ママ娘 ビューティーダービー!   作:織葉 黎旺

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第6R シンボリママルフ

「入れるよ、ルドルフ」

 

「ああ、来てくれ」

 

「だいぶ溜まってたみたいだな」

 

「んっ……ああ、最近はしてもらえてなかったからな……ッ!」

 

「お、やっぱりここか。少し強めにしていくぞ?」

 

「ま、待ってくれトレーナーくん。これ以上はあっ!?」

 

 数十分ほどの行為を終え、重ねていた肌を離し、程よい倦怠感のまま二人は横になった。上気した頬のまま、シンボリルドルフが彼のことを見つめる。

 

「今日もよかったよ、旦那様?」

 

「奥様にそういってもらえて何よりだよ」

 

 ぴくぴくと皇帝の耳が反応した。

 

「ふふ、何だかこそばゆいな。このように呼びあうのは」

 

「確かにな。まあ、じきに慣れるだろ。関係が深まるにつれての呼称の変化なんて当然至極なんだから」

 

「近いうちにまた変わるようだけれどね」

 

 少しだけ大きくなったお腹を擦りながら、二人は微笑んだ。

 

「ああ。ルドルフは子どもに何と呼ばれたい?」

 

「ふむ、悩ましいな。無難なのはお母さんだろうか? お母様だと硬すぎるかもしれないが、ママと呼ばれるのはどうにも、私には似合わないだろうし」

 

「いいじゃん、ルドルフママ。気張っていないありのままの君なら、それも似合うさ」

 

「ありのままの……ママ! ふむ、流石だな君は!」

 

「いや、狙ってないし全然上手くもないから」

 

 耳をぺたりと倒した意気消沈の妻に、夫は苦笑する。

 

「そのギャグセンスは受け継がないで欲しいなあ」

 

「なら君は、この子が何を持って生まれてくることを望む?」

 

「五体満足であればもう、言うことはないよ。俺と君の子どもなんだからさ、きっといい子になる。ただまあ、尻尾と耳を持って生まれてきてくれたら、ちょっと嬉しいかな」

 

「はは、そうだな。我が子と共にターフを駆けるのは、さぞ愉快だろう。冠に届くほど才気煥発であればより嬉しいが、好きなように伸び伸び生きてくれるのが一番だな」

 

「男の子だったら一緒にキャッチボールしたいな」

 

「君のコントロールでは明後日の方向に()()()()()だろうから、や、やめた方が……!」

 

「言いながら自分で笑うなよ」

 

「ひんっ!」

 

 突如押し込まれた指に、ルドルフが短い悲鳴をあげた。先程ほぐされたとはいえ、久々だったのだ。整体師の資格も持つという彼に、的確にツボを突かれては、如何に常勝無敗の皇帝といえど、情けない声の一つも飛び出すというもの。

 

「身体は楽になったか?」

 

「ああ。お陰様で、すこぶる快調だ」

 

「それならよかった。定期的にほぐさないと、お前はみるみる疲れを溜めていくからな」

 

 現役時代からずっとそうであった。シンボリルドルフ本人が、なまじ疲れをバイタルでゴリ押して働けるスペックを持っていたがために、身体の各所に常に疲労を溜め込んでしまっていた。それに気づいたトレーナーは、こうして定期的にマッサージしているのだ。

 

「とはいえ、身重なのにあまりマッサージするのはよくないからな。安定期といえど油断大敵だ。足腰くらいは軽くほぐせるが、しばらくはお預けだな」

 

「そうだね。少し寂しさもあるが、この子の身には替えられないからな」

 

 優しくお腹を摩るその横顔は、間違いなく母のそれであった。

 

「日進月歩。君と、そしてこの子と共に、これからの日々を、大切に歩いていきたい」

 

「──ああ」

 

 そっと手を重ねる。三人分の温もりに、二人はいつまでも、微睡むような幸せを味わっていた。

 

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