狂心者√another   作:神仙神楽

6 / 9
時系列的にはやっと合流/ほぼ掲示板回となります
掲示板回は次回に(


合流

 2時間ほどユキが戦うのを見守り続け*1、22:00が近くなった。

 

「…って、もうこんな時間か」

 

 一息ついたユキもその事に気付いたらしく、メニューウィンドウを見つつそう呟く。此処から帰る手段として、恐らくデスポーンを考えているのだろう。実際問題此処からだと移動時間よりも死亡して復活したほうが、殆どの低レベル帯の人或いはAglを高めていない人にとって速い。

 

「そうなると、此処で別れることになりそうだな」

 

「そうですね…お世話になりました、刹さん」

 

「気にするな、此方とて久々に良いものを見れた…そうだな、メッセージを寄越してくれれば何か力になろう」

 

 互いに兎を見つつ。

 

「その時は是非に。では―――さあ来い!」

 

「きゅっ!」

 

 兎が突撃したのに合わせ、ユキが抱擁し―――切れずに地面へと叩きつけられ、ポリゴン片へと還った。その顔は何処か心地好いものを触ったかのような、安堵を含んだ物だったのは言うまでもない。

 そして消えた直後にサッカーボールを蹴るがごとく着地したレッサーラビットを蹴り、その後を追わせる。

 

「またの機会がある事を楽しみにしているぞ、ユキ」

 

 そう言いつつ、街道とは反対へと足を進めていく。[異貌(浸食)][異形(浸食)]はどちらも隠し効果として「街の設備を利用できない」「()()()()()()()()()()()()()()」という致命的な欠点を保有する。その代わりに特定のダンジョンを自身のギルドとする事ができるのだ―――まあ、開拓して()()()としているが。

 

 

 暫く足を進めていき、第4の街の付近に存在する湖へと沈んでいく。泳ぐ必要はない――目的地は水没した村をダンジョンとした《ディオン》。そこを拡張し、隠れ里とする事で2つのスキル保有者の数少ない安全圏となった。尚2つのスキル保有者以外には安全圏としては機能せず、案内しない限りは運営の経営するダンジョン《ディオン》へと繋がるが。

 

 入口にたどり着き、右手で星の中央に眼*2を描く。暫くすると水没した感覚が失われ――廃れた村に3つ程人影が映った。

 

「ただいま戻った、今は誰と誰がいるんだ?」

 

「おかえり、刹。今は渉と恭弌、それとボク位かな」

 

 目の前に小柄な少女、菖蒲(あやめ)が歩み寄る。彼女の左顔半分には複数の鱗、首元には鰓のように見える切れ込み、右腕は何処か滑りのある触手を人の手の形に束ねた物。…その鱗が無ければ、かなり容姿が良い筈なのだが。

 

「そうか。()は休んでいる…そういう認識でいいか?」

 

「そうだね――自警は3人のローテーションだし。休んでいる誰かに何か用でもあるのかな?」

 

「いや、何か必要な素材があるなら聞こうと思ってな。その所用を作る為に一度ここに寄った」

 

 その言葉を聞いて「そっか」と呟いた後何かを思い出すように考え込む。…これがまさか()()()R()P()()()()()()()()()()()()()()()()()だとは思うまい。背丈なども実は異形や異貌の効果で任意に変えられるようになる*3

 

「そうだね…少しだけエビの甲殻を取ってきてもらってもいいかな?」

 

 エビの甲殻。そう称しているが、実情はヘイル・ロブスターと呼ばれる()()である。まあ、菖蒲からしたらエビがせいぜいなのだろう――水属性のダメージを回復化、その上で()()()()()()()()ができる以上当然なのだが。

 

「了解だ。とはいえ余り期待しないでほしい」

 

「うん、わかってるよ――でも、"出るまでやれば確率は絶対"だっけ」

 

「そうだな。逆説"出ない限り確率は絶望"だが――取り敢えず行ってくる」

 

 何処か気の抜けた声で「いってらっしゃい」と返す菖蒲に見送られ、再度水上へと向かう。目指すは第3の街《ギアース》、その傍にあるボスサーバーに繋がる魔法陣だ――

 

 

 しばらく走り、目的の場所へとたどり着く。ギルドやPT所属無しでボスを倒すことを運営は然程想定していない、が――不可能ではない。()()()H()P()()()()()()()()()()()()()()()()、誰だって可能だろう。

 同時にそれは理論であって実践できる人は少ないという事も知っている。

 

「…むぅ…」

 

 長槍持ちの紫がかった銀髪の少女*4が、ボス前の魔法陣で小さく声を上げている。周囲には誰も居ない所から、恐らくはソロで此処に来たのだろう。或いはPTを組んでくれるようなチームに混ぜてもらおうとしているのか。

 ただ、それを待つには少しばかり厳しいものがある――第二の街で解禁される物が()()()なのだ。

 

「…どうした、藜氏」

 

 声をかけると、微かにこちらを確認した後彼女が言葉を返す。

 

「…此処のボスを、倒したかったんですけど、空きのPTがなかなか来なくて」

 

「そうだな…少しばかり厳しいと思う。運営の想定する設計を考えると、特にな」

 

「…運営の…?」

 

 頷く。

 

「第二の街で解放される機能はギルド。ギルドというものがどういうものかは理解していると思う」

 

「えっと、ギルドメンバーを募ってD*5で維持する、多機能なシステム、ですよね?」

 

 頷き返し、説明していく。

 

「だから()()()()P()T()()()()()()()()()事を前提とされているんだと思う。第1のボスは未だギルドが解放されていないから、PTを組めたが…これ以降はたぶん仮という形であっても、ギルドに所属しないと難しいと思うぞ」

 

 彼女が少し考え。

 

「刹さんは、どうしてここに…?」

 

「蒼銀の甲殻の為の狩りだ…もしも良ければだが、PTを組むか?」

 

「…良いん、です?」

 

「交換条件ではあるが…もしも蒼銀の甲殻が出たら素材の交換を頼みたい。交換する素材は其方の指定で構わない」

 

 正直、試行回数の暴力をするには自身の幸運は一切向いていない。それならば自身より幸運を高めている可能性のある相手に素材の交換をしてもらう方が余程良い。

 

「いえ、大丈夫、です。出たら、無償で譲ります、から…どちらが、リーダーになります…?」

 

「…無償は流石に悪い。使っていない装飾品からでもいいから受け取ってほしい…リーダーはどちらでも。ただ、魔眼を使う時に声をかけるから視界から離れてほしいというあたりか」

 

「…終わってから、見させてください。…じゃあ、私が」

 

 ウィンドウを操作した後、此方のウィンドウから連絡:1が入る。「藜さんがあなたをPTへ招待を申請しました。Yes/No」の選択でYesを選択し、それぞれのHP/MPが情報として共有される。

 

「我は回避盾とアタッカーの兼業だ」

 

「私は、クリティカルを狙う、手数型のアタッカー、です」

 

「ならば、エビのヘイトは此方で持とう」

 

「お願い、します」

*1
ユキの幸運が上がり続けた影響かレアモンスターの遭遇率が上がった為、それらの護衛も兼ねた。だいたい13分に1度現れた。勿論山分けである。尚ユキの死亡回数は30回を超えた。

*2
別名旧き印(エルダーサイン)。クトゥルフ神話で有名。

*3
ペナルティが大きすぎる以上、我々以外が新たに取る事はないだろうが

*4
(あかざ)だろうか。食用の一年草であり、中国原産

*5
ゲーム内通貨




原作崩壊、開始となります(土下座)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。