百合ゲー世界に転生したらなんかちょっと思ってたのと違った件について   作:アークフィア

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祭りは始まり、人は集う

「さて、諸君。文化祭一般解放日となったわけだが、準備万端だろうな?」

「準備万端でありますたいちょー!」

「よぉーしせいれーつ!お客様はー!?」

「神様でーす!」

「不埒なお客様はー!?」

「祟り神でーす!」

「神様相手にはー!?」

「全力全開で当たりまーす!」

「よーし万全!行くぞ皆の衆、合戦の始まりじゃあ!!」

「イエー!」

「……えー、なんなのこのテンション……」

「気にするな、うちは大体こんな感じだ」

 

 

 次の日の朝、部室にて。

 ……ふむ、材料よし!テーブル席よし!みんなの服装よし!準備万端よし!この確認の仕方多分よくない気がするけどよし!

 ふふふふ、まさに完璧。これでお客様を思う存分もてなすことができるというわけだふふふふ……。

 そして見よ、我らがメイド集団を!

 

 晃は先日新しく増えたものである、大正浪漫溢れる和風メイド!

 鈴莉ちゃんは可愛らしさを活かした、フリル多めのミニスカメイド!

 朱紅奈さんはできる女性感を醸し出す、ヴィクトリアン風メイド!

 結花ちゃんはその見た目を活かして、ミリタリー風メイド!

 美玲さんは三つ編みと相性バッチリな、チャイナ風メイド!

 そして私が、オーソドックスなクラシカルメイドで、メイドパワーは倍々ゲームで貴様を越える千二百万パワーだー!……貴様って誰さ?

 

 まぁそんな感じで、多数の需要を満たせる最強のメイド集団となっております。なんてこった、わくわくが止まらねぇぜ!

 ……なお、お手伝いの生徒会役員達はみなガタイのいい男子生徒ばかりなので、こちらには流石に執事服を用意して貰いました。……幾ら異性装に忌避感ない世界とは言っても、流石に筋肉でピチピチなメイドはちょっとねぇ……?

 

 

「執事服着たやつが窓から突然現れてくるのも普通に恐怖なんだが」

「気にするな晃、彼等は忍者みたいなもんなんだから」

「なんで忍者が居るんだよ逆に」

 

 

 なんでだろうね?

 晃の言葉を受けて美玲さんに視線を送るも、彼女もよく知らないのか困り顔だった。……なんなんだろうね、この三人。

 まぁわからないことは置いといて、いよいよ学園祭・一般公開の始まりである。

 

 

「よーし、じゃあ客引き組ゴーゴー!で、昼から組は着替えて自由行動!解散!」

「……いや、それじゃあ俺ら着替える意味なかったんじゃ……?」

「最初に全員集合でメイド服も大集合、ってしときたかったんだよぅ!」

 

 

 晃の言葉に思わず言い返す。

 ……開始前の今くらいしか全員集合、みたいな機会がなかったんだから仕方がないんだよー!

 そんな私の言葉を聞いた晃は、なんとも言えない微妙な表情でこちらを見ているのでした。

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「昨日とはうって変わって、活気に溢れてるねぇ」

「店系がちゃんと稼働してるからな、そりゃ活気も違うだろうよ」

 

 

 晃と一緒に校内を歩くが、昨日のそれとは全然違って人の往来が凄いことになっている。

 招待客だけとはいえ来賓は結構な数になるし、そもそも生徒達も全員が出し物に捕まっているわけでもないので、校内を行き交う人の群れは単純に昨日の倍以上だろう。……そりゃまぁ、動きにくくもなるわというか。

 行き交う人々は大体楽しそうにしているので、基本的にはこっちも楽しい気分になるんだけどね。

 

 さて、そんな人まみれになっている校内を、私達がどこに向かって歩いているのかと言えば。

 昨日鈴莉ちゃん達が言っていた、彼女達のクラスがやっている対戦朗読劇を、ちょっと覗きに向かっているのである。

 

 ……いや、どう考えても面白いことになるでしょうあれ。

 ちっちゃくて可愛い外見に騙され、軽率に結花ちゃんに挑んでそのまま地面に倒れ伏す挑戦者達の哀れな姿が超見えるもの、こんなん見逃すわけにいくかいよ!

 的なテンションで向かった彼女達のクラス。

 ……ってあれ?なんか騒がしくない?教室の前で生徒やら来賓の人やらが騒然としているような?

 

 

「……くっ、『どうしておばあさんはそんなにも大きな口を開けて、私を見ているの?』!」

「『お前をずっと見ていたからだよ、お前が小さい時からずっと、私はお前を見続けていたんだ』」

「口と目?!噛み合って……いや!ずっと見てたから!観察しながらずっと口を弧のように開き続けていたからこそ、口が大きくなったみたいなことですかこれ?!」

「……ぐっ(くっ)我の、敗北だ(か、完敗です)……」

「ははは、済まないね君達」

「な、なんかよくわかんないけど栞さんの勝ちっすー!!」

 

 

 中を覗いてみると、白熱の朗読劇の結果膝をついたのは結花ちゃんのほうだった。……いやマジで?みたいな思いで対戦相手を見れば、そこに居たのはよく見知った顔。

 

 

「柳瀬先輩?!来てたんですか!?」

「おや、東山くんか、こんにちは。それと、知ってるだろうけどはい、うちの連れ添いの『ナンパ君』だ」

「あ、お久しぶりっす彼女さん。俺、『秋山(あきやま) (とおる)』っす、宜しく」

「あ、これはどうもご丁寧に。……ん?秋山?」

 

 

 結花ちゃんを下したのは、どうやら柳瀬先輩だったらしい。……なんか赤ずきんのような何かをやってたけど、なるほどあんな感じなのか対戦朗読劇……。

 それと、一緒に来ていたナンパ君……もとい、秋山さんがこちらに挨拶をしてきたのだけれど。……いや、秋山って言ったこの人?

 

 

「この高校にはうちの妹が通ってるんすよ、関係者チケット貰ったんでちょっと見に来たんっす」

「僕はその付き添い。君達の高校なのは知ってたから、ちょっと冷やかしの面もなくないけどね、身も蓋もないことに」

 

 

 疑念を確信に変えるようなことを言う秋山さんと、なんかちょっと調子に乗ってる感のある柳瀬さん。

 ……うーん。これややこしいことになってきたな?

 

 

「まぁ、今日は宜しくってことでお願いするよ。ところで君達は何をやってるんだい?」

「……メイド喫茶ですけど、今先生と美玲さんで回してるんで、これから行くつもりなら二人に迷惑をかけないであげてくださいね」

「おっと迷惑をかけること前提とは。……わかった、じゃあ君達の番の時に行くことにしよう」

「しまったやぶ蛇だった!?」

 

 

 そしてここで明かされる衝撃の事実、密かに巻き込まれている先生がそこに居た!……大人の魅力たっぷりなロングスカートメイドさんですよぐへへへへ。

 

 まぁ、いつもの部活メンバー+美玲さん+先生+あっきーで八人にすることで、当番を二人組四サイクルにできるようになる、と言うのを理由に頼み込んだところがあるけど。

 因みに勤務時間が全体で六時間、かつ休憩が合計で二時間になるように、各グループが順繰りに切り替わるようなシフトになっている。

 今は先生と美玲さんが部室で接客中、あっきーと朱紅奈さんが中庭で客引き中だろう。……この分だと中庭には降りてないのだろうかこの二人?

 

 

「とりあえず、無料券も手に入れたから一つ高いものでも貰っておきたいねぇ」

ぐ、我が本領を発揮できていれば(すみません皆さん、初手がこれだとは)……」

「気にしちゃダメだよ結花ちゃん、あれ通り雨とか通り嵐とかそういうのだから!」

「……ん?おかしいな、なんで僕こんなにナチュラルにディスられてるんだろ?」

「いやー、大人げなさ過ぎる栞さんもすてっぐへっ!?」

「喧しいぞ透、とりあえず東山くんに案内でもして貰おうそうしよう、身も蓋もないことに僕の傷心は君の部下のせいみたいなものだからねははは」

「……私よりよっぽど傍若無人ではこの人?」

 

 

 思わず真顔になりながら、二人を迎え入れる。

 ……はてさて、ここからどこに行ったものやら。

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「なるほど射的、僕の敵ではないな!狙い撃つ!」

「鮮やか過ぎる早打ちで景品が吹っ飛んでいく!?」

「輪投げもこの通り、余裕さ余裕!」

「鮮やかなスリーポイントショットだと……!?」

「ふはははは、金魚も浚ってしまおうか!」

「ポイが一切破れないぞこの人?!」

 

 

 ふはははは、と高笑いしながらあちこちの屋台を荒らし回る柳瀬先輩。

 ……いや、キャラ違くねって言うか、いつぞやかのクレーンゲームの時も思ったけど、この人放っておくと全部持っていっちゃうタイプの祭り荒らしだこれ!?

 うおーっ!このままでは学生達の楽しい文化祭が破壊されてしまうー!!

 

 

「柳瀬先輩っ!!りんご飴とか焼きそばとかどっすか!お腹空いたんじゃないっすか!」

「んん?いやお昼は君達のところで取るから別に……」

「いやいやいや!うち軽食ホットサンドしか置いてないんで!どう考えても足りないと思うんで!!ほら焼きそばですよりんご飴ですよクレープですよっ!!!」

「お、おうっ!?あ、ありがとう東山くん」

 

 

 仕方がないので私財を擲ってとにかく食べ物をトストストス!

 奴を自由にさせるな、とにかく足止めするんだ!……みたいな感じでぽいぽい食料を買い与える。ほれ秋山さんも、手伝って手伝って!

 

 

「楽しい文化祭を守る為……くっ!その熱意に感動したっす!こうなれば不肖秋山透、当たって砕けるっす!」

「あ、秋山さーん!?」

「うおーっ!栞さん、あーんっ!!」

「は、はぁっ!?いきなり何を言ってるんだ君は!?」

「栞さんが!あーんするまで!自分は!チョコバナナを差し出すのを止めないっ!!!」

「なんでよりによってチョコバナナなんか持ってきてるんだ君はっ!?」

 

 

 お、おお!やったぞ!秋山さんの自爆ムーブで柳瀬先輩を押し留めることに成功した!……なんか代わりに秋山さんがヘンタイの汚名を賜ってる気がするけど、そんなの誤差だよ誤差!

 頑張れ秋山さん!負けるな秋山さん!貴方の頑張りが、うちの学校を救うんだ!!……みたいな感じで後ろから応援をすると、秋山さんがさらに燃え上がっていた。

 

 

「うおーっ!負けられない戦いがあるっすよーっ!!俺、栞さんのビキニ姿が見たーいっ!!」

「ぶふぅっ!!?なななななんてことを公衆の面前で口走ってるんだ君は!?というか東山くんも!!煽るの止めてくれ!ここぞとばかりに君が一転攻勢にでてるのは、身も蓋もなくバレバレなんだぞ?!」

「おっとバレてた。だが私は止めない負けない曲げられない!オペレーション・フォーリンダウンダーリン(とりあえず彼氏を煽れ作戦)はまだ始まったばかりなのだから!」

「……なんだこの状況、地獄か?」

 

 

 わーぎゃー言いながらあちこち転戦する私達。

 後ろから冷ややかな晃の視線が刺さってたけど誤差……誤差にできてない気がするけど今は無視だ、全ての責任は後で先生が取る!……なんで?!って聞こえた気がするけど気にしなーい。

 

 そんなこんなで、どうにか文化祭を守りきった私達は、連れだって部室に向かうのでした。

 

 

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