その光の名は   作:名無なな

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エイシンフラッシュとスマートファルコン①

 メイクデビュー戦2日前。昨日までで追い切りを終えたので、今日は本番に備えて軽く汗を流すだけに留め、調整が終わったのは午後3時過ぎだった。レースは阪神競バ場にて行われるため、明日は前泊して乗り込むのだ。

 

 エイシンフラッシュは1度寮に戻ってシャワーを浴び、今は俺と一緒にカフェテラスにいる。明日からの流れを再確認するためである。

 

 

「明後日は12時10分開始予定だから、会場には2時間前には着いておこう。レンタカーは向こうで借りてるから、阪神競バ場まで10分とかからないはずだよ」

 

「新幹線は8時の切符を購入済みなんですよね? ……新幹線を乗るのは初めてです」

 

「ああ。向こうには10:30頃に着く予定で、いったんホテルにチェックインし荷物を預けてから現地のトレセンで軽く身体を動かそう」

 

 エイシンフラッシュは自身の手帳に記したスケジュールと照合しながら、1つ1つ漏れなく確認していく。神経質になりすぎている、と捉えることもできるが彼女にとってはこれが平常運転なので問題ない。

 

 いつものようにコーヒーを啜っていると、背後から「あーっ!」という大声が鳴らされて、驚きのあまり吹き出しそうになるのを何とか堪える。首を捻って声の主を見やると、そこには色艶の良い栗毛をツインテールに結った、やや小さめのウマ娘がこちらに手を振っていた。

 

「フラッシュさーん! お疲れさまー☆」

 

 勢いよくこちらに歩み寄ってくる姿を見て、エイシンフラッシュに目配せする。

 

「彼女とは知り合い?」

 

「はい。彼女とは同室で――」

 

 エイシンフラッシュが何者か答える前に、栗毛の彼女は元気いっぱいな様子で俺とエイシンフラッシュの間に立つ。カラフルなリボンが忙しなく揺れている。

 

「フラッシュさん、今度の日曜日レースなんだよね? おめでとう~っ!」

 

「まだレース前なのでおめでとうと言うには先走りすぎではないですか?」

 

「もぉ~。そうやってすぐイジワル言うんだから~。……って、もしかしてフラッシュさんのトレーナーさん!? ごめんなさい、きっと大事なお話してたんだよね?」

 

「いや、もう粗方終わってるから問題ないよ」

 

 そう言うと栗毛の彼女は良かった、と胸を撫で下ろした。エイシンフラッシュと違って喜怒哀楽が表に出やすく、同部屋だと言っていたが対照的な2人のように映る。

 

 栗毛の彼女は咳払い1つして、胸の前で両手を軽く握って可愛らしいポーズを作って言う。

 

 

「ちょっと遅れちゃったけど自己紹介ターイム! 私、スマートファルコン! トップウマドル目指してまーす☆ ファル子って呼んでね♪」

 

「ウマドル?」

 

「そう! ウマドルはアイドルウマ娘のことで、レースに勝ったときのウイニングライブで皆にキラキラと夢を与える存在なの!」

 

 なるほど、分からん。

 ウマドルがどういうものなのかいまいちティンとこないが、スマートファルコンの名前は聞いたことがある。確かダートを主戦場に置いていて、まだG1こそ勝ったことはないが現在重賞6連勝中の期待のウマ娘として特集されていたはずだ。

 

 スマートファルコンはエイシンフラッシュの隣の席に座り、何故だか嬉しそうに笑っている。個人的にエイシンフラッシュが苦手なタイプかも? と思っていたが、彼女もなんだかんだ気を許しているのか、ふっと肩の力を抜いている。

 

「ところでファルコンさん、何か私に用があったのではありませんか?」

 

「う~ん、何か用事があるわけじゃなかったんだけど、フラッシュさんが今度レースに出るから応援したくて!」

 

「ありがとうございます。そういうファルコンさんもレースが近いのでは? 私の心配をしてくれるのはありがたいですが、まずは自分のことをしっかりしてくださいね」

 

「うん、ありがとーっ! えへへ、逆に私が励まされちゃった☆」

 

 若者同士の会話に俺はなかなか入れないが、当人たちは盛り上がっている様子だ。俺とエイシンフラッシュとではなかなか世間話で時間を潰す機会がなく、だいたいがレースやトレーニングに関することばかりでお堅い内容がほとんどである。俺も彼女と話が合うような話題を勉強しなくちゃな。

 

 そうだ、とせっかくの機会なので俺はスマートファルコンに尋ねてみる。

 

「スマートファルコン」

 

「ファル子でいいよ?」

 

「スマートファルコンは既にレースを多く経験していると聞く。よかったら初めてのレースに備えて、何かアドバイスをもらえないかな?」

 

「うぅ、フラッシュさんと一緒でトレーナーさんも譲らないな~」

 

 いきなり馴れ馴れしく女の子を愛称で呼べるほど俺は図太くない。エイシンフラッシュのことだってまだそのまま呼んでいるのに。

 

 俺の問いかけにスマートファルコンはうーん、と指先を両こめかみに当てて唸っている。

 

 

「レース……アドバイスかぁ。確かにちょっぴり緊張はしたけど、特別意識したことはないかな~。ファル子はとにかく逃げることしか考えてなかったから、先行や差しと違って考えることが少なかったからかも」

 

「そうか……」

 

「あ、でもでも! デビュー戦で1番覚えてることがあるよ!」

 

 

 ずい、と俺とエイシンフラッシュは若干前のめりになって答えを待つ。スマートファルコンは僅かに圧を感じたのか、苦笑いを浮かべて言った。

 

 

 




スマートファルコン登場回。
正直アプリで既出キャラはそれぞれで解釈違いが起きそうだからあんまり出したくないのよね……。

長くなりそうなので次話に続きます。
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