そのウマ娘が“白銀の突風”と呼ばれるまで   作:乃亞

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完全に低気圧にやられて更新が遅れました。ぴえん。
あと今回長くなっちゃったんで前後編で分けることにしました。ぴえんぴえん。
後半はそのうち上がります。よろしくお願いします。


第6話 勧誘と逃亡:Hide and Seek (前)

「スバルメルクーリ!ぜひ我々のチームに来てくれ!君のその素質を私なら開花させることができる!!」

「君なら三冠でもトリプルティアラでもなんでも狙える!そのためのプランはもうそろえてあるんだ!だからぜひうちのチームに!」

「あなたならお母様も超えられるウマ娘にもなれるわ!私のチームならデータは完璧よ!」

「…………お引き取りください。今はそれだけしか言えません」

 

 クールダウンを済ませ、着替えをしてから更衣室を出た瞬間これだ。出待ちとか本当に趣味が悪いしうるさいったらありゃしない。これだから選抜レースなんか出たくなかったんだ。どうせ皆私が欲しいっていうより、"G1勝者の娘を育て上げた"って実績が欲しいって言葉の裏が見え見えで、誰も彼も自分のことしか考えちゃいない。そんでもって最後、新手のオレオレ詐欺か何か?

 

「話だけでも聞いてくれないかな?大丈夫、そんなに時間かけないから」

「連絡先だけでも!!」

「…今日のレースの反省などをするので。失礼します」

 

 しつこいなこいつら。中等部のいたいけな女の子を沢山の大人が囲むって言う絵面、冷静に考えてまずいからね?

 髭の配管工よろしく三角跳びの要領で壁を蹴ってトレーナーたちのそこそこ厚い壁を乗り越える。あっと驚くトレーナー連中を尻目に私はそそくさと退散することを選択した。付き合ってられないったらありゃしない。気性難とでもなんとでも言っておいてくださいな。

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 追いかけてくるトレーナーたちをなんとかやり過ごして練習場を抜けたら、テイオーとマヤノが並んで待っていた。本当に私なんかにつきっきりで暇なの?まぁ待ってくれてたのは嬉s…いやなんでもない。なんでもないし何もない。

 

「おっかえりーメルちゃん、すっごく速かったよ!ま、ボクには負けるけどね!」

「ただいまテイオー、『ぅゎぁ』って言ってたの聞こえてたよ」

「うげ…バレてる、なんで聞こえてるのさ」

「メルちゃんすっごく耳いいもんね!おかえり!」

「なんで知ってるのさマヤノ。ただいま」

「……ねぇねぇメルちゃん。ボク宿題教室に忘れちゃったから、一緒ニモドラナイ?」

「ん、いいよ」

「(…テイオーちゃん、また最後の方棒読みだったけどメルちゃんが気付いてないみたいだしいっか)」

 

 

 …一緒に行動し始めてそんなに日にち経ってないはずなのになんでここまでウマが合うんだろう。まぁ多分あのカイチョー様のことだ、ここまで計算づくでも何も不思議じゃないんだろうけどそれはそれで掌の上で転がされてるみたいでなんかムカつく。

 そんなことを考えていたからか、なんだか教室に戻ることで話が進んでいたらしい。

 

(……ん?)

 

 そもそも今日宿題なんて出されてたっけ。国語は無いし歴史もない、数学は…授業自体なかったなそういえば。ほとんど授業出てないからどのくらいの頻度で宿題出るのかとかそもそも曜日ごとの科目とか全然わからないけど、今日宿題が出たなんて記憶ないぞ。…ちょっと怪しい?

 

(…………んん??)

 

 いつも通って…る?

 …。

 ……。

 ………。

 めんどくさいから通ってることにしよう、通ってる道にこんな看板あったっけ。

『チームスピカ  入部しない奴はダートに埋めるぞ』……?いや血文字って不穏すぎるし、ダートをそんな使い方しちゃダメでしょ。ニンジンみたいにウマ娘を埋め、るな……?

 

(…………………んんん???)

 

「…チーム、スピカ」

「「ぎくぅ!!」」

「テイオー、これってあなたのチームよね?何か知ってる?」

「ぃ…ィェ、ナニモシリマセンヨ???」

「……。マヤノは?テイオーから何も聞いてない?」

「…マヤ、わかんないかも。スイーツなんて何も知らないもん!ぁ…」

 

 ……2人ともすっごいわかりやすいよなぁ。最大限良い言い方をすれば素直とも言えるけど。

 

「私、部屋に戻ろうかな」

「えっ、でもボクの宿題が「なんの教科?」…ええっと…」

 

 …ここまでわかりやすいのも考えものだと思う。心理戦で負けそうだし。……はぁ、2人置いて帰るか。きびすを返して…っとと。

 

「あ、すいませんいきなり振り返っちゃ……って?」

「スカーレット、ウオッカ、スペ。やっておしま…って速っ!?」

 

 これは…アレだ、誘拐だ!多分私をズタ袋で誘拐するつもりだ!マヤノは入ってないはずだけどスイーツに釣られてる。看板からして話通じなさそうだから本気で逃げないと…やられる!ニンジンになっちゃう!寮の門限?そんなもの知るか!ニンジンになるよりマシだ!!

 私は素早く間を抜けて外へ逃げ出した。誰だってニンジンになりたくないでしょ?

 

 …多分その時の逃げをタイム計測したら選抜レースよりも大分速いタイムが出ていたと思う。それくらい必死に逃げたことだけは強調しておく。

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 はぁ…はぁ…疲れた。6人から追われるなんて流石に聞いてないよ。ただでさえ久しぶりに本気でレースを走った後だったのにもう一本、いやもう三本くらい走ったくらいの疲労感なんだけど。テイオーはシンプルに速いし、マヤノは私の先回りをしてきたし、ズタ袋組は見た目の威圧感がすごかった。

 

 結局まけたのかどうかわからないけどいつものおサボりスポットに来てしまった。川の静かなせせらぎが早鐘を打っていた私の心臓を落ち着けてくれる。

 

「メルちゃん?」

「!?……あぁ、スズカさんか。ってスズカさん!?」

「ふふっ、今日のメルちゃんは賑やかね」

 

 口元に手を添えて笑うのたおやかでかわいいと思うけど、今はそういうことじゃなくて。確かスズカさんもスピカで、ってことは私を追いかけて…。

 

「もしかしてスペちゃんたちに追いかけられた?」

「…うん」

「あの子達も悪気があってやってるんじゃない…と思うわ。トレーナーさんも含めて、メルちゃんと一緒に走りたくてやってるのよ」

「…そうですか」

 

 とりあえず捕まえてくる気がなさそうなのでスズカさんの横に座る。私も疲れたし、そんな中でスズカさんまで追ってこられたら流石に勝てない。ニンジンは…回避したと思いたいなぁ、必要以上に汚れたくないもん。

 

「選抜レース、お疲れ様。本当に速かった」

「…ありがとう。久しぶりにまともに走った気がする」

「…楽しかった?その久しぶりのレースは」

「……楽しめた、と思う」

「そっか」

 

 スズカさんは本当に話を聞くのが上手いと思う。こっちの話を否定しないで聞くだけ聞いてくれる。どっかのバカ達(トレーナー共)と違う。そして最後は『そっか』って相槌を打ってくれる。だから私もちょっと話そうかなって気になるんだろう。

 

「……ねぇ、スズカさん」

「なあに?」

「スピカのこと、教えてよ」

 

あれだけ無茶苦茶な勧誘をするチームにスズカさんがいる理由が知りたい。そう思うのはなにもおかしくないと思うんだ。




スズカとおしゃべりしてニコニコしてもらいたいだけの人生でした。
私事ですが、明日の朝9時から始まるウルトラマントリガーが楽しみで仕方ないです。
いつものことではございますが感想、お気に入り、誤字報告、UA等々本当にありがとうございます。励みになってるのでもっとください()。
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