百合ゲー世界に転生したらなんかちょっと思ってたのと違った件について 作:アークフィア
「転校生ちゃん!私とお友達になりませんか!」
「丁重にお断りするわね」
「
「自分の胸に聞いてみたらいいんじゃないかしら?」
取り付く島もない転校生ちゃんからの拒絶の言葉を受け、思わず血迷って自身の胸に問い掛けてみる私。……哀れなほど薄っぺらな私の胸は、なにも答えてはくれない。
教えてくれ転校生ちゃんのお胸、
いやまぁ?お胸様に聞いて解決するなら、世の中今頃ハッピーまみれで万々歳だろうけども、そうは問屋が卸さないってやつ?
私は自分の
「あら意外ね。そういうの、気にするタイプかと思っていたのだけれど」
「クールな見た目の、涼やかな美少女を目指しておりますので。──流線型のこの
「……これ、微妙に喧嘩を売られていたりするのかしら?」
「売ってるつもりはないですよー?横に並ぶと
……それホントに喧嘩売ってないの?とジト目で見られたけど、そういうのはご褒美以外の何物でもないです。
「まぁ貧と巨云々は若干冗談が混じってますけど、実際横に並ぶとコントラストが良い感じになりそうだなー、とは思ってるわけですよ」
転校生ちゃんに購買横の自販機で売ってる、紙パックのジュースを渡しながら私は言う。
……転校生ちゃんには無難にイチゴオレを渡したが、私は購買・闇のおすすめスポットに陳列された『飲めるモンブラン』を選択した。
私の中の好奇心が抑えきれなかったんだから、仕方ないね!などと宣いながらストローを突き刺して、そのまま中身を一口。
……うわ、ホントに飲めるモンブランだこれ?!
栗じゃなくてモンブランを飲んでるとしか言えないぞこれ?!変に
そんな風に飲み物と格闘している私を、変なものを見る目で観察してくる転校生ちゃん。
やがてスルーを決め込んだらしく、私に話の続きを促してくる。……んー、唯我独尊。
とはいえ、別に難しい話というわけでもない。
……うむ。こうして並べてみると、実に対称的な姿だね私達。
流石、前世のゲームパッケージでは二人並べて描かれてただけはある──というか。
……おっと、視線はちゃんとお互いに向いてたから、前面に謎の三人目が居たりはしないぞ、どこぞの右手も安心だな!
「つまり、並んで立つと華がある……みたいな感じかしら?」
「あ、はい。そんな感じですはい」
当然ながら転校生ちゃんには通じなかったので、素直に頷いておく。
対称的な人物や物体を並べて、その差を強調するというのはよくある技法だ……というのも間違いではない。
……いやまぁ、彼女がメインヒロインなので、隣に並びたいないし並べたい──って面も無くはないのだけれど。
その部分に関しては、ちょっと問題があったりもする。
……まぁ、あれだ。彼女、後輩ちゃんと同じなのである。
具体的には、ゲームでは片言ほわほわ系メインヒロインだったのが、こっちでの彼女はクール&ミステリアスな、ラノベヒロイン系転校生にクラスチェンジしているのである。……だからなんでぇ?!
おっかしいなー?ゲームだと日本語苦手で、舌を噛むのなんてしょっちゅうな萌え……って感じの、守ってあげたい系ヒロインだった気がするんだけどなー?
そんなことを思いながらチラッと視線を向ければ、転校生ちゃんは足を組み、威風堂々とベンチに腰を掛けていて。──ともすれば、できるキャリアウーマン的な雰囲気すら醸し出していた。
その姿からは、ゲームでの小動物的な空気は、微塵も感じられない。
……や、これもこれで良いなとは思うけど。
なにがどうなってこんな女王様ー、とか呼んじゃいそうなカリスマを獲得しちゃったんでしょうね、この人?
「……覚えてないのね」
「……?なにか言いました?」
「別に。仮になにかを喋っていたとしても、耳に届かなかったのならそう重要なことでもないでしょう。──軽く流してくれればいいわ」
「あっはい」
……見詰めていたら、なんか機嫌が目に見えて悪くなったでござる。
うーむ、前世男性ゆえの
いやね?別に性欲云々ってよりは、海外の血が入ると大きくなりやすいのかなー、って思ってたところのが大きいんだけど。
たわわなモノをお持ちな人がいると、どうしても視線がそっちに行ってしまう……というのも間違いじゃないというか。
それが嫌がられるのもわかるんだけど、持たない側からすると、やっぱり気になっちゃうんだよねー。
などと脳内で謎の理論防御を展開しつつ、彼女の胸をチラ見する私。
……あれ、男のチラ見は女のガン見って誰の格言だっけ?
いやでも今の私は女だし?いやしかし、男みたいな見方をしてるのならそれは男の視線とトレードオフなのでは……?いやしかし……?
……うーむこんがらがってきた。
こうなったら一回思考をリセットだ、すなわち転校生ちゃんは胸がおっきい……。
──その時私に電流走る。
待つんだ私。よく考えたら、私以外のヒロイン勢みんな大きかったような……?
一つ学年が下の後輩ちゃんでさえ、私よりも大きかった気がするし。
まだ出会ってないヒロインズにしても、小に区分されるような娘はほとんど居なかったような気がするぞ……?
「──なるほど、私は希少キャラだったというわけか」
「なにを言ってるのかさっぱりわからないけれど。貴方が変な理論の飛躍をした……というのは伝わったわ」
おっと、うっかり独り言が声に出ちゃってたんだぜ☆
呆れたような視線を向けてくる転校生ちゃんに、てへへと苦笑いを返して、ベンチから立ち上がる。
「お話は、もういいのかしら?」
「転校生ちゃんの貴重な時間を浪費しちゃうのも悪いので。んじゃま、一考だけでもよろしく!」
そうして私は、転校生ちゃんに一枚の紙きれを渡して、その場を立ち去るのだった。
……ふっ、こういう時はクールに去る女だぜ私は……。
「………………………」
視線を向ける先で、彼女は威風堂々と先までのふざけた空気を微塵も滲ませずに、目的地へと前進して行った。
……それは、昔に憧れたあの人、そのままの姿で。
だから思わずため息が漏れてしまう。……漏らさずにはいられなかった。
「……居るんでしょう、幼馴染みさん」
「バレてたか」
自販機の影に声を投げてみれば。
案の定そこにいた彼女の幼馴染みである少年が、バツの悪そうな表情を浮かべながら、頭を掻きつつこちら側に進み出てくる。
……過保護と言うか付き合いが良いというか、とにかく彼は昔から変わっていない、らしい。
そこに少しの安堵と、ちょっぴりの嫉妬を感じて思わず
「なんというか、あれだな。俺も最近思い出した口だから偉そうなことは言えないが……全然気付いてないな、アイツ」
「ええ、まぁ……そこは喜ぶべきか悲しむべきか、私もちょっと気持ちの置きどころを迷っているのだけれど」
――
その成功が今の珍妙な関係を導き出したというのだから、私としてもちょっとどうしたらいいのかわからない部分がある……ということは否めない。
それでも。欠片も思い出してくれないのは、酷いのではないか……と思わなくもなかった。
「複雑な乙女心ってやつだな」
「乙女じゃなくても、複雑な思いはするんじゃないかしら?」
「……ごもっとも」
苦笑いと共に彼は肩を竦める。
……本当に彼は昔から変わっていないんだなと、また安堵と嫉妬の感情が押し寄せてきたのでぐっ、とそれを飲み込む。
……わかっている。彼が変わらなかったのは、彼がそれを選んだからで。
私が変わったのも、それを選んだからだということは。
それでも、この感情を抑え込めないのはきっと、
「小さい頃に憧れていた人が、わりと無理してて、本性は結構緩かった件について……っ!」
「あー、うん。幼馴染みとして、すまんと言わせて貰う」
その変化のもとになった人と一緒に居られなかった……という後悔。ただそれだけの話なのだ───。
「あがり症もどもりも、言葉を噛むのだって頑張って直して!常に余裕をもって、優雅にあれるように努力を重ねて!いざ再び日本の地を踏んで見れば、憧れの人の憧れた姿は虚像に近く、どころか私も無理をさせていた側に入っていた、だなんて!……思わず、他人のフリをしてしまうのも、仕方のない話だと思わない?!」
「あー、うん。実際俺も最初はそっちに気付かなかったからな、仕方ない仕方ない」
「でしょう!?」
思わず酒でも飲んでるのか、とちょっと疑ってしまうような転校生の剣幕に、些か押され気味の俺なわけだが。
無関係というわけでもないので、話を途中で打ち切るわけにもいかず、現在ちょっと困っているところだったりする。
転校生である彼女。
名前を聞いた時には思い出せなかったが、それでもなにか引っかかるものを感じたので、自身の記憶を洗い出してみたところ。
──小学校の低学年の頃に、一年間だけ同級生になったハーフの女の子がいたことを思い出した俺は、いやまさかそんなと思いつつも、当時のアルバムを紐解いてみたわけなのだが。
これが大当たりも大当たり、大人しく気の弱そうな金髪碧眼の少女と、その右手と自身の手を繋いで街を歩く、我が幼馴染み(と、その後ろを付いていく俺)の写真が見つかったのである。
十年近い時間経過と、当時と現在の性格の違いから、両者が結びつかなかった俺は。
ちょっと困惑しつつも後日、それとなしに彼女に確認を取ってみたわけなのだが。
「……それを聞いてくるということは、やっぱり私の勘違いじゃなかったのね」
と遠い目をした彼女の姿に、思わず天を仰ぐはめにもなったのだった。
そんなこんなで、アイツの突撃を影から見守るように反対側に隠れていた……というのが、今回の俺の事前状況なわけである。
まぁ、案の定アイツは転校生の正体に一切気付かぬまま、話を終えてしまったわけなのだが。
とはいえそれにも理由がある。
忘れてしまっているのは、別にアイツが薄情者だから……というわけではない。
「……黒歴史?」
「ああ、なんというか……、中学に入る前までのことを、アイツは意識的に思い出さないようにしてるんだよ、『ぐああああー!?あの頃の私浸りすぎーっ!?』とかなんとかで」
「ええ……?」
どうにも小学生の時のあのクール気取りが、彼女にとっては
……今も時々クールぶるだろうに、と言えば「あの時のと今のは違うのー!」と謎の主張を返されたりもしたわけだが。
とはいえ、それはあくまでも彼女の勝手な都合。
転校生が昔のような言動をすれば、一発で思い出してくれるだろう、というのは間違いないだろう。
……が、ことはそう簡単なものでもないらしい。
「今さら昔のように振る舞え、と言っても無理よ。何年私がこの性格で過ごしたと思ってるの?向こうのスクールでの私の仇名、なんだと思う?……『女帝』よ、『女帝』!……今こうして貴方と普通にお喋りできてること自体が、半ば奇跡みたいなものなのよ……」
「そん なに」
嘘も積み重なれば本当になる。
ましてや、本当にしようとして努力して積み上げたものだ。そう安々と崩せるものでもない……ということらしい。
……と、なると、だ。
「新しく関係を構築する、って方向で動いたほうがいいな。幸い、アイツも転校生に対しては、好印象のほうが勝るみたいだし」
「……そう、かしら」
俺の提案に、不安げに瞳を揺らす転校生。
……まぁ、無理もない。
その十年をどう過ごしてきたのか、俺には想像するほかないが。
辛いこと苦しいこと悲しいこと、全て目標のための糧にして、彼女は今の自分を築き上げてきたのだろう。
それを受け入れられるかどうか、というのは、想像以上の恐怖があるはずだ。
ましてやそれは、過去の幼馴染みを理想として磨き上げたものである。……不安が大きくなるのも仕方がない。
とはいえ、最早それは彼女自身の血肉であって、アイツの真似事ではないだろう。
それを視界に入れたからといって、アイツの精神に負担が行くようなことにはならないはずだ。
……というようなことを伝えてやれば、転校生はふっ、と微かな笑みを浮かべていた。
「よく見てるわね、本当に」
「幼馴染みだからな。寧ろ俺としては、そっちがアイツに愛想を尽かさないかのほうが心配だったりするがな。今のアイツは自由奔放って言葉が、それこそ服を着て歩いているようなものだし」
「あら、そこは見識が足りてないわね」
む、突然に元気になったな?
訝しむ俺に、彼女は穏やかな笑みを浮かべたまま、言う。
「彼女とずっと共にいる貴方が、一切変わっていないんですもの。私が好きだった、あの人の一番素敵な部分は変わってないんだ……ってことは、すぐにわかったわ」
「……なるほど、そういう見方もあるのか」
でしょう?と返す彼女は、昔の朗らかな面影を残した、とても可愛らしい笑みを見せていた。
「……ん?いやちょっと待った。なんだか嫌な予感がするぞ」
「え?なにか引っかかることでもあったかしら?」
「……俺が変わってないのはいいことなのか?」
「……?ええ、いいことだと思うけれど?」
「いや違う、そうじゃなくてだな……」
微笑む彼女の雰囲気に、思わず流されそうになってしまったが。
……よくよく考えればなにかがおかしい。なんだ、なにがおかしいんだ……?
「……まさかとは思うが、一つ聞くぞ?」
「ええ、なんでもどうぞ?」
「お前が欲しいのは、アイツだよな?」
「ええ、彼女
「なんだろう、最近似たようなことをどこかで聞いた気がする……」
頭痛がしてきたので思わず額を押さえる俺。……具体的には部室で聞いた気がするな?
部室?と聞き返してきた彼女に、ことのあらましを教えたところ。
彼女はすぐさま渡されていた
……変なことにならなきゃいいが、なんてどこか他人事のような気分で、全部放り投げる俺なのであった。