百合ゲー世界に転生したらなんかちょっと思ってたのと違った件について 作:アークフィア
文芸研究会もとい文芸部部長の私と仲間達は、突然に現れた混沌を呼ぶ者──もとい、スーパートラブルメイカー従姉の先生の襲来により、演劇祭に台本を提供するだけのはずが、そもそもの劇部分までも、文芸部でこなさなければいけなくなってしまった。
見た目だけ百合だったのが見た目すら百合じゃなくなったら、それは最早百合なのか?
いやそれ結局のところ百合では?……なんだぁテメェ?的な脳内会議によって苦しむ私に、転校生ちゃんの一言が光明を差す?
転生したなら可愛く凛々しく綺麗に素敵!迷走無しの完璧美少女!
その名は、名部長私!
「ちょっと?聞いてる部長さん?」
「ほわっ!?」
軽く肩を揺さぶられて意識が戻ってくる。……今脳内に謎のオープニングコメント的なものが流れてたような……。
というか迷走無しとか言ってたけど、絶賛迷走中だよ私。だって今の現実逃避でしょ多分。だってさ……?
「いや、確かにね?確かに、他の人が選出できないなら消去法的に私だけどね?」
思わず浮かんでくるのは、軽く引きつった笑み。
……表面的には女の子だけど、中身おっさんだからね私?
いやまぁ、さっきの要素算的に考えると、勇者な私と魔王な私における女性成分の比率は、体だけの1と、体と役の2になるから、魔王をやったほうが女性分強いけどさ?
いやでもそれホモでは?……とも言い出せず。
そこを説明するのに時間が掛かるし、何より周囲からの反応がどうなるかわからんし。
というか仮に中身おっさんとして認められても、この世界だと幼馴染みと恋人役演じても何か問題が?って流されるだけなんじゃというか。
……なんだこれ詰んでるぞ!?
「あー、うん、うん……?うん、うん……」
「再起動を繰り返してるパソコンみたいになってますね!」
「オーバーヒート中ということかしら?」
そこの二人うるさい。
……いやでも、いまいち思考が纏まらないのも事実。ここは一つ、幼馴染みに判断を投げてみるか……?
「なんか勝手に話が進んでるけど、同胞はそれでいいの?」
「……?いや、劇だろ?そもそもそこまで真剣に悩んでるお前がちょっとわからんのだが」
「……あー」
そうして問い掛けた結果が、この素っ気ない返答をする同胞の姿である。
……うーむ、幼馴染みとの温度差に思わず小さく唸ってしまう。なるほどそこの認識の差か、このなんとも言えない微妙なズレは……。
演じるんだから、ちゃんとやるべきだろうと思う私と。
演じるのだから、ただ役をこなすという幼馴染み。
……うむ。なんかこう、一人で勝手にあれこれ考えてるのバカらしくなってきたな?
「……まぁ、うん。あくまでも劇、と言うのもわからんでもないし。……うん、まぁ、いいか……」
どうにも、うまく誘導された気がしないでもないけど。
特に代案もないし、私が魔王で同胞が勇者で……という形で進めることにしよう。
ただその場合、ちょっと考えなければいけないことがある。
「ごめん紡ぎ手ちゃん、台本のほう任せられる?……流石に役作りと平行して物語まで、というのはちょっと無理がありそうだからさ」
「
最初に、執筆の交代。
まだ時間はある……とはいうものの、役のための練習をしながら物を書く、というのはちょっと負担が大きすぎるだろう。
なので必然的に、執筆周りは紡ぎ手ちゃんにお任せする形になってしまう。
……ごめんねー、なにか埋め合わせ考えとくからねー?!
そう手をあわせて謝罪をすれば、紡ぎ手ちゃんははにかみながら、小さく頷いてくれたのだった。……なしてこの子はこんなに可愛いんだろうね?
「じゃあ私は、劇中で使う曲を探しておきましょうか、それと道具の貸出の手続きも」
「うん、そのあたりお願いします」
ついで、劇で使用する曲と、大道具などの手配。
これについては、資料と平行して集めておくと転校生ちゃんが立候補してくれた。
実際、著作権フリーの楽曲を利用することを考えると、パソコン係みたいなところのある転校生ちゃんにお任せするのが、一番安心だと言えた。
なので、裏方ばっかり任せてごめんね、と謝罪と感謝を投げておく。……減刑?いや諦めてなかったの転校生ちゃん……?
仕方ないので一週間から三日に刑期を短縮してあげることにした。……いや、それでいいの君?
「それじゃあ衣装とか、その他の小物とかは私が!」
「後輩ちゃん、裁縫とかできるの?」
「既存服のアレンジくらいならなんとか!小物類は、最悪うちにあるものを借りてきます!」
「あ、あー。小物に関してはお手柔らかにね……?」
最後に衣装や装飾品などの小物類について。
こちらもズバッと後輩ちゃんが立候補してくれたので、さっくり埋まったのだけれど──、いやその、後輩ちゃんってわりと良いとこのお嬢様だったような?
……まかり間違って変に高いモノとか持ってきませんよーに、とだけ祈る私。
もしも持ってこられてしまった時は、戦々恐々としながら傷付けないように使おう……。
その他、細かい作業やら道具作成やらは全員で分担することに決め、その日の部活はお開きになるのだった。
「しかしまぁ、なんというか……急な話だよねぇ」
学校からの帰り道を、幼馴染みと肩を並べて歩く。
……うちの迷惑なトラブルメイカーのおかげで、急に忙しなくなってしまった感じだ。
まぁ、部員達がみんな優秀だから、ある程度形にはなりそうだっていうのは救い、かな?
「……で、俺らは明日からせっせと役作りか」
「そーだね、明日から大変だー。……それにしても魔王、魔王かぁ。……私は魔王じゃないよ、って言ってたんだけどなぁ」
同胞の言葉に相槌を打ちながら、ふぅとため息を吐く。
嘘から出た実というか、瓢箪から出た駒というか。……冗談で言ってた魔王呼ばわりが現実になるとか、一体どういう巡り合わせなんだろうね?
そう小さく嘆けば、幼馴染みからも同じようにため息が返ってくる。
「それを言ったら、俺なんか勇者だぞ、勇者」
「そっか、同胞が勇者かぁ。……んー、どうだろ?似合ってるのかどうか、わかんないね」
別に、幼馴染みは正義の人、という感じではないだろう。
寧ろ目的のために手段は選ばないほうだと思うので、どっちかと言うと魔王……はちょっと違うか。序盤の幹部役とか?のほうが似合っているような気がする。
なので、物語の『勇者』を演じられるだろうか……と問われると、ちょっと微妙に思えてしまう。役不足ならぬ役者不足、みたいな?
「……そこまで言われるとしっかり勇者してやる、って気分になるな」
「なんと、同胞の役者魂に火が着いたとな?」
私の軽口を聞いて、同胞がにぃと笑う。……珍しくやる気、って感じだ。
普段はそこまでやる気を見せるタイプでもないから、ちょっと新鮮に思える。
なので、私のほうもちょっとやる気が出てくる。張り合いがある、というか。
「……ふふふ。じゃあ私も、恐ろしい魔王として精一杯頑張っちゃおうかな?」
「おう。そんでもって最終決戦して──」
……そこまで口にして。
最終決戦の話まで行くと、死に別れた恋人達みたいになるんだよな、ということに気付いて。
お互い、口ごもる。
……最終的には紡ぎ手ちゃんがどうするか、ってところもあるけど。
少なくとも、別離の展開を演じることになるのは、間違いないだろう。
……実際、半分くらい流された感じがあるけど。
その場面が来たとき、私達はどういう演技をすればいいんだろう?
演劇部もかくや、みたいな感じの迫真の演技をすればいいの?
はたまた、あくまでも学生の劇だとほどほどに流すのがいいの?
……そして真面目にやる場合、私はどういうノリでいればいいんだ?
いやまぁ、さっきはホモじゃん、みたいなことを言ってたけど。
幼馴染みって顔は可愛い系だから、言うほどそういう感じでもないんだよなぁ。……付いてるからお得、とか言う人もいそうというか。
いつぞやのハンバーガー店で擬似キマシタワーとか宣ってた通り、相手が幼馴染みならそこまで嫌悪感もない。
まぁ、だからこそ同胞が勇者で私が魔王、なんて配役を受け入れられたわけでもあるし。
寧ろ私が気になるのは、幼馴染み側がどう思ってるのか、だったり。
「や、もっかい聞くけど、幼馴染みはいいん?私はこう、同胞相手だと同性もかくやって感じの対応だけど」
「……まぁ、お前が気にしないんなら特には。この間の食わせあいの延長線上みたいなもんだろ、実際」
「……まぁ、だよねぇ」
自分の過去が私を追い詰める……?
いやそこまで重い話じゃないけど、実際すでに食べさせあいくらいはやってるので、あんまり照れる意味がないんだよなぁ、というのも確かな話だろう。
ただこれ劇なんだよなぁ。……学校のみんなに見せる、劇。
……いや、完全に知らない人達の前でやるのと、学校の生徒達の前でやるのは、ちょっと違うような……?
「んー……。いやまぁ今さらなに言ってるの、とか言われそうだけども。……クラスメイトの前でやるのは流石に恥ずくない?」
「……あ」
「いや『あっ』ておい」
そこ気付いてなかったんかい?!
幼馴染みの「今気付いた」みたいな表情に呆れる私。……というかなんか噛み合わなかったの、そこに気付いてなかったせいもあるよねこれ?
というかね、周囲からどう思われてるのか知らんけども。……演劇祭で恋人役とかやったら、ほぼほぼ
「……そういうもんなのか?」
「……お前さん、私相手だからいいけど、他の女の子相手に同じこと言ったら、その場で殴られても文句は言えんぞ……」
……男相手でも殴られるかも知れないのかこの世界だと?いやまぁ、そこの深掘りをする気はないけど。
なんにせよ、それは流石に鈍感にぶちん男呼ばわりもやむを得ないぞ同胞ぁ!
「あー、お前相手だと、そんなこと気にしたことなかったからなぁ」
「てめーこんな美少女相手に言うにこと欠いてアウトオブガンチューだとぉ?!」
「……?なんだそのアウトなんちゃらって」
おおっと通じない!これ死語だったわ!
仕方ないので「興味の対象外的な意味」と教えると、へぇーと頷いていた。……自分がおっさんであることを突き付けられていくぅ!
まぁ、気安い関係である、というのは悪いことじゃないだろう。
……一応横に(中身は別として)美少女がいるというのに、なんか淡白過ぎやしないか?……と、同胞の将来を気にする部分もないわけではないけども。大丈夫?君ちゃんと結婚できる?
「……はっ?!まさか私の距離感が近過ぎて、同胞の恋愛観が捻れ曲がり始めている……?!」
「自意識過剰乙」
「なんだとー!?」
逃げる同胞を追い掛けながら、家までの道を駆け抜けていく。
……意外に足の早い同胞に追い付けないまま、家にたどり着いた私。
リビングにいた家族にただいまの挨拶を投げて、自身の部屋へと駆ける。
部屋の戸を後ろ手に閉めて、ベッドの上に身を投げて。
……制服皺になるよな、と思いつつも、ちょっと動く気になれなくて。
「……うーむむむむ」
同胞にはああ言ったけど。
……自身が作った台本の初期構想を思うと、ちょっと頭を抱えてしまう。
そうするしかなかったから、紡ぎ手ちゃんに任せたけど。……いや、うん。
「……変えて、くれるかなぁ?」
いや、変えないだろうなぁ、紡ぎ手ちゃんの作風を見ると。……そもそも私があれで行こうってなったの、紡ぎ手ちゃんの作品を見たからだしなぁ。
「うあー!!」
思わずベッドの上をゴロゴロ転がる私。
……結局、母親が出てこない私を気にして呼びに来るまで、私はベッドの上を左右に転がっていたのだった。
ふと思ったんですが、シリアスっぽい感じの過去話とか、この作品では需要あるんですかね?
シリアスは必要?
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求めてる
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求めてない
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どっちでもいい