百合ゲー世界に転生したらなんかちょっと思ってたのと違った件について 作:アークフィア
同性愛が認められた世界に転生!
美少女になってかわいい子とイチャコラしてやるぜ!
百合ゲー世界に転生したら告白を断られた件について
「ごめんなさい、貴方の告白は受けられないわ」
そう
……いやいやなんで!?おかしくない?!
この世界、百合の花が咲き乱れる最高の楽園じゃなかったの?!
このパーフェクト&パーフェクトな私なら、百合ハーレムをさっくり築いてぐへへへへじゃなかったの?!
「いや、そりゃ好きでもないやつとは付き合わないだろうよ……」
「ばかな!?この全世界が羨み憧れ頭を垂れる、完璧美少女私に好意を向けられて素気なく断るとか、うそにも程があるでしょ!?」
「ああうん。自分で言うだけあって、容姿も勉強も運動も完璧だもんな、お前。……性格以外」
一応、その告白癖さえなければ、性格だって悪い方ではないとは思うんだが……と返されてちょっと照れる私。
……いややっぱ男に褒められても嬉しくねーわ。頬が緩んでる?気のせいだぞ気のせい。
時刻はちょうど昼休み。
私と幼馴染みであるコイツは、互いの机をくっつけて弁当を
この幼馴染み、性別:男だけど料理作るの
料理の分野でも完璧を志す私が、口に入れた途端思わず唸ってしまうあたり、普通に家庭的男子としてモテすぎて困ってそうなレベル……なんだけど、そんな素振りが一切見えないんだよね、これが。
……は?!まさか一緒に居る私のせいなのか!?
なるほどなるほど。完璧美少女私と共に居るせいで、幼馴染みの春が遠ざかっている……というわけだな、ふーん?
だが私は謝らぬし自重もせぬ。
寧ろそんな憐れな幼馴染みを嘲笑ってやるぜ、ひゃっはー!
「ごちゃごちゃ言ってないでいいからさっさと食え。どうせまだあれこれと忙しいんだろうが」
「へいへーい。……そういうとこ
「ずっと同じことやられてりゃ、いい加減慣れもするっての」
幼馴染みからの抗議の視線を華麗にスルーして、私は弁当箱の中に一つだけ残った唐揚げを頬張るのだった。……うーむウマし。
私が転生した世界は、前世にていわゆる『百合もの』に区分されていた、とあるシミュレーションゲームを元にしたものだった。
売れ行きはそこまで特筆するようなものではなかったけれど、一部の愛好家からは熱狂的な支持を得ている……、みたいな感じの作品だ。
当の私は熱狂側で、関連作やらイベントやらを網羅し尽くしたものである。……当時は男性だったので、ちょっと邪な理由も無くはなかったけどね。
──かわいい女の子達がゆりゆりしてたら、間に挟まりたくなるのは男の性だよなぁ?……最近は壁になって見守りたがるやつも多い?けっ、草食系め。
……いやまぁね?間に挟まりてぇなぁ、っていう部分もあったけどさ?
この二人の関係性てぇてぇ……、みたいな見方もしてたりしたんだけどね、実際は。
だからまぁ、別に草食系でも全然構わないとは思う。……楽しみ方は人それぞれ、否定するの良くない……ってね。
とはいえ、それは前世で男だった時のお話。
今世では女性として産まれた私は、この世界がどういうものなのかを把握した瞬間、完璧な美少女になるべく行動を開始したのだ。
───全てはそう、百合ハーレムを築くため!
この世界ではもう随分と前に、同性間の婚姻が合法化されている。さらにはなんと、重婚だって可能!
もはやご都合主義としか言いようのない舞台設定に、前世ではちょっとツッコミを入れたりもしたものだが。
……当事者となったのなら遠慮はいらねぇ。全力で活用して、理想の百合ハーレムを築き上げてやるんだ──と一人意気込んだものだ。
その結果として、現在の私は品行方正・容姿端麗・文武両道な大和撫子として君臨するに至っている。
……いやホント、大変だったけど百合ハーレムのために頑張ったのよ、私。
まぁ、さっきその野望の一歩となるはずのメインヒロインに、これ以上ないくらい綺麗に振られちゃったんですけどね!!……なんでや!
「……そもそもの話。幾ら美少女が相手とはいえ、容姿だけですぐさまオッケーされるわけがない──としか言えないわけだが」
「おっかしくない?!重婚・同性婚ありありのありなのに、なぁんでそこの判断基準が緩くないわけぇ?!」
キーッ!と頭を掻きむしる私に、呆れ顔を返してくる幼馴染み。
この幼馴染み、ゲームでは話しかけると好感度を伝えてくれる、よくある親友枠ポジションの人物だった男で。
いつのまにやら、私の野望を知る人物の一人となっていた男、でもある。
百合ゲー世界なのに男?って感じもするけど、そもそも原作では百合ゲーの癖して
そのせいなのかなんなのか。
ゲーム内での彼は、とことん無個性な男だった。
情報提供に関しても、基本的にメモを渡してくるだけ。言葉を発するような場面はほぼなし、なんなら出会える場所自体も校舎内に限られる……と言う、必要なんだか必要じゃないんだか、そもそも居る意味あるのかないのか、よくわからないポジションの人物だったりしたのである。
実際、彼に出会わずにゲームを進めることも可能だったし、野郎の顔なんざ見たかねぇ!……なんて縛りプレイで攻略する者もいたりした。
……こんな扱いされるなら別に性別どっちでも良かったのでは?なんて言うのはタブーである。……わかってても言っていいことと悪いことがあるんだよ!
そんな彼だが、現実になってみるとこれがまた付き合いがいのあるいい男だった。
家庭的なスキルはほぼ網羅済み、こちらの行動に対しても偏見なしに付き合ってくれる──という幼馴染みの鑑。……性別違ったら一番最初に告白しとけ、ってなるような優良物件だったのだ。
……呆れを顔に浮かべつつも、こちらの発した百合ハーレム計画について「まぁ、やってみれば?」と応援してくれた時には、いいやつ過ぎて悪い女に騙されたりしないか──なんて風に、ちょっと不安になったりもしたものである。
「お前にこうやって付き合ってる時点で、そこらへんの心配はない気がするけどな」
「まぁパーフェクト美少女たる私に付き従ってる時点で、人生の勝ち組なのは明らかだからな!……んん?まさか
「いんや、あれは単純にお前のコミュ不足」
「……あれー?」
幼馴染みに素気なく発言を切り捨てられて、思わず首を傾げる私。
おかしーなー?前世でのこの世界、もうちょっと頭わるーい感じだった気がするんだけどなー?
……誤解されそうなので一応注釈を入れておくと。
前世ではこの世界、付き合う過程はさらっと流されて、付き合ってからのイチャイチャやらやきもきやらに焦点を合わせた感じのゲームだった。
……要するに糖分補給タイプと呼ばれる系統のゲームだったので、なんというか普通の恋愛シミュレーションっぽいのとは、ちょっと外れていたのだ。
なのでこう、ちゃんとシミュレーションしなさいとか言われると……なんか頭がバグる!
「まぁ、あれだ。最初は友達から、ってするのが良いんじゃないか?」
「むー、無難だけどそうするしかないかー」
幼馴染みの言葉に渋々と頷く。なるほど、現実とゲームは違うんやな、って。
……いやでも、百合ハーレムが合法だっていう部分は紛れもない事実なので、そのあたりなんか現実感薄くない?……って私の理性的な部分が主張してくるので困る、とても困る。
そう伝えれば、幼馴染みもこっちの言葉に若干困ったような表情を浮かべていた。
「そのあたりは結局、歴史の話になってくるからなぁ……」
「えっと……、確か
幼馴染みの言葉に、歴史の時間に習ったような気がする話を朧気に思い出す。
──微妙に前世の感覚が残る私としては、ちょっと驚きなのだけれど。
この世界では、同性愛に対する偏見が一切無い……らしい。
同性同士で手を繋いでいても、周囲から別に変な眼で見られることもないし。
なんなら性転換して男になった元女性が、生粋の女性と恋愛していても特に話題にもならない。……それぞれの性別を逆にしてみても同じ。
──
ついでに言うと、科学が進んだ結果として男性でも女性でも妊娠できるし、出産だってできるようになっている、らしい。……技術の進歩がヤバい、ヤバくない?(真顔)
「愛、愛ねぇ……?」
「同性婚も重婚も認められてるってのは。結局のところ、その愛が真実であるのなら止める必要はない……っていう理由からだからな。──幸せにできるのが
「ふーむ、ハーレムも純愛も等価値、ねぇ?……代わりに、寝取られとか寝取りとかは
「それを行うことに確かな愛があるって言うなら、別にいいんだろうけどな。……大体そういうのは、
「こっわー……」
愛ゆえに、略奪する以外の手段が見つからないとか。
寝取られる側の関係性が不健全だったり、片方に負担が偏ってるとかの場合なら、情状酌量の余地があるらしいけどな──と彼は話を締める。
……いやまぁ、寝取られも寝取りも趣味じゃないから、別にいいんだけどさ?
ハーレムを目指すなら注意がいるなぁ、とも思う。……安易に手出しして、取っ捕まったり刑務所に直行したりするのは、できれば勘弁願いたいなぁ……と言うか。
「まぁ、そのあたりは聞いてくれりゃあ調べとくよ。他に好きな人が居るのか、とかはな」
「うーむ、幼馴染みの鑑。……
「丁重にお断りします」
「うーむ即答。流石過ぎて好きになりそう」
「いつもの適当な褒め言葉ありがとう」
「えへへへー」
……うん、打てば響く関係っていいものだね!
俺の幼馴染みは、女の子が好きだと昔から公言して憚らない。
見た目は完全に美少女──膝下あたりまで伸びた艶やかな黒髪や切れ長の瞳は、黙って立っている分には神秘的な雰囲気を醸し出している──だが、中身に関してはどっちかと言えばおっさん臭いところがなくもない。
──まぁ、一緒になって
「──正直なところね?貴方達の間に挟まれるというのは、ちょっとこっち側の負担が大きすぎると思うのよ」
そう答えるのは、さっき彼女が告白していた転校生の少女。
金髪碧眼であること・横文字混じりの名前などから、日系ハーフであることが明白な彼女は、その美しい相貌を困ったように歪めていた。
「……そうか?」
「友情と愛情の境目については、昔からずっと議論されているけれど。貴方達の関係は、まさにその延長線上にあるもの。……下手に関わると色々縮みそうだわ」
寿命とかね?と彼女は笑って、屋上から去っていく。……ふむ。
「同性愛にも異性愛にも、偏見がないんだからそうもなる、か」
女同士だろうが男同士だろうが、はたまた異性が相手だろうが。
──「一緒に居たい」という気持ちに、勝るものはない。
……そう結論付けた誰かがいたからこそ、今の世界は成り立っている。
それゆえに、今の世界において性差を持ち出すことは、禁忌に等しいものがあった。
それは、そいつが性別を理由にして、誰かを押し退けるつもりがある……と言っているようなものだからだ。
……産みの苦しみさえも自由にできるようになったこの世界において、女性だから・男性だから──などと宣うことは、愚かにも程がある妄言だと言える。
そんな世界だからこそ「好き」というものの意味も、時代にあわせて形を変えていったのだ。
現在のこの国での婚姻とは、他者婚と言い換える方が正しい。
自分ではない誰かを愛し、共に居たいと願う──その気持ちだけを問うもの、それゆえの
……ある意味でそのあり方は、友情と近似しているとも言えるのかも知れなかった。
赤の他人が一緒に居る理由を、一体どこに求めるのか──それくらいの違いしかないのだから。
さて、そうなるとすると。
──俺のこの気持ちは、果たして愛なのか友情なのか、一体どちらなのだろうか?
結論を急ぐつもりはないが、せいぜい幼馴染みらしく過ごそうじゃないか、とも思う。
「ほっとけないしなぁ」
見下ろしたグラウンドの先で、こちらに向かって手を振る幼馴染み。
それに対して小さく苦笑を返しながら、俺はそう結論付けるのだった。
このあとなんか適当に玉砕する主人公を献身的に支えた幼馴染み君は妾じゃなく本妻(?)に収まって幸せに暮らします、多分。
なお百合ゲー世界だと思っていたが実際は「好きに性別とか関係ないやろ」みたいな世界だった模様。