百合ゲー世界に転生したらなんかちょっと思ってたのと違った件について   作:アークフィア

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遊びの中にも見るべきモノは有り

 文芸部として出店するものがメイド喫茶に決定したわけだけど。

 それが決まったからといっても、別に本格的にメイドとしての修業が始まる……みたいなことになるわけでもないので、基本的には準備&準備こそが今できる唯一のことになる。

 ……というか、一応開催までに一月あるので、今から慌てる必要もないというか。……演劇祭のときの『一月』とは、重さが違う。

 

 そもそも材料発注くらいしか現状でできることもないし、今のところ文芸部部室は平和そのものだった。

 

 

「あっきーが臨時部員になったから、そこだけちょっと慌ただしいけどね」

「えー?きりえんなんか言ったー?」

「放課後勉強会は捗ってるかいって聞いたー」

「捗んなーい!!むりー!!」

 

 

 まぁ、文化祭前にある中間考査のため、軽い勉強会などを部室で行っているから、ちょっとだけ慌ただしいのだけどね?

 

 いや、うちの部員達は基本そつなくこなす人ばっかりだから、基本的にはお復習(さら)いして終わりなんだけど。

 臨時部員あっきーはそこまで勉強が得意、というわけでもないようで、結果としてなんかみんなで彼女の勉強を見る、みたいなことになってしまっているのだった。

 まぁ、人に教えるのって自分の復習にもなるから、全然問題ないんだけど。

 

 

「ひーっ、みんなよくこんなの覚えられるね、私ちょっと頭痛くなってきたって!」

「まぁ、知識が多いほど色々書けるようになる、とは言うからな。それなりに真面目に覚えもするさ」

「そーいうもんなのほりっち?」

「ああそ……いや、なんだ?ほりっち?」

「そーそー、ほりっち。堀ノ内だからほりっち」

「そ、そうか……」

 

 

 なんと、晃があっきーにあだ名を付けられて困惑してる……。

 いやまぁ、こういうテンションの子は文芸部にはいなかったから、ちょっと面食らうのはわかる。……けども、そんなに驚く必要はないんじゃないかな、いや私もやけに距離感近いなーとは思うけどさ?

 

 

「それ貴方が言うの?結構ぐいぐい来るほうだと思うのだけれど」

「流石にあっきーのコミュ力と比べられると霞むかなぁ」

 

 

 横から発せられた朱紅奈さんの言葉に苦笑い。

 初対面でも隙あらば寄ってくる、といった感じのあっきーと比べられるのは流石にちょっと、と思わなくもない私なのでした。 

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「昨日も思ったけど、毎日こんな感じなのここ?」

「晃の弁当が美味しいのが悪いのじゃ、私で一人占めなんてできるはずもなかったのじゃ……」

「……まぁ、材料費も貰ってるし、作ること自体は割りと好きだから別に構わないけどな」

「いや料理もなんだけど、そうじゃなくて」

 

 

 日付は変わって、別の日のお昼の時間。

 最近は部室に集まってみんなでお弁当をつつくのが、すっかり習慣になってしまったわけなんだけど。

 つい先日この輪に加わることになったあっきーが、訝しげな顔で疑問の声を上げたので、皆がつい……と机の中心に鎮座している大きな弁当箱に視線を向けた。

 

 うちの晃が料理上手なのは周知の事実だけど、そのおこぼれに預かるのは基本私だけだった。

 私が彼の幼馴染みだからというのもあるけど、そもそも彼も自分の分の弁当しか作ってきてないので、交換とかするにしても絶対的に量が足りていなかったのである。

 なので、部室で昼食を摂るようになってからしばらく、晃の玉子焼きの味は私しか知らなかった……のだけど。

 

 

「むぅ、なんというかこう、ズルいと思います!」

「……いや、流石に栗花落の昼食のが豪華だと思うわけだが」

「それはそれ、これはこれです!お二人であーんとかしてるわけでもないのなら、私達にだって堀ノ内先輩のお弁当を味わう権利はあると思うのですよ!」

「いやちょっと待って、なんか遠回しにあーんしろとか言ってない鈴莉ちゃん?私の気のせい?」

「……してないので!私達にもお恵みプリーズ!」

「スルーするのやめない?!」

 

 

 ある日、晃の弁当の中から、唐揚げを交換して貰ってもぐもぐと味わっていたら、鈴莉ちゃんから突然の抗議のお言葉が。

 

 見た目は普通でも栄養計算とか、使ってる食材への配慮とかが段違いなお弁当を食している鈴莉ちゃんからすれば、私らが食べているお弁当なんて、全然大したものではないだろうと思ったのだけれど、どうもそうでもないらしい。

 ……なんか中途半端に本音が見え隠れしている気がしたけど、そこは放置されたまま、彼女は熱く権利を主張する。

 

 

「無人島では魚ばかりだったし、他の料理もちょっと食べてみたい、というのは私も思わないでもないわね」

我も新たなる(あ、そうですね。)境地を求め願う所存(それ以外は飲み物だけでしたし)

「そもそも私お茶すらろくに飲んだことありませんわ!不公平ですわ!」

「賛同者が増えた、だと……!?」

 

 

 そんな彼女の熱い主張に心を動かされた者達が、次々と声を上げる。……なんか、思った以上に大事になってるような?

 

 まぁ、そんなこんなで。

 材料費を負担することを条件に、みんなが一緒に食べられるよう、おかずを一品多く作ってくるようになった晃がいた……というわけである。

 

 代わりに、私は晃からおかずを交換して貰うことはなくなった。

 流石に私だけ、とかもう言ってらんない感じだし、そもそも増えた一品がみんなが食べられる分の量があるから、そこから欲張るのもあれだし……というか。

 

 

「……なんというか、濃いねきりえん達ってば。……ってだからそうじゃなくて!」

「えー?そこ以外突っ込むところあるー?」

 

 

 みたいな話をしたのだけれど、どうにも彼女が指摘したいのはそこではないらしい。

 ……ふーむ?ここ以外に何か変なところとかあったかな?なんて私が思っていると。

 

 

「ほりっちだよほりっち!」

「ん?晃?晃がどうしたって?」

「どうしたもこうしたもないよ、なんでほりっちメイド服なの!?めっちゃ自然に着てるから一瞬私の目がおかしくなったのかと思ったよ?!」

「……なに言ってんのこの子?」

「さあ?」

「私のほうが可哀想な子みたいな扱いだこれ!?」

 

 

 飛んできたのは、晃が着ている服について。

 ……ふむ、ロングスカートのメイド服だけど、それがなにか?

 晃と顔を見合わせて、首を捻る。

 なにを主張するかと思えばメイド服着てる、だって。……そんなの、決まってるじゃんね?

 

 

「うちの晃がメイド服が似合う、それ以外の理由がなにか必要だとでも?」

「似合うかどうかは正直よくわからんが、まぁ着てると喜ぶから特になにか思うところとかはないぞ」

「あ、あれ?これ私がおかしい?おかしいの私かなこれ!?」

「……ほどほどにしときなさい、困ってるわよ彼女」

「いやー、面白いからつい」

「前もやった!この流れ前もやった!ってことはあれだよね、ここで私がなんだ、やっぱりメイド服はおかしいんだねって言ったら、全然?みたいな顔を返されるやつだ!」

「よくわかったな、褒美に飴ちゃんをやろう」

「やっぱりー!!」

 

 

 ははは。あっきーは元気だなぁ、と笑う私達なのでした。

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「……ふむ」

「~♪」

「そこは……ううん、……うーん」

 

 

 ──放課後。

 文芸部らしく、静かに読書したり、文を書いたりする私達。

 そんな私達を見たあっきーはというと。

 

 

「…………」

「なにその顔、滅茶苦茶意外そうだけど」

「いや、だってさ?……こんな、いきなり真面目になるとは思わないじゃん……」

「失礼な、私達はやるときゃやるメンバーだよ?演劇祭のときとかそうだったでしょ?」

「いやうん、言われてみればそうなんだけどさ、なんかこう、ギャップが酷すぎるというか……」

 

 あり得ないモノを見たような目でみんなを見ているものだから、思わず声を掛けてしまった。

 うちは騒ぐときは騒ぐけど、真面目にやるときは真面目にやる部なんだぜ、と言えば納得したような、してないような。

 そうは言ってもあっきー、君今その変人集団の一員なんだぜ……?

 

 

「え、私こんな風に静かに読書とかむりむり」

「そっかー。まぁじっとしてられないタイプの人だろうなー、とは思ってたから大丈夫だけどね」

「なにが?!なにが大丈夫なの?!」

「今から部活を投げてトランプ大会にする準備」

「了解しました!トランプはこちらに!」

「ポーカーとブラックジャック、ババ抜きかジジ抜きのどれにする?」

見えぬ一枚を追い求めようぞ(はい、ジジ抜きがしたいです)

「じゃあ俺抜きってことで……」

「部長権限でーす、敵前逃亡は重罪でーす」

「ちっ、仕方がない……」

「いやなにこの一転攻勢!?」

 

 

 なんでこんなにノリがいいのかって?そんなん実は遊びたかった以外にあるかい!

 

 そんなわけで唐突なジジ抜き開催である。

 因みにうちでは単純に枚数増やすためにジョーカー二枚を含んだ五十四枚から一枚を抜いて始めます。別にジョーカーが揃っても特になにもないですが。

 

 

「では何故ジョーカーを含めるのですか?」

「参加人数数えてみなよ、少しでも枚数増やそうって気になるから」

「た、確かに……」

 

 

 七人参加とか一人最大八枚である。

 場合によっては、初手で全部揃ってあがる可能性も出てくる枚数だ。そりゃまぁ、ある程度増やせるなら増やしとこうって気にもなるだろう。……まぁ完全に焼け石に水なんだけど。

 ほら、その証拠に……、

 

 

「あ、残り三枚になりましたよ先輩!」

「私最大枚数なんだけど……」

「ご愁傷さま、私は残り六枚ね」

「俺も六枚だな」

ふっ。不吉なり(四枚になりました!)

「私も残り四枚ですわね」

「私七枚!揃わねー!」

 

 

 ほら露骨に運が出たよ!最大枚数って言っても八枚じゃないのはまだマシだけども!

 

 こういうのは一番少ない人が、多い人から取るのが基本だいっ、てことで鈴莉ちゃんからスタート。

 ふふふ、私のカードからあがれるなんて思うんじゃないんだぜふふふふ……みたいな感じで、扇状に開いたカードの束から一枚彼女に引かせる。果たしてその結果は……!

 

 

「揃いました!これで秋山さんに引いて貰って、私は残り一枚です!」

「いや早くね?っていうかきりえんなにしてんのさ……」

「……私ラックは低いので」

「それ自分から申請するもんか……あ、揃った」

「同胞テメェ!?」

 

 

 なにしれっと揃えてやがりますかこの幼馴染みはぁっ!?

 そのままわいわいとカードを引き合い、意外にも一番あがりが美玲さんだったり、それを悔しそうに見ながら二番目に鈴莉ちゃんがあがったり。

 そこからしばらく戦況が硬直して、八順くらい誰も揃わずにぐるぐるカードを引くだけになって流石に吹いたりしながら、ちまちまと引いて揃えて上がってを繰り返して───。

 

 

「……なんか、最初に予想できてたけど!」

「こっちもそんな気がしてたよ!綺麗に残ったな私ら!」

 

 

 最後に残ったのは私とあっきー、彼女が一枚、私が二枚で手番は彼女のほう。

 流石にどれがジジなのかは明白で、それは二だった。……私の手の中には、スペードの一とハートの二。

 

 みんなが見守るなか、あっきーがこちらのカードに手を伸ばしてくる。──()か、()か。

 そんな奇妙な緊張の中、彼女が選び取ったのは───、

 

 

「よっしあがったぁっ!!」

「ぐああぁあっ負けたぁっ!!」

 

 

─残ったハートの二を放り投げて、私は机に倒れ込み、勝ったあっきーが右手を天に突き上げる。……いやー、綺麗に負けたわ、うん。

 

 

「ふっ、なかなかやるならあっきー……次はブラックジャックだ!」

「よっしゃ受けて立つぞー!」

「なんだこいつらの噛み合い方」

 

 

 晃うるさいぞ!

 そんな感じでしばらく遊び呆ける私達なのでした。

 

 

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