百合ゲー世界に転生したらなんかちょっと思ってたのと違った件について   作:アークフィア

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百合ゲー世界で彼女が水着に着替えたら、の件について

「……うーむ、寝れぬ」

 

 

 用意したテントは三つ、私達の総人数は七人。

 ……男子が一人しか居ないから、必然的に同胞が一人でテントを使い、他の六人は適当に三人に別れて入っている、わけなのだが。

 

 

「……んー、なんというか、微妙に目が冴えてるというか」

 

 

 明日も早いので、さっさと寝た方がいいのだが。

 こう、なんか、こう。……うん。

 仕方がないので、眠っている鈴莉ちゃんと結花ちゃんを起こさないようにテントの外に出て、焚き火の番をしている同胞の元へ。

 

 

「……なんだ、どうした桐依?交代にはまだ早いぞ」

「いやね、ちょっと目が冴えちゃってさ。柳瀬さんは?」

「あの人なら、砂浜でちょっと星を見てくるって言ってたぞ」

「……うーん、唯我独尊……」

 

 

 奔放な柳瀬さんの行動に小さく苦笑し、同胞の隣に腰掛ける。

 ──パチパチと爆ぜる火の粉を眺め、しばしの無言の時間を過ごす。……別に、不快な静寂ではないけれど。

 なにか、話したりはしないのか、と隣の幼馴染みに目配せ。

 ……なんかすっごい渋い顔された。なしてや、可愛い幼馴染み兼恋人が横に座っとるというのに、なんでお主はそんな渋い顔なんじゃい!?

 

 

「いや、別に改まって話すようなこともないだろう?……それとも、今ここで口説かれたりしたいのか?」

「夜会話とな?……好感度はまぁ、足りてるだろうけどさ」

 

 

 適当な軽口を投げ合い、どちらからともなく笑い合う。

 ……ん、最近はちょっと距離感測りかねてたところがあったけど。……やっぱり、こうやって軽口を叩き合うのも楽しいな。

 

 

「……ん、元気になったみたいでなによりだ」

「いや、別に気落ちとかしてなかったよ?……ただまぁ、ちょっと気になることがあるからそわそわしてるというか」

 

 

 柳瀬さんが何者なのか、という調査は、うまく進んでいるとは言いがたい。……今のところは、本当にただの一般人説が優勢。

 ……危ない宗教団体の教団員がその次点につけているあたり、正直なんとも言えない感じだ。

 

 

「危ない宗教団体?」

「男と女、両方の感性を持つ私は、いずれ男女を超越した愛に目覚めるかもしれない……みたいなこと言っててさ、あの人。……ちょーっと買い被られ過ぎているというか、空恐ろしいというか……」

「……いや、言われてみれば確かに、そこに結び付くのはわからなくもないな」

「……あれ?」

 

 

 こちらの説明に、幾らかの納得を交えて頷く幼馴染み。

 ……えー、まさか同胞もそっち系……?

 そんな私の困惑を感じ取ったのか、彼は小さく苦笑を返してくる。

 

 

「まぁ、小学校の道徳で話されるような内容だから、お前が覚えてないのはある意味当たり前なんだけどな」

「しょう、がく?……う、頭が……!」

「へいへい」

 

 

 ……なんかすっごい雑じゃない?同胞の私への対応。

 むぅ、と唸る私と、苦笑を普通の微笑みに変えながら、焚き火に枝を放り入れる同胞。

 

 

「男性・女性、異性・同性。違いによって区別せず、汝己の愛するものを愛せ。──相手と違うということは、どうしても区別や差別を生むから。そういうものに左右されず、自分が愛したいと思った人を愛しなさい──って事を習うんだよ」

「へぇー。……で、それが柳瀬さんの発言とどう繋がるの?」

「男と女という区分上では、そのどちらにも属するお前は()()()()()()()()()だろ?」

「……なる、ほど?」

()()()()()()()()()()()という分、どっちも持っている人ってのは、他の人よりも愛というものの考え方において、他の人より先の位置にいる──っていう風に見ることもできるわけだ」

 

 

 ……ふむ、あんまり考えたことのない話だな?

 そのまま、同胞に話の続きを促す。 

 

 

「ここで注意すべきは、この理論においては愛というものの考え方において、一番先に立っているのは『全性愛者』になるってことと、そもそも愛というものには上下が存在しないので、一番前に居るからといって凄いとも言い難い、ってこと」

「……あー、性別の区分なく愛せる『全性愛者』の考え方が理想に近いけど、別に理想に至らずとも愛することは素晴らしい、的な?」

「そういうことだな。……お前はまぁ、『両性愛者』くらいか?」

「……別に同胞以外の男性に興味はないぞ」

 

 

 ……この発言、遠回しに惚気ているような気がしないでもないな?

 そんなこっちの心情は露知らず、同胞は「まぁ、だからあの人のは幾分買い被りすぎってのはあるわな」と苦笑を溢していた。

 

 ……話も終わって、また沈黙。

 焚き火の火を眺めていると、流石に眠気が襲ってきた。……ん、戻ってちゃんと寝ようかな……。

 

 

「ん、戻るのか?」

「あれこれ考えてたら、ちょっと眠気が……うん、いい寝物語だったってやつ」

「……明日になったら忘れてそうだなお前」

「ははは。……んじゃま、次の交代までおやすみー」

「はいはいおやすみおやすみ」

 

 

 同胞に手を振って、自身のテントに戻る。

 寝ている二人を起こさないように寝床に戻って、体を横にする。

 ……愛、愛ねぇ……?

 

 

「恋愛初心者には、難しいやね」

 

 

 ぽつりと呟いて、私は目蓋を閉じた。

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

 朝起きて!仕掛け確認して!中に居るのがカナブンばっかな事に落胆して!

 仕方ないから中身を海にシューっ!寄ってきた魚を釣り上げて蝶、エキサイティング!!

 

 

「朝からテンションたけーなお前」

「わざわざ仕掛けまで用意したのに、中にオオクワが居ないのが悪いんじゃいうわーん!」

 

 

 釣り上げた魚達を手早く締めながら、なんで居ないんだよオオクワ!と慟哭する私。……近くの同胞は呆れ顔である。

 そのまままた釣った魚を焚き火で焼いて、みんなで食べた後。

 

 

「ふははははっ!我が世の春が来たぁーっ!!」

「朝のあれからさらにテンション上がるのか……」

 

 

 横でなにやらぶつくさ言ってる同胞はスルー!

 何せ、遂におまちかねの!水着回ですよみなさん!

 

 いやー、まさかこんな日が来るなんてねー。泳ぐの得意ではない私だけども、みんなの水着姿が見れるというのなら水着に着替えるのも悪くはない!

 

 

「まぁ、こうして改めて見ると、男性水着ってバリエーションないなぁ、ってなるわけだけども」

「……そりゃ、下に履く以外ないからな」

 

 

 普通のズボンタイプの海パンを履いた同胞が、こちらに胡乱げな視線を向けてくる。……むぅ、この男意外と引き締まった体つきをしている。意外と筋トレとかしてたりするんだろうか?

 

 

「ムキムキは嫌いじゃないけど好きでもないから、同胞には細マッチョを維持して貰いたいですね」

「いや、突然なんなんだよその解説口調」

 

 

 気分だよ気分!

 さらに怪訝な視線を向けてくる同胞をスルー。

 そんな私も今は水着姿。オーソドックスな白いビキニを着た私は、現在胸を張って海を眺めている最中だ。

 

 

「……いや、なんでそんな仁王立ちみたいなことに?」

「細いなら反れ、丸いなら丸まれという名言を知らんのか同胞。スレンダーならば自信を持って胸を張るのが一番いいんだぞぅ?」

 

 

 全体的な凹凸が少ないからこそ、その数少ない凹凸を目立たせることで一種のフェティシズムを刺激してうんたらかんたら。

 ……ん?だからか?

 

 

「もしかして同胞、悩殺された?悩殺されちゃった?私のナイスバデーに?いやー、そりゃ悪いことをした!」

 

 

 いやはやなるほどなるほど!同胞だって健全な男子だもんな、そりゃ仕方ない仕方ない!

 ……的な事を言いながら、同胞の周りをくるくる回る私。

 ねぇねぇどんな気持ち?彼女が自分を悩殺しようとしてくるのってどんな気持ち?

 

 

「──悩殺された、って言って欲しいのか?」

「どんな気持──なんて?」

 

 

 右手を捕まれ、動きを止められる。

 ……あれ、もしかして同胞怒ってらっしゃる?

 

 

「悩殺された、って言ったら。──桐依は、どうするつもりなんだ?」

「え?あ、いや、本気にされても困るというか、なんというかですね?」

 

 

 やっべ引き際を見誤った!?

 そのまま抱き寄せるように腰に手を回されて、逃げようにも逃げられない状態にされる私。

 ……そのままニヤニヤ笑いでこっちをからかってくる同胞に、今度は私がタジタジになるはめに。

 

 

「なぁ、答えろよ桐依?どうして欲しかったんだ?」

とととととりあえず離してください……謝るんで……超謝るんで……

「……はぁ。慣れないな、お前も」

「っ、やっぱりわざとかきさまーっ!!さっさと離せーっ!」

 

 

 案の定こっちをからかってたよこの極悪幼馴染み!

 ……どの口がそれを言うんだって言われたので小さく縮こまりつつ、離して貰った私はちょっと同胞と距離を取る。……いや、その、流石にちょっと近くに居るのは心臓に悪いというか……。

 

 

「……俺だって恥ずかしいっての」

「……っ、じ、じゃあやらなきゃいいじゃんかっ」

「さっきのは、どう考えてもお前が悪いだろ」

「ぬ、ぬぐぐぐ……」

「おや?おやおやおや?イチャイチャしてますね!イチャイチャしちゃってますねお二方!」

「ぎゃあっ!?だからなんで鈴莉ちゃんは出現の仕方が基本突飛なのさ?!」

「栗花落さんの隠行が凄いというよりは、貴方達がわりと周囲への注意が散漫になりやすいというほうが正しいのだと思うのだけれど」

 

 

 半ば意地で睨み合うように対峙していた私達のちょうど中心部から、突然鈴莉ちゃんが飛び出して二人してビビる。……同胞は声は出してなかったけど、思いっきりびくってしてたから間違いない。

 ……って、なんと?

 

 

「ふふふ、どうですか先輩!あえてのスクール水着、しかも白ですよ!」

「うわぁ、うわぁ、わりと初めて見たっていうか現存してたんだこれ!?あと犯罪臭ぱねぇ!?」

 

 

 鈴莉ちゃんの水着はまさかの白スク!

 ご丁寧に胸元に『りんり』って書かれたワッペンまでついてるし、凄いと言う言葉しか出てこねぇ……。

 というか、でけぇ。何がとは言わないけど、でけぇ。

 ……名前が『りんり』って読めないくらいに広がってるのは、もはや末恐ろしくすらあるよこれ。

 

 

「……まぁ、そっちに比べたら私は普通よね」

「ベアトップのハイレグワンピース水着を自然に着こなせる人は日本では普通じゃないです」

「……桐依、顔、顔。真顔過ぎて凪みたいになってるぞ」

 

 

 おっと余りのゴージャスさに表情筋が死んでたぜ。

 隣に並ぶ朱紅奈さんは、そのメリハリのあるボディを生かしたベアトップ(肩出し)のハイレグワンピースを華麗に着こなしていた。……金の髪と赤い水着、そしてワンポイントとして水着を走る黒い線は、彼女のカッコ良さをも引き出しているかのよう。うーん、ナイスバデー……。

 

 

大君!揺蕩う魂に導かれ(部長さん!泳ぎましょう)我もまた装いを一新したぞ(魚とかタコとか色々見たいです)!」

「……慌てなくても……海は……逃げないわよ……」

「元気だねぇ。僕はあんまり調子が乗らないなぁ」

「お、おおぅ?」

 

 

 最後に出てきた三人。

 薄い水色のフリル付きワンピースに身を包んだ結花ちゃんと、黒いビキニにこれまた黒いパレオを腰に巻いた先生のペアは、なんとなく親子感があってちょっとん?ってなったが、それより問題なのはその横、柳瀬先輩だ。

 ……いや、マジで言ってるんで?

 

 

「しゅ、囚人服……」

「いや、彼も居ないのに張り切るのも違うかな、と思ってね」

 

 

 ちょっと笑いを取りに言ってみたよ、という彼女の姿は、まさかの囚人風の横ストライプ入り水着(手足までしっかり覆うタイプ)だった。

 ……いや、笑いっていうか逆に笑えねぇですよそれ?!

 

 はははと笑う柳瀬先輩に、やっぱりこの人やベー人だという思いを募らせる私達なのだった。

 

 

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