百合ゲー世界に転生したらなんかちょっと思ってたのと違った件について   作:アークフィア

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人は集い、過去に思いを馳せ

「ウーン。お礼がシタイ、だけデハそこで終わりデース。もっと、色々思ってタはずなのデス」

「……って言われても、それを理解できるのはお前自身でしかないからなぁ」

 

 

 教室で転校生から話を聞いてみる……のだが、どうにも要領を得ない。

 ……名前を聞かせて欲しい、お礼がしたい、という部分で止まっていて、そこからどうしたいのかが想像できないのだそうだ。

 そこまで決まってるなら、友達になりたいとかそういう方向じゃないかと思うのだが。

 

 

「ナンか、こウ。うまく言えまセンケド、ソコがゴールじゃないような気がするノデス」

「友達より先、ねぇ……?」

 

 

 そこまで来るともう、結婚したいとかそういう方向になるんじゃなかろうか、そう言うと転校生は顔を真っ赤にして、両手をぶんぶん振って否定……否定?し始めた。

 

 

「け、けけけけけ結婚っ!?そ、ソコまでは求めてナイデス!……たぶん」

「多分ってお前……」

 

 

 暗に求めてるって白状しているようなもんじゃねぇか。

 ……いや、これはちょっと俺も先走り過ぎたか。だってそこまで好意的なら、いちいち俺に相談なんてしないだろこいつ。

 となると、やっぱり友達方向なんだろう、できれば単なる友達ではなく、親友とかになりたい……的な?

 

 

「……そうなのでショウカ?よくわかりマセン」

「まぁ、俺ら小学生だしなー」

 

 

 正直色々言ってみたけど、あんまりよく分からんしな。

 とりあえず俺はあの幼馴染みがちょっとは違う顔をするなら喜んで手伝うぞ、と転校生に約束するのだった。

 

 

 

★  ☆  ☆

 

 

 

「あの頃のアイツはとにかく刺々しかったからな」

「いや先輩?そこより遥かに衝撃的なものがありましたよね先輩?!」

 

 

 一度語るのを止めて、乾いた喉を紅茶で潤す。

 ……のだが、栗花落がなにやら興奮しているのでそちらに視線を向ける。はて、彼女が驚くようなものが何かあっただろうか?

 

 

「いやいやいや!?驚きますよ驚かないほうが嘘でしょ!?なんなんですか朱紅奈さんあのキャラ!?」

「……なんのことかしらわたしはなにもしらないわ」

「動揺の余り棒読みになっていますわね……」

「まぁ、今の刻遠野からしてみれば黒歴史もいいところだからな」

 

 

 典型的なカタコト外国人ムーブしてたとか、黒歴史を通り越して封印級ではなかろうか。

 まぁ俺は本人ではないので、どれくらいダメージ受けているのかなんてわからないわけだが。

 

 二人を宥めるのと、間食のための休憩時間を取ることにして、一時解散。

 俺がいつも通りに茶と菓子を持って戻ると、さすがに落ち着いたらしい二人がこちらに視線を向けてくる。

 

 

「……過去のことをわざわざ掘り起こしている以上、こうなるのはわかってたけど。……なんというか、キツいわね」

「キツさの意味が違うような気がしますけど……」

 

 

 栗花落からの視線を避けるように、全然違う方向を見ている刻遠野の姿は、なんというかいつもの彼女らしくない雰囲気だが。

 ……元々はこっちのほうが素に近いというのも確かだったりするのが、なんというか時の流れというものを感じざるをえないというか。

 

 

「では、続きと行きましょうか?」

「そうだな」

 

 

 さっきが転校生との出会いだから、次は生徒会長との話……だろうか。

 そのあたりは俺が語るより、本人が語るほうがいいだろう。

 そう告げると彼女は確かに頷いて、静かに過去を語り始めるのだった。

 

 

 

★  ★  ☆

 

 

 

 彼女を初めて見た時から、私はいつも言い様のない苛立ちを感じていました。

 今思えば、それは彼女の瞳が誰も写していなかったから、なのでしょうけど。

 それに気付けるほど聡いわけでもない、ただの小学生でしかなかった私にとって。

 彼女は単に、癇に障る相手でしか無かったのです。

 

 

「今度こそ!その面歪ませてやりますわ!!」

「へぇー、そりゃ凄い凄い。でもそういう言葉遣いはよくないんじゃないかね?」

「やかましい!貴方相手に丁寧を心掛けたところでなんになるというのですか!」

「む、そりゃ確かに」

「……あーもう!!そういうのがムカつくんですわー!!」

 

 

 表面上は余裕綽々、その実単にこっちを見ていないだけ。

 そんな目がとにかく気に食わなくて、いつも何かしら理由を付けて、彼女に挑み掛かっていた当時の私。

 今にして思えば、なんと幼稚な関わり方かと厚顔の至りではありますが。……そんな関わり方しか選べなかったのも、また事実だったのです。

 

 

「で?今回はなんの勝負?」

「ふっふっふっ、これですわー!!」

「……ふむ、オセロ?」

 

 

 前回はテストの点数、その一つ前はトランプ、さらにその一つ前はかけっこ……。

 そんな感じで重ねてきた彼女との勝負。

 ……それら全てで負け越して来た私が今回選んだのは、ボードゲームであるオセロ。

 その時は確か、家族と対戦をしてある程度腕を磨いてから、彼女に勝負を挑んだはずです。

 

 無論、練習をしてきたからといって勝てるわけでもないのは、賢明な皆様方であれば直ぐに察しが付くでしょうが。

 あの頃の私に───それも、彼女が関わると殊更熱くなってぽんこつと化す私に、まともな判断ができるはずもなく。

 意気揚々と勝ちを確信して挑んだ私は、それはもうモノの見事な大敗を喫したわけです。

 

 

「ま、負けましたわ?か、勝てると思ったのに、ぶ、無様に負けを、重ねましたわ?!」

「………」

 

 

 負けの理由が分からずに困惑する私と、対面の席で仏頂面を浮かべている彼女。

 

 負けた私が困惑するのはわかりますが、勝ったはずの彼女が──それも、盤面のほとんどを白に染めた彼女がそんな顔をしていることに、当時の私は「バカにされている」と感じ。

 

 

「なんで、なんで貴方がそのような顔をするのですか!!私を笑っているのですか!?何度も無様に負けている私のことを!」

 

 

 なんて、今にしてみれば何を言っているんだ、と呆れてしまうようなことを彼女へと涙ながらに問い詰めたのです。

 そして、それを受けた彼女は。

 

 

「……いや、今のは惜しかった」

「……私を、バカにしているのですね!?」

「いや、そうじゃ……ああ、うん。それでいいやもう」

 

 

 小さく、こちらへの言葉を述べる彼女と。

 それがこちらへの賛辞のようなモノだったことに、遠回しにこちらを貶めているのだと受け取った私。

 彼女は何かを言おうとして、けれど諦めたように言葉を置いて。席を立ち、どこかへと去っていってしまいました。

 

 ……そして、私は。

 ますます頑なに、彼女を打ち負かして見せようと躍起になっていくのですが──それはまた、別の話ですわね。

 

 

 

★  ☆  ☆

 

 

 

「うわぁ」

「……なんですのその反応」

 

 

 語り終えた生徒会長に対して、栗花落がまたなんとも言えない表情を向けている。

 まぁ、言いたいことは分からなくもない。……うん、過去の生徒会長、大概口というか性格というかがキツい。

 今の彼女は礼儀正しい人物だが、昔の彼女は言葉の荒いお嬢様擬き、みたいな感じだ。

 

 とはいえ。刻遠野と違い、彼女は過去を忘れたりはしていない。……寧ろ、忘れられないままずっと過ごしていた人物である。

 

 

「それはそれで、色々と問題があったのも確かですけどね。……演劇祭の終わりを迎えるまで、彼女に挑み続けたというのは確かなのですから」

「ずっとそのあたりの対応をさせられてた俺は、このことに関しては文句を言ってもいいと思う」

「そ、その節に関しては、後に正式に謝罪を申し入れたではありませんか……っ」

 

 

 演劇祭の時以外も、あれこれと桐依の様子を伝えるはめになっていたので、彼女に対してはわりと借りまみれな俺である。

 ……いや、借りがあるからってなんだ、と言われればそれまでなのだが。

 

 

「……いや、なんというか。……今のところ先輩方の過去の汚点しか見えてこないのですが???」

「そりゃまぁ、小学生時代のことを黒歴史扱いしてた筆頭は桐依だけど、他の奴らも大概あの時期はやらかしてるもんだからな。……そのやらかしが小学生らしいものか、って聞かれるとなんとも言えないけども」

「なるほど?つまりある意味、皆さんの過去話に含まれない私は勝ち組めいていると?」

「……いやまぁ、そういう風に見ることもできるだろうけど。……それで嬉しいのかお前?」

「嬉しくないです!ずっと聞き手側なの正直つまらないです!」

「だろうな……」

 

 

 私もなにかこういい感じの過去とか語りたいです!

 ……なんてことを言い始めた栗花落にケーキを与えて宥めつつ、残り二人に視線を向ける。

 うん、なんかすごいいたたまれない空気になっている。……栗花落に黒歴史認定されたのがそんなに堪えたのか……。

 

 

「いや、ね?……改めてあの時期の自分を見つめ直してみると、こう、ね?」

「私も、朱紅奈さんとはまたニュアンスが違うのでしょうけれど、過去の自分を思うと胸というか喉というかが熱く苦いものに満たされるというか……」

「いや本気で凹んでるじゃねぇかお前ら、落ち着いて菓子でも食え、な?」

 

 

 冗談混じりに聞いたら本気で凹んでいた。

 ……気分が落ち込んでいる時は甘いものを食べろ、という感じに彼女達にも栗花落に与えたものと同じケーキを出しておく。

 

 なんてことをしていたら部室内に居なかった残り三人、先生と在原、秋山が部室内に入ってくる。

 

 

「あれ?きりえん居ないんだ……っていうか、なにこのお通夜ムード、どしたしすっべー、みれれん」

「……今は、その能天気さが癒しですわね」

「そうね、ちょっと気を抜きたい気分だったから、彼女のテンションはありがたいものがあるわね」

「うぇ?!これ褒められてるの?!バカにされてるのほりっち!?」

「いや、これは褒めて……いや生徒会長、そこで死ぬな、台詞が引っ掛かったのはわかるけども」

「わ、私の骨は、できれば海に撒いて頂ければ……」

なんだ、戦争でも起きたというのか(会長さんが死を覚悟したような事を)!?」

「……えっと……ごめんなさいね……?ちょっと……タイミング間違えたみたい……」

 

 

 先生の謝罪に、思わず苦笑する。

 アイツが居ないと空気が暗くなるから、こうして空元気でも出せるのならまだいい方だろう。

 

 俺は後から来た三人を椅子に座らせると、新しく彼等の分の飲み物を用意する為に席を立つのだった。

 

 

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