百合ゲー世界に転生したらなんかちょっと思ってたのと違った件について   作:アークフィア

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百合ゲー世界で昼食・虫取り・探りあいの件について

「釣った魚を豪快に焚き火で焼くのって、結構サバイバル感あるよね」

「まぁ、昼間にあんまり凝ったものを作るのもあれだしな」

 

 

 食べ終わった後の片付けをみんなで行いつつ、あれこれと話す私達。

 

 お昼のメニューは野草を和えたパスタと、豪快に塩だけで焼いた海魚。

 釣った魚は早々に締めておいたので、夕食は夕食でなにかしらの料理に使われることだろう。野草のほうも、結構量を取ってきていたようなので、まだまだ活用されるはずだ。

 ……基本的にはどっちもフリットかなぁ?揚げるのって楽でいいよね、調理的にも衛生的にも。

 

 果物のほうはイチジクが見付かったみたいで、そちらが幾つか。

 もう少し時期が早かったら、ビワやアンズなんかも見付かるらしいのだけれど、今回は時期的に外れていたので収穫はなし。

 ……自然に生えているというよりは、以前住人達が育てていたものが手入れされないまま自然に戻った、と言った感じらしい。

 なので時期によっては、さくらんぼだとかアケビだとかも取れるようだ。

 

 その他キノコも幾つか取れたみたいだけど──私には違いがよくわからん。そもそもキノコって秋が旬なのでは?

 

 

「夏が旬、というキノコもあるよ──というか、基本的には天然物かつ日本で取れて夏が旬、というのはキクラゲくらいしかないけどね」

「ほへー」

 

 

 確かに、取ってきたキノコには、なんか茶色くてぷよぷよしたやつしかないような?

 

 キクラゲは、中華料理なんかでよく使われている黒くてコリコリした食感のキノコである。……というのは、正確にはちょっと違うらしい。あれ、大体はアラゲキクラゲという近縁種なのだそうだ。

 旬のきくらげ(一度も乾燥させていないことから『生きくらげ』なんて風に呼ぶらしい)は、ぷるぷるとしていてコリコリした感じではなく、歯触りも柔らかくてキノコの香りが強めなのだとか。実際に食べ比べると、ほぼ別物だなともなるらしい。

 

 

「昆虫食に抵抗がないなら、カブトムシ辺りはわりとイケるらしいけどね」

「……アレを食べるのは、ちょっとどころじゃない勇気がいるなぁ」

 

 

 次いで飛び出したのは昆虫食。

 毒虫だとかでなければ、大概の昆虫は加熱することで食べられる、らしい。セミとかイナゴとかも人気なのだとか。

 ……いやまぁ、そこまで追い詰められてるわけでもなし、わざわざ好んで食べたいとは思わないけど。……ほら、その、一応女の子ですので私。

 

 

「都合のいいときだけ女性面を押し出していくスタイル」

「やかましい、捕まえるのはまだしも食べるのは専門外じゃいっ」

「いやその、捕まえるのもちょっと……」

「右に」

「同じね」

「……むぅ、カッコいいのにクワガタとか……」

 

 

 食べるのも無理だけど触るのも無理ですよ、と他の女性陣からの訴え。

 柳瀬さんは平気そうなので私達が変、というだけなのかもしれない。……いや私は中身が中身()だから、柳瀬さんが殊更変なんだなこれ?

 

 

「よし、行きましょう柳瀬先輩!私、クワガタゲットしたい!」

「んんん、なんでそんなにクワガタに拘っているのかはよく分からないけど。……まぁ、森の調査も踏まえて、同行させて貰おうかな」

「ん、じゃあ俺もついていくか」

「では私達は留守番を!焚き火用の枯れ枝とか集めて待ってますね!」

 

 

 よし、ならば虫平気組で森林探検だ!

 ってな感じで声を上げると、柳瀬先輩は小さく首を捻りつつも了承の意を示してくれた。……この時点で、引率的な意味で先生の居残りが決定し、それに合わせるように朱紅奈さんと鈴莉ちゃんが不参加を表明。

 幼馴染みは唯一の男性としてこっちに参加を決めたため、三人での行動することが決まった──と思ったら。

 

 

我も、我も同行せり(わ、私も行きます)!」

「!?」

 

 

 なんと、結花ちゃんがこっちへの参加を表明。

 ……おお、結花ちゃんってば虫とか大丈夫なんだ?

 そう問い掛けたら、彼女は目をキラキラと輝かせて、ぶんぶんと首を縦に振っていた。……あらやだ、これ私よりテンション高くなーい?

 

 なんだか意外な面を見たような気分になりつつ、私達は留守番組に別れを告げ、森の中へ悠然と進んでいくのだった。

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「……見る限りは野生動物の痕跡はない、か」

「とりあえず鳥しか飛んでないですねー。お、カブトムシみっけ……って高過ぎて届かないや」

 

 

 山の中をうろちょろしながら、木の下のほうを観察したり、上のほうに視線を向けて、樹液に虫が集まっているのを発見したり。

 ……ふむ。柳瀬さんの痕跡探しは、野生動物対策もあるけれど。同時に、宝探しのためのものでもある。……ちょっと手伝う、くらいはしたほうがいいのだろうか?

 

 

「まぁ、あるかも?みたいな感じの──身も蓋もないことを言えば、眉唾レベルの信憑性しかない話だからね、見付かるかどうかは正直五分もいかないと思うよ」

「むぅ、五分もないと。……それわりと割に合わないのでは?」

「別に報酬を受け取って依頼された、というわけでもないしね。彼がこちらに期待しているのは、引率者としての役割の方だし。そこまで気負うものでもないさ」

 

 

 そんな感じに手伝いましょうか?みたいなことを遠回しに聞いたのだけれど、返ってきたのはそもそもそこまで真面目に探しているわけではないよ、との答え。……意外と緩いなこの人。

 

 

見よ同盟者(先輩先輩)黒銀の至宝、我等を座して待てり(向こうの方、クヌギがありますよ)

「お、おう。……すっごい元気だな今日の在原は」

 

 

 ちょっと離れた位置では、クヌギの木を見付けた結花ちゃんが、同胞の手を引いてそちらへと駆け出す姿が見える。

 彼女達はクヌギの木に集まった昆虫達に夢中で、しばらくこちらに意識を向けてくることもなさそうだった。

 

 

「おや、お誂え向きに、ということかな?」

「……気付いていたんですか?」

 

 

 こちらの言葉に彼女はまぁ、なんとなくね?と微笑を返してくる。……話す機会を窺っていた、というのは察せられていたわけか。通りで話が早いと思っていたが……。

 

 

「クワガタ云々も、その為の方便だろう?」

「あ、いえ。そこはわりと本気です。この島オオクワガタ絶対居るんで、絶対見付ける気でいるので」

「……あ、ああ、うん?」

 

 

 彼女はクワガタ云々をみんなから離れるための方便だと思っていたようだ。……ふふ、そこは見誤りましたね先輩!クワガタ捕獲大作戦に関しては本気だよ!野生のオオクワとか見たいに決まってんでしょ?!

 ふふふ、事前に鈴莉ちゃんのお兄さんから、この島にオオクワが居ることは確認済み!

 持ち帰る気は流石にないけど、見付けたら手に乗っけて写真くらいは撮るんだ……♪

 

 って、違う違う。そういうことはとりあえず置いといて。

 

 

「クワガタはまぁあとにして。……私がなにを聞きたいのか、わかりますか?探偵さん」

「───そうだね。的確な助言をされた、と君は思っているんだろう」

 

 

 真面目な空気に戻って、疑問を一つ。

 ──私は、彼女がなにかしらの超能力でも持っているのではないか、と疑っている。

 

 原作にはそういうのは──一部を除いて存在していなかったし、その一部に関しても『少し不思議(SF)』の範疇に収まるものでしかなかった。

 けれど、彼女はその原作の()から現れた存在である。──なにか常道から外れたモノを持っていたとしても、おかしくはない。

 

 

「アレは確かに助言だったよ。今まで受けたことのある相談の一つに、君と同じように不安定な精神状態を抱えた依頼主が居たことがあってね。──中身と外身が合っていない時にすべきことは、原則似たようなものさ」

 

 

 そう疑う私に返ってきた答えは、性別不合──大昔には性同一性障害と呼ばれていた、心と体の性が噛み合っていない人間に出会ったことがあったから、というものだった。

 ……まぁ、確かに。私の中身は男寄りで、その外見は美少女。噛み合っていないと言うのはまぁ、間違いではない。

 

 

「僕の方を見て、その服装に疑問を抱いているように見えたからね。()という一人称と、スカートを履いているという事実が、どうにも受け止め切れていないような感じだったから」

「……まぁ、そうですね。男性を感じさせる部分、女性を感じさせる部分。その両方を受けて、貴方が中性的な人だと思っていました。……よくよく思い返すと、あの人に対して向けていた仕草とかは、普通に女性的なものでしたけれど」

「あれ、バレてた?……可愛い女の子アピールすると喜ぶんだよね、彼」

 

 

 そのあとちょっと男の子っぽくすると、もっと喜ぶんだけど。と悪戯っぽく笑う柳瀬先輩。

 ……んんん、なんかちょっと知ってはいけないことを聞いてしまった気がするけど、ナンパ君の名誉のために聞き流そう。決して「やっぱり同胞のが好みだったんじゃ?」とか思ってないぞ、うん。

 

 

「後はまぁ、他の人への呼び方も不可解ではあったかな。……決して名を呼ばず、記号めいた呼び方をする君と、それに極力合わせるように話を進めていた周囲。──あの時君は、僕の事を名詞で呼ぶことは一切無かった。それは恐らく、あの時の僕が、君にとっては単なる部外者だったからだろう。意識してか意識せずにかはわからないけれど、やんわりとした拒絶感があったことは薄々感じ取れたさ」

 

 

 次いで返ってくるのは、ゲーセンでの一連の流れの話。

 ……心の中では不思議さん呼ばわりしていたけれど、確かにそれを口に出した覚えはない。

 それを口にしたのは、問題が解決したあと。

 水着を買いに出掛けたあの日の百貨店で、再度顔を見ることになった時が初めてだった。

 

 

「少し見誤った部分があるとすれば、君の()()が性別不合では()()()()ことくらいかな」

「──、どうして、そう思ったので?」

 

 

 小さく苦笑する彼女に、僅かに肩が強張る。

 みんなに説明はしてみたものの、どうにも理解に差があるような気がしていた。

 ……それを彼女は、わかっているように口を開いた。ゆえに、私は密かに警戒心を上げる。

 

 

「そもそもの話、外と中がずれているという認識自体が間違っていることに気付いたのさ。……性別不合の場合、原則的にはどちらかに性の認識を寄せるように動くものだ。本人はどちらかの性に対して不快感・ないし不自由感を覚えているものだからね」

 

 

 彼女は語る。

 一般的に、自身の性別に対してなにかしらの違和感を持つもの、それを性別不合や性別違和と呼ぶ。

 ……のだが、私に関しては不合も違和も微妙に噛み合わないだろうと気付いたのだとか。

 

 ──男であることにも、女であることにも別に不自由感を感じているようではない。寧ろ、男性的な思考を保ったまま、女性的な振る舞いを楽しんでいるようにも思えたのだと。

 

 

「それは、どちらかと言えば第三の性(Xジェンダー)と呼ばれるものだろう。その中でも両性という分類に入るものだ。──男でも女でもある、と言うね」

「なる、ほど?」

 

 

 ……内面的には男性を自認してはいるけれども、美少女としてお洒落したり甘いもの食べたりするのも、私は普通に好きである。

 ──そうして男女の両方を好きに楽しんでいる私は、確かに両性的であると言えるのかも知れない。

 

 

「──どうしてそうなったのかは知らないけれど。ある意味、僕は君の先行きが楽しみでならないのさ」

「それは、どういう──」

「おーい、こっちクワガタめっちゃ居るぞー」

「なんだと同胞!待ってろすぐ行くぜひゃっはーっ!!」

 

 

 真意を問い質そうとして、同胞からのクワガタ発見報告が耳に入って全部すっぽ抜ける。

 待ってろオオクワ!私はお前に会うためにここに来たんだー!!

 

 

──その愛は無償にして区別なきもの。人の身では辿り着けぬ筈のもの。真に区別なき()()に一番近いのは──さて?

「……?柳瀬先輩、早く行きましょうよ!オオクワが!待ってるんですよ!ハリー!」

「はいはい」

 

 

 何事かを呟いていた柳瀬さんを急かし、同胞達の元へ向かう。

 

 ……なんか、変な期待されてないかな?なんて疑問は、一先ず後回しにする私なのだった。……深掘りするのが怖い話になっている気がしてきたとも言う。

 

 

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