百合ゲー世界に転生したらなんかちょっと思ってたのと違った件について   作:アークフィア

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三章 文化祭は燃えているか
新学期で気分を入れ替える


 夏休み中には色々なことがあった。

 

 夏祭りの日には浴衣を着て、同胞と屋台を見て回ったり。

 登校日に久しぶりに部室に集まって、みんなで大掃除を敢行してみたり。

 夏の課題を片付けるために家に集まって勉強会してみたり。

 ……本当に、本当にいろいろなことがあった、わけなのだけれど。

 

 

「そんな夏はもう過ぎ去って、君もまた学校に通う時間なんだ」

「なんだまた唐突に……」

「いんや、楽しい夏ってすぐに過ぎてしまうものだなー、っていうちょっとした感傷をね……」

「……そうだな。結構いろいろあったけど、その分過ぎてくのも早かったというか」

 

 

 私の言葉に、しみじみといった感じに頷く幼馴染み……もとい晃。

 ……んむ、まぁなんだ。いろいろあって、いい加減幼馴染み予呼びを卒業しよう、ってなってだな?

 まぁ、意識しないとまだたまーに同胞とか幼馴染みとか言っちゃうんだけど。それでも、基本的にはちゃんと名前を呼ぼうってなったというか、約束させられたというか……。

 

 

「……あー。でさ、晃」

「ん?なんだ桐依?」

「今日、始業式じゃん?終わったらそのまま帰る?それとも、一回部室に寄る?」

「んん……そういや夏休み終わってそうしないうちに文化祭の時期か。……結局、メイド喫茶は実際にやるのか?」

「そのあたりも含めて相談するのに集まるのか、ってこと」

 

 

 私の言葉に晃がふむ、と顎に手を当てながら黙考する。

 そう時間も経たないうちに小さく息を吐いて「ま、集まったほうが早いわな」と意見を述べてきたわけだけど。

 ……ん、じゃ放課後はみんなで集合、っと……。

 スマホでみんなに連絡を入れて、肩掛けの鞄をしっかりと抱え直す。

 

 ──時は九月。夏の暑さが未だ残る街を歩きながら、二学期の幕が上がろうとしていた。

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「お、きりえんおっつー」

「おはよあっきー、休み前と変わらず元気そうでなにより」

 

 

 久しぶりに見る教室は特に真新しさも無く、そのまま自分の席に向かって椅子に座る。

 登校日に席替えがあったため、今まで隣に居た晃に変わって、別の女生徒が私の隣の席に座っている。

 その同級生の彼女はと言えば、こちらの挨拶に微妙な表情を浮かべていた。

 

 

「いや、前も思ってたけど『あっきー』は堀ノ内君と被んない?」 

「そう?晃のことは晃としか呼ばないし、被ることなんかないと思うけど」

「……いや、お熱いねって言えばいいのこれ?私どういう反応するのが正解?」

 

 

 それが呆れたようなものに変わるのを横目で見つつ、お好きにどうぞと返して提出物を鞄から取り出す。

 

 ……演劇祭の一件以降、美少女モード(猫被り)を辞めた私にも、普通の友達というものができ始めた。

 そのうちの一人が隣の彼女、『秋山(あきやま) (すばる)』である。

 普通の女の子って感じの彼女は、あの演劇祭での流れを経た後に登校日に「おもろいじゃんキミー!」みたいな感じに話しかけてきた生徒達の一人で、なんというか波長があったので仲良くなった結果、その場の流れで連絡先まで交換してしまった唯一の人でもある。……そのせいで後々美玲さんが拗ねたりしたけどそれは割愛。

 

 彼女は私の周囲では唯一に近い『一般人属性』持ちなので、話をするのが楽でとても有り難かったり。

 ……部活仲間達は悪い人じゃないけど、時々ぶっ飛ぶからね。特に鈴莉ちゃんは。

 その点あっきーはなんの憂いもなくただの常識人なので、こっちも安心して無茶振りができるというものなわけだ。

 

 

「いや、それだけ信用されてるってことなんだろうけどさ?そこで無茶振りしようとするの違くない?そういうの堀ノ内君にやればよくない?」

「最近の晃はもう私が無茶苦茶やっても驚いてくれないし、下手すると逆にやり返してくるので嫌なのです。その点あっきーは素直に驚いてくれるから私超満足」

「なんだその魔王みたいな無茶苦茶な理由!?」

「おお、懐かしい反応」

「懐かしい!?魔王扱いが!?」

 

 

 あっきーの普通なツッコミに思わずほっこり。ああ、こういう反応を私は求めてたんやなって。……はっ!?

 

 

「え、なんでいきなり顔面蒼白に……ひぃっ!?なにあの堀ノ内君の顔っ!?」

「あかん、他所様に迷惑かけてんじゃねーよって怒ってらっしゃる……!?ちゃうねん同胞、この子いじられキャラだから内心喜んで……あっあっ待って待って言葉の綾っ、言葉の綾だからカウント止めて晃さん止めてってああああああああさん付けも意図的違うぅぅぅっ!?」

「……いや、勝手に人のことマゾ扱いすんなよって言いたかったけど──もういいわ、うん」

 

 

 鬼神降臨!……って感じで和太鼓とか鳴ってそうな迫力でこちらを睨めつけてくるどうほ……晃に必死に謝り倒す私。……油断すんなってか、私に安住の地はないってのか、ちきしょーめっ!!

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「いや、めっちゃ死んでんじゃん、死にすぎて城建ってんじゃん」

「誰が城の天守閣に追い詰められてそのまま身投げしそうだって……?」

「……いや、そこまで言ってねーし」

 

 

 憤怒の晃をどうにか宥め賺して無事……無事?鎮めたのち、席に戻って机に突っ伏していたら、あっきーが可哀想なものを見る目で見てきたので、のろのろと顔をあげて反論……できるテンションじゃなかったので適当な妄言を投げる。……表情が困惑に変わっていたけれど、憐れまれるよりはよっぽどマシである。

 

 

「いや、流石にわけわかんないし」

「わからぬか、私は同情の雨に晒されるくらいなら死を選ぶと言ったのだ」

「流石に大げさ過ぎる……」

「うん、適当言ってるからそりゃ大げさだよ」

「なるほど、ちょっと私には荷が重いやつだねこれ?」

 

 

 おっとそのあたりも踏まえて面白いと評したのでは?と聞いたら、ちょっと限度があるんじゃないかなぁとのお言葉。

 

 

「……?これくらい文芸部では普通ですが?」

「マジで言ってる?実は部員達何人か生贄に捧げてない?」

「わりとマジよ、みんな結構ノリを振り切った物言いするから」

「うっわびっくりした!?あ、刻遠野さんか…………あ゛」

「ヘイ、うちの部員です」

「ハイ、文芸部部員よ」

「うっわ与太じゃなくなった!?」

 

 

 はははテンポよくていいっすねこれ。

 こちらがわちゃわちゃ話しているのを察して近寄ってきた朱紅奈に、小さく手をあげて挨拶。

 彼女もまた小さく手をあげて挨拶を返してきたあと、私の机の端に腰を掛ける。

 

 

「実際面白人間倶楽部なところ、なくもないと思うわよ、私含めて」

「そこで自分含めるの!?」

「己の狂気と向き合うことで、芸術というものは大成するのだよキミィ」

「なにその謎の金持ちっぽいセリフ!?」

「実際の金持ちはこういうこと言わないんだよなぁ、単に普通の選択肢の中に常にお金での解決が入ってくるだけで」

「なんでそんな実感籠もった感じに……ってあ、一年の栗花落!?」

「よく知ってるわね。あと常に二重音声な()とか、学校内のいろんな行事で暗躍している顧問とかも居るわよ?」

「待って待って、噂じゃなくてホントなのそれ!?」

「ホントホント。生徒会長さん公認のホント」

「えええええええ!?」

「…………おいお前ら、同級生で遊ぶのも大概にしろ」

「「はーい」」

「え!?……あ、からかってたわけね?よかったぁ………」

「…………」

「いやちょっと、堀ノ内君?こっち見て堀ノ内君!?嘘だって言ってお願いだから!?」

「……ウソダトイイナー」

「ちょっとぉぉぉぉおぉっ!!?」

 

 

 ヤダこの子いい反応。正式な部員じゃなくていいから加入してほしいくらい。

 ……いや、加入すると()()()か、それはよくない。

 

 

「厳正な審査の結果、貴殿の入部は不成立となりました。貴殿の今後のご健勝をお祈り申し上げます」

「いや今度はなに!?なんで私突然お断りメールみたいなの食らってるの!?」

「お祈り申し上げます」

「お祈り申し上げます」

「なんで輪唱するのこの人達っ!?」

 

 

 貴女は綺麗なままの貴女で居て、という思いから断腸の思いで入部をお断りする私達。……わかってくれあっきー、これも君を思うがゆえの、苦渋の選択なんだ……!

 

 

「ぜっっっったい苦しんでないし渋面でもないじゃんこれぇっ!?」

「あっきーが素直なのが悪いね、仕方がないね」

 

 

 恨むのなら自分の善良さを恨むんだなあっきー、君の反応が新鮮過ぎるのが悪いのだよ。

 彼女を囲んで三人でふふふと笑い合う。哀れな彼女はこのまま私達のおもちゃになる……かと思われたのだが。

 

 

「──へぇ、何が仕方がない、のかしら?」

「………全員逃げろっ!」

「逃しませんわっ!!(ぜん)(こう)(まど)っ!!」

「「「御意っ!」」」

「うわぁ生徒会役員達だぁっ!!?」

「いや待てなんで窓の外から!?」

「くっ、逃げ道を塞がれてしまったわね……」

「今日という今日こそは逃しませんわよっ!!」

 

 

 隣のクラスから騒ぎを聞きつけた美玲さん達に囲まれてしまう。

 ……ぬぅ、手際の良さが夏休み初めとぜんぜん違う、腕を上げたな生徒会役員共め……!

 

 

「だから、なんなのよこの展開はぁっ!!!?」

 

 

 あっきーの叫び声をバックグラウンドに、生徒会と文芸部のぶつかりあいが始まるのだった──。

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「はい、というわけで反省会です」

「はい先輩!」

「なにかな鈴莉ちゃん」

「私達後輩組は何がなにやらわかりません!」

「よし、仕方がないからちょっと待機!」

「了解しました!結花ちゃん、しばらくトランプでもしてますか?」

我ポーカーやりたい(神経衰弱とかどう?)

「んんん、どっちもやるということですね!」

 

 

 文芸部部室にて、先の騒動の反省会をしよう、みたいなノリでそのまま始業式後に集まった私達。

 鈴莉ちゃん達後輩組は朝のあれこれには関わってなかったので、主に反省するのは二年生組なわけだけど。

 

 

「……ねぇ」

「さて、反省文を書く……などでも構わないのですが、別に教師の皆様方の指導が必要なほどの騒動というわけでもなく、さりとて貴方方にとってちょっとやそっとの反省文では苦にしないことでしょう。……ですので、彼女への謝罪と暫しの奉仕活動、ということで手を打ちましょう」

「へーい。むぅ、流石にちょっとはっちゃけすぎたか。夏気分抜けてなかったかなぁ」

「……ちょっと、ねぇ」

「まぁ、自分達の行動を見直すいいきっかけになったってことで。謝罪ついでに菓子でも持ってくか?」

「……だから、ねぇ」

「まぁ、ちょっと緩んでいたのは確かね」

「初日でよかったとポジティブに行こう、失敗したんなら取り返せばいいんだよ上等だぜ」

 

「だ・か・ら……。聞けーっ!!!」

 

 

 そうしてみんなで話していたら、あっきーが大声を上げて私達の反省会を遮って来たのだった。

 むぅ、突然大声を出すなんてよくないんだぞー?

 

 

「出すでしょそりゃ!?なんで私も同伴!?っていうか私への謝罪を考える場に私を呼ぶんじゃないわよ!?」

「いやー、こういうのはスピード勝負だと思うので。というわけで、ごめんねあっきー。ちょっと調子乗ってた、この通り」

「はへっ!?え、普通に謝るの?……ってわわわ、みんなして頭下げるの止めて!?なんか私が悪いみたいじゃん!?」

 

 

 あっきーがごもっともなことを言ったので、みんなで素直に頭を下げる。

 調子に乗って不快にさせてたらあれだし、これから謝罪の場を開くんだし、さくさく進めなければ。

 

 

「いや、謝罪の場ってなに!?」

「シェフ晃のランチコースでございます。どうぞお楽しみくださいませ」

「え、えええええ、なにこれどういうアレ!?」

「え?いや、お詫び代わりにうちがどんな感じの部活なのか教えてあげようかと。疑ってたし」

「……ああ、そういえばそんな話だったんだっけこれ……」

 

 

 頭を抱えてしまったあっきーの前に晃が料理を並べていくのを見ながら、私は少し彼女に同情する。

 ……悪いなあっきー。実は全部わざとなんだ、なんてったってだね?

 

 

(なーんで、()の主人公が居るんだろうなぁ……?)

 

 

 ──彼女の出自が、怪しすぎるのが悪いのだから。

 

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