戦姫絶唱シンフォギア ・イフ   作:邪神イリス

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森の奥深くにある屋敷の近くの湖畔の浅橋で、赤いドレスのような服を着た少女・・・・クリスは、片手にソロモンの杖を持ち、1人湖を眺め、昨日のことを思い出してか、歯噛みしていた。

(完全聖遺物の起動には相応のフォニックゲインが必要だって、フィーネは言っていた)

実際、クリスはソロモンの杖を起動するのに、半年もの時間が掛かった。

だが、同じ完全聖遺物であるデュランダルの起動を響はあっという間に成し遂げた・・・・・・・
そればかりか、無理やり力をぶっ放してみせたのだ。
おまけに、捕獲対象であるイフは、その一撃を真っ正面から受け止めきって見せた。

「化け物共め・・・・!」

歯ぎしりした口から、そう呟き、手に持つソロモンの杖を握りしめる。

ガングニールの破片をその身に宿し、完全聖遺物を起動させた、立花響。
複数の聖遺物の力を行使する異形の怪物、イフ。

「このアタシに身柄の確保をさせるぐらい、『フィーネ』はアイツらにご執心という訳かよ」

目を閉じて脳裏に思い浮かぶのは、嫌という程人の醜さを見せつけられた自身の過去。

「・・・そしてまた、アタシは一人ぼっちになる訳だ・・・・」

山の影から太陽が昇るのを見つめていると、ふと背後に気配を感じて振り向いた。

そこには、黒いドレスのようなモノと帽子を被った金髪の女性が静かに佇んでいた。

「・・・分かっている。自分に課せられた事くらいは。こんなものがなくたって、あんたの言うことくらいやってやらぁ!」

クリスは女性に向かってソロモンの杖を投げ渡すと、女性に宣言した。

「奴等よりもアタシの方が優秀だって事を見せてやる。そしてアタシ以外に力を持つ奴を全部この手でぶちのめしてやる!そいつがアタシの目的だからな!」


ぶつけ合う思い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーっと、確か402号室だったよな。おっ、あったあった」

 

デュランダル護送任務から数日が経ったある日、奏はお見舞いの品を持って、翼が入院している私立リディアン音楽院高等科に隣接した総合病院にやって来ていた。

 

「(さてと、予想が正しければ・・・・・)翼ー、入るぞー」

 

扉をノックして、病室内に踏み入れる奏だったが、病室内を見渡すと、呆れた様子で頭を抱える。

 

「やっぱりなぁ・・・・・」

 

「どうしたの?奏」

 

そこに、後ろからやって来た翼が声を掛ける。

奏が無言で病室内に指を刺すと、翼はそれに気づく。

 

畳まれずに散らかった衣類や机の上に積まれたり方向問わずに置かれた本の山。横になった容器とそこから流れ出たコーヒーに、雑に置かれた薬品類と枯れた状態の花瓶の花などなど・・・・

率直に言って、正に汚部屋とも言うべき状態だった。

 

「片付けるぞ」

 

「・・・・はい」

 

返事をした翼は、顔を俯けて、顔を赤く染めながら、小さな声で答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、いい加減片付けぐらい覚えろよ」

 

「ごめん・・・」

 

「まあ、翼らしいっちゃらしいけどな」

 

そう言いながらも、テキパキとした動きで部屋の掃除を始める奏。

 

その様子を見て、翼も手伝う。

 

「ほれ、そこの雑誌とか纏めてくれ」

 

「分かった」

 

それから約十分後、どうにか綺麗になり、ようやく二人は一息つく。

 

「ふうっ、これでひとまず大丈夫だな」

 

「うん。ありがとう、奏」

 

「気にすんなって。それより・・・」

 

そこで言葉を区切ると、奏は真剣な表情を浮かべる。

 

「お前、まだあの時の事を悩んでいるのか?」

 

「・・・ッ!?ど、どうしてそれを・・・!」

 

「分かるさ。伊達に長い付き合いじゃないんだからよ」

 

驚く翼を見て、奏は苦笑する。

 

「・・・・あのネフシュタンの鎧を見て、改めてマジマジと突き付けられた気がしたの。私が不甲斐なかったせいで、あの子は・・・立花が、戦いに身を置く理由を作ってしまったって」

 

「・・・・」

 

「戦う事を選んだのは彼女の意志だし、戦う理由もある以上、こんなことを言うのは立花への侮辱かもしれない。でも、それでも私は、私のせいで誰かを傷つけてしまうのが怖い。私が、あのライブ会場でもっと上手く立ち回っていたら―――」

 

「翼」

 

奏が翼の名を呼ぶと、彼女はビクリッと肩を大きく震わせる。

そんな彼女に対して、奏は優しい声音で語りかける。

 

「巻き込んじまったのはしょうがないだろう。どうやったって、過去は変えられない。でも、忘れたのか?あたし達はイフにあの子の事を任されたじゃないか」

 

「・・・・っ!」

 

その言葉を聞いて、翼は自分の頭の中にあったモヤが晴れていくの感じた。

 

そうだ。自分には守るべき存在がいる。

だからこそ、自分は迷わず剣を振るえる。

そしてそれは、目の前にいる親友も同じだったはずだ。

ならば、自分がすべきことは一つしかない。

 

翼は大きく深呼吸すると、真っ直ぐな瞳を奏に向ける。

 

「ありがとう、奏。おかげで目が覚めたわ」

 

「おう、それなら良かったよ」

 

ニッコリ笑うと、奏は翼に手を差し出す。

 

「これからもよろしく頼むぞ、相棒」

 

「えぇ、こちらこそね」

 

翼はその手を取ると、力強く握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それはそうと、片付けは一人で出来るようになろうな?」

 

「・・・奏はわたしに意地悪だ・・・・」

 

「だったら翼は泣き虫で弱虫だ」

 

「・・・・・・もう・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の放課後、響は未来とリディアンに入学してから出来た友人の安藤創世、板場弓美、寺島詩織と共に彼女達の行きつけのお好み焼き屋『ふらわー』に向かっていた。

 

「へぇ~!じゃあ、いつもビッキーとヒナが話しているカイト君達と会えるんだ!」

 

「うん!昨日の夜に誘ったんだけど・・・・・」

 

「響さんと未来さんの友達なら大歓迎ですよ」

 

そうやって、和気あいあいと話しながら歩いていると、前方に五人の人影が見えてきた。

 

「お、あれじゃない!?」

 

「あっ、本当だ!」

 

創世が指差す先にいたのは、響達が通うリディアンとは違う学校の制服を着ているカイト達だった。

 

「おっ、来たな。響、未来」

 

「カイト君久しぶり!竜馬君と隼人君も!」

 

「おう、未来はこの前会ったけど、響も相変わらず元気そうだな」

 

「えぇ。変わりないようで何よりです」

 

響が声をかけると、カイト達は笑顔で答えた。

 

「んで、そっちの三人が響がメールで言っていたリディアンで出来た友人か?」

 

カイトの問いに、未来が答える。

 

「うん。左から順に安藤創世ちゃん、板場弓美ちゃん、寺島詩織さんだよ」

 

未来の紹介を受け、まず最初に自己紹介したのは創世と弓美であった。

 

「初めまして!あたし、安藤創世って言います!!」

 

「私は板場です。よろしくお願いしますね!!」

 

続いて、詩織も挨拶をする。

 

「はじめまして。私、寺島詩織と言います。趣味は読書です。よろしくお願い致します」

 

「それで、カイト君たちの後ろにいる二人は?」

 

響が聞くと、カイトが後ろに控えていた弁慶と武蔵を紹介する。

 

「あぁ。この二人は進学先で出来た俺達の友人で……」

 

「俺は一文字弁慶って言うんだ。柔道をしているよろしく頼む」

 

「あたしは沖武蔵。少林寺拳法をやっているよ。よろしく」

 

二人が名乗ると、そのままカイト達もお互いに名乗り合い、自己紹介が終わると、早速彼らはふらわーに向かう事にした。

 

「そうだ、この前は流れ星を一緒に見に行けなくて悪かったな、未来。まさか響も来れなくなるとは・・・」

 

「うっ・・!その節は大変ご迷惑をお掛けしました・・・・」

 

「うぅん、気にしないでいいよ。また今度一緒に連れて行ってくれるだけで嬉しいから!」

 

「あぁ、約束するぜ。今度は皆で行こう」

 

「うん!」

 

カイトの言葉に満面の笑みを浮かべる未来。そんな二人を見て、竜馬と隼人はホッとする。

あの日は響もカイトもいなかったからか、せっかくの流れ星だというのに、かなり寂しげな表情をしていたのだ。

 

「あっ!見えてきた!あれが『ふらわー』だよ!」

 

響の指差す先には、木造建築の一軒家があった。

 

「へぇ~、ここがお前らの行きつけの店なのか」

 

「うん!美味しいお好み焼き屋さんなんだ!ほら、早く早く!」

 

「おい、引っ張るなっての。転ぶだろうが」

 

カイトの手を引いて、店の中に入る響。その後ろを他の面々が付いて行く。

店内に入ると、そこには一人の女性がいた。

 

「あら、いらっしゃい。響ちゃん、未来ちゃん。今日はいつもより大人数だね」

 

女性は、ふらわーの店主だった。

 

「うん!おばちゃんのお好み焼きをみんなにも食べてもらいたくて連れてきちゃった!!」

 

「そうかい。それはありがたいね」

 

響の言葉に笑みを浮かべる女性。

 

「じゃ、好きな席に座って待っていて。すぐに用意してあげるから」

 

「ありがとうございます。おばさん」

 

「いいのさ。これが仕事だからね」

 

おばちゃんは注文を取ると、厨房へと戻って行った。

 

「ねぇねぇ、カイトくんの事、カイ君って、呼んでもいいかな?」

 

「「「「「カイ?」」」」」

 

先程から何やら考えこんでいた創世の突然の発言にカイト達は首を傾げる。

 

「ごめん。創世は人にニックネームをつける癖があって……」

 

「ふーん・・・・・別に構わないぞ。好きにしろよ」

 

「それじゃあ、よろしくね、カイ君」

 

「で、俺達は?」

 

「んーー・・・・もう少し考えさせて!」

 

不思議な癖を持つんだなと思ったカイト達だったが、そんな考えも、美味しそうなお好み焼きを前にしたら、何処かへと消えて行っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー・・・・食った食った・・・・・・」

 

「思ったよりも食べてしまいました」

 

「響たちがおすすめだって言うのも納得の旨さだったな」

 

ふらわーからの帰り道、満足げな表情で話すカイト達。

 

創世、弓美、詩織の三人は用事があるということで途中で別れ、7人で帰路についていた。

 

「・・・・・・ん?あれ?」

 

「どうしたの?カイト君」

 

「いや・・・・ハンカチが無くてさ・・・・・」

 

「もしかして、ふらわーに忘れたとか?」

 

「かもな・・・・悪いけどちょっと取って来るから、先に帰っててくれないか?確認してきたらすぐに戻って来る」

 

そう言ってカイトはそのまま走り去って行ってしまった。

 

「カイトはああ言ったけど、せっかくだし待っておいてやろうぜ」

 

竜馬が提案すると、他の5人も同意して、その場で談笑する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、平和な日常というのは長くは続かないものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突如、響の懐に入れていた二課の端末に連絡が入った。

 

響は家からの電話と言って誤魔化すと、5人から少し離れてから連絡に応答する。

 

「はい!こちら響です!!」

 

『響君、俺だ! 実はこちらでネフシュタンの鎧の反応を確認した! ネフシュタンの少女は、真っ直ぐにそちらに近づいている!』

 

「えっ!?」

 

弦十郎の声を聞き、驚く響。

 

だが、弦十郎の連絡は、一足遅かった。

 

「お前はぁ!!」

 

「ッ!?」

 

弦十郎が言った通りに現れたネフシュタンの少女は、響に向けて鞭を叩き付けるように振るった。

 

咄嗟に回避した事で、響に鞭が当たることは無かったが、問題は近くに未来達が居たことだ。

 

「きゃあぁぁぁああああっ!?」

「なっ!?」

「くぅっ!?」

「うあっ!?」

「ぐっ!!」

 

直撃こそしなかったが、5人は衝撃で吹き飛ばされ、地面に転がってしまう。

 

吹き飛ばされた未来の悲鳴が周囲に響き、その声と吹き飛ばされる未来達の姿を見て、響の瞳孔が大きく見開かれる。

 

「しまった、あいつの他にもいたのか!?」

 

響だけ居ると思っていたクリスは、予想外の事態に動揺を隠せない。

 

「うぅ・・・・・」

 

「おい、大丈夫か!!?」

 

幸いな事に未来は血こそ出なかったが節々に擦り傷が出来ていて、他の四人は咄嗟に反応できた為に受け身を取れたので、そこまで大きな怪我は無かった。

 

そこに、傍に駐車されていた3台の車が落ちてくる。先程の攻撃の際に高く打ち上がっていたのだ。

 

動けない未来の盾になろうと、竜馬達は前に出て庇おうとする。

 

Balwisyall Nescell gungnir tron(喪失へのカウントダウン)

 

その場に歌が響き、聖詠によって起動したシンフォギアを纏った響は、土煙の中から飛び出して危機に瀕した未来達の前に躍り出た。

 

「くっ!!」

 

響は、落ちてきた車の一台を両手で受け止め、残り二台を高速で割り込んできたイフがそれぞれの手で一台ずつ受け止める。

 

「イフさん!」

 

『ここは俺に任せろ!!』

 

「っ・・!」

 

一瞬、響は未来達に視線を向けると、「ごめん・・・」と呟き、クリスがいる方向に向かって駆け出した。

 

(あぶねぇ・・・かなりギリギリだったな・・・・・)

 

ふらわーに戻ってハンカチを回収した直後、カイトは一度コピーした聖遺物の気配を感知できる力でネフシュタンの鎧の気配が近づいている事に気付き、近くの路地裏で変身し、急いで戻ってきたのだが、もう少し遅ければ間に合わなかっただろう。

 

(いや・・・ある意味では遅かったと言うべきだな)

 

車を下ろしながら、後ろの未来達に視線を向ける。あと十数秒早く駆けつけていれば、響が彼ら彼女らに、シンフォギアを纏う姿を見せることはなく、戦いに巻き込むことはなかったかもしれない。

 

「なんなんだ?お前は・・・・・」

 

『・・・・ただの通りすがりの化け物さ』

 

武蔵の問いに、イフはそう答え、響とクリスが戦っている場所へと向かう。

 

(『もしも』の可能性を考えたところでどうしようもあるまい。巻き込んでしまったのなら、あいつらがこれ以上傷つかないように戦えばいいだけだ!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

響はクリスに自分の姿を晒しながら走り、弦十郎達の指示通りに少女を誘導する為に指定された場所への移動を開始する。

 

「どんくせぇのがやってくれる!」

 

クリスが鞭を振るって響にぶつけるが、響は腕でガードして防ぐ。

 

「どんくさいなんて名前じゃない!」

 

「あ?」

 

「私は立花響、15歳!誕生日は9月の13日で血液型はO型!身長はこの間の測定では157cm、体重は・・・もう少し仲良くなったら教えてあげる!趣味は人助けで好きなものはごはん&ごはん!後、彼氏いない歴は―――」

 

突然の自己紹介をしながら、響はそこで言葉が止まる。

 

思い浮かべるのは、名字が表すように、強すぎる日差しから守ってくれる大木のような、自分と親友(未来)が思いを寄せる青年。

 

「・・・・・す、好きな人はいるけど、とりあえず年齢と一緒!」

 

「いきなり何をとち狂ってやがるんだお前は!?」

 

顔を若干赤らめながら言う響に思わずツッコミを入れつつも、鞭を振って攻撃するクリスだが、響はその攻撃を回避する。

 

「私たちはノイズとは違って言葉が通じ合うんだから、ちゃんと話し合いたい!」

 

「なんて悠長!この期に及んでッ!」

 

今度は連続で鞭を振るうが、その全てを響は正確に躱し、捌き続ける。

 

「(こいつ……あたしの攻撃を読んでるのか?)」

 

「だって私たち人間だよ!!」

 

響の言葉に、クリスの動きが一瞬止まった。

 

「同じ人間のはずなのにどうして戦うの!?言葉が通じ合えば分かり合える筈だよ!?」

 

「・・・・・うるさいんだよ。おまえはぁっ!!!」

 

叫び声と共に放たれた一撃を、響は両腕をクロスさせて防御するが、衝撃を殺しきれずに大きく吹き飛ばされてしまう。

 

「うわあああっ!!」

 

「分かり合えるものか!!人間がそんな風に出来てるわけねえだろっ!気に入らねえ・・・・・気に入らねえ!気に入らねえ!気に入らねえ!!!分かっちゃいねえことをベラベラと口にするお前がぁ!!!」

 

興奮しながら一口で捲し立てた彼女は荒い息を吐き、怒りの形相を浮かべていた。

 

「お前を引きずって来いと言われたがもうそんなことはどうでもいい・・・!お前をこの手で叩き潰す!その次にイフもぶっ潰す!!今度こそお前の全てを踏みにじってやるッ!」

 

クリスは、ネフシュタンの鞭の先端に黒い雷を内包した白いエネルギー状の球体を生成し、鞭を振るって響目掛けて投げ付ける。

 

 

            NIRVANA GEDON

 

 

「吹っ飛べえぇっ!」

 

叫びともに放たれる光球。

 

響はすぐに両手をクロスさせてエネルギー球を受け止める。

凄まじい衝撃が走り、歯を食いしばってそれをどうにか弾こうとするが―――

 

「もってけダブルだッ!」

 

続けて放たれたもう一発のエネルギー球が弾こうとしていたエネルギー球と衝突し、響は爆発に飲み込まれてしまった。

 

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・お前なんかがいるから・・・あたしはまた・・・・・っ!?」

 

荒い息を吐きながら目の前の土煙を見ていたクリスは、それが晴れると同時に目を見開く。

爆発の中心点に居た響は無事で、両手に光の何かを形成しようとしていた。

 

「この短期間にアームドギアまで手にしようってのか!?」

 

しかし、集められたエネルギーは暴発し、その衝撃で響は軽く吹き飛ぶが、すぐに起き上がる。

 

「(こんなんじゃダメだ・・・奏さんや翼さんみたいにエネルギーの固定ができない・・・・でも、エネルギーはあるんだ。アームドギアが形成されないなら、その分のエネルギーをぶつければ・・・!)」

 

響がエネルギーを握りしめると、右腕の腕部ユニットにエネルギーが内包され、ハンマーパーツが引き絞られる。

 

「させるかよっ!!」

 

響が何か行動をする前に阻止しようとクリスが鞭を二本同時に振るうが、それを響は見ることなく左で掴み取ると、そのまま一気に自分の方に引き寄せる。

同時に腰部ユニットのブースターから炎が噴き出し、その勢いと共にクリスへとへと迫る。

 

「(最速で!最短で!真っ直ぐに!一直線に!胸の響きを、この想いを伝えるためにいいいいいいいいいっ!)」

 

放たれた渾身の一撃が、クリスに叩きつけられ、間髪入れずに引き絞られたエネルギーをパイルバンカー方式で打ち込まれる。

事実上の二段攻撃が叩き込まれ、拳が叩きつけられた部分を中心に、完全聖遺物であるネフシュタンの鎧にひびが入る。

 

「(馬鹿な・・・・・ネフシュタンの鎧が・・・・・・・!?)」

 

直後、大きな爆発と大きな衝撃が走り、クリスは石垣に叩きつけられた。

 

「がっ・・ぁっ・・・・!」

 

苦悶の声を漏らすクリス。破壊された鎧が彼女の体を蝕みながら再生を始めているのだ。

 

「(食い破られる前にカタを付けなければ)」

 

痛みに堪えながら立ち上がり、追撃に備えようとするが、響はクリスに追撃を行おうと向かってくる素振りを全く見せていなかった。

 

「お前・・・馬鹿にしてんのか!?このアタシを・・・・雪音クリスを!!」

 

「そっか。クリスちゃんって言うんだ。やっと名前を教えてくれたね」

 

「っ!」

 

響の想定外の言葉に、一瞬呆然とするが、変わらずに笑みを浮かべる響の姿に再び苛立っていく。

 

「ねぇ、クリスちゃん。こんな戦いもう止めようよ。ノイズと違って、私たちは言葉を交わすことが出来る。ちゃんと話をすればきっと分かり合えるはず!だって私たち、同じ人間だよ!」

 

それは、紛れもない響の本心。だが、クリスはそれを否定する。

 

「むなくせえ・・・・・嘘くせえ・・青くせえ!!お前なんかにアタシの何が分かるってんだ!」

 

立ち上がったクリスは響に殴りかかろうとするが、鎧が再生を再び始め、人際強い痛みから動きを止めてしまう。

クリスは一瞬僅かに悩む様子を見せたが、すぐに決意した表情を見せる。

 

「ぶっ飛べよ!装甲分解(アーマーパージ)だ!」

 

クリスの叫び声とともに身に纏っていた鎧を爆発させて、ネフシュタンの鎧の欠片が周囲に飛び散る。

 

「きゃあ!?」

 

『ふんっ!!』

 

響はそれを咄嵯に腕で防ごうとするが、破片が届く前にイフが槍を回転させて防ぐ。

 

『大丈夫か』

 

「は、はい!ありがとうございます!」

 

そして、土煙が舞う中、歌が聞こえてきた。

 

 

         

                Killiter Ichaival tron(銃爪にかけた指で夢をなぞる)

 

 

 

『まさか・・・・』

 

それは聖詠。シンフォギアを纏うために必要なものだった。

 

「見せてやる。イチイバルの力だ!」

 

瞬間。クリスを中心にエネルギーの球体が周りに広がり、新たに土煙を巻き上げながら周囲に満ちていた土煙を一瞬で吹き飛ばした。

 

土煙が晴れて現れたのは、濃い赤紫のインナースーツの上に赤を基調とした響達と似たワインレッドの鎧、すなわちシンフォギアを身に纏ったクリスの姿だった。

 

『(イチイバル・・・?北欧神話の神、ウルの弓の事か。まさか他にもシンフォギアがあったとはな)』

 

イチイバル。それは、北欧神話にてオーディンの後釜とされた、狩猟と決闘の神にして雷神トールの息子、「ウル」が愛用していたとされるイチイの木でできた「イチイの弓」のことだ。

そして、十年前、櫻井了子が作り上げ、紛失された筈の二番目のシンフォギアでもあった。

 

「歌わせたな・・・・・」

 

「え?」『あ?』

 

「アタシに歌を歌わせたな!!教えてやる。アタシは歌が大っ嫌いだ!」

 

「歌が、嫌い・・・?」

 

『(シンフォギアを纏えるのに歌が嫌いって、どういうことだ?)』

 

響とイフが困惑する中、クリスは腕部ユニットをクロスボウ型のアームドギアに変形させ、マゼンタ色の光の矢を一斉に放つ。

 

放たれた無数の光弾は一直線に向かってくるが、響は慌てて回避し、イフは剣と槍で弾き飛ばす。

 

すると、クリスはアームドギアを変形。片腕に二門、両腕合わせて計四門の三連のガトリング砲になる。

 

「ええ!?」

 

『(重火器に変形した!?弓じゃなくてか?)』

 

 

            BILLION MAIDEN

 

 

弾丸の嵐が一斉に2人を襲いかかり、続いて今度は腰部アーマーが展開して、無数の小型ミサイルを一斉に放つ。

 

 

            MEGA DETH PARTY

 

 

障害物に当たらず、響達の元へ不規則に蛇行しながら迫っていくミサイル。

 

直後、大爆発が起こるがクリスは手を休めずにガトリング砲を撃ち続けた。

 

「はぁ・・・・はぁ・・・・・」

 

漸くガトリングの回転が止まっても、まだ警戒を解かないクリスだったが、煙の中から響を庇う形で立っているイフと無傷の響が現れる。

 

だが、そのイフの傷も瞬時に再生される。

 

「何・・・・っ!?」

 

『そろそろ理解できたんじゃないか?』

 

そう言いながら、イフは左手に持っていた槍を収納し、左腕の形を変えていく。

 

『俺は受けた攻撃や現象をコピーし、コピー元と同等・・・もしくはそれ以上の力を扱うことが出来るんだよ。つまり・・・・』

 

変形した腕は、先程クリスが放ったガトリング砲と同じ形をしていた。

 

『戦い、攻撃を受けるほど、俺は強くなれるんだよ』

 

 

            BILLION MAIDEN

 

 

先程のお返しと言わんばかりに、イフはクリスに向けてガトリングを放つ。

 

「ちぃ!」

 

クリスは咄嵯に躱すが、その隙を狙って接近したイフに蹴り飛ばされてしまう。

 

「ぐぅっ!」

 

『どうした!さっきまでの威勢はどこに行った!』

 

「うるせぇ!!」

 

クリスも矢の光弾を放って反撃するが、イフはそれを全て避け、逆にガトリングを放ちながら突撃していく。

 

「舐めんな!」

 

クリスはアームドギアを短銃へと変形させて乱射し、さらに大型ミサイル2機を展開して発射する。

 

 

            MEGA DETH FUGA

 

 

だが、発射された二発のミサイルは、イフに命中する前に空から落ちてきた何かに防がれ、爆散した。

 

「・・・・・盾?」

 

「いーや。槍さ」

 

クリスが視線を上へ向けると、そこには巨大化させたアームドギアの柄の上に立つ奏の姿があった。

 

「よっと」

 

そして、そのまま飛び上がり、アームドギアを縮めて着地した。

 

「悪い。随分と遅れちまった」

 

『構わないが、あれぐらい普通に躱すか迎撃出来たぞ。天羽奏』

 

「いいじゃねえか。たまには借りを返させてくれ」

 

「奏さん!」

 

駆けつけてくれた奏に駆け寄る響。

 

一方、流石に3対1の人数差では不利だと感じたのか、クリスは小さく舌打ちをし、そのまま第二ラウンドが始まろうとした時だった。

 

『っ!?上だっ!!』

 

突如として何体もの飛行型ノイズが形状を槍の様に変え、上空より一斉に襲いかかってきた。

 

「なっ!?」

 

ノイズはクリスが持っていた二丁のガトリングを破壊し、そのことに動揺している隙をついてもう一体がクリス目掛けて突っ込んできた。

 

「ぐうっ!?」

 

「響っ!」

 

だが、当たる直前に響がその身を盾にしてクリスを守った。

その際の衝撃で自身の方へ倒れた響をクリスは慌てて受け止め、奏とイフがさらに突撃してきた飛行型ノイズを一掃する。

 

『(以前、戦った時に持っていたノイズを召喚するための杖を、コイツは今持っていない。だとすると一体誰が・・・・・)』

 

「―――命じた事すら出来ないなんて・・・・・貴女はどこまで私を失望させればいいのかしら?」

 

「「「『!!』」」」

 

声が聞こえた方に全員が顔を向ける。

 

そこには、黒いコートと蝶の飾りがついた黒い帽子に黒いサングラスと全身が黒ずくめの女が金色の長髪を靡かせて立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうも、邪神イリスです。

こちらを投稿するのもだいぶ久しぶりです。『ハンターだった件』などもそうですが、なにぶん執筆へのモチベーションが上がらず、中々書けなかった為に、お待たせして申し訳ありません。
最近はデッカーなどのおかげで、だいぶモチベを取り戻せてきた気がします。

今後も不定期更新ですが、よろしくお願いいたします。
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