考えるなら、赤城は自分の最期を認識「していない」ことになります。多くの艦娘が自分の最期について語る中で、割と珍しい方だと思います。この特異性を活かした名二次創作もありますが、本作では赤城は自分の最期を認識「している」ことにしました。
そしてあんな壮絶な最期を「自分の記憶」と認識してしまったら、こんな風に壊れておかしくないよな……というところから生まれた話です。
ツイッター投稿時は割とバカエロなノリで終わりましたが、雰囲気が少し違うSSではシリアス成分がマシマシになっています。
ちなみに川内・時雨・赤城とドMが3人被ってますが、最初からドMであることが決まっていたのは赤城だけです。時雨は調教して堕とすので別枠と考えてましたし……川内は、書いていたらなんか勝手に動いて勝手にドMに堕ちていきました(本当に)。
艦これ夏&初秋イベ、E1に続きE2も甲でクリアしました。現在はE3以降の編成を練っています。今回は全6海域の大規模なので、期間に余裕があることに期待です。
SS時間軸はまだ2045年ですので、なるべく早く次も投稿したいと思います。