百合ゲー世界に転生したらなんかちょっと思ってたのと違った件について   作:アークフィア

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百合ゲー世界に転生したら部活メンバーでGO!な件について

「聞いてくれ、実は俺……女の子だったんだ」

「な、なんだってー!?幼馴染みが、女の子……!?」

 

 

 突然の幼馴染みからのカミングアウトに、動揺が抑えきれない私。

 だってさみんな!私のためにメイド服着てくれちゃうような同胞が!家事スキル網羅してる、嫁力マックスな同胞が!ちょっとツン入ってるところがなくもない同胞が!

 もしも、もしもだぞ!女の子だった、なんてことがあったならさ!

 

 

これが女の子だったら(うちの幼馴染みが)世の中破綻するわーい(女の子なわけがない)!」

 

 

 わーい、なーい、ゎーぃ……(セルフエコー)

 

 ……視線を周囲に向ければ、さっきまでそこにいたはずの、萌え萌え(死語)メイド服な女の子だった幼馴染みの姿はなく。

 というかここ私の寝室だな?……ふむ。

 

 

「……いや夢オチかーい」

 

 

 自分の部屋の中に、虚しいツッコミの声が響き渡るのだった。

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

 なんやかんやとドタバタやってるうちに、また土曜日が来てしまった。

 なので今日は部活は休み。……のはずなんだけど。

 

 

「せーんーぱーい、おはようございまーす!」

「はいおはよう後輩ちゃん。他の人達は?」

「今は近くのコンビニに、朝ごはんを買いに行ってます!」

 

 

 玄関前でこちらを待っていたのは、いつもの制服姿ではない、可愛らしい私服姿で手を振る後輩ちゃんだった。

 

 ……お嬢様って感じのその服装は、ハイテンションな彼女とはミスマッチに見えるけど、本来の彼女は普通に良いとこのお嬢様である。

 ちゃんと大人しくしてれば深層の令嬢感溢れる美少女なので、そのあたりは彼女のテンションの問題なんだろうなぁ、というか。

 ……いや、別に大人しくしてたほうがいい、とも思わないけどね?後輩ちゃんがやりたいようにやればいいと思います。

 

 

「むむ、先輩からの熱視線を感じます!私の胸に飛び込んできてもいいですよ!」

「先輩と後輩の関係でお願いします」

「相変わらずつれない態度ですね!」

 

 

 今の距離感もわりと居心地いいからね。……とは言わず、後輩ちゃんの頭を撫でながら、待つことしばし。

 

 道の向こうから、三人がこっちに歩いてくるのが見えた。

 その両手にはビニール袋。……それなりに詰まってるように見えるけど、朝から結構食べる派の人がいたりするのかな?

 なんて思っているうちに、三人は私達の前まで歩み寄ってきていた。

 

 

「うっす、筋肉痛とかは大丈夫か?」

「そんなに歳取ってもないのに、流石に次の日までは響かないよ。そっちこそどうなの?」

「こう見えても学生ですので」

「謎の若さアピールが入ったわね……」

過ぎ去る月日を省みるにはまだ早い(みんな年齢気にするような歳でもないような)……」

 

 

 紡ぎ手ちゃんの言葉に思わず苦笑を浮かべる私。

 ……肉体的には若いのだけど、中身の人的にはちょっと若いとは言いづらい私としては、どうにも引っかかる部分だというか。

 

 

「……?そもそも筋肉痛って、年齢云々で発生のタイミングに変化はないはずですよ?」

「なん……だと……?!」

 

 

 なんて思ってたら、傍らの後輩ちゃんからの爆弾発言が。……いやちょっと待って筋肉痛が遅れるといえば加齢の代名詞なんじゃないの!?

 

 

「弱い運動──長距離の水泳とかウォーキングとかのような、動きとして激しくなく、負荷もそれほどないような運動であれば遅く。強い運動──昨日の先輩達のように、激しく動き回ったり、負荷の強い動きをしたりするのであれば、早く筋肉痛が起きる……というのが、最近の常識だそうですよ」

「ああ、なるほど。歳を取ると激しく動けなくなるから、結果として筋肉痛も遅れてくるというわけね」

「そういうことですね!……ところで、先輩は何故この世の終わりのような表情で、膝と手を付いて項垂れているんですか?」

「……い、今さらになって筋肉痛になっただけだよ、うん」

 

 

 今まで歳のせいにしてきた、過去の自分という筋肉痛()が、今さら疼いてるだけだから大丈夫だよ、うん。

 

 ……立ち上がって話を進める。筋肉痛に関しては放置だ放置。

 

 

「で、どうする?歩きながら食べるのも行儀が悪いし、お母さんに言ってキッチン使わせてもらってもいいけど」

「……そうね、電車の中で食べるつもりでいたけど、そのほうがいいかしら」

「のりこめー」

「わーい、です!」

「っておい待て同胞、なんでお前が率先して突進してんの!?君止める側だよね!?」

 

 

 買ってきた朝ごはんを何処で食べるのか、という疑問。

 袋の中身を見せてもらったところ、サンドイッチやおにぎりなどの軽食が多かった。

 

 ……座席に座って食べる分には、確かに迷惑にならないかも知れない。

 でも車内で食べ物の匂いがすること自体がダメだって人もいるし、別に急ぎでもないのだから、落ち着いて座れる場所などで飲食をしたほうがいいだろう。

 そう思って提案をしたのだが、実際に確認する前に同胞と後輩ちゃんがうちの玄関に突進していった。……いや、なんでストッパーが全速前進してるのさ!?

 

 そう私が言うのを見越していたのか、彼は手元でスマホを振って。

 

 

「許可ならもう取ってあるぞー」

「……なんと?」

「そういえば、コンビニから帰る前にスマホを操作してたわね、彼」

 

 

 遠いのであんまり良く見えなかったが、幼馴染みのスマホ画面に「了承」と書かれたスタンプがあるのはわかった。……流石同胞、手慣れてやがる……。

 私と転校生ちゃんは互いに顔を見合わせたあと、どちらからともなく表情を崩して苦笑を交わし。

 

 

「まったく、朝から元気だねぇ。……紡ぎ手ちゃんは大丈夫?」

盟友は常に照りつける太陽の如く(一緒のクラスなんで慣れましたよ)……」

「もしかしてあの子、ずっとあのテンションなの……?」

 

 

 一人取り残されていた紡ぎ手ちゃんを伴って、自身の家の中に戻るのだった。

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「新作のチーズ鮭&枝豆、意外と美味しいです!」

「私にはゲテモノに見えたのだけど……でも、リゾットとかにはチーズを使うわけだから、そこまで変でもない……のかしら?」

 

 

 後輩ちゃんの手の内にあるおにぎり。それに入っている具についてむむむ、と唸っている転校生ちゃん。

 

 あーでも、転校生ちゃんの気持ちもわからないでもない、かな?

 サイコロ状にカットされたチーズがご飯の中に入ってるのって、最初見たときちょっとギョッとしちゃったんだよね、なんか異物感があるというか。実際食べてみると案外イケたんだけど。

 

 

「普通の、鮭が一番……」

「……え、もしかして今のお前か?」

「……?そうです、よ?」

 

 

 その横では、突然に普通の喋り方になった紡ぎ手ちゃんに、同胞が戦慄の表情を向けていた。……なんか最近、幼馴染みがオーバーリアクション化してきてない?

 なお当の紡ぎ手ちゃんはあんまり気にせずに、幸せそうなほにゃっとした笑みを浮かべ、鮭おにぎりを一口一口味わいながら食べ進めていた。……うん。

 

 

「がわ゛い゛い゛な゛ぁ゛つ゛む゛ち゛ゃ゛ん゛」

大君は目が怖い(先輩怖いです)

「おおっと」

 

 

 おっといけない、あまりに可愛いものだから怖がらせてしまった。失敗失敗☆

 

 ……紡ぎ手ちゃんが自然体になるのは、確かリラックスしてるときだっけ?

 じゃあ私は壁になろう、推しを見守る壁になろう。

 推しの尊い笑みを、世界の邪悪から守る壁になる。───こんなに光栄なことは他にあるだろうか?いやない。故に──。

 

 

「私は、新世界の壁になる」

「一文字違いで大惨事の件。……いや第三次か?」

「壁の押し売りみたいなものだから?……ってやかましいわっ」

 

 

 幼馴染みの横合いからのツッコミに正気を取り戻しつつ、改めて紡ぎ手ちゃんのほうに視線を向ける。……マイペースに鮭おにぎりをもぐもぐしていたので、多分彼女は大物なんだと思う。

 

 

「あらあら、貴方の友達はみんな個性的なのねぇ」

「友達というか部活仲間というか。まぁ仲はいいと思うよ、今日も遊びに出かける予定だし」

 

 

 テーブルに集まってやいのやいのとしている私達を見て、お母さんがうふふと笑っていた。

 

 ……そう、こうして彼らが朝っぱらから私の家に集合している理由。

 それは演劇練習に対しての気分転換と、先週の同胞とのお出かけを羨ましがった転校生&後輩コンビをなだめるため、だったりするのだ。

 

 いやね、この間二人してずるいずるいの大合唱、横の紡ぎ手ちゃんが珍しく唖然としてたくらいの大輪唱をかましてくれたのよこの二人。

 ……そうなるともう、お出かけするしかないじゃない?

 それを受けて幼馴染みが、二人と私で出掛けてくればいいじゃないか、って提案したんだけど……。

 

 

「なにを言っているの、幼馴染みさんも一緒に決まっているでしょう?」

「そうなればつむちゃんも行くしかありませんね!……ね!?」

なんとっ(ふぇっ!?)我にも祝祭の鐘は鳴り響くか(え、その、みんなが行くなら……)

「……あれー?」

 

 

 え、なにこの展開。

 ヤキモチ的なものじゃなくて、ホントに二人()()()出掛けたことに憤ってたのこの二人?

 だからみんなで出掛けるなんて話になるの?……はえー……(思考放棄)

 

 ……と、言うようなやり取りの結果、朝一で私の家に集まって、そこから隣町に遊びに行こう……という話になったのである。

 

 

「ゆこう!」

「……ゆこう?」

 

 

 そういうことになった。……ってやらすんじゃないよ。

 唐突に謎のネタ振りをしてきた後輩ちゃんを、罰ゲーム代わりにわしゃわしゃ撫でつつ、そういえば弟はどうしてるんだろう、と視線を巡らせる。

 

 

「ふぅん、部長さんの弟さん、ねぇ?……ちょっと着てみて欲しいものがあるのだけど」

「……?なに着ればいいんだー?」

「おい待てそこの転校生ぃ、二次元じゃないんだぞうちの弟に変な性癖埋め込もうとしてんじゃねぇ」

「……ちっ、バレたわ」

「おいィ?」

 

 

 なんかいつの間にか転校生ちゃんに絡まれてた。しかも着せかえ人形にされかかっている。

 ……オイコラ、軽率にショタに変な性癖埋め込もうとすんな!そう言って詰め寄ると、彼女は視線を明後日の方向に向けつつ、

 

 

「別に今の時代異性装なんて珍しくもないでしょう?貴方の弟だし、似合うかなってちょっと思っただけよ」

「ねぇ転校生ちゃん?それで通ると思ってるんなら、ちゃんと目を見て話そう?……貴様が最近ハマっているゲームについては調べが上がってるんだ、吐けーっ!」

「……フリフリのアイドル衣装を「ギルティ(ダメです)っ!」あ痛ぁっ!?」

 

 

 悪びれもせずに宣うので、制裁の四十五度チョップ。

 ……ソシャゲのショタに着せられてる服なんてなぁ、基本性的なんだよぉ!にも関わらずその上に女装だとぉ~!?んなもん、お天道様が許しても、この私が許さねぇ~!!

 

 こうして、悪は滅びた。だが光ある限り闇もまた濃くなるもの。

 闘え私、負けるな私、いつかユリーレムにたどり着くその日まで、私の戦いは続くのだから──。

 

 

「……不純さで言えば部長さんも同じくらいだと思うのだけど、この扱いの差はなんなのかしら……」

「転校生がはっちゃけだしたの最近だからなぁ、弄られボーナス期間ってやつじゃないか?」

「なんなのその嬉しくないボーナスタイム……」

「先輩はもうどうしようもないので!転校生さんはまだ引き返せるとみんなに思われてるんですよ!」

「……ねぇ後輩ちゃん、髪グシャグシャにしたのは謝るから、こっちに飛び火させるの止めない?」

 

 

 私の言葉に「やー、ですよっ」と笑みを返してくる後輩ちゃん。可愛いなぁと思うと同時、どうにも敵わねぇやとも思わされる私なのだった。

 

 

 

 ……なお紡ぎ手ちゃんは、未だマイペースにおにぎりをもぐもぐしていた。……食事中だけ無敵すぎるこの子……。

 

 

 

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