百合ゲー世界に転生したらなんかちょっと思ってたのと違った件について   作:アークフィア

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祭りは終わり、灰が残る

「さーて弟よ、邪な気分は晴れたかなー?」

「晴れる前に世界がぐわんぐわんだよー」

 

 

 はてさて、煩悩退散のためにちょっと多めにわしゃわしゃと振り回していたら、やり過ぎたのか目を回している弟の姿がそこに。

 ……だが私は謝らないぞ、だって弟が晃に見惚れる、とかいうトンでも行動を晒すからこうなったんだし。

 

 

「はいはい、大丈夫か翔」

「に、兄ちゃん……!」

「だから甘やかしちゃダメだってば!そうやって甘やかすとまーた見惚れるんだから!」

「いや、何言ってるんだお前?」

 

 

 そうして弟を見ていたら、横から手を伸ばして翔の頭を撫でる晃が。……だーかーらー!!そーいうのよくないって今言ってたんですけどー!!?

 そう言いながら詰め寄ってみるけど、当の晃は困惑顔。

 ……ぬぅ、今の自分がなにをやっているのかわかってない様子。

 そういう行動が、いたいけな少年少女達の性癖を歪めちまう……ってのが分からんのかこの幼馴染み?!

 

 

「とーにーかーくー!晃は翔に触るの禁止ー!」

「はぁ?」

「姉ちゃんおーぼーすぎるよー!」

「だまらっしゃい!これはアンタのためでもあるの!」

「あらあらまぁまぁ」

 

 

 母が微笑ましげに私達を見ているけれど、今の私には関係ない。とりあえずこの無自覚男をどうにかせねばならぬのだ私は……!

 

 謎の使命感に燃える私と、わけがわからないと困惑しきりの晃。間に挟まれた翔がくらくらして、横で母がうふふと笑う。

 

 

「……これは、どういう状況なのです?」

 

 

 そんな意味不明な状況は、交代時間になったので部室に戻ってきた鈴莉ちゃんに、なにやってるんですかと声をかけられるまで続いたのでした。

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「うーむ、お昼を過ぎてるから人通りなんて少なくなるかなと思ってたんだけど、意外と人の波は多いままだねぇ」

「そうだな」

 

 

 鈴莉ちゃんと交代した私達は、今度は中庭に降りて客引きをしているわけなのだけど。……時刻は大体三時くらい、人の入りもそろそろ減ってきてもおかしくないと思っていたのだけれど、これがなかなか。

 

 

「流石にピーク時に比べれば減ってるんだろうけどな」

「それでも結構な人だよねぇ。……あ、メイド喫茶やってまーす」

 

 

 中庭を通る人に看板を見せて、笑顔で案内するだけの簡単なお仕事……のはずなんだけど。

 店のほうでもそうだったけど、意外と写真を一緒に撮りたい、って人が多いので、案内だけで済まないというか。

 

 まぁ何にも知らない状態で目の前にメイドさんが居たら、私も写真撮らせて下さいって頼んでただろうし、特別文句とかはないんだけどさ。

 

 

「実際笑顔だもんな、お前」

「キリッとしたメイドさんもいいけど、写真撮るならやっぱり笑っておくのがいいと私は思います」

 

 

 本日何度目かの写真撮影のお願いを受けながら、カメラに向かって微笑む。……うむ、今の笑みは不自然じゃない、いい感じの笑みだったんじゃないかな?

 

 男女のカップルらしい人に手を振って、元の場所に戻る。

 ……中庭での客引きはわりと厳正に使っていい場所が決められているので、長時間離れていると風紀委員からの指導が入るのだ、なのでちゃんと定位置に撤退撤退。

 

 

「はいはーい、客引きをナンパか何かと勘違いしてませんかー?野球部は一時間客引き禁止でーす」

「そんな殺生な!?っていうか一時間ってほぼ終わりじゃんか!?」

「恨み言は聞きませーん、ルールを守れないモノには鉄槌あるのみでーす」

「ぐわぁーっ!!?」

「……野球部が死んだな」

「あそこはいつも通りだねぇ」

 

 

 なんて感じに指導の話をしていたら、都合よく例を示すかのように野球部が撃沈していた。……あそこはすーぐ調子に乗るからなぁ、自業自得というか。

 ……ってん?なんでこっちに向かってくるんです風紀委員さん?

 

 

「文芸部も、人気なのはわかってますので、さっさと人波を捌いて下さいねー」

「へ?……あ」

 

 

 野球部のほうを見ていたから気付かなかったけど、いつの間にやら写真希望の人が並んでいた。……いや、別に私らコスプレ撮影のためにここに居るのではないんですけどねぇ……?

 

 午前の間もこんな感じだったのだろうかと思いつつ、写真を撮って案内をして、を繰り返す私達。

 そうこうしているうちに、人足も次第に減っていき──。

 

 

「……お、終了放送」

「ってことはこれで終わりかぁ。……なんか最後のほうずっと写真撮ってたような気がするよ私……」

「帰る前に記念に一枚、って感じだったもんな」

 

 

 校内に響く文化祭終了の放送に、小さく息を吐いて看板を下ろす。

 ……向こうがどうなっているかはわからないけど、大きなトラブルもなく文化祭を終える事ができたのは、とても喜ばしいことだと言えるだろう。

 校内に残った僅かなお客さん達も、ぱらぱらと校門から外に出ていっている。

 

 

「これから撤収作業して、そのあと後夜祭か」

「おっとそういやそうだった。一応まだ終わりじゃないんだっけか」

 

 

 流石にちょっと疲れたな、なんて思っていたのだけど。

 そういえばまだ完全に終わったわけではない、ってことを晃の言で思い出して、改めて気合いを入れ直す。

 祭は片付けまで含む、というやつである。さて、もう一踏ん張りといきますか!

 

 

 

☆  ☆  ☆

 

 

 

「へーいお疲れさまー!」

「おお、あっきーもお疲れさま。いや、色々ありがとね」

「いや、楽しかったしいいよいいよ」

 

 

 部室の片付けをしていると、あっきーがどーん、って感じに室内に飛び込んできた。軽く挨拶を返しながら、机やら椅子やらを通常の配置に戻していく。

 ……ふむ、これはもう倉庫に置いといたほうがいいか。

 それと花瓶類は纏めて借りたところに返しに行くとして……、なんて感じに片付けをしていたんだけど。

 

 

「…………」

(……なんか、めっちゃ見られてる)

 

 

 背中のほうになーんか熱い視線を感じるんだよなぁ……?

 いや、なんでそんな熱線がでそうなくらいにこっちに視線を送ってきてるんですこの子?

 とは思うものの、なにかを言い出そうとするでもなく単に見詰められているだけなので、こっちもなにかを言うって感じにできないでいるというか……。

 

 

「おーい、これどうする?」

「おっと同胞。それはまだ使うだろうから置いといて。……それと、あっきーに何か仕事振り分けてあげて、暇そうだから」

「にゃっ!!?」

「猫?……いやまぁ、みんなの分のメイド服のクリーニングとかあるから、それを持っていく手伝いとかでもいいか?」

「おおおおっけー!暇そうだもんね私!手伝う手伝う!」

「……あ、いや、そっちじゃなくてこっち」

「ぎゃあっ!!?ごごごごめんねほりっち!」

(……なんだろうこの面白い生き物)

 

 

 運良く晃が戻ってきたので、彼の手伝い役としてあっきーをトス!……いきなり声を掛けられたあっきーが盛大にバグってたけど。なんだこの面白い動き。

 私が見る前で、あっきーはあっちでどかーん、こっちでぼかーん、と言った感じで盛大に慌てまくっている。……なにかを言おうとしてたけど、それを口に出す前に私が他のこと頼んじゃったから処理がバグったのかな?

 ならまぁ、あとであっきーの為に時間を取ってあげることにしよう。それはそれとして、

 

 

「そろそろ時間だし、一回荷物は置いてグラウンド行く?」

「……ん?おっと、フォークダンスの時間か」

「うぇえもうそんな時間なの?!マジで!?」

 

 

 時刻が七時を回っているので、そろそろ後夜祭の開始時間である。

 それを伝えたあとの二人の様子はまさに対極、なんというかもうちょっと落ち着きなよあっきー、という感想しかでてこないぞこれ?

 

 

「ま、とりあえず降りよう、みんな集まってるだろうし」

 

 

 二人を促して、部室を出る。周囲には、私達と同じようにグラウンドに向かっているのだろう生徒達の姿が、チラホラとあった。……ふむ、みんな意外と片付けだらだらしてるんだねぇ。

 

 

「それだけ、ってことも無いんじゃないか?」

「おっと同胞、そういうのはいいっこ無しだぜ?」

「え、なに?なんのこと?」

「ええ、あっきーならすぐに思い至るかと思ってたんだけど」

「え?……あ、ああ!そういうこと!?もしかしてそういうこと!?」

「そういうことしてる奴等が驚くから止めてやれ……」

 

 

 まぁ、だらだらというか、もっと別なことしてるのも居るかもしれないけれど。……学校公認で夜の校舎に居座れるんだから、色々やろうとする人もまぁ居ないこともないだろうねぇ?

 ……あっきーならそのあたりすぐに気付きそうなものだけど、なんかテンパってるせいか微妙にぽんこつである。あらやだ可愛い。

 

 なんてことを喋りながら歩いていたら、いつの間にかグラウンドに着いていた。私達に気が付いた鈴莉ちゃん達が、走ってこっちに向かってくる。

 

 

「お疲れさまです先輩!その、片付けをお二人でやるのは大変だったりしませんでしたか?」

「……任せてしまって、ごめんなさい」

「いやいや、別に大丈夫だよ。そっちこそ、クラスの片付けは終わったの?」

「お陰さまで、順調に終わりました!」

「……いえーい」

 

 

 近付いてきた二人から飛び出した謝罪の言葉に大丈夫だったよと返す。

 ……こっちはクラスでやっていたのが展示だったから片付けとかは無かったし、手が空いてる人間に任せるのは別に悪いことではない。なので逆に二人のクラスは大丈夫だったのかを聞いたのだけど、特に問題はなかったようだ。

 鈴莉ちゃんと結花ちゃんの頭を撫でつつ会話を楽しんでいると、買い出しに行っていた朱紅奈さんと美玲さんが戻ってきた。

 

 

「片付けば終わった?」

「もうちょっとかなー。そっちの買い出しは?」

「飲み物も食べ物もしっかりと。……ですが、本当に宜しかったのですか?私達生徒会も打ち上げに参加させて貰えるだなんて」

「いやいや、参加しないほうが嘘でしょ?美玲さん達が手伝ってくれてなかったらそもそも始まってすら無かったわけだし」

 

 

 二人には売り上げの一部を使って打ち上げ用の食事の買い出しを頼んでいたのだけれど、いい感じに買ってきたみたいだ。

 後夜祭が終わったら先生も誘って打ち上げである、そっちもまぁ、楽しみは楽しみだ。

 

 

「……あ、音楽」

「ふむ、フォークダンスって踊りかたよくわかんないんだよねー。晃踊れる?」

「……いや、去年やっ……ああいや、なるほど。ああ、まぁお前よりは踊れると思うぞ?」

「ほんとー?じゃあリード任せたー」

「……また下手くそな誘いかたというか」

「いいんですー、うちのなのでー」

 

 

 音楽が始まったので、晃を誘って生徒達の輪の中へ。

 ……ふむ、なんというか恥ずかしいなこういうの。なんて思いながら彼を見れば。

 

 

「……私より楽しそうじゃない?」

「そうか?そうかもな」

 

 

 あまりにも楽しそうに笑うものだから、こちらもつられて笑みを浮かべて。

 薄暗い校内を篝火が照らす中、下手くそなステップを踏む私達なのだった。

 

 

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