狂心者√another   作:神仙神楽

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戦闘

「此処ならば、人もあまり来ないだろう」

 

「なら、此処等辺にしますか。リスポーン地点から離れすぎると向かうのが大変ですし」

 

 頷き返された後「来やがれツラ見せろ……チェーンガンが待ってるぜ……」とユキが嘯く。楽しそうで何よりだが、チェーンガンを持っていたとしてもDEX極振りでもなければ全弾暴発するのではないだろうか。

 その言葉に反応してか、森の奥から小型の一角兎(レッサーラビット)が現れた。

 

「最初の相手は、ベルくんか」

 

「"ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか"の主人公は確かに兎らしいが」

 

「あ、知ってるんですね」

 

「有名どころではあるしな」

 

 話しながらもユキは杖を構えて一角兎に相対する。

 その際意図してか微かに左側の防御を甘くしているのが見えた。そして我は武器を構えずにユキを離れたところから見守っているのみ。

 この状況なら、確かに一角兎は左側の防御が甘い所を狙うだろう―――その目論見通りユキの左側へ兎は突撃した。

 

「はぁっ!」

 

 それに合わせてユキは長杖を突きだし―――()()がぶつかった直後に小さく仰け反る。

 

 筋力極振りであればこの一撃で勝負は決するし、移動速度を考えれば敏捷極振りでもない。その上で魔法を使う様子がない辺り知力でもなく、体力極振りなら1割もH Pは減らない。器用なら長杖以外の方が威力がでる事からして幸運か、抵抗のどちらかだろうか。

 そう考えながらも見守る中、兎は再度飛び掛かってくるのに対してユキは特に動く様子を見せなかった。何かを考え始めて集中してしまったのだろう、戦闘中においてそれは致命的に過ぎた。

 

「伏せろ」

 

「っ、っと!?」

 

 我の言葉に間を置くことも無くユキは従い、伏せる。

 直後その頭上を兎の角が通り過ぎていった。ユキは小さく冷や汗をかきながらも長杖を構える。次は左側を空ける事無く、武器で防御ができる状態に見える。此れなら、兎は迂闊に攻め込まないだろう。

 

「《フルカース》!」

 

 直後兎へ薄い紺色の光が纏わりつく。あの光はたしか全能力低下―――付与魔法か。付与術なら恭弌が使っているのを見たことがある。その中には、確か。

 

「意図して付与魔法を失敗させると、暴発で(ダメージ)を与えられるぞ」

 

「後でやってみますね、《吸撃》!」

 

 先程より動きの鈍った兎へ光を纏った杖の一撃が入る。その一撃を受けた兎は先程と同じ程度に仰け反っていたのに対してユキは怯む様子がない。恐らく反動がなかったのだろう。

 

「お、結構いけそうじゃん」

 

「頑張れ、1()()1()()崩させない」

 

「助かります―――《ディフェンスカース》!」

 

 その声を境に、森林から新たに兎が現れ―――兎の頭へ左手に持つ鞘を無造作に振り抜き、消し飛ばす。

 

「せいっ!」

 

 その声と共にユキは兎へ杖を突き、叩きつける。兎は二度仰け反り、ユキから離れるように間を取った。

 

「《アタックエンハンス》、《ラックエンハンス》、そしてもう一丁《吸撃》!」

 

 杖の一撃を受け、先程よりも大きく兎は仰け反った。恐らくは致命(クリティカル)だろう、通常攻撃で出すにはそれなりに幸運が必要となるが―――成程幸運極振りか。

 だが、そうなると付与魔法の解けた兎の対処は大丈夫なのだろうか?

 

「残り6割…いけるいけrぬわっ!?」

 

 兎の一撃をユキは横に跳び回避する。新たに森から現れた()()()()()()も鞘で殴り消し飛ばしながら見守る。

 

「《スピードカース》、《ディフェンスカース》!」

 

 付与魔法による負荷を兎へ掛け直しながらも、ユキは兎へと接近する。着地の硬直で動く様子がない兎へ長杖を横薙ぎに振り抜き、突いて打撃を加えつつ強引に距離を取らせた。

 

 距離を取らされた兎は先程より溜め込んだ後踏み込む。跳躍距離は長いが、先程の敏捷低下によってかユキでもある程度の余裕を持って躱し。

 

「《吸撃》!」

 

 すれ違いざまに杖を振り抜いた。それを受けながらも慣性のままに突き抜けていく兎とユキの距離は離れていく。ユキは足元を確認した後、小さく口角を上げた。その視線の先にあったのは数個の小石。何もかもを使うその戦い方は、()()()()()()を思い出させた。

 ユキの攻撃―――投石は着地硬直で動けない兎へ吸い込まれるように当たる。あともう少しで倒せるだろう程に弱った兎に対し、舌打ちをした。恐らくは倒しきるつもりだったのだろう。

 

「これで、トドメ!」

 

 ユキの手から杖が放り投げられる。その一撃で、弱った兎はその動きを完全に止めた後―――硝子の砕けるような音と共に光の破片となって消えていく。

 

「よし、勝った―――」

 

 ユキはそう嬉しそうに声を上げた。―――森の奥から新手が出てきているのにも気づかず。

 

「次、後ろから来てるぞ」

 

「―――っとぉ!?」

 

 咄嗟に振り向きながらもユキは長杖で兎の一撃を防御する。だが、その場で踏みしめ続けていたからか、徐々に後ろへと押しのけられ押し込みによる継続負傷(スリップダメージ)を受けていた。

 

「後ろへ跳んだ方がいい、能力が足りないと鍔迫り合いで生命力が減る」

 

「っ」

 

 我に従ってユキは飛び退いた。飛び退いた先には我がいるが、微かに前に出て背を向ける。―――偶然にも、新手が沸いてきたのだ。

 

「…、刹さん!鞘を少しだけ貸してください!」

 

 …存外余裕があるらしい。まさか()()()()()()()()()があるとは。

 

「…、駄目だ。素人に扱える武器では―――」

 

「私に考えがある!」

 

 よりによって失敗フラグを此処で持ち出してきた。だめかもしれない―――が。

 

「ユキ…分かった、受け取れ。鞘に装備制限はない」

 

 引き抜きつつ、鞘をユキへと投げ渡す。上から下への落下でなら然程筋力が投擲に威力影響を及ぼさない。特に負傷することなく心地よい音と共に受け取った。それに合わせて自身の知力と筋力が下がるが―――そうも言ってられない。

 

「あなたに、一瞬の奇跡を見せる…行くよ、赤眼開眼!!!」

 

 兎2匹が飛び掛かる。鞘を持つユキ、我は共に動かない―――まだ、間合いに入っていない。

 

「「ッ」」

 

 間合いに入ると同時、覚醒する。

 

「赤眼開花―――」

 

「魂魄二代―――」

 

 同時に手に持つ武器を振り上げ―――

 

「「丁々発心ッ」」

 

 背後から響く硝子の砕ける音と、正面から響く硝子の砕ける音。

 

「きゅいっ」

 

「知ってた」

 

 鞘を拾った左腕で殴り、ユキが倒しそびれた兎に引導を渡した。

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