百合ゲー世界に転生したらなんかちょっと思ってたのと違った件について   作:アークフィア

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陥穽はあれど、気付かなければそれに意味はなく

 高校の文化祭と言うものは、場所によっては一日だけだったり、はたまた学校関係者のみが参加できる日と一般公開の日で二日間の開催予定を取っていたりと、結構その学校の特色が出る部分だと思う。

 うちの場合は、生徒達だけで展示物を見て回る一日目と、一般の人を招く二日目の日程になっていた。

 ……前世の時は確か一日だけ開催の高校に通っていた気がするので、二日も文化祭がある、というのはちょっと不思議に思ったものだけど……。

 

 

「基本的に一日目って、二日目に戦力を回してるから正直地味、だよね」

「おい、思ってても言っていいことと悪いことがあるぞ」

 

 

 校内の廊下を、晃と連れ立って歩く私。

 本格的な稼働が明日という出し物がほとんどであるため、人の賑わいこそあれどなんというか盛り上がり切らない感じの校内。

 ……これ、二日間も必要なのかな?それとも、ここがちょっとやる気がないだけで、他所の高校だと一日目も活気があったりするんだろうか?

 

 

「って言っても、初日に販売系のものをやるか分からんしなぁ」

「まぁ、基本的にそういうのは一般公開の日に労力を回すよねぇ」

 

 

 文化祭で人気のものと言えば、やはり屋台系のものだろう。

 『祭』らしくりんご飴やチョコバナナ、クレープに焼きそばなどが並んでいれば、それだけで気分は上々というもの。

 喫茶系も同じく人気だろう。……単に料理を出すだけだと屋台との違いがないので、差別化のためにいろいろ要素が足されたりもするが。

 食事系を除くのなら、お化け屋敷やヨーヨーすくい、輪投げや射的なんかの祭の定番系も強いか。

 うちでは演劇祭があるので選ばれることはないけど、体育館を借りて劇をするなんてこともあるかも知れない。……うちの場合は一部の生徒たちが演奏をするために場所を借りていたりするようだけど。

 

 ……ただまぁ、そういうのって基本一般客が入ってる時にやるものだから、生徒と先生しか見てない今日はどこもやってないんだよね!……じゃあ今日の意味ってなんなんだ……?

 

 

「通常の展示はやってるし、そっちメインとか?あとは準備のロスタイム的な」

「展示とかよっぽど面白いこと調べてるとかでもないとまず見られないから、基本的にはロスタイム需要かねぇ?」

 

 

 名目上は展示日だけど、基本みんな明日の準備というか本番前の最後の確認とかをしているあたりなんというか……。

 うちのクラスも展示自体はやっているけれど、本当にただの展示なので案内係さえ常駐していないという放置ぶり。……いやまぁ、そのおかげで部活のほうに集中できるわけだから、ありがたいのはありがたいんだけどさ?なんというかこう、文化祭ってなんなんだろうなって気分になるというか……。

 

 

「あ、先輩!校内散策ですか?」

「おや鈴莉ちゃん。まぁそんなとこ?そっちは?」

 

 

 そんなことを話しながら歩いていたら、廊下でプラカードを持って立っている鈴莉ちゃんの姿。……プラカードには『朗読劇』の文字。どうやら、教室内で童話なんかを読む朗読劇をやっているようだ。

 そっと中を覗くと、教卓前には数人の生徒が居て、その中には結花ちゃんの姿も見えた。今やってるのは……3びきのこぶた、かな?

 

 

「どれだけ臨場感を再現できるか、みたいなところを競う対戦朗読劇なんですよ!」

「なるほど対せ……なんて?」

 

 

 鈴莉ちゃんの口から飛び出した言葉に、思わず聞き返してしまう。対戦、朗読劇……?

 聞けば、本格的な始動は明日の一般公開からだけど、現在リハーサル的に流しで朗読を行っているらしく。

 今は単に朗読しているだけに見えるが、本公開ではお客さんにも一節朗読して貰い、ある程度上手いという判定を貰うと学園祭で使える割引券が貰えるのだとか。……ある程度いい判定とは?

 

 

「そのあたりは対戦相手の生徒側が決める感じです!」

「それ、かなり相手側に不利なのでは……?」

「貰える割引券の金額によって難易度が変わりますので大丈夫かと!」

「朗読に難易度設定だと……?!」

 

 

 詳しく話を聞いてみると、対戦相手の生徒を事前に指名して行うものらしく、生徒ごとに難易度と貰える割引券の金額が変わるらしい。下は五十円引きから、上はなんと全額割引券まで!

 実に夢のある話だが、難易度って要するに生徒側が納得するかどうかなので、言ってしまうとほぼ八百長みたいなもんなような……?

 みたいなことを問えば、そうでもないですよとの鈴莉ちゃんからの返事。

 

 

「まぁ、先生からも五十円くらいならバンバン出してもいい、とお墨付きを貰ってますので!」

「へぇ、じゃあまぁいいほうか……」

「代わりに全額割引券は極悪難易度ですが!」

「……参考までに聞きたいんだけどそれって相手誰なの?」

「無論、結花ちゃんですよ?」

「誰にも取らせる気がない……!?」

 

 

 通常の喋りが二回行動(多重音声)で文芸部で一番物語への造詣が深い相手にどう勝てというのか、魔王でももうちょっと優しい条件にすると思うぞ……。

 

 

「でもこの割引券、発行枚数に特に条件設けてないんですよね!なのでこうして調整しないと流石にダメということになりまして!」

「なる、ほど?……あれ、結花ちゃん明日こっちの手伝いもあるけど、その間はどうすんの?」

「そもそも挑戦できませんよ?」

「ち、ちからわざぁ……」

 

 

 よく考えているのか居ないのか、ちょっとわからなくなるクラスだなと思う私達なのだった。

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「あ、美玲さんおつかれー」

「あら、桐依さんと堀ノ内さん。お二人は何を?」

「特にすることもないし、校内を冷やかして回ってるとこ」

「いや、言いかたってもんがあるだろうがよ……」

 

 

 鈴莉ちゃん達のクラスを離れ、歩くことしばし。

 生徒会室の近くに来たところ、美玲さんが立っていたので声を掛ける。

 生徒会での出し物は特になく、風紀委員と共に校内の見回りにあたるのが仕事らしい彼女は、現在本部扱いの生徒会室前で委員達からの報告を待っているのだそうだ。

 

 

「まぁ、全てを見て回るのは不可能ですので、ほどほどでいいと言い含めては居ますが」

「流石に柔軟な判断だねぇ。ところで具体的にはどういう事を見て回ってるの?」

「……守秘義務、と言うほど堅いものでもありませんし、まぁいいでしょう。基本的には飲食系の店、特に甘味系のものを取り扱っている場所で密かに生クリームを使ってないかとか、文化祭中に立ち入り禁止区域になっている場所に屯していないかとか、まぁそんな感じですわね」

「あー、乳製品とか生モノはダメなんだっけ」

 

 

 植物性の生クリームならいいけど、普通の動物性生クリームは食中毒の危険があるのでダメなんだそうで。似たような理由で生魚とかもダメ、野菜も加熱なしでは許可が出ないことが多いのだとか。

 でもこう、生クリーム無しのクレープは味気ないということで、密かに生クリームを使おうとする生徒もたまーに居るそうで、一応見ておかないといけないのだそうだ。……なんというか、お疲れさまです。

 

 

「まぁ、うちの所属委員達は優秀ですので、私がすべきことなんて全体の統括くらいなのですけどね」

「壁の外から現れたりするのは優秀で済むんですかね……?」

 

 

 なかば忍者かなにかなんじゃないですかね……?

 この間の追っかけっこを思い出してちょっと疑問に思ったけど、まぁ美玲さんが気にしてないなら大丈夫なんでしょ、多分。

 折角なのでしばらく美玲さんと一緒に生徒会役員達や風紀委員達を待ってみる。

 入れ替わり立ち替わり美玲さんに報告をしていく生徒達は皆真面目そうな感じで、きびきびと動いては報告を終え、また見回りに出掛けていく。

 

 

「とはいえ、これも今日だけのこと。明日に関しては先生方が見回りを受け持って下さるそうですので、私達は基本文芸部の手伝いに動くことになるとは思いますが」

「なるほど、一般公開当日は外の人も来るから、見回りも大人がしたほうがいいというわけだね」

 

 

 トラブルになった時に大人が対応したほうがいいと言うことか。

 ……一応生徒が招待チケットを渡した相手に限るとは言え、問題ない人ばかりが揃うとも限らないわけだし、この対応も宜なるかな、ということか。……まぁ、だからこそ人手を賄えたところがあるし、先生方には感謝しかないわけだけど。

 

 

「んー、解説ありがと。じゃ、そろそろ私達はお暇するね」

「ええ、また明日」

 

 

 そんなことを話している内に時間も結構経っていたので、美玲さんに挨拶をして生徒会室を後にする。

 そろそろ私達も明日の最終確認をしなきゃいけないな、と思いつつ部室に向かう道すがら、今度は朱紅奈さんに出会った。

 

 

「あら、貴方達も今から部室?」

「ん、材料とか服とかの最終確認をしとこうかなってね」

 

 

 そのまま合流して、部室のある三階へ。

 部室の前では、ダンボールを持ったあっきーが右に左にうろうろとしていた。……いや、なにしてるの?

 

 

「なにやってるのあっきー……?」

「あ、きりえん良かった!部室に飾る花瓶とか持ってきたんだけど、私鍵持ってないの忘れてて!」

「……そういやすっかり馴染んでたけど、一応臨時部員だったか」

 

 

 おっと、正式な部員じゃないから鍵借りれなかったのか。……だったら荷物置いて待ってればいいのに、と言ったら彼女は「その手があったか!?」みたいな顔をしていた。……ええ……?

 

 

「いい感じの花瓶とかあったから、すぐに持っていこうと思ってたらそのあたり全部忘れちゃってたんだってばぁー!?」

「いやー、それこそ朱紅奈さんでも私でも晃でも、普通にスマホで連絡すればよかったじゃん」

「……スマホ教室におきっぱだし……」

「なんで?」

「単純に忘れてたんだってばぁー!!」

 

 

 うーん、この安定のあっきームーブ。……ちょっと前まで疑ってた私がバカみたいだなこれ?

 この慌て方が全部演技だったら凄いけど、そういうの下手くそそうだし、そもそもそこ偽る意味もないしで、ホントに疑り損のくたびれ儲けだなこれ。

 

 

「……とりあえず、開けるわよ?」

「お願いすっべー!私もう腕が死にそう!」

「あーもうはいはい、ちょっと待ってなさいな」

 

 

 朱紅奈さんが鍵を開け、みんなで部室の中へ。

 あっきーは持っていたダンボールをテーブルの上に置くと、「もー限界だー!」と言いながらソファーにダイブした。……うちにあるのが寝転がれる大きさのソファーでよかったねあっきー。でもそれ物置に下げるから降りようね。

 

 

「……へぇ、確かにいい感じの花瓶ね、それとテーブルクロスも」

「テーブルは横の空き教室から持ってくるとして……四席分あればいいんだっけ?」

「そうそう、机は二つで椅子は四つ。あんまり数は捌けないから、人数は最大で四人までってことにしたから」

 

 

 嫌がるあっきーをソファーから除けつつ、晃達の話に返事を投げる。

 机を二つ繋げて一つ分にして二席分椅子を置く、というのをかける二セット。

 場所を作るために、いつも中心にある机達は一度物置にどかさなければ。

 

 そんな感じに最後の準備を行っていく私達なのでした。

 明日は文化祭一般公開日、はたしてどうなることやら?

 

 

 

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