タイトル通り。特にオチはありません
某所に投下したものを少しだけ修正して掲載しています

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初投稿です


カレンチャンが、「お兄ちゃん」を失う話

 お兄ちゃんがバイクで事故に遭ったって聞いた時、カレンはびっくりしたけど心配はしなかった。だって、事故のことを伝えに来たたづなさんが、命に別状はないと教えてくれたから。

 

 しょうがないなあ、お兄ちゃんは。

 

 何週間か入院することになると聞いているから、きっとしばらくトレーニングの時間は寂しくなるだろう。けれども、不思議と悪い気はしなかった。むしろ、お見舞いに行けばお兄ちゃんと2人きりになれると考えると、なんだかちょっぴり嬉しいような、後ろめたい興奮を感じていた。

 

 病院の前で待っていたたづなさんと合流したカレンは、受付のおねーさんの要望に応えてツーショットを撮ってから、お兄ちゃんのいる病室に向かった。なにやら前を歩くたづなさんの足取りが妙に重く見えるのは、お兄ちゃんを心配しているからだろう。たづなさんとお兄ちゃんが話している姿はカレンも頻繁に見ているから、不安は理解できる。

 

 けれども、カレンがいたら大丈夫☆お兄ちゃんもすぐに元気になるよ!だから、たづなさんも安心して!

 

 そう言いたげに、まるで不安な様子を見せずルンルンと歩くカレンチャンの姿は、ちょっぴり病院の雰囲気とは不釣合いで。でも、その揺らがない自信が『カワイイ』の源なのだろうと見る人に思わせた。

 

「トレーナーさんは、この部屋にいます」

「たづなさん、ありがとう♪あとはカレンに任せて!」

「……カレンチャンさん、少し話を聞いてもらってもいいですか?」

 

 勢いよく引き戸に手をかけようとするカレンを、何故かたづなさんがこわばった表情で制した。どうして?カレンがいるから大丈夫だよ?

 

「カレンチャンさん、落ち着いて聞いてください。実は、トレーナーさんは……その、事故のショックで記憶を無くしてしまって……」

 

 今まで言い出せなくてごめんなさい。謝るたづなさんを前にしても、カレンはやっぱり心配していなかった。だって、お兄ちゃんが『宇宙一カワイイ』カレンチャンを忘れることなんてありえないから。自分の名前を忘れても、水の飲み方を忘れても、カレンのことは忘れない。そうだよね、お兄ちゃん?

 

「お兄ちゃん、お待たせ!カレンチャンの登場だよ!」

 

 沈んだ表情のたづなさんを廊下に残して、ガラリと勢いよく扉をあけて病室に飛び込むカレン。真っ先に目に入ったのは、頭を包帯でぐるぐる巻きにしたお兄ちゃんと、驚いたように目を見開いたその表情だった。

 

「君は……」

 

 やっぱり。カレンは確信した。やっぱり覚えていた。お兄ちゃんのまん丸に見開いた目はカレンをまっすぐ射抜き、離れない。カレンの姿を見て、『宇宙一カワイイ』カレンチャンの記憶が蘇っているに違いない。お兄ちゃんはやっぱりカレンのお兄ちゃんだった。そう思っていたのに——

 

「君は誰だい?()()……?」

 

 お兄ちゃんの一言が、カレンの笑顔と余裕をひび割れさせた。

 

 一瞬だけフリーズする思考。病室に入る前に見た、深い悲しみを湛えたたづなさんの表情がカレンの脳裏に浮かんだ。まさか。いや、でもお兄ちゃんならカレンを忘れるはずがない。きっとカレンをからかっているんだ。

 

「もう、お兄ちゃん?言っていい冗談とダメな冗談があるんだよ?」

 

 笑顔を崩せずに言えただろうか。カレンには自信がなかった。けれども、なんとか絞り出したその一言を聞いたお兄ちゃんは、不思議なことにその表情を歪めていて。まるで、思い出せない自分に苦しむような、目の前のカワイイ少女に懺悔するような、そんなお兄ちゃんの表情の意味を理解できないほどカレンは鈍くなくて——

 

「お兄……ちゃん?本当に、覚えていないの……?」

 

 声が揺れる。もう笑顔を作れなかった。普段は思うがままに動く表情筋が、今は言うことを聞かない。口の端の震えが止まらない。けれども、一縷の希望を捨てきれなくて、カレンは縋るようにお兄ちゃんの瞳を覗いた。けれども、返ってきた返事は。

 

「……すまない」

 

 そこから先はあまり覚えていない。きっとカレンのことを思い出させるから。また来るから。強がってそんな事を言ったかもしれない。けれども、曖昧な記憶に残る病室にいた人の正体は、お兄ちゃんではなくて()()()()()()()()()だった。もうお兄ちゃんは帰ってこない。根拠はないけれども、カレンにはそれが理解できてしまった。

 

 いつの間にかカレンは病院を出て寮までの道を歩いていた。我に返ったのは、予報にない雨が降り始めたからだろうか。傘なんて持ってきていないカレンは、いつものように隣を見る。けれども、いつも隣にいて、いつも何も言わずそっと傘に入れてくれるはずのお兄ちゃんはもういなかった。一人ぼっちで雨に打たれていた。

 

「……うっ、ぐすっ……うう、うああああぁぁぁああああああ!」

 

 『カワイイ』カレンチャンなら、こんな時でも笑っていないといけない。雨は友達で、キラキラカワイく輝くための材料じゃないといけない。カレンにとってそんなことは常識だった。けれども、一度こぼれた涙は止まってくれない。ぽろぽろと溢れる涙を拭いもせず、みっともなく大声で泣いた。降り荒ぶ雨と一緒になって、どこか遠くまで流れていってしまいたい。もはや通りを歩いている人のことなんて気にもならなかった。

 

 突然の雨はますます強まって、止む気配を見せない。




小説投稿は初めてなので何もわかってないです。タグとか変なところがあったらこっそり教えてください

あああああああ

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