都心の繁華街。夜とは思えない眩さの中、千鳥足の男女が連れ添って歩いていた。
「よおし、もう一軒いっちゃいましょ〜!」
「ちょ、ちょっとライトハローさん飲みすぎじゃ……顔赤いですよ」
そう諌めるトレーナーもフラフラだった。今日はグランドライブ成功の打ち上げである。三年間共に尽力してきたプロジェクトが一段落したということで、積もる話は無限にあり、それまで律していた反動か酒も食も大いに進み、気づけば完全にできあがっていた。
「そういうトレーナーさんこそ、真っ赤ですよ〜?」
「ふおっ!?」
頬に冷たい感触。仰け反りかけて、それがライトハローの右手であることに気づく。
「ふふっ、もっと赤くなった」
悪戯な微笑。普段の彼女からは想像もつかないような反応に、トレーナーの心臓が大きく高鳴った。
「か、からかわないでくださいよ……」
「トレーナーさんのほっぺた、あったかくてきもちいいです〜……」
「あの、聞いてます?」
手の温度がトレーナーの体温と遜色ない温さになった頃に、ライトハローの身体がふらりと傾いた。
「わっ、大丈夫ですか!?」
「うーん、視界がぐるぐるします……」
「とりあえずお水飲んでてください、その間にタクシー呼びますので──あっ」
「どうしました?」
「すみません、もうお財布が空っぽで……」
「あー、先程も会計をもってもらっちゃいましたからね……しょうがないですよ〜」
「まあ大した距離じゃないので、僕は歩いて帰りま──うわっ!?」
「ダメですよ、トレーナーさんだってふらふらじゃないですか〜」
よろけたところをぎゅっと抱き止められる。柔らかな感触と、酒の残り香に混じる甘い匂い。口を真一文字に結んでこちらを見つめる彼女と、目が合った。
「ライトハローさん……?」
「トレーナーさん。私、いまとっても幸せです」
ライトハローはトレーナーを見つめて微笑む。
「あなたがいて、ファル子さんがいて、他のみんなが賛成してくれて……そのお陰で無事グランドライブを成功できました」
「いえ、そんな……ハローさんがずっと頑張ってきた結果ですよ」
「特にトレーナーさんには、プライベートでもずっと付き合って頂いて……本当に、色々といい刺激をもらいましたっ」
「いえいえ、こちらこそ」
美術館、ライブ、山登り──多くの時間を二人で過ごしてきた。
「そういえば、正月に二人でカラオケにも行きましたね。あのときも、このくらい酔ってたような」
「その節はご迷惑をおかけしましたっ……! トレーナーさんに会えた喜びで、つい」
彼女の頬が赤いのが、酔いのせいではないことは──トレーナーにも、流石にわかった。
「好き、ですっ……あなたのことが。あなたの優しさも、聡明さも、懸命さも。まだまだ至らない私ですが、これからも……共に歩んでくれますか?」
向けられた細く白い掌に、彼は迷うことなく己の手を添えた。
「俺も……ずっと好きでした。自分なんかでよければ、是非」
「~~~~っっっっっ、はいっ!!」
「わっ」
胸の中に飛び込んできた彼女を、優しく抱き留める。むぎゅうと甘えるように密着する彼女の背中を、トレーナーは優しく擦った。
「……よくよく考えたらいまのちょっと、プロポーズっぽいですね」
「ふえっ!?」
まったく意識していなかったのか、ライトハローが動揺の反応を見せた。カバーするようにトレーナーが「あっ、でも言葉自体はめちゃくちゃ嬉しかったですし、いずれはその……そうなりますから!」とカバーした。
「ふふっ……そうですね」
優しく微笑んで、ライトハローはそっと口づけを落とす。
「末永くよろしくお願いしますっ」
「こ、こちらこそ」