百合ゲー世界に転生したらなんかちょっと思ってたのと違った件について   作:アークフィア

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百合ゲー世界に転生したら噂の彼女は癖が強い件について

「ここのゲームセンターに来るのも、なんだか久しぶりな気がしますね!」

「う、後輩ちゃんにボコボコに負けたときの古傷が……」

「初心者に大負け喫した幼馴染みに悲しい過去……って、いつまで引きずってんだそれ」

 

 

 行き付けのゲーセン(行き付けと言いつつあんまり行かない)の前で、昔(と言ってもひと月そこら)を思い出しながらあれこれと話す私・同胞・後輩ちゃんの三人。

 他の三人(転校生ちゃん・紡ぎ手ちゃん・ナンパ君)は、なんのこっちゃと蚊帳の外である。

 

 

「馴れ初め……は違うか?まぁ、後輩ちゃんと初めて遊んだのが、ここだったってこと。……その後なにがあったのやら、ツンツンしていた後輩ちゃんは消え、今現在のポジションを確立してしまっていたのです……」

「魔のゲーセンじゃないのここ……」

魔の巣窟だというのか(お、恐ろしすぎます)……」

「……唐突な風評被害警報が発令されてそうだな」

 

 

 ほろり、と懐かしむように思い出を語れば、転校生ちゃんと紡ぎ手ちゃんが互いに体を寄せ合って恐怖に震えていた。同胞の微妙な顔も納得の状況である。

 ……それと、後ろでニコニコしてるのにどう考えても笑ってない後輩ちゃんに関しては、私は見なかったことにするぞー。私知らないのでアバーッ!?

 

 なお、これもまたナンパ君が蚊帳の外……と、言うわけでもなく。

 

 

「あ、いたいた。おーい、こっちっすよー!」

「……やれやれ、君はいつも騒がしいね?僕としては嬉しい限りだけどね。身も蓋もない言い方をすれば、それは君が僕に夢中である、という証拠なんだろうからさ」

「そっちもいつも通りっすね……」

 

 

 彼が手を振る先には、こちらに近寄ってくる一人の人物の姿。

 その人物はニヤリと笑みを浮かべると、彼の隣に立ってなにやら悦に浸っている。

 ナンパ君はそんな相手に若干の辟易が見えるものの、基本的には嬉しそうにしていた。……わりとぞっこんだなこれ?

 

 それにしても……ふーむ。

 ナンパ君のお相手のこの人、男女(だんじょ)どっちの人なんだろう?

 

 床に付きそうなほど長い黒髪を、後頭部のかなり低い位置で二つ結び……カントリースタイルっていうんだっけ?にしているし、その服装も落ち着いた感じの服装かつロングスカートだしで、パッと見は女性かなー、とも思うのだけれど。

 

 話す声はハスキーボイスなので判別がつかないし、顔の作りのほうも中性的な造形なので、カッコいい男性にも綺麗な女性にも見える。

 異性装が普通に普及しているこの世界の常識的に考えると、一見しただけでは正確に判別できる気がしないタイプの人物だった。

 

 ……まぁ見た目そのものとは別に、前回のときのナンパ君が、女装した同胞のほうに猛アピールしてた……ってところがちょっと引っ掛かってねー。なんかこう余計にわからないというか……。

 私が口調戻したら悔しがってた?……うん、それもあってねー、両方イケる人なのかもなー、みたいなところもあるというか。……場合によっては風評被害だなこれ?

 

 そんなことを思いながら二人を見ていたら、何事かをナンパ君と話していた件の人物が、こちらに視線を向けて来ていた。……改めて観察すると、なんか全体的に瞳の中の光が少ないな、この人。

 なんていうのかな、ハイライトがない……みたいな感じ?

 生気がないとまではいかないけど、ちょっと心配になる感じの、そんな瞳の輝いてなさ加減だった。

 

 

「身も蓋もない感想ありがとう」

「……うぇ!!?あばば、口に出てましたかっ?!すみませんすみませんっ!!」

 

 

 そんなことを思っていたら、件の人物から苦笑を返されてしまった。……あかん口に出てるぅ!?

 

 思わず必死に件の人物へ謝り倒す私。

 周りの部活仲間達は、なんだなんだと私達のやり取りを見ているのだった。

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「いや、本当にすみませんでした……」

「いいよいいよ、正直者は好きだからね。身も蓋もない言動というのは、僕の大好物なのさ」

 

 

 あのあと必死に謝りたおしたのだが、この人は全然気にしてないと言っていた。

 その上、本音を隠さない(身も蓋もない)言動は寧ろ好ましいとまで言われてしまった。

 ……ああうん、なんでこの人がナンパ君と付き合ってるのかわかった気がする。嘘とか言わなさそうだもんねあの人……。

 

 

「そうそう、可愛いものだろう?彼は」

「いやまぁわかりやすいなぁ、とは思いましたけど……」

 

 

 相手から同意の言葉を求められて、思わず口ごもる私。……人の彼氏を可愛い、とか言うのってどうなんだろうか?失礼になったりしない?

 誰かそこのあたり教えて……あ、ダメだ。よく考えたら周囲のメンバー、みんな私を中心にして集まった人達だから参考にならないわこれ。恋愛経験ゼロじゃんみんな。

 

 つまり私は恋愛雑魚なお山の大将!……言ってて悲しくなってきたんだけど、どうすればいいかなこれ?

 

 

「ふふっ。いや、君はなかなか難儀な場所に身を置いているようだね?」

「楽しい仲間なんで、辛いとか苦しいとかはないですけどね」

 

 

 不思議さんの言葉に、小さく頭を掻きながら相槌を打つ。

 時々喧嘩めいたこともするけど、別にそれで離れ離れになるわけでもない。

 ……うむ、なんというかアレだね。出会ってからそんなに長いわけでもないけど、気分的には竹馬の友……というか、そんな感じだろうか?

 

 

「なるほど。……取り越し苦労かは微妙なところ、か」

「……?なにか言いました?」

「いや、こっちの話。僕達の描く軌跡は偶然と必然を(あざな)えた、その最果てにこそ見えるもの。……勝手な言葉や杞憂は、それこそ身も蓋もない──というだけさ」

「は、はぁ……?」

 

 

 そんな風に伝えたら、小さい声で何かを言われた気がしたので聞き返したのだけれど。……えっと、なんて?

 というかこの人、話してて思ったけど本当に『不思議さん』としか言いようがないな……。ちょっと過去からの魔の手が伸びてくる感覚があるぞぅ?

 

 

大君よ(先輩)乾きを潤すべき……む(飲み物持ってきました……よ)?」

「…………ふむ?」

 

 

 そうして微妙に頭を痛めていた私の前に、さらなる問題が滑り寄ってきた。

 

 ……おい同胞ぁ、なんでよりによって紡ぎ手ちゃんに持ってこさせたんだ貴様ぁっ!?

 私が内心冷や汗をかいている前で、紡ぎ手ちゃんと不思議さんが見つめ合って……睨み合って?いる。

 いや、これどうなるの?

 方向性が違うけど、どっちも多分アレでしょう?……マジで予想が付かんのですがそれは。

 

 

「──我は綴る者(はじめまして)扉を開き新たなる転地を求むる者なり(突然ですが貴方が好きな作品は)!」

「……そうだね、ここは期待に応えて、この曲を送るとしよう」

 

 

 高らかに告げられた(謎の決めポーズ付きの)紡ぎ手ちゃんの問いに、対する不思議さんは、突然口笛を吹くことで答えとした。……いや、なんで口笛?

 

 ……!あ、まさか!?

 私は大本の曲を聞いたことないけど!

 『好きな作品は?』と問われて、それに『口笛を返す』ことで答えになるもの、なんてそう多くはない!

 

 ……いやなんで知ってるのさ?結構古い作品だよねアレ!?と思わず困惑する私。

 不思議さんが示しているものが私の思っている通りなら、アニメも原作も今の子には伝わらない古さのはずのものだ。

 

 

「おや、知らないのかい?ちょっと前にリメイクされてたんだよ、あれ。リメイクの常として、評判は賛否がわかれるものになってしまったみたいだけどね」

「……ホントだ、再アニメ化してる……」

 

 

 不思議さんの言葉を受けて、スマホでサクッと検索する私。

 ……ホントだ。こっちに転生してからはあんまりアニメとか見てなかったから知らなかったけど、しっかり再アニメ化してるよあの作品……。

 

 いやまぁ、それはいいんだ。そっちより、紡ぎ手ちゃんの反応を気にすべきだろう。

 不思議さんの口笛を聞いた彼女は、しばし目蓋を閉じ。なにかを噛み締めるように黙し立ち尽くしたあと、緩やかに目蓋を開いて破顔し(わらっ)た。

 

 

我等は共に杯を交わせし朋友であったか(お友達を前提に付き合ってください)……!」

「………ええ………?」

 

 

 いや、その、ええ……?彼女の発した言葉に思わず困惑する私。

 ……結婚を前提に、みたいな言い方で友達になろうとしてるんだけどこの子、どういうことなの……?

 横の不思議さんはツボに入ったのか、顔を伏せてめっちゃ肩震わせてるし……。そもそも副音声と発した言葉(の方向性)が微妙に違う!私にどうしろっていうんだこの状況っ!?

 

 

「いやはやなんとも。身も蓋もないというかその逆というか……、面白い子だね、君の友達は」

「ええ、はぁ、まぁ……」

大君、何故そこで目を逸らす(なんだか部長さんに変な子扱いされてる)……?」

 

 

 不思議さんの言葉に思わず目を逸らす私と、珍しくこちらにジトッとした視線を向けてくる紡ぎ手ちゃん。……いや、それはその……ね?

 ぷんすか!とこちらに説明というか訂正というかを求めてくる紡ぎ手ちゃんを(なだ)(すか)しつつ、カウンター横の自販機前あたりにいるはずの、幼馴染み達のほうに視線をちらりと向ける。

 ……よし、そろそろ返ってくる!いい加減このなんとも言えない緊張を打ち破ってくれ同胞!

 

 

「あ、すまんちょっと花を摘みに行ってくる」

「……そこは雉撃ちじゃないのかしら?」

「いやどっちでもいいだろ別に……」

(仲がいいのは構わないんっすけど、これ部外者の俺はどういう反応すればいいんっすかー!?)

 

 

 ど、同胞ぉーっ!?アヤツ反転してお手洗いに行きおった!?

 横のナンパ君を見ろよ、一人だけ女性陣の中に放り込まれてめっちゃ困ってるじゃん!?見知らぬ女子高生に囲まれて若干テンパってんじゃん!?

 

 ……いや、よく考えたらなんでテンパってんのナンパ君?

 君、先週は私ら二人にウェイウェイしながら話しかけてきてたじゃん。今さら転校生ちゃんと後輩ちゃんに囲まれたところで別に困る要素ないじゃん。じゃんじゃん話しかけてきてたじゃんじゃん?

 

 

「ふむ?その先週ナンパしてたって話、詳しく聞かせて貰えないかな。できれば身も蓋もなく赤裸々に」

 

 

 そんな感じのことをひそひそと不思議さんに話してみたら、彼女はとても楽しそうに笑いながら、仔細について話すことを催促してきた。……隣の紡ぎ手ちゃんのジト目ターゲットも、挙動不審なナンパ君に移ったので、これ幸いとヘイトを逸らさせて貰うことにする。

 

 

「ちょ、やめて下さいっす彼女さんっ!!?その人超愉快犯なんっすよぉーっ!?」

「ははは、諦めるんだね君。僕にもナンパしてきたんだから、今さら武勇伝の一つや二つくらい上乗せされたって構わないだろう?」

「わーっ!?」

「おお、ナンパ成功してたんだナンパ君」

「逆に口説き返してあげたけどね。身も蓋もないことに、そっちのほうが嬉しそうだったと言うか……」

「うわーっ!?うわーっ?!うわーっ!!!」

「……隠れネコだったのねこの人」

「つまり主人とペットの関係だったんですね!」

「………………げふっ」

 

 

 周囲からの猛攻に、ついにダウンするナンパ君。

 花の女子高生達に言葉責めされるとかご褒美じゃんやったね。……いやすまん流石に同情する、性癖を衆目に晒されるとかかわいそすぎる……。

 

 同胞が返ってくるまで針の筵だったナンパ君。

 返ってきた同胞に何故疲労困憊なのか、と問われるその姿は、先週のそれとは逆になっていて、思わず苦笑してしまう私なのだった。

 

 

 

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