「はーい、じゃあ撮るよ〜」
「うん〜!」
「はい、ポーズ☆」
仲良くツーショットを撮る、芦毛の二人のウマ娘。その様子を微笑ましげに眺めながら、父は配膳を進めた。
「『今日は久々の休日。大好きな家族とのんびり過ごすよ〜♪』と、送信っ……の前に、あなたの料理も撮らせてもらうね」
「おう、どんどん撮ってくれ」
それを前提にした『映える』料理のため、むしろ撮られないと困ってしまう。数枚撮って一番良かった一枚を添えて、ツーショット写真のトリミングを終えてから投稿を完了した。
「よし、それじゃあ冷めないうちに食べちゃお♪」
「うんっ」
いただきます、と声が重なった。色とりどりの料理へ、思い思いに箸が伸びていく。
「あ、このタコさんウィンナーカワイイー♪」
「お、気づいたか。ちゃんとお目目もついてるんだぞ!」
ゴマで書かれたつぶらな瞳を指差して、父が微笑む。娘はタコさんを口に運び、「おいし〜☆」と笑顔を浮かべた。
「カワイイ……」
「むっ」
夫の呟きに頬を膨らませた妻は、サラダを食べて言う。
「うん、本当に美味しい……♪」
大人らしい艶のある微笑をたたえて、妻は夫を見つめる。
「キレイだ…………」
「む〜! 嬉しいけど違うっ!」
不満を露わにする様は、先程とは打って変わって子供っぽい。「ごめんごめん、カレンはカワイイよ」と夫が頭を撫でた。
「わたしもわたしもー!」
「よしよし、二人とも世界でイチバンカワイイ!」
父の大きな手、その優しさと温かさを感じながら、娘がふと首を傾げた。
「ねえおとうさん、二人とも世界でイチバン……ってどういうこと?」
「え?」
「どっちのほうがカワイイの?」
「えーっっと…………」
母娘の視線が刺さる。カワイイ笑顔とキレイな笑顔から圧を感じる。
「……今日はお前の方がカワイイぞ!」
「ヤッター!」
無邪気に喜ぶ娘を見て、母は嘆息しつつも何処か嬉しそうな様子だった。
「ごちそうさまでした!」
「お粗末さまでした」
あれほどあった食事も、ウマ娘二人と成人男性一人にかかればあっという間になくなってしまった。
「んん……ちょっとねむくなってきちゃったかも……」
娘が瞼を擦りながら言った。「食後だしね、お昼寝しちゃいな」と父がお姫様抱っこして寝室に運んだ。
「ただいま、ちょっと重くなってたよ」
「もー、女の子にそれ言ったら嫌われるよ?」
「ごめんごめん。親としては嬉しくて、つい」
「ふふっ、冗談だよ。毎日どんどんおっきく、カワイくなってるもんね♪」
カワイく頬杖をついた妻は、夫にSNSの投稿を見せる。
「ほら見て、最近だと家族での投稿の方がウマいね多いんだよ?」
「おー、ほんとだ」
勿論普段のツイートもよく伸びているのだが、その倍くらい家族絡みの投稿の方が見られている。普通のウマスタグラマーであれば、美少女の背景に見える家族など目の上のたんこぶであり、むしろ煙たがられる傾向にあるのだが──そこは流石カレンチャンというべきか。
「あの子なんて顔出ししてないのに、フォロワーさんからカワイイってチヤホヤされてるもんな」
「当然っ、だってお兄ちゃんと私の子だよ? オーラだけでカワイイもん♪」
先程もツーショットを撮っていた二人だが、実はCurren の投稿では娘の顔は映していない。それは学生時代からSNSに触れ続けて功罪どちらも学び、何より多大な影響力を持つ彼女故の配慮だった。変な人に絡まれたり叩かれたりするリスクを思えば、まだ顔を映すには早い。せめて自分で判断できるようになってからでないと。それに何より──
「Currenはあくまで、カレンのカワイさを発信するためのアカウントだからね。お兄ちゃんやあの子の力を借りるわけにはいかないもん」
まあ最近は負け続きで悔しいけど──と、Currenは苦笑する。
「でもここで終わる君じゃないだろう? だってカレンは、宇宙で一番カワイイんだから」
「……女たらしっ、さっきあの子にも言ってたのに」
彼女は耳を寝かせ、尻尾ごとそっぽを向いた。
「まだまだカレンが一番だよ。いずれはわからないけどね」
「──ふふっ、まだまだこの座を譲る気はないけどね♪」
不敵に微笑んで、彼女は夫の膝の上に座る。
「これからもずっと──私たちのことを見ててね、旦那様♪」
「当然だ」と頷いて、夫は優しく抱き締めた。