そのウマ娘が“白銀の突風”と呼ばれるまで   作:乃亞

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アプリのサークルに入ってないばっかりにマックイーンとかライスのストーリーのSSRの完凸が出来なくて泣いてしまった日曜夜にお届けです。ブライアンの4章楽しみですね。


トレーナー→メルちゃんの呼び方を変更させてもらいました。本筋とはあんまり関係ないかもしれませんがよろしくお願いします。


第9話 夢幻: oneirodynia

「あ、そういえばメルクーリ今週末空いてるか?空いてなくても空けてもらうんだが」

「えっ?まぁ、空いてr…ますけど」

「なら予定入れるなよ、デビュー戦入れたから」

「……はい?流石に早すぎません?」

「大丈夫大丈夫、お前のレベルなら何も考えなくても勝てる勝てる!」

 

 チーム練習後にトレーナーから話があるって言われたから来たらコレだよ、何考えてんだこの人。

 

「そんでデビュー戦勝ったら次は朝日杯だな、12月の」

「……はぁ」

「朝日杯の前にいちょうステークスにも出てもらうぞ」

「………はぁ」

「そんで年が明けたらクラシックに本格参戦だ!メルクーリならクラシック三冠も夢じゃない、まずは皐月賞のために弥生賞出るか」

「…………はぁ」

「…本当にスズカに似てるなぁお前、レースに対してのやる気以外」

「私は…。私は目標(ユメ)を見つけられるでしょうか?」

「さぁな、それはメルクーリ次第だ。俺たちトレーナーにできるのは夢を叶えさせてやることだけだからな。そのためにもメルクーリははやく走って目標を見つけてくれよ、頼むぜ」

「……はい」

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

「……ということで今はチームスピカに入ってます、体験入部という形ですが」

『あら、スピカですか。新進気鋭のいいチームに入りましたね。どのような場所であろうと学ぶこと、学べることはたくさんあるはずです』

「…ご存知なんですね、チームスピカを」

『あなたが通っている、そして私が通っていた学園のチームです。調べない方が無理があると言うものでしょう?』

「…そういうものですか」

『いいですか、メルクーリ。学びなさい。レースに関することでも、それ以外のことでも、何かを成すために学園に通いなさい。ゆっくりでいいんです、歩みを止めずにいることに意味があります」

「…分かってます」

『あなたが言葉に詰まる時、本音を隠していることくらい分かっています。あなたが少しでもレースに対して前向きになったこと、これでも嬉しく思っているのですよ』

「……」

『…その様子だとまだ完全に前向き、というわけでもないようですね。…大体あれはあなたの「そのことを、その言葉を私に向けて言うなッ!!…失礼しました、言葉が悪くなりました」いえ、こちらこそ言う必要のないことでしたね。デビュー戦、楽しみにしています。好きなように走りなさい、メルクーリ。必要以上に考えすぎてしまうのはあなたの悪い癖ですよ』

「…はい。夜分遅くに失礼しました、お母様」

 

 ……はぁ。久しぶりに連絡したらこれだ。

 私の大切なお母様。元競走バでG1を勝ったこともあるお母様。私がまぁ裕福な暮らしといって差し支えない生活が出来ているのはお母様のおかげといっても過言じゃないけど、でもやっぱり少し余計なことを言ってくるのは少し堪える。……その影響を逆に受けてか、私は言うべきことを言えない性格になっちゃったけど。

 

 『歩みを止めずに』…か。こんな私が歩みを進めたところで何があるというんだろう。前には崖しかないのに。…いや前どころか前後左右どこを見ても先なんて見えやしないのに。歩むべき道どころか歩んできたはずの道さえ見えてないのに先になんてどうやって進めばいいのだろう。

 

 

 ……あーもうやめだやめ。お母様にも必要以上に考えすぎるのは私の悪い癖と指摘された直後なのにこれだからイヤになる。ちょっと外の空気でも吸ってこよう。

 

 

 

「……ふう」

 

 寮の屋上からトレーニング場をぼんやり眺める。そろそろ寮の門限なのにも関わらずトレーニングをやめないウマ娘たちがいる。多分チームであらかじめ届出を出したんだろうな。どうやら今からタイムを測るっぽいことを話している。2000mを測るのか。皐月賞か秋の天皇賞か、はたまた秋華賞?どの想定なんだろう。

 

 

 ……トレーニングを頑張る名前も知らない1人のウマ娘にふと幻視を見てしまった。今走ってる子のフォームがアイツに似ている、いや似ていたから?さっきお母様と話してそのことを思い出したから?

 …いや、きっと疲れてるからだろうな。ただでさえ最近監視がつくわ、出る気のなかった選抜レースに出させられるわ、チームに入るわで見えない疲れが溜まってたのかもしれない。

 

 

 

 …アイツは一緒に走ってる私がイヤになるくらい速かった。フォームも周りの状況を常に俯瞰できる理想的なフォーム。それで周りをよく見て私が加速しようとする二歩前で加速する嫌らしさもあった。それでいてゴール前で外から見てる人にはわからないくらいにわずかに手を抜いて私に抜かせ、自分は常に2位を取り続けてた。

 

 

『メルは最後まで速いね』なんてのうのうと宣いながら。

 

 

 

「…あっ」

 

 フォームが似ていたその子のペースが乱れ、アイツの幻視が一気に気化した。アイツならここからさらに加速できるだろうが、それと比べるとストライドが短くて余計な力がはいってる分、体力の消費が多くなってしまったのか、そもそも体力に難があったのかわからないけど、彼女はもうバテバテな状態で走っていた。

 

「…最悪、ホント今日はなんなんだ」

 

 今日…というより今月は厄日が固まってるに違いない。帰ってさっさと寝よう。

 

 




なんで良馬場になってくれないの…。お客様の中に天気の子はいらっしゃいませんか?
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