洗濯物が乾くのは良いんですけどいかんせん暑すぎますわこれは。ぴえん。
トレセン学園には三女神様の像というものがある。なんでも私たちウマ娘の始祖と呼ばる三柱の女神様を象った像らしく、祈ったウマ娘を勝利へ導くとか像の前で祈れば先輩ウマ娘の祈りの力が宿るとか…とにかくまぁそんなウワサ話が絶えない。
…正直、私からすればバ鹿バ鹿しい話にしか聞こえない。
三女神に祈った重賞未勝利のウマ娘がその次の月の重賞で勝った?元々素養があって、それがトレーナーの指導か自分の気づきで開花しただけだ。
祈れば自己最速タイムが縮まった?地道なトレーニングがそのウマ娘に合ってて実力が伸びただけだ。
…どれもこれもいわゆるプラシーボ効果って奴。三女神様の像に祈るという"クスリ"がそのウマ娘たちにいい効果を及ぼしただけの話。
三女神様なんて正直まやかしだとしか思えない。
…いくら才能に恵まれていても。いくら自分をよくしようも努力していても。
それはある意味平等な話だとは思うし、その平等を保っているという意味では神様はもしかしたらいるのかもしれないけど。
でも。でも、もし神様がいるのだとして。その神様が私たちの運命を変えられるのだとしたら。
私はその神を一生、いや死んでも。ずっと呪い続けるに違いない。そう思った。
〜〜〜〜〜〜
「……クーリ。メルクーリ。起きろ、会場着いたぞー」
「……んぅ……?」
「だから、会場!新潟レース場に着いたぞ」
「…あぁ、トレーナーか。おはようございます、連れてきてくださってありがとうございます」
…どうやら車の中で寝ていたらしい。しかもなんかとびっきりの悪夢を見ていたような気さえする。
そもそもレース出走当日朝の4時に寮を出発なのがおかしいと思うんだけどスピカではたまにあることらしい。首の寝違えとか足が固まってたりとかはしてないからいいけどもししていたら歴代でも屈指のしょうもない理由での出走取消になっていたかもしれない。
外を見ると本当に新潟レース場に着いていたようで、ちょっとした出店が出てたり、レース目当ての人がちらほら歩いてたりしていた。G1どころか重賞ですらないメイクデビュー戦によくもまぁ来るなぁ。
「ったく、他の奴らはお前を応援するためのベストポジションを取りに行ったり、焼きそば作る準備をはじめたり……大丈夫か、メルクーリ?」
「何が?」
「いやお前、汗すごいぞ?体調でも悪いのか?」
トレーナーにそう言われてやっと体にべったりとまとわりついている服に気づいた。着替えはあるから全然いいけど、早く着替えたいなコレ。
「……トレーナーのヘンタイ」
「なんでだよ!俺は運転してただけだぞ!」
「…早く着替えたいし、控え室に荷物持っていくの手伝ってくれない?」
「あ、あぁ…」
トレーナーの心配そうな目がイヤに突き刺さる。なんもないってば、本当に。
〜〜〜〜〜〜
「「「おお〜」」」
「いや、これ体操服なのよね。いつも着てるのよ」
「いやゼッケンつけたら一気にかっこよくなったから、ついね」
「メルちゃん、マヤたちみんなで応援してるから頑張ってね!」
「トレーナーさんが『メルクーリが勝ったらスイーツを奢ってやる』って言ってましたし、私たちを助けると思って頑張ってくださいまし!」
私の控え室に来てくれていたテイオーとマヤノ、あとメジロマックイーンさんがそれぞれの励まし方をしてくれる。メジロマックイーンさんは名家メジロ家のご令嬢さんにしてスピカのアップの時の掛け声を「スイーツ!スイーツ!」にした戦犯の1人…らしい。ちなみにもう1人の戦犯はスペシャルウィークさんとのこと。欲望ダダ漏れなのよ、この子たち。
「テイオーとマヤノはありがとうだけど…。マックイーンさんは初セリフがそれで本当にいいの?」
「…!!っんん、みんな応援していますわ。思いっきり勝ってきてくださいまし!」
「…ふふっ」
正直マックイーンさんをいじるゴールドシップさんの気持ちがよくわかる。反応が大きくていじりたくなるのよ。
「…よし、服の乱れもないし大丈夫かな?とりあえず走ってきます」
「そういえばメルクーリさんはパドックでの魅せ方ってご存知ですの?貴女が来てからパドックの見せ方の練習なんてやってた記憶がないのですが…」
パドックで見せるとかあったなぁ、そういえば。なんかいい感じにカッコつけて見に来た人を沸かす奴ね。…というかあのトレーナー、走り以外教えてるのだろうか。入ってからずっと走る系のトレーニングしかやってないんだけど。
「スピカのライブ練習担当はボクだからね〜。…ってメルちゃんライブの練習もやってないじゃん!どーしよう、カイチョーにまた怒られちゃう…」
「さぁ、それはどうでしょう?そもそもライブに出るかもわからないしねぇ…」
「それはそうだけどメルちゃんが負けるとは思えないなぁ…」
「スイーツ食べたいもんね、マックイーンさん」
「もうそれは忘れてくださいまし!」
顔を真っ赤にしてぷりぷり怒るマックイーンさんを見てるとなんだが気が抜けそうになる。
…さて、そろそろ時間かな。
「行ってきます」
「「「いってらっしゃい!」」」
〜〜〜〜〜〜
『さぁ、注目の1番人気!4枠8番、スバルメルクーリ!いまやリギルに匹敵すると名高いチームスピカからこの娘がデビューです』
『デビュー戦とは思えないほど落ち着いていますね。これは好走が期待できるのではないでしょうか』
パドックに出てきて堂々とアピールするスバルメルクーリを見てトレーナーは安堵していた。レース場に着いた時の尋常じゃない汗の量から緊張でガチガチになったかと思っていたのだが、どうやら杞憂で済んだようだ。
多少目は死んでる気がするが、ジャージを脱ぎ捨ててお手本のようなロンダートとバク転を披露してから愛想を振りまいていた。
「おいおいパドックでの魅せ方完璧じゃないかあいつ。あんな柔らかいロンバクできるとか知らなかったわ」
「あっははは!パドックでアクロバットやるとかメルクーリの奴やるな!今度アタシもやるか!」
それはやめてほしいトレーナーだったのだが、まぁゴルシだし好きにやらせるしかないと諦めた。
一方のパドック上のスバルメルクーリはアピールタイムが終わるとさっさと捌けてどこか遠くの空をぼんやりと眺めていた。
(あっ、やっぱりパドックの上はうるさかったのね)
それを見たサイレンススズカはなんとなく彼女の考えていることがわかってしまったようだ。
……ほんとはね?今回レースもライブも終わらせる予定だったんですよ?蓋を開けたらレースすら始まらなかったですぴえん。次回はライブまでやりたいです。……やりたいです(鋼の意思)
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