百合ゲー世界に転生したらなんかちょっと思ってたのと違った件について   作:アークフィア

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祭りは続き、人々は笑う

「はい、そろそろ交代の時間なので行きましょうか柳瀬先輩」

「……ふむ?なるほどなるほど。つまりこれから、東山君が最高のおもてなしを僕達に見せてくれる、と言うわけだね?」

「……そうですけど、なんというかアレな言い方ですね柳瀬先輩」

 

 

 散々文化祭を荒らし回ろうとした柳瀬さんを、どうにか阻止しきった私達は、そろそろ交代の時間となっていたので一路、三階の部室へと歩を進めていた。

 その道中、二人と会話をしていたのだが……なんというか、遠慮がなくなった感じだなぁ今日の柳瀬先輩、なんて思う私。

 そんなこちらの考えに気付いたのか、彼女は薄く笑みを浮かべながら答えを告げる。

 

 

「まぁ、寝食を共にもしたしね。今更変に遠慮するのもアレだろう、というやつだよ」

「それにしたってちょっとは遠慮して貰いたい気もするんですけど……まぁ、柳瀬さんがそれでいいなら、こっちとしても別に構いませんよ」

 

 

 彼女の言葉に、確かにと小さく頷く。

 変に遠慮されるのがアレ、というのは確かにって感じだしねぇ。

 そんなことを話ながら、到着した我が部室。……見たところ客の入りはそれなり、と言った感じだろうか。

 

 

「……ふぅ。さて次は……っと、桐依さんが居るということは、もう交代の時間ですのね?」

「そっ、お疲れ様美玲さん。着替えてくるんで、ちょっと待っててねー」

「はい、お待ちしておりますわね。……ところで、そちらの方は?」

「おや、そちらとは初めましてかな?僕は……」

 

 

 後ろで挨拶をし始めた柳瀬さんと美玲さんを置いて、晃と共に物置のほうへ。彼専用に作られた、着替え用の囲いに晃が入るのを見届けて、私もさっさと着替える。

 姿見の前で服によれやシワがないかを確認してよしと頷くと、晃もちょうど着替えを終えたみたいだったのでこちらも確認したのち、二人で外へ。

 

 

「……ん、これはまた中々、二人とも似合ってるじゃないか」

彼氏さんのほうはなんで毎回俺の好みを突いてくるんすか……

「……秋山さんやっぱりちょっとアレですね?」

「うぇ!?聞かれてたっすか?!」

「すみません、注文は桐依のほうにお願いします」

「露骨に避けられてる!?」

「はいはい、和風メイドも素晴らしいってのは確かですが、これうちのなんでお手付き厳禁でお願いしまーす」

「彼女さんまで?!ご、誤解!誤解っすよ!!?」

 

 

 先輩達の前に出ると、中々の高評価。

 ……秋山さんは高評価を通り越してる言葉が漏れてた気がしたけど。やっぱりこの人ちょっとアレだな?

 すすす、と私の後ろに隠れる晃を庇うように更に背中に隠しつつ、営業スマイルを浮かべる私に、秋山さんは悲鳴染みた弁明を行うけど……。

 

 

「あー、客引き終わりー。つっかれたー……って、栞さんっ!?ってことは兄ちゃん!?」

「うぇっ!?昴がなんでここに?!っす!」

 

 

 案の定な関係だったあっきーが客引きから戻ってきたことで、全てうやむやになるのであった。

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「ふぅん、秋山さんとあの人が兄妹だったなんてね。……言われて見ると、なんとなく雰囲気が似てるわね」

「そうだねー」

 

 

 私としては原作で兄とか居たかなってちょっと考えちゃうんだけど。……なんて言葉は口に出さず、帰ってきていた朱紅奈さんの言葉に頷く私。

 私達の視界の先では、休憩時間になったあっきーと秋山さんが、席に座ってあれこれと会話をする姿があった。

 

 

「そりゃまぁ、来てもいいとは言ったけど、そんなピンポイントにここに来るとかある?しかも、兄ちゃんってばきりえん達をナンパしたことあるってことだよね?栞さんとの馴れ初めでそんなこと言ってたし」

「あ、あははははは、も、黙秘権を使わせて欲しいっす……」

「そうそう、彼僕と付き合う前はとかく数を稼いでその分玉砕していたらしいからね。しかも、あの二人に関しては堀ノ内君の方に熱を上げていたらしいというのだから驚きだよね」

「……なんですとー!?」

「ぎゃあ!?なんでバラすんすか栞さんっ!!?」

 

 

 ……結局うやむやになってないでやんの。

 てんやわんやとあれこれ言われまくっている秋山さんだが、ちょっと今回の一件に関しては、私もフォローのしようがないのでそのまま責められ続けててください。

 そもそも好きでしょ、そういうの。……なんか、違うっすよ!って聞こえた気がするけど気のせいだな、うん。

 

 そのまま店の運営に移行。

 ホットサンドとチュロスと後は飲み物を淹れるくらいのシンプルな業務だけど、それでもまぁ客商売は客商売なので慎重に。

 二人が頼んでたのはそれぞれ一品ずつとミルクティだったので、飲み物を晃に任せてチュロスを揚げつつ、ホットサンドメーカーに食パンとチーズとハムとレタスを投入。蓋を閉めてしばらく放置。

 

 揚がったチュロスの油を切って、皿に盛り付けたのち上からシナモンシュガーとメープルシロップを重ならないようにたっぷりと掛けて、一品完成。

 そうこうしている内にホットサンドもいい感じに焼きあがったのでこっちも皿に盛り付け、出来上がったモノを未だにあーだこーだと騒いでいる二人の前のテーブルに持っていく。

 

 

「はい、お待たせしましたお客様、ご注文のホットサンドとチュロスでございます。……ホットサンド側、ケチャップで文字でも書きましょうか?」

「お、何を書くのかちょっと興味があるね、お願いしても?」

「はいはーい少々失礼」

 

 

 メイド喫茶と言えばオムライスなんていうけれど、あれどこが発祥なんだろうね?萌え萌えきゅーんとか死語でしょ確実に。……え、まだやってる店もあるんです?マジか、凄いなメイド喫茶。なんて感じで文字をかきかき。

 

 

「はい、こんな感じでいかがでしょう?」

「……いや、リアル心臓(ハート)を書かれてもどうすればいいのかわからないんだけど、身も蓋もないことに」

 

 

 柳瀬さんの反応がちょっと面白い。

 私が書いたのは、幾らか簡略化はしたもののリアルのほうのハートである。

 ……この日のために地味に練習してたので、披露できてとても満足です。流石に親しい人相手じゃないと中々やれないしねー。

 

 

「いや、まぁ、いいんだけどさ……」

「このチュロスうまいっふね!」

「バカっ!!食べながら喋らないでよ兄ちゃん!!」

「はべぇっ!?い、妹からも扱いが雑に……っ」

「いや、身も蓋もないことを言わせて貰えば前からそんな感じだったろう、君の扱いは」

「そんなバカな!?っす!」

 

 

 うーんこの。

 柳瀬さんも結構アレだけど、秋山さんのなんとも言えなさはもっとアレだな、と頷く。

 苦労してそうだなあっきー……なんて思っていたら、なんだかちょっと兄をべしべししてるのが楽しそうなような。

 

 

「……あっきー」

「ひゃっ!?な、なななななにきりえん?!」

 

 

 私は彼女の肩を叩いて、サムズアップと共に一つの言葉を送った。

 

 

「禁断の恋なら、すっごい応援するぜ!」

「なんかすごい勘違いされてる!?」

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「むぅ、違ったか。なんとなくラブの気配がしたような気がしたんだけどなぁ?」

「お前のそういうセンサーは、あんまりあてにならない気がするんだが」

「にゃにおぅ、少年漫画も少女漫画も共に愛していた私が、ラブの香りを間違えるわけないだろ同胞!」

「自分の経験でもないものが経験値になるかバカ」

「なんだとー!」

 

 

 柳瀬さん一行が食事を終えて去っていってから、大体三十分くらい。店の入りはまぁまぁ、と言った感じ。

 

 たまに写真を撮りたがる人が居るからそれを受けたりしているものの、それ以外は特に忙しくもなく、普通に調理して普通に接客して……といった風に、極端に忙しいわけでも暇なわけでもなく、充実したメイドライフを送っている感じはあった。

 

 

「あ、ホントに姉ちゃんだ」

「……ん?って(かける)、来てたんだね?」

「母さんと一緒に来たんだよー」

 

 

 そんな風にチュロスを揚げたりしていると、入り口から聞いたことのある声。

 視線を向ければ、そこに居たのはうちの弟だった。その後ろではお母さんがひらひらと手を振っている。

 ……お母さんが来るのは知ってたけど、弟も一緒に来るのはちょっと予想外かなー?なんて思いながら二人を席にご案内。

 

 メニューは決まってるので弟にはホットサンドを、お母さんにはチュロスをオススメしておく。……想定通り、二人がそれらを頼んだのを聞いて準備に取り掛かる。

 

 

「それにしても……晃君、その服似合ってるわねー」

「はぁ、どうも。自分ではそういうのよくわかんないんで、そう言って貰えると助かります」

「……兄ちゃん似合いすぎじゃね?」

「そうか?なんかちょっと恥ずかしいな」

「……………」

 

 

 ……ん?

 私が調理中なので晃が接客してくれてるんだけど、なんか不穏な空気が漂ってない?具体的には、弟の性癖がねじ曲がり始めてない?

 

 私の視線の先では、自身の服装を褒められてちょっと照れたようにターンをしたりして見せてる(正確には自分の姿を確かめるために、ちょっと背中を見ようとして体を捻ってるって感じだろうけど)晃の姿を、放心したように見詰める弟の姿。

 ……いや母!晃褒めるのはいいんだけど!弟を見てやって!

 ちょっとヤバい扉を開きそうになってる気がする!確かに和風メイドな晃は可愛いけど!見惚れるのは止めよう!そもそもそれ私のだ!

 

 みたいな念を込めて三人を見詰める私。

 ……気付いた母が晃に手を振ると、彼はそのまま飲み物を淹れる為に後ろに下がっていった。……代わりに、準備の終わった私が皿を持って二人に近付いていく。

 

 

「お母さん、子供の情操教育はしっかりしようよ……」

「あら、好きになるのに別に理由とかは制限とか必要なくない?」

「……私を見ながら言うのは止めて、反論できなくなる」

 

 

 中身とか抜かしても、幼馴染みに女装させて喜んでる奴になってしまうので、なんも言い返せなくなるんだ私は、私を基準にするのは止めるんだ母よ。

 みたいなことを言い合いつつ、そっと視線を弟に向ける。……相変わらず放心状態である。大丈夫かこの弟……。

 

 

「はい、ご注文の紅茶ですよ……ってなにしてんだ桐依?」

「弟の中から不埒な感情を払おうとしてるところ」

 

 

 わしゃわしゃと頭を撫でることで煩悩を振り払おうとする私と、やーめーろーよーと流石に嫌がっている弟の熱きバトル。……こんな下らないバトルなぞしとうなかったぞ私は……。

 

 

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