実装当初に考えてたのに、実現までは長かったです。
「「海だァ~~~~!」」
浜辺の人々が思わず振り返るほどの声量で叫びながら、母娘は砂浜を横切り青い海へと飛び込んだ。
「こら二人共、準備体操くらいはしないと」
「あー!? そんな暇はねーよ、なんたってこのゴルシちゃんを大海原がまってるんだぜ!?」
「おら、おまえも早くこい!」
「わぶっ!」
いつの間にか背後にいた娘の一蹴りで、息子が海へと吹き飛ぶ。水切りの要領で跳ねていったようにも見えたが、日頃の戯れに比べれば恐らくマシな方であるので、父は十字を切って無事を祈った。
「迎えに行けよ、父ちゃんなんだから!」
背中が吹っ飛んだんじゃないかと思うほどの衝撃。痛みよりも何よりも先に、父の身体は宙に浮いた。お空を飛んでるみたい、なんて感想を出すまでもなく、風を切る感覚と轟音とともに、海上を四回跳ねた。
「よっしゃあ、アタシの勝ちィ!」
「ずりいぞ母ちゃん、もーいっかいだ!」
「……息子よ、生きてるか?」
「まあ、たぶん……」
父子は静かに海上を漂っていた。こういったことは日常茶飯事なので、二人共慣れきっている。幸い、精神が母に似きった娘に対し、息子は丈夫さと図太さが母似なので、何なら父よりも強かった。照りつけるような日差しと青い空に、二人は静かに夏を実感する。
「おし、んじゃ宝探しに繰り出すぞ!」
「なんて?」
疑問符を浮かべる息子に対し、父は「ああ。毎年やってたアレか」と思い出したように頷いた。この辺りは年の功である。
「母ちゃん、よくわからんけど毎年大海原に財宝とか探しに行ってたんだよ。ゴルゴル星のトレジャーハンターだから」
「は……?」
「そんな猫が宇宙飛び出したみたいな顔すんなって! その血を引くお前たちも立派なトレジャーハンターだ!」
「よっしゃー!」
「ええ……」
困惑する息子と喜ぶ娘の姿に、在りし日の自分を重ねて父は遠い目になった。
「既に船は用意してあるぜ! さー、いざ繰り出すぜ大海原!!」
「「おー!!!」」
ヤケクソとノリノリのコールが砂浜に響いた。
とはいえ船に乗り込んでからは束の間の平穏というか、シンプルなレジャーだった。
海を眺め、釣りをして、ダイビングをして。こういう時に、ゴルシとの付き合いで取らされた様々なアウトドア資格が役立つのだ。
そして、遂に──
「よし、着いたぜ! 隊員共、この島にきっと財宝は眠っているッ!」
「食いもんか!? 飲みもんか!? それともお吸いもんか!?」
それは前者二つと併合できるんじゃ、なんてツッコミができるのであれば、父と子はここにはいない。
ゴルシレーダーとミニゴルシレーダーに従い、彼らは島内を爆走する。野を越え山を越え谷を越え、父を越え息子を越え弟を越え、縦横無尽に飛び回っているうちに気づけば夕方だった。
「結局なにもみつからなかったね……」
「なにいってんだ弟! ここまでの冒険、そのすべてが宝物だろうが!」
「うーん、たしかに姉ちゃんの言うとおりかも……?」
「何言ってんだ、あの夕日こそが宝だろうが! オラ走ってこい!」
「「わー!!」」
母の一声で、姉弟は沈む夕陽へと駆けていった。砂を蹴飛ばし水辺に飛び込むその姿を、どこか微笑ましげに母が見つめる。珍しい表情だなと父がそれを眺めていれば、彼女はこちらを向いてニヤリと笑う。
「アタシと付き合ってアンタの人生、面白くなっただろ?」
「ああ────最高だよ」
手を引いて、二人は夕焼けへと駆け出した。