百合ゲー世界に転生したらなんかちょっと思ってたのと違った件について   作:アークフィア

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百合ゲー世界に転生したら貴方と私で演じる感じな件について

 文芸研究会もとい文芸部部長の私と仲間達は、突然に現れた混沌を呼ぶ者──もとい、スーパートラブルメイカー従姉の先生の襲来により、演劇祭に台本を提供するだけのはずが、そもそもの劇部分までも、文芸部でこなさなければいけなくなってしまった。

 

 見た目だけ百合だったのが見た目すら百合じゃなくなったら、それは最早百合なのか?

 いやそれ結局のところ百合では?……なんだぁテメェ?的な脳内会議によって苦しむ私に、転校生ちゃんの一言が光明を差す?

 

 転生したなら可愛く凛々しく綺麗に素敵!迷走無しの完璧美少女!

 その名は、名部長私!

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「ちょっと?聞いてる部長さん?」

「ほわっ!?」

 

 

 軽く肩を揺さぶられて意識が戻ってくる。……今脳内に謎のオープニングコメント的なものが流れてたような……。

 というか迷走無しとか言ってたけど、絶賛迷走中だよ私。だって今の現実逃避でしょ多分。だってさ……?

 

 

「いや、確かにね?確かに、他の人が選出できないなら消去法的に私だけどね?」

 

 

 思わず浮かんでくるのは、軽く引きつった笑み。

 ……表面的には女の子だけど、中身おっさんだからね私?

 

 いやまぁ、さっきの要素算的に考えると、勇者な私と魔王な私における女性成分の比率は、体だけの1と、体と役の2になるから、魔王をやったほうが女性分強いけどさ?

 

 いやでもそれホモでは?……とも言い出せず。

 そこを説明するのに時間が掛かるし、何より周囲からの反応がどうなるかわからんし。

 というか仮に中身おっさんとして認められても、この世界だと幼馴染みと恋人役演じても何か問題が?って流されるだけなんじゃというか。

 ……なんだこれ詰んでるぞ!?

 

 

「あー、うん、うん……?うん、うん……」

「再起動を繰り返してるパソコンみたいになってますね!」

「オーバーヒート中ということかしら?」

 

 

 そこの二人うるさい。

 ……いやでも、いまいち思考が纏まらないのも事実。ここは一つ、幼馴染みに判断を投げてみるか……?

 

 

「なんか勝手に話が進んでるけど、同胞はそれでいいの?」

「……?いや、劇だろ?そもそもそこまで真剣に悩んでるお前がちょっとわからんのだが」

「……あー」

 

 

 そうして問い掛けた結果が、この素っ気ない返答をする同胞の姿である。

 ……うーむ、幼馴染みとの温度差に思わず小さく唸ってしまう。なるほどそこの認識の差か、このなんとも言えない微妙なズレは……。

 

 演じるんだから、ちゃんとやるべきだろうと思う私と。

 演じるのだから、ただ役をこなすという幼馴染み。

 

 ……うむ。なんかこう、一人で勝手にあれこれ考えてるのバカらしくなってきたな?

 

 

「……まぁ、うん。あくまでも劇、と言うのもわからんでもないし。……うん、まぁ、いいか……」

 

 

 どうにも、うまく誘導された気がしないでもないけど。

 特に代案もないし、私が魔王で同胞が勇者で……という形で進めることにしよう。

 ただその場合、ちょっと考えなければいけないことがある。

 

 

「ごめん紡ぎ手ちゃん、台本のほう任せられる?……流石に役作りと平行して物語まで、というのはちょっと無理がありそうだからさ」

続く日々を確かめ歌う(じゃあそのあたりの詳しい部分を)其を謳歌と呼ぶ(詰めたほうがいいですね)

 

 

 最初に、執筆の交代。

 まだ時間はある……とはいうものの、役のための練習をしながら物を書く、というのはちょっと負担が大きすぎるだろう。

 なので必然的に、執筆周りは紡ぎ手ちゃんにお任せする形になってしまう。

 

 ……ごめんねー、なにか埋め合わせ考えとくからねー?!

 そう手をあわせて謝罪をすれば、紡ぎ手ちゃんははにかみながら、小さく頷いてくれたのだった。……なしてこの子はこんなに可愛いんだろうね?

 

 

「じゃあ私は、劇中で使う曲を探しておきましょうか、それと道具の貸出の手続きも」

「うん、そのあたりお願いします」

 

 

 ついで、劇で使用する曲と、大道具などの手配。

 これについては、資料と平行して集めておくと転校生ちゃんが立候補してくれた。

 

 実際、著作権フリーの楽曲を利用することを考えると、パソコン係みたいなところのある転校生ちゃんにお任せするのが、一番安心だと言えた。

 なので、裏方ばっかり任せてごめんね、と謝罪と感謝を投げておく。……減刑?いや諦めてなかったの転校生ちゃん……?

 仕方ないので一週間から三日に刑期を短縮してあげることにした。……いや、それでいいの君?

 

 

「それじゃあ衣装とか、その他の小物とかは私が!」

「後輩ちゃん、裁縫とかできるの?」

「既存服のアレンジくらいならなんとか!小物類は、最悪うちにあるものを借りてきます!」

「あ、あー。小物に関してはお手柔らかにね……?」

 

 

 最後に衣装や装飾品などの小物類について。

 こちらもズバッと後輩ちゃんが立候補してくれたので、さっくり埋まったのだけれど──、いやその、後輩ちゃんってわりと良いとこのお嬢様だったような?

 

 ……まかり間違って変に高いモノとか持ってきませんよーに、とだけ祈る私。

 もしも持ってこられてしまった時は、戦々恐々としながら傷付けないように使おう……。

 

 その他、細かい作業やら道具作成やらは全員で分担することに決め、その日の部活はお開きになるのだった。

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「しかしまぁ、なんというか……急な話だよねぇ」

 

 

 学校からの帰り道を、幼馴染みと肩を並べて歩く。

 

 ……うちの迷惑なトラブルメイカーのおかげで、急に忙しなくなってしまった感じだ。

 まぁ、部員達がみんな優秀だから、ある程度形にはなりそうだっていうのは救い、かな?

 

 

「……で、俺らは明日からせっせと役作りか」

「そーだね、明日から大変だー。……それにしても魔王、魔王かぁ。……私は魔王じゃないよ、って言ってたんだけどなぁ」

 

 

 同胞の言葉に相槌を打ちながら、ふぅとため息を吐く。

 嘘から出た実というか、瓢箪から出た駒というか。……冗談で言ってた魔王呼ばわりが現実になるとか、一体どういう巡り合わせなんだろうね?

 そう小さく嘆けば、幼馴染みからも同じようにため息が返ってくる。

 

 

「それを言ったら、俺なんか勇者だぞ、勇者」

「そっか、同胞が勇者かぁ。……んー、どうだろ?似合ってるのかどうか、わかんないね」

 

 

 別に、幼馴染みは正義の人、という感じではないだろう。

 寧ろ目的のために手段は選ばないほうだと思うので、どっちかと言うと魔王……はちょっと違うか。序盤の幹部役とか?のほうが似合っているような気がする。

 

 なので、物語の『勇者』を演じられるだろうか……と問われると、ちょっと微妙に思えてしまう。役不足ならぬ役者不足、みたいな?

 

 

「……そこまで言われるとしっかり勇者してやる、って気分になるな」

「なんと、同胞の役者魂に火が着いたとな?」

 

 

 私の軽口を聞いて、同胞がにぃと笑う。……珍しくやる気、って感じだ。

 普段はそこまでやる気を見せるタイプでもないから、ちょっと新鮮に思える。

 なので、私のほうもちょっとやる気が出てくる。張り合いがある、というか。

 

 

「……ふふふ。じゃあ私も、恐ろしい魔王として精一杯頑張っちゃおうかな?」

「おう。そんでもって最終決戦して──」

 

 

 ……そこまで口にして。

 最終決戦の話まで行くと、死に別れた恋人達みたいになるんだよな、ということに気付いて。

 お互い、口ごもる。

 

 ……最終的には紡ぎ手ちゃんがどうするか、ってところもあるけど。

 少なくとも、別離の展開を演じることになるのは、間違いないだろう。

 

 ……実際、半分くらい流された感じがあるけど。

 その場面が来たとき、私達はどういう演技をすればいいんだろう?

 演劇部もかくや、みたいな感じの迫真の演技をすればいいの?

 はたまた、あくまでも学生の劇だとほどほどに流すのがいいの?

 ……そして真面目にやる場合、私はどういうノリでいればいいんだ?

 

 いやまぁ、さっきはホモじゃん、みたいなことを言ってたけど。

 幼馴染みって顔は可愛い系だから、言うほどそういう感じでもないんだよなぁ。……付いてるからお得、とか言う人もいそうというか。

 

 いつぞやのハンバーガー店で擬似キマシタワーとか宣ってた通り、相手が幼馴染みならそこまで嫌悪感もない。

 まぁ、だからこそ同胞が勇者で私が魔王、なんて配役を受け入れられたわけでもあるし。

 

 寧ろ私が気になるのは、幼馴染み側がどう思ってるのか、だったり。

 

 

「や、もっかい聞くけど、幼馴染みはいいん?私はこう、同胞相手だと同性もかくやって感じの対応だけど」

「……まぁ、お前が気にしないんなら特には。この間の食わせあいの延長線上みたいなもんだろ、実際」

「……まぁ、だよねぇ」

 

 

 自分の過去が私を追い詰める……?

 いやそこまで重い話じゃないけど、実際すでに食べさせあいくらいはやってるので、あんまり照れる意味がないんだよなぁ、というのも確かな話だろう。

 

 ただこれ劇なんだよなぁ。……学校のみんなに見せる、劇。

 ……いや、完全に知らない人達の前でやるのと、学校の生徒達の前でやるのは、ちょっと違うような……?

 

 

「んー……。いやまぁ今さらなに言ってるの、とか言われそうだけども。……クラスメイトの前でやるのは流石に恥ずくない?」

「……あ」

「いや『あっ』ておい」

 

 

 そこ気付いてなかったんかい?!

 

 幼馴染みの「今気付いた」みたいな表情に呆れる私。……というかなんか噛み合わなかったの、そこに気付いてなかったせいもあるよねこれ?

 

 というかね、周囲からどう思われてるのか知らんけども。……演劇祭で恋人役とかやったら、ほぼほぼ()()()()仲だと思われるんじゃないんですかね?

 

 

「……そういうもんなのか?」

「……お前さん、私相手だからいいけど、他の女の子相手に同じこと言ったら、その場で殴られても文句は言えんぞ……」

 

 

 ……男相手でも殴られるかも知れないのかこの世界だと?いやまぁ、そこの深掘りをする気はないけど。

 なんにせよ、それは流石に鈍感にぶちん男呼ばわりもやむを得ないぞ同胞ぁ!

 

 

「あー、お前相手だと、そんなこと気にしたことなかったからなぁ」

「てめーこんな美少女相手に言うにこと欠いてアウトオブガンチューだとぉ?!」

「……?なんだそのアウトなんちゃらって」

 

 

 おおっと通じない!これ死語だったわ!

 仕方ないので「興味の対象外的な意味」と教えると、へぇーと頷いていた。……自分がおっさんであることを突き付けられていくぅ!

 

 まぁ、気安い関係である、というのは悪いことじゃないだろう。

 ……一応横に(中身は別として)美少女がいるというのに、なんか淡白過ぎやしないか?……と、同胞の将来を気にする部分もないわけではないけども。大丈夫?君ちゃんと結婚できる?

 

 

「……はっ?!まさか私の距離感が近過ぎて、同胞の恋愛観が捻れ曲がり始めている……?!」

「自意識過剰乙」

「なんだとー!?」

 

 

 逃げる同胞を追い掛けながら、家までの道を駆け抜けていく。

 ……意外に足の早い同胞に追い付けないまま、家にたどり着いた私。

 リビングにいた家族にただいまの挨拶を投げて、自身の部屋へと駆ける。

 部屋の戸を後ろ手に閉めて、ベッドの上に身を投げて。

 ……制服皺になるよな、と思いつつも、ちょっと動く気になれなくて。

 

 

「……うーむむむむ」

 

 

 同胞にはああ言ったけど。

 ……自身が作った台本の初期構想を思うと、ちょっと頭を抱えてしまう。

 そうするしかなかったから、紡ぎ手ちゃんに任せたけど。……いや、うん。

 

 

「……変えて、くれるかなぁ?」

 

 

 いや、変えないだろうなぁ、紡ぎ手ちゃんの作風を見ると。……そもそも私があれで行こうってなったの、紡ぎ手ちゃんの作品を見たからだしなぁ。

 

 

「うあー!!」

 

 

 思わずベッドの上をゴロゴロ転がる私。

 ……結局、母親が出てこない私を気にして呼びに来るまで、私はベッドの上を左右に転がっていたのだった。

 




 ふと思ったんですが、シリアスっぽい感じの過去話とか、この作品では需要あるんですかね?

シリアスは必要?

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