百合ゲー世界に転生したらなんかちょっと思ってたのと違った件について   作:アークフィア

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百合ゲー世界の観測者?の件について

 ──不思議さん。

 

 ナンパ君に連れられ現れた彼女であり、意味深な言葉を吐くことで私に「今」を認識させた謎の人物。

 

 何故、私が彼女を警戒しているのか。……そんなもの単純である。

 彼女は僕っ娘かつ中二系という、かなり特徴的なキャラクターをしているにも関わらず、原作である「百合ゲー」には影も形もない人なのである。

 

 無論、私はこの世界が偽物であるなどとは思っていない。

 百合ゲー世界そのものだとも、もう思っていない。──けれど、根本的な部分が()()()()()()()()()()()()()

 ……いやまぁ、百合を通り越して同性愛全般が認められてるあたり、完全に外れているように見えるというのもわかるけど──それと同時に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 原作である「百合ゲー」において役割を持っていた人は全て、この世界に実在している。……そもそもそんなに登場人物いなかった、というのは禁句。

 ナンパ君に関してもちょっと除外。……酷い言い種になるけど彼、そこまで特徴的ってわけでもないし。

 

 ──そんな中明らかに、なにかしら普通ではない空気を漂わせている唯一の人物。

 私が、唯一警戒しなければならない人物。

 ……いや、正確には()()()警戒しなければならないわけではないのだ。そう、私が警戒すべきなのは──、

 

 

(彼女が、たまたま濃い人なのか、それともなにかしらの()()を持つ誰かなのか、だ!)

 

 

 ──変な横槍が飛んでこないか、のほうなのだ。

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「……なんで僕はこんなに警戒されているのだろうね?」

「あ、気にしないでやってください。たぶんまた変なことを考えてるだけだと思うんで」

「変なこととはご挨拶だな同胞!私はいつだって真面目だいっ!!」

「……ふたーつ」

「え、ちょ!?なんで今カウントしたの?!」

「なんのカウントですか!?私もやります!ひとーつ(eins)ふたーつ(zwei)みーっつ(drei)!」

おお(ええ)それはまさしく我らが心の故郷(なんでわざわざドイツ語なの)……」

「副音声と実際の内心がかなりズレてないかしらそれ……?」

 

 

 ……おかしいなちょっとシリアスな話だった気がするんだけどなぁ?!

 

 苦笑を浮かべ私達のテーブルの隣りに座った不思議さん。

 そんな彼女に視線を飛ばしていたら、警戒していることが即バレしたあげく、同胞に当て擦られたうえにカウントが進むという災難にあってしまう私。……カウントが進む理由がわからんので空恐ろしいのですがそれは。

 そんなことしてたら楽しいものセンサー全開な鈴莉ちゃんが悪ノリし、飛び出した言語に結花ちゃんが目を……輝かせ?淀ませ?て、最後に朱紅奈さんがツッコミを入れて(しめ)る。……いつものやつですねこれ?

 あとどうでもいいけど「(くるっとばってん)」って漢字なんだね、和製漢字。「(クマみたいなの)」と同じで記号なのかと思ってたよ私。

 

 ……話が永遠にズレていきそうなので軌道修正(閑話休題)

 変な横槍と言うのは、すなわち他の世界と混じってないだろうな?という懸念である。

 

 わりと軽々しくいろんなところで便利設定として使われている転生だけど、一口に転生と言っても結構違いがあったりする。

 『行きて帰りし物語(成長して帰ってくる系)』や『貴種流離譚(所謂追放モノ)』も見方を変えれば転移や転生の枠に入ると言うのだから、余人が思うより転生というものの間口は広いのだ、ということが窺えるだろう。……宗教系の転生とかまで考え始めると、頭が痛くなること請け合いだ。

 

 ただまぁ、そのあたりの仔細は今は関係なくて。──現状では()()()()()と言うことが一番重要だったり。

 間口が広い。それは即ち、視点を広げれば()()()()()()()()()()()()かも知れないのだ、ということ。──自分という転生者の存在を肯定したとき、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということを問うもの。

 

 悪魔の証明(不在証明)は端から問題定義し(疑う種が)なければ起こり得ないものである。

 ──逆に言えば、一つでも実例()があれば疑うこと自体は──それが実際に起こるかどうかは別として──幾らでもできる、ということでもある。

 

 知識とは不可逆だ。知ってしまったことを意図的に忘れることはできない。

 知ってしまった以上、経験による疑いは常に付いて回る(深淵は常にこちらを見返している)

 自身を根拠(不思議なモノ)として示すことができる以上、自分以外の不思議なモノの存在確率は、常に零を越えてしまう(起こりうるモノとして付き纏う)のだ。

 

 ……まぁつまり、なにが言いたいのかというと。

 なんか突然にバトル展開になったり、本格的に人死が出て近くに名探偵がいたり、実は盛大な純愛モノからの寝取られ物語だったりしないだろうな──という懸念でいっぱいだぞ今の私、ということである。

 

 いやね、よく考えてみて貰いたいわけですよ。

 確かに、確かに!よく似た人であって別人なんだなって認識しましたよ私!みんなしてゲームとは違う挙動してるんだから作り物と(ちゃ)うわこれって確信はしましたよ?!

 

 けどねぇ?美人で個性的、さらにはこっちに重要な助言めいたことまでしてくる謎の人物、なんてものを見せられたらね。……疑うでしょこんなの!

 なんにもないたまたまちょっと周囲から浮いてるだけの人ですよー、と言われて「そっかー、キミはちょっと目立つだけの一般人(ふれんず)なんだねー」って納得する転生者がいたら、私はそいつの頬を引っ叩いて「目を覚ませお前の世界が侵略(クロスオーバー)されてるぞ!?」って怒鳴りますよ、危機管理能力どっかに置いてきたのか貴様っ!ってなりますよマジで。

 

 ……いやね、現状目の前にいないものを疑って備えてる、とかだったら私もそんなの杞憂杞憂って笑うかも知れないけど。

 いるじゃん、現状変な立ち位置(ポジション)にいる、変な異邦人(要注意人物)

 ……怪しい、具体的になにが怪しいのかと聞かれると現状「怪しいから怪しい」としか言えないけど、とにかく怪しい。……怪しすぎて(あや)になってないかこれ?

 

 

「ふむ、どうやら彼女は僕の存在がお気に召さないようだ。身も蓋もなく嫌われているようだし、さっさと御暇させて──」

「わーっ!?そそそそそそういえば自己紹介がまだでしたのことですわね私東山桐依でゴザイマスのことよ!そちらのお名前はっ!?」

「お、おおっ?」

 

 

 そんな感じで怪しみすぎたのが悪かったのか、スッと帰ろうとする不思議さん。

 ……危ねえっ!?正体探ろうとしてるのにさっくり帰られたら、こっちも堪ったもんじゃねーですよ!?

 慎重に慎重に、オーケービークール(落ち着け)ビークール(落ち着け)。……なんだ同胞その「こいつまた訳わかんねぇこと考えてんだろうな」みたいな微妙な笑みは?

 ……はっ?!いかんいかん落ち着いて焦らずにだ、東山桐依は慌てない、いつもクールに素敵に無敵に勇気だ!……なんだっけこのフレーズ?

 

 

「いい加減戻ってこい」

「あ痛ぁっ!?」

 

 

 四十五度っ!?

 ……幼馴染みからのチョップを受けて、ようやく混乱状態から戻ってきた私。

 気を取り直して不思議さんのほうに向き直れば、彼女は小さく苦笑を浮かべ、

 

 

「なるほど、余計な気を使った甲斐はあった、と見るべきかなこれは?」

「──、その節は、どうも」

 

 

 返ってきた言葉に、少なくともこちらの内情に対して、あの時点でなにかしらの確信があったのだろう……ということを悟る。意味深、ではなく実際に意味のある言葉だった、と。

 

 

「ご丁寧な挨拶も頂いたことだし、こちらも自己紹介を。僕の名前は柳瀬(やなせ) (しおり)。見ての通り、極々普通のただの大学生さ。──身も蓋もないことに、ね?」

 

 

 こちらに微笑を向けながら告げる不思議さん──もとい柳瀬さん。

 自身を普通と言い張る彼女に、私の警戒心は自然と高まっていくのだった──。

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「あ、聞いたことあります!近くの大学に探偵さんがいて、その人の名前が柳瀬、だって言うお話!」

 

 

 そして高まっていた警戒心は鈴莉ちゃんの言葉で明後日の方にかっ飛んでいった。

 ……今探偵って言いましたこの子っ!?よよよよ選りにも選って探偵だっていいましたかこの子?!

 

 

「おや、知っている人がいたとは。……まぁ、正確には学部のみんなの相談事を(面白がって)受けていたら、いつの間にか探偵みたいって噂されるようになっていたと、いうだけの話なんだけどね?」

 

 

 よくあるだろう、物静かなボーイッシュ少女はなにかしら不思議な面がある、っていう風刺(カリカチュア)

 と柳瀬さんは言うのだが……、えー、本当にござるかぁ?実はホントに不思議能力とか不思議経歴とか持ってて、日夜迷宮入りしそうな事件を解決しているとかあるのではござらんかぁー?

 ……みたいなものが籠もった視線を向けていれば、柳瀬さんはまた意味深に微笑んで。

 

 

「ないない。僕としてはそういうのも見てみたいところだけど、身も蓋もないことに受ける相談は大概が授業か恋愛か失せ物か……って感じでね。君との会話が一番刺激的だったくらい、そういうモノとは縁遠い大学生活なのさ」

「ふむむなるほど。……んん?」

 

 

 ……なんか違和感があるような、ないような?

 柳瀬さんの台詞になにか見逃してはいけないものがあったような気がしたのだけれど、それについて考える前に、鈴莉ちゃんが元気よく柳瀬さんに話しかけたことで思考がそっちに引っ張られる。

 

 

「と、いうことは事件をズバッと解決!……みたいなことはしていないんですか?」

「できたら面白いんだけどね。最近はもっぱら秋則(あきのり)君をからかうことが楽しみになっているよ」

「……ああ、あのときの彼ね」

「そうそう」

 

 

 話題はナンパ君についてのものに移行する。……聞く限り、順調に交際を続けているらしい。

 それにしては、今日は彼の姿が見えないけれども……?

 

 

「補習に捕まってるよ、彼なら。身も蓋もない言い方になるけど、彼あんまり要領のいい方ではないからさ」

「ああ………」

 

 

 そんな疑問は柳瀬さんの補足で霧散する。……なるほど学期末(夏休み前)……。

 折角できた彼女と夏に遊べないなんて嫌だ、みたいに必死になって補習に臨んでいるのだろう。お労しやナンパ君……。

 

 

「真面目に授業を受けていなかったツケが回ってきているだけだから、同情の余地はないけどね?まぁ三日もすれば補習も終わるだろうし、そこからは自由に動けるだろうさ」

「なるほど。……ふむ」

 

 

 うーむ、探偵、探偵かぁ……。

 彼女の肩書を知り、どうしたものかと唸る私。……正体を探るのにいい方法……あるけど乗ってくるかなぁ……?

 そうして悩む私……の内心を知ってか知らずか、鈴莉ちゃんがとある提案を投げかける。

 

 

「そういえば、柳瀬さんは失せ物探しの相談を受けてるんですよね?」

「ん?ああ、そうだね。身も蓋もない自慢になるけど、意外と発見率は高い方だと自負しているよ」

「じゃあ、ちょっとお願いがあるんです!」

「?お願い?」

 

 

 私達がこれから遊びに行こうとしている無人島。

 ──実はそこには財宝伝説が存在しているので、それを探す手伝いをして欲しいんです、と。

 

 

 ……ん?まさかの宝探しものなの今回?

 

 




なんやかんやで30日毎日投稿していたみたいでちょっと驚く今日この頃。
どこまで続くかと言った感じではありますが、お付き合い頂けると幸いです。
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