そのウマ娘が“白銀の突風”と呼ばれるまで   作:乃亞

10 / 74
七夕ということで19時ちょうどに投稿します。七夕と内容は一切関係ありませんが、よろしくお願いします。


第5話 制圧:The Skewer

 ゲートが開くと同時に私は出…なかった。なぜならこのレースの最適解は()()()()()()()()()()から。なんならスターティングポーズすら取ってなかったし。私を見て勝ったと思ってる相手もいるみたいだけど、まぁ見てなよ。

 

 周りが我先にと駆け出したのを見つつ私はスタートを切る。うーん、マヤノのメモ用紙に書いてあった通りのなだらかな下り坂だ。先頭の子たちが必死に逃げてるのがよく見える。

 

 

 先頭の2人組から大きな集団になってるところまでが大体2バ身。そこから最後尾の私まで大体7バ身差だから先頭まで9バ身。そして集団は縦に伸びてるからコーナーを抜けたあたりで集団の後ろの方は差しに行く予定なんじゃないかな。

 

 それなら、こっちもそろそろ行こうか。先頭はちょうど上り坂を登りきって第3コーナーに差し掛かる場所でちょっと落ち着いてる感じ。それで集団が坂に対応できる子とできない子が分かれ始めたくらい。集団からあぶれそうな子の息は……乱れてる、掛かるか掛からないかの瀬戸際かな?じゃあこちらから少し乱してみようか。

 

「どうもこんにちは、そしてさようなら」

「「ヒッ!?!?」」

 

 はい2人掛かりました〜。自分の脚質に見合った走り方をしないから乱されるんですよ〜。

 

 そしてここでコーナーに差し掛かるわけだから体勢をさらに低くして、歩幅を少し狭くする。

 体勢を低くするのは集団から抜け出そうとしてくる子の当たりに負けないようにするため。重心が高いとぶつかった時にバランスを崩しやすくなるしそもそも体をぶつけられやすいからね。体格に恵まれたわけじゃない私の精一杯の対策ってね。

 歩幅を狭くするのは細かいステップをすることで丁寧にコーナーを抜けるため。正三角形より正方形の方が、正方形より正五角形が円に近いのがわかれば感覚的に受け入れられる。

 

「「「むーりー!!」」」

 

 明らかにコーナーを抜けるのが苦手そうな子達を一気に抜きつつコーナーを抜ける。先頭の2人とは…3バ身くらいかな?最後の直線が上りだから表情までは見えないけど息のつき方的には少し疲れてきたくらいかな?ま、いいか。大外からまとめて全員抜こう。それをするために最初露骨すぎるくらいに手を抜いたんだから。

 

「「えっ!?」」

 

 集団の前の方をまとめてちぎってスパートをかけた私に先頭の逃げ2人は驚きの声をあげている。定石的には多分逃げが優位なんだろうね、このコースなら。まぁ私は駆け引きとか一切付き合う気ないんで。そこのところは、ごめんね?うるさくてやってられないのこっちは。1人おいすがってるみたいだけどまぁ関係ないし。

 

「ぅゎぁ」

 

 はい聞こえてるよテイオーさん、どこにいるかわからないけど人の走りでドン引きするのやめようね。私耳いいから聞こえてるよその呟き。なまじ少し仲良くなったから捕捉しやすいよその声。…って考えてたらもうゴールじゃん。

 

「まぁ…ざっとこんなもんでしょ」

 

 ちらっとタイム確認したら1:37.7って見えたんだけど、これどれくらいのスピードだっけ。ま、いっか。久しぶりに本気で走ったし、とりあえずクールダウンするかぁ。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

「おい…おいおい。これマジかよ」

 止められたストップウォッチを見たトレーナーは思わずうめいた。後続を6バ身まで離した挙句にタイムは1:37.7。とてもじゃないがトレーニングをろくにしてないウマ娘が出せるタイムじゃない。しかもゲートが開いた時は出遅れて最後尾にいたのに、そこからするするっと駆け引きすらさせずにごぼう抜きしていったのだから手がつけられない。こちらもまた駆け引きをさせないタイプのスズカとは若干違った天賦の才を見せつけられた気分になっていた。

 

「なぁトレーナー、アイツのあの走り方。()()()()()()?」

「あっそれはボクも思った!併走の時はあんな走り方じゃなかったのに」

「…そうだな」

 

 そして特筆すべき点はゴルシやテイオーの言う通り、他のウマ娘と比較にならないくらい彼女の加速するフォームの重心が低かったところだ。ともすれば他の子が降ってる腕が頭に当たるかもしれないくらいに。あんな加速方法ができるとすれば股関節、膝関節、足の関節が異常なほどに柔らかいことが前提条件でそこから……!トレーナーは考えることを放棄した。

 

「んぁぁーもうクソっ!ゴルシ、スバルメルクーリをテイオーとスペとウオッカとスカーレットを使って拉致してこい!あんな逸材を放置する奴がどこにいるか!あれは争奪戦ものだぞ、しっかり取ってこい!マヤノトップガンも手伝ってくれたらスイーツ奢る!」

「ラジャー!よっしゃあぁぁぁ!幻の鮭児の収獲だぁぁぁ!」

「それはシャケの名前だけどね」

「スイーツ奢ってくれるの!?アイ・コピー☆!マヤに任せて!」

 

 こうして本人の預かり知らぬところで大捕物計画が始まったのであった。

 

「……でもメルちゃん、そんな簡単に捕まるかなぁ」

サイレンススズカの呟きをまともに聞いていた者は残念ながらいないようだ。




現状のメルちゃんはアプリなら
逃げ:?? 先行:?? 差し:?? 追込A
短距離:?? マイル:A 中距離:?? 長距離:??
ゲート難、バ群嫌い、引っ込み思案、ささやき、末脚みたいなことになってそう。
バッドスキルとかいう無限の勝ち筋。みんなもSSRバンブーメモリーデッキに入れて空回りゲート難Bランクゴルシ作ろうね。私は諦めました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。