お盆はいくつか出社しないといけませんが、なるべく投稿頻度を上げていこうと思います。
正月とスゴロク
元日。
俺は朝早くから1人で初詣に行き、超混雑に苦戦しながら参拝、おみくじ、お守り購入と当初の予定を遂行した。ちなみにおみくじは小吉だった。
その後、俺はトレーナー室へと赴き大掃除をすることにした。本来なら年末までにやっておくべきことなのだが、親交のあるトレーナーたちとの忘年会が複数回あったため、なかなか時間が取れなかったのだ。
「時間が取れなかったか。はは、フラッシュが聞いたら説教されるだろうな」
床に掃除機をかけながら独りごちる。秒単位でスケジュールを組む彼女に知られるわけにはいかないな。
「――私を呼びましたか?」
「どぅえええっ!?」
自分でもどこから出したか分からないような悲鳴が漏れた。飛び跳ねるようにして背後の声の主から距離を取る。やはりと言うべきか、エイシンフラッシュがそこにはいた。
俺は掃除機のスイッチをオフにして尋ねる。
「ど、どうしてここにいるんだ?」
「先ほどノックをしたんですが、返事がなかったもので。恐らく掃除機の音で聞こえなかったのでしょう」
「そ、そうなの……」
「それで? 私の名前を呟いたように聞こえたのですが」
「へ? あー、いやー、フラッシュは今頃何をしてるのかなーって! ほら、昨日はスマートファルコンと年末ライブに行ってたんだろう?」
偽る必要はないのだろうが、独り言を聞かれたというのが妙に決まりが悪く、つい話を逸らしてしまった。
それを聞くとエイシンフラッシュは僅かに口元を緩めて言った。
「凄く楽しかったですよ。来場者数が51228人とほぼ満席状態で熱気も凄かったです。ほぼ時間通りに終了したのもよかったですね。その後はいったん寮へと戻ってから初日の出をファルコンさんと拝みに行きました」
初日の出かー。俺も学生時代は付き添いで何度か行ったが、通常の日の出とはまた違って映るのがとても印象的だった。去年と今年は行けてないから、来年は久しぶりに行ってみようかな。
そう言えば新年になって大事なことを言うことを忘れていた。俺は彼女に向かって頭を下げる。
「明けましておめでとう。今年もよろしく」
「……こちらこそ明けましておめでとうございます」
親しき仲にも礼儀あり。こういうのはきちんと済ませないとな。あるいは彼女も新年の挨拶を言いに来たのかもしれない。
俺にとっての今年の抱負は『エイシンフラッシュをクラシックで勝たせること』。クラシックで勝つということは即ちヴィクトリーピザに勝つことにも繋がる。
すぐにでもクラシック級に向けてすり合わせをしたいところだが、彼女とはオフの日は徹底的に休むと何度も話している。ここでレースに関する話をしても乗ってこないだろう。
しかしこのまま彼女を帰すというのも素っ気ない。となると何か正月らしいことでもやってみたいものだが……。
1人で考えていても仕方ないので、考えていることをそのままエイシンフラッシュへと打ち明ける。
「フラッシュはこの後何か用事があるのか?」
「いえ、特にはありません」
「そうか。ならせっかくだし、正月っぽいことをやろうかなと思うんだけどフラッシュもどうだろう? ほら、キミはドイツから来て、まだ日本の文化に馴染みも薄いところがあるだろうし」
「そうですね……。確かに文化に触れる良い機会かもしれません」
「とすると……無難に書初めか、あるいは室内でできる福笑いとかすごろくとかもあるな」
先ほど掃除しているときに、前任者が置いていったらしい正月遊び道具をいくつか発見したのだ。せっかくなので有効活用させてもらおう。
エイシンフラッシュは数ある道具の中から1つを選択した。それは古き良きスゴロクだった。
「スゴロクか……。何か理由でも?」
「実は父が昔、日本のお土産として買ってきてくれたことがあるんです。それで少し懐かしく思えて……」
「そうだったのか。良いお父さんなんだな」
思えば彼女は両親の話をするとき、普段と違う柔らかな表情を見せてくれる。彼女自身も両親を愛しているし、尊敬もしているのだとよく分かる。
早速俺たちはスゴロクシートを準備し、いざゲームをプレイしていく。
――――だが。
「おかしい……。こんなこと、確率的にあり得ない……っ!」
日本各地を巡るという設定のスゴロクを前に、エイシンフラッシュは「認められない」といった風に歯ぎしりをしている。
北海道から日本海沿いを進んでいき、沖縄でUターンしてゴールの東京を目指すのだが、開始8ターンで俺は順調に沖縄を通過し、今は九州地方手前まで駒を進めている。一方でエイシンフラッシュはと言うと、未だ東北地方あたりでウロウロしていた。
それもそのはず、彼女はここまでさいころの出目をほとんど1しか出していないのだ。たまに大きい数字を出したかと思えば「数マス戻る」を踏んだりと、とてつもないアンラッキーに見舞われているのである。
そして次のサイコロも1を出し、彼女は虚しそうに駒を1つ進める。
「ふふ……。こうも1が連続で出ると、少しおかしく思えてきました」
「それはほら! 確率って結局収束するって言うし、100回振ったら良い感じの期待値になってるはずだよ、うん」
自嘲気味に笑う彼女を見るに見かねてフォローを入れる。彼女もウマ娘らしく負けず嫌いだからなぁ。わざと負けて接待プレイしようにも運勝負ではそれもできない。
俺はサイコロを握り締め、振る前に改めて言葉を繋ぐ。
「それに日本のおみくじ文化独自の話なんだが、年明けに凶を引くと後は運気が上がるだけ、って言われているんだ。だからキミもここが運気の底と考えよう!」
「根拠の乏しい仮設だとは思いますが……ちなみに、大吉を引いた場合はどうなるんですか?」
「年明け早々ついてるね。今年は良い1年になるよって流れになるだろうな」
「ものは言いようですね……」
エイシンフラッシュは僅かに笑いながら、呆れた声を漏らした。
俺はサイコロを振る。出目は6。彼女とは対照的な出目を確認して、少しだけ気まずい思いをしたのだった。
やる気下がりそうなイベントでした。
レオ杯は先行オグリ、差しナリブ、追込デバフ会長で現状行く予定です。
逃げのウンスは会長の独占力がなんとかしてくれるのを祈ります。