二次創作は初めてなので色々読みづらいかと思いますが、
感想などでアドバイスいただけると嬉しいです。
平日(ときどき休日も)は働いているのでのんびり投稿していきます。
母と子、光を追い求めて
「――――光の道筋が見えたのよ」
ウマ娘である母は昔を懐かしむような目つきをしてそう言った。
母は決してウマ娘として大成した方ではない。
当時海外レースを主戦場としていた母は、生涯でたったの6戦しかしておらず、勝利数はその半分の3勝にとどまった。
そして6戦目のレース途中で故障してしまい、そのままターフを去ることとなった。
だから母は競争バ時代の頃の話は大してしてくれない。困ったように苦笑いして誤魔化すのだ。
そんな母だが、とあるレースの映像だけは自慢げにしていたのを思い出す。
それは海外G1レースで、競争相手には「アイアンウマ娘」の異名を持つ名ウマ娘がいた。誰もが「アイアンウマ娘」に注目する中、パッとしない母はあまり特別な存在ではなかった。
しかしいざレースが始まると、母は一時先頭に立っていた「アイアンウマ娘」終盤一気に追い抜き、物凄い末脚で大きく差を広げて圧勝してみせたのだ。
当時の映像を見ていた私は、幼心ながらに鼻息を荒くしてテレビにかじりついていたように記憶している。それほど圧巻のレース内容だった。
映像の中で観客席に手を振ってみせる若き日の自身を見つめながら、母はポツリと先の言葉を漏らした。
「光のミチスジって?」
私は無邪気に問いかける。
母は自分が独りごちていたことに気付いていなかったらしく、若干照れくさそうに尻尾を揺らした。
「ええ、その通りよ。このレースは皆が横一線に並んだような状態で、後方に控えていた私の前に道がないのは分かるかしら?」
「うん。ママ、地味だからどこにいるのかまったく分からないや」
「ほほほ、一言余計よ。おほん、だけどね? このときの私には視えていたのよ。――『光の道筋』が」
母は映像を巻き戻し、バ群を割って姿を見せる瞬間を再生する。
「あの場にいた私にだけ、走るべき勝利のルートが視えたの。それは芝の上を明るく照らしているように視えたから『光の道筋』と呼んでいるのだけど。ともかくそのルートを走ると脚が確実に速くなって、壁のようだったバ群が嘘のように開けたのよ!」
当時を鮮明に思い出しているのか、母は握り拳を振って力説してみせた。
「そのおかげで私は『アイアンウマ娘』に勝てた。一着を取ったのはあの日が初めてじゃなかったけれど、あの日ほど格別な景色はなかったわ」
「だけどママ、このあとすぐに引退しちゃったんだよね」
「ええそうね。きっと『光の道筋』を追い求めすぎちゃったんだわ。あのルートを走ったときの全能感をもう一度味わいたくて無茶をして、フォームを乱して取り返しのつかない怪我を負った。アレは神様の贈り物だって分かっていたのに、強欲すぎて愛想をつかれちゃったんだわ、きっと」
自嘲気味に笑った母は私の髪を優しく撫でてくる。
「あなたも競走バになるの?」
「うん! ママを超えるウマ娘になる!」
「言ったわね? 本当になれるのかしら?」
「当たり前でしょ? だってママ3勝しかしてないじゃない」
「ほほほ、その毒交じりの口調、いったい誰に似たのかしら。それに3勝といってもG1レースを1度勝っているのだから、ママに勝つというのならG1を2勝しないと駄目よ」
「できるよ! だってママの娘だもの」
本当にこの子は、と言って少し乱暴に頭を撫でてくる母。
その表情を見ることはできなかったが、どことなく嬉しそうな声音のように聞こえた。
第2話は本日12時投稿予定です。
気になった方は続き読んでいただけると幸いです。