百合ゲー世界に転生したらなんかちょっと思ってたのと違った件について   作:アークフィア

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百合ゲー世界でも洞窟は寒い件について

「うーむ、綺麗な鍾乳洞だ」

「それとちょっと寒いなここ……洞窟は常に気温が変わらないから、夏場だと寒く感じるんだっけか?」

「そういう風に聞くねぇ」

 

 

 洞窟の中というのは、年中気温が変わらないものらしい。

 なので夏場は外よりも気温が低いので涼しく、冬場は外よりも気温が高いので温かく感じる……のだとか。

 そんな蘊蓄を語りつつ、洞窟を奥へ奥へと進んでいく私達。

 時々天井に穴が空いているため、中は薄暗い程度。

 ただこの洞窟、それなりに長いようで、かれこれ五分は歩いているような気がする。

 

 

「だからちょっと休憩!流石に足痛いってばさ!」

「ああ、ビーチサンダルのまんま来ちゃったしねぇ」

 

 

 洞窟内の岩場に腰を掛けて休んでいると、柳瀬さんが苦笑混じりに声を掛けてきた。

 ……洞窟を見付けて上がったテンションのまま探検に乗り出してきたため、私達はみんなサンダルだとか、そういう長距離を歩くのに向いてない靴を履いている。……余計疲れやすくなっている、というのは勘違いではないだろう。

 

 

「まぁ、五分も歩いていると、流石に引き返す気にもならないけれど」

「終わり目掛けてまっしぐら、というわけですね!」

疲労と泣く子には勝てぬがな(それも限度があるよー)

 

 

 近くでは、鈴莉ちゃん達がわやこやと会話を続けている。

 

 景色そのものは綺麗だから、歩くことに飽きたりはしない……というのは救いかなーと思いつつ、どこまで続いてるんだこれ、という部分もそろそろ気になってくる。

 

 この島の大きさは、確か東京ドーム四個分。

 面積に直すとおおよそ二十万平方メートルだ。

 確か縦?に長い島だったはずなのと、歩く速度が足場の悪さから半分くらいになっていると仮定して……。

 ふむ、テントの位置から水源までの距離……の、半分くらい歩いてることになるのかな?

 

 

「……ん?あれこれ、方向的に水源近くに向かってる?」

「え、そうなんですか?」

「……そうね。確かに方向と距離的に、あの辺りに向かっている可能性は高いと思うわ。……けど、あの水源は岩の隙間から湧き水が出ている形だったから、この洞窟がどこに繋がっているのかまではわからないわね」

 

 

 私の言葉に水汲みに行った二人が反応する。

 ……朱紅奈さんの言葉から察するに、まだ先の長い洞窟だということがわかる。

 とは言え、島の中心に向かっているのであれば、さっきと同じ時間歩けば最悪洞窟の奥にはたどり着けるだろうけど。

 

 

「あー、山の中を通ってるからか」

「山の大きさが大体島の半分だから、実際はもう少し手前で行き止まりになるかも知れないけどね」

「山の中だけで……終わるのなら……ということかしら……?」

暗渠に湛えるは蒼き静寂と言うことか(水源って、地底湖でもあるんでしょうか)?」

「ふむ、地底湖、地底湖ねぇ……?」

 

 

 皆がそれぞれ納得したように言葉を発する中で、結花ちゃんが発した言葉に私は注目する。

 ……んー、今の所この洞窟、海と繋がったままの川?がずっと続いている。……水源が先にあるというのなら、それはどちらかと言うと──、

 

 

「地下からの湧き水、ってことになるのかな?別に昨日の水、塩辛いとかなかったし」

 

 

 海と面している以上、地下に水源があると海水の逆流が起きる可能性がある。

 それがないというのなら、水源側が海に流れる力のほうが強いのだろう。……自噴井、というやつだろうか?まぁそのあたりはよくわからんので、実際に見てみたほうが早いだろうけど。

 ただまぁ、終着点に綺麗な景色が待っていそうだ、というのはモチベーションの維持には使えそうだ。

 

 

「なるほど、お誂えむきだね」

「お誂え向き?」

「人の手の入らない無人島、その中にさらに秘された清水湧く地底湖……何かを隠すには打って付けのロケーションというわけだ」

「……なんかホントに某小学生探偵の夏映画みたいなことになってるような……」

 

 

 柳瀬先輩の言葉に辟易する。

 ……無断で島に上陸して宝探ししてる謎の集団とかいないだろうな?柳瀬先輩のポジションがまんま探偵だからフラグ立ってるんじゃないのかってちょっと怖いんだよなぁ……。

 変な不安を抱えつつ、奥に進むために岩場から立ち上がる私なのだった。

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「めっちゃ綺麗な地底湖でしたけど、それだけでしたね!」

「ここまで引っ張っといてなんにもなしとか逆にびっくりしたんだけど」

 

 

 洞窟からの帰り道、鈴莉ちゃんが近くに寄ってきたのでため息と共に声を返す。

 ……いやさ、あんだけ意味深だったんだからなにかあると思うじゃん?……なかったんですよ、なんにも!

 いや一応滅茶苦茶綺麗な地底湖あったんだよ?洞窟内の僅かな明かりを反射して、神秘的に輝く地底湖がさ?……けどそれだけ。宝箱とか金とか銀とか、そういうわかりやすいものは、一切!一つも!なかったんだよ!

 ……いやなんなんすかそれ、こんだけ歩かせたんだから、なんかあったっておかしくないじゃないすか。

 思わずなんとも言えない表情になったよ、同胞に「顔、顔」って言われるくらい、なんとも言えない感情に支配されてたよ……。

 

 ……まぁ、柳瀬先輩が一度だけ「ふむ……」って呟いたあと、「ここにはなにもないね、無駄足だったみたいだ」って言ってたことは気になったけども。

 

 

「まぁ、午後の予定に影響が出なかっただけマシだと思いましょう」

「ぬぅ、街のほうでちょっと探索とかだっけ?」

「寝床うんぬんもあるが、当時の資料とか残ってたらなにか宝関連の話が見付かるかも知れないしな」

「それと、また釣りと野草探しだね。明日で終わりとは言え、今ある分だとちょっと足りないだろうから」

 

 

 午後からは、昨日みたいに食料探索する組と、街の中でちょっと家探しをする組とにわかれることになる。……テントに関しては、使える家が見付からなかったらそのまま使うのでとりあえずそのまま。明日になったら、綺麗に片付けることになるだろう。

 

 

「それで、組分けについてなんだけど。昨日と同じ野草を取ってくるだけだし、篠浦さん一人でも大丈夫だろう。だから、僕は探索側に付いていくってことで良いかな?」

「……ええ……私は構わないけど……」

「じゃあ、俺は水汲みするわ。もっていける量と距離的に、俺一人でも大丈夫そうだしな」

なれば、我は海を制覇してみせよう(はい!私釣りしてみたいです)!」

「あ、だったら私は結花ちゃんの手伝いをしますね!」

「……ということは、私・朱紅奈さん・柳瀬先輩で街で探索、って感じかな?」

 

 

 あれよあれよとメンバー編成が決まっていった。

 ……なんだか、ちょっと珍しい組み合わせになったね?

 

 

「よろしくお願いするわね、柳瀬先輩?」

「……ああ、よろしくね、刻遠野さん」

「いやなんで火花散らしてるんこの二人?」

 

 

 と思ったら早速メンバー内の空気が悪いのですが。……え、なに?相性悪かったの二人共?

 

 

「いえ、別に悪くはないと思うわよ?」

「そうそう、()()()()()()()()よ?」

「ふふふふ」

「はははは」

「え、なに怖い……同胞怖いこの二人……」

「頑張れー」

「返事が超無関心!?」

 

 

 ふふはは笑い合うこの二人の間に挟まれるの嫌なんだけど!?あああああせめて心の準備をさせてー!?

 そんな私の懇願は聞き入れられぬまま、二人に引かれて街に繰り出す私達なのであった。……繰り出すとは……? 

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「ふむ、上陸時も思ったけれど──何十年も人の手が入らずにいるというのに、随分と綺麗だ」

「そうね、もう少し荒れていてもおかしくはなさそうだけれど。……そもそもに徘徊していてもおかしくないはずの獣達の姿も見当たらないし、雨風に特別晒されるような場所でもないのなら……まぁ、無くはない、というくらいの劣化じゃないかしら?」

「……ふむ、木々が日差しを遮るようでもあるし、一理あるか……」

「あのー、めっちゃ真面目に考察されている所悪いのですが、向こうに書庫っぽいものありましたよ?」

「なに!?」

「でかした!」

「いやだからなんでそんな競争するみたいに……って聞いちゃいねぇ……」

 

 

 何件目かの廃屋の中。

 比較的崩れもなく、虫が湧いていたりもしないその内部を探索していた私達。

 ……なんかよくわからない対抗心でもあるのか、二人は何かしらの痕跡が見付からないかと、目を皿のようにして家中を見て回っていた。

 なにが彼女達をそこまで駆り立てるのかわからない私としては、どういうテンションで付いていけばいいのか分からず困惑中だ。なのでまぁ、普通に家の中を確認中。

 

 

「たまーに缶詰とか見付かるけど、流石に賞味期限は切れてるよねっていうか、よく爆発しないなこいつら」

 

 

 長期保存してる缶詰とか膨らむ危険が結構あるはずなんだけど、保管場所が良かったのかはたまたなにか他の理由か、膨らんでいる缶詰には今の所出会っていない。……いやまぁ、爆発して無くても流石に何十年ものの缶詰とか怖くて触れないけどさ。

 

 今いるリビングには……古いブラウン管のテレビと、中心にある机、そしてそれを囲うように並ぶちょっと埃っぽいソファーくらいしかない。

 壁に絵が飾ってあるとか、花瓶がおいてあるとかもない、殺風景なリビングだ。

 

 

「うーむ、なにもない、かなぁ……?」

 

 

 ふむ、探索ゲーとかあんまりしたことないけど、こういう場所をなにもないと素通りするのはどうなんだろう?こう、テレビの後ろになにかあったりしない?

 ちょっと期待して後ろを覗くけど、まぁなんにもない。……私に探偵役は無理だな!

 諦めて、二人が向かった書庫……正確には書斎?のほうへ。

 

 おそらく家の中心部、日光に直接当たらないように気を使ったのだろうと思われるそこは、太陽光発電でも使っているのか、内部の電灯を稼働させられるようになっていた。

 天井まで届く高さの本棚には、所狭しと書物が詰め込まれている。

 ……背表紙に書かれているのはどうやら英語みたいなので、どうやらここの家主だった人は洋書を中心にして集めていたようだ。

 適当に一つ抜き取って本を開いてみる。

 ……えっと、これは植物についての本、かな?学名とかはちょっとわからないけど、世界の水辺に生える植物を主に集めて解説している本のようだった。

 そのほか、動植物についての本が八割、それ以外のジャンルが残り全部、という感じだろうか。背表紙の内容だけで判断したので、もしかしたら違うかも知れないけれど。

 

 ……おっと、並んでいる本についてはとりあえずそんなものにして。

 先に書斎に入って本を読み漁っていた二人は、私が近付いたことに気付きその視線を上げた。

 

 

「なにか見付かった?」

「……いいえ、基本的には植物研究の本ばかりで、宝とかそういうものに関しては全然」

「こっちも同じ。身も蓋もないことだけれど、ここの蔵書は多分家主の趣味だろうね、欠片だけ残った付箋があちこちにあったし、論文くらいは書いていたのかも知れないよ」

「ふーむ、大学生でも住んでたとか?……よくわからないですね。とりあえず、外出ます?」

 

 

 私の提案に二人が頷いたので、そのまま外に出る。

 ……日差しは次第に柔らかくなっていく。そろそろみんなと合流したほうがいいだろう。

 合流したら、テントをまた使うかどうかを確認しなければ。

 そんなことを思いながら、私は二人を連れて廃屋を後にしたのだった。

 

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