そのウマ娘が“白銀の突風”と呼ばれるまで   作:乃亞

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お久しぶりです、ゆっくり休めました。
第2R開幕です、よろしくお願いします。

4/4、少し修正させていただきました。


第2R それがたとえ茨の冠でも
第14話 隔靴掻痒:Unexpected


 …夜は好きだけど嫌いだ。いきなり何を言ってんの、と思うだろうけど本心だ。

 

 私が夜を好きな理由。車通りや起きている人が減って静かになって夜風が気持ちいいから。こっそり寮から抜け出して軽く走るのも、屋上で星を眺めるのも悪くない。トレセン学園の屋上は思ったよりキレイな星空が見えるしね。

 

 反対に私が夜を嫌いな理由。物音がしなくて余計な情報が入ってこない代わりに余計な思考(ノイズ)が入ってしまうから。有り体に言えば思い出したくないことを思い出してしまうから。

 

「……はぁ」

 

 最近私にしてはしっかりトレーニングをして、あまつさえメイクデビューを制したせいだろうか。トレセン学園に入る前、つまりまだ私がレースなんてモノに憧憬(ユメ)を見ていた時のことを夢で見てしまう。

 

 

『おかあさまよりたくさんのG1で勝ってみんなの前で踊るの!そしたらみんなが笑顔になっちゃうんだから!その時になってシットしないでね、おかあさま!』

『はいはい、それじゃあ踊る時に恥ずかしくないように簡単なステップの練習をしましょうね』

『はい!えへへ…』

 

 …うるさい。

 

『…あら、どうしたの?そんな切羽詰まったような顔をして』

『背が伸びなくて不安なんです。ちゃんと早寝早起きはしているんですよ、それなのにあんまり伸びなくて…。どうすればもっと身長が伸びて速く走れますか?』

『…うーん。身長がいつ伸びるか、どのくらい伸びるかっていうのは個人差も大きいから具体的には答えられないわねぇ』

『じゃあ。身長が伸びなかったら、私はレースは勝てませんか?』

『…貴女はどう思う?』

『そんなことないです!身長は確かにレースに勝つためにあった方がいいし、欲しいとは思ってますけど、それで勝ち負けが全部決まったらつまらないじゃないですか!』

『ふふっ、正解。貴女のバランス感覚と聡さなら…そうね、多分モノにできるわね』

『…???』

『背が低いことがアドバンテージになる。そんな走り方を知ってるから教えてあげるわ』

 

 ………うるさい。

 

『メルちゃん!コーナーを曲がる時に歩幅を少し縮めた方が曲がりやすいかも!』

『そうなの?……おっ、ほんとだ!これで私たちまた速くなれるね!でもなんで教えてくれたの?これを知ってるか知らないかで大分違いが出るように感じるんだけど』

『メルちゃんはさいきょーのライバルだから!一緒に他の誰もついてこれないくらい強くなって、トーキョー優駿の最後の直線でスパート勝負したいから教えちゃった!』

『…ふふっ、トーキョー優駿って。日本ダービーね、日本ダービー』

 

 

 ……うるさいうるさいうるさい!!!どいつもこいつもレースなんていう茹だった幻想(ユメ)を見やがって、むしゃくしゃするったらありゃしない。……頼むから私の頭から出ていってくれ!

 

 …頼むから。私から離れていってくれないか(私を許してくれないか)

 早くこの夢が醒めればいいのに。醒めたらきっと…。

 

 

 

 イヤな夢ばっかり見せてくる夜はやっぱり嫌いだ。…それでも嫌いきれない、それどころか好きな私がいる。一体本当にどうしてだろうか。考えても考えてもその答えは見えてこないけど、確実にわかることは一つだけあった。

 

「…また寝不足コース確定だ、これは」

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

「……ぷぁ」

「メルちゃん眠そうだね、はちみー飲む?」

「……うん、飲む」

「てゆーかメルちゃん髪も整えてないじゃん!キレーな銀色の髪なのに勿体無い!マヤが梳いてあげるからほらこっちにおいで!」

「……うん」

 

 テイオーからはちみーを渡され、後ろに回ったマヤノに髪を梳かれ、どこから出したかわからない可愛い髪留めでまとめられる。朝なのに相変わらず2人は元気だなぁ。てかこのはちみーあっっま。これが固め濃いめ多めってやつかぁ。

 テイオー曰く『マヤノも朝強いタイプじゃない』って話だったはずなのに全然違うじゃないか。ちなみに私は1週間くらいずっと寝坊し続けててそのたんびにマヤノとテイオーに起こされている。

 

「…はい、完成!これでメルちゃんもオトナのレディだね!」

「……うん、ありがとマヤノ」

 

 横からひょいっと差し出された鏡を見るとハーフアップ?にまとめられた銀髪といつもの眠そうな目つきが私を迎え入れていた。この髪型を歩きながらまとめられるマヤノはやっぱり器用なんだなぁ。

 

「あ、おっはよ〜たづなさん!」

「トウカイテイオーさん、マヤノトップガンさん、スバルメルクーリさんおはようございます」

「たづなさんおはよ〜☆」

「…おはようございます」

「スバルメルクーリさんは今度のサウジアラビアロイヤルカップの事前インタビューの申し込みが来ているので放課後に職員室に来てくださいね」

「………ぶぇ?」

 

 サウジアラビアロイヤルカップ…?あー、いちょうステークスのことか。トレーナー本当に用紙出したんだ、知らなかった。しかもそれでインタビューかぁ、めんどくさいなぁ。サボっちゃおうかな。

 

「ちなみに、サボったら地の果てまで追いかけますよ?いいですね?」

「…はい」

 

 こわっ、たづなさんこっわ!秘書って相手の心も読めないとダメなの?しかも笑顔から表情全然崩れないし、秘書怖すぎるでしょ。

 …とりあえずサボるのはやめておこう、ここでサボったらなんか命を刈り取られる気がする。

 

 

 

「……むむむむ」

「どうしたのマヤノ、そんなに唸って。メルちゃんになんか感じた?」

「メルちゃん、なんだかつまんなさそう…」

 

 〜〜〜〜〜〜

 

「……ねぇ、トレーナー。なんか言うことは?」

「わりーわりー☆言うの遅くなっちゃったわ!アーオモッタヨリホウドウジンオオイナー」

「………はぁ…」

 

 いやいやいや。こんなに取材陣が多いって聞いてないんだけど。パシャパシャですわ!じゃんこんなの。そりゃあたづなさんも逃げるなって言うよね。

 トレーナーの後ろに着いていって壇上に立って一礼する。パシャパシャの速度があがってシャッター音が非常にうるさい。

 

 

「それではこれより、スバルメルクーリさんへの公開取材を開始します。質問のある方は挙手の上、指名されてからお願いします。……ではそちらの方からどうぞ」

「ウマ娘新報の佐藤です。スバルメルクーリさん、初めての重賞レースとなりますが、意気込みの方をお聞かせください」

 

 意気込み……?えっと……。

 

「……ええっと、「初めての重賞ではありますが、必要以上に気負うことなく自分の走りを貫きたいと思います」…ます」

 

 横目でチラッとトレーナーを見るとニッと笑って親指を立ててきた。これ、文章回答で良かったのでは…?

 

「週刊ウマ娘の田中です。先日新潟レース場で行われたメイクデビューではコースレコードという我々の度肝を抜く走りを見せてくれました。今回のレースでもそのような走りを期待してもよろしいのでしょうか?」

 

 新潟のコースレコード…?そうだったっけ…?新潟…新潟…!

 

「あ、えっと…新潟はお米が「コースレコードに関してはとくに意識してませんが、最善を尽くせるようトレーナーと調整をしていくつもりです」…です」

 

 …えーーっと、これ私いる?必要かなぁ…?

 

「月刊トゥインクルの乙名史です。トレーナーさんはスバルメルクーリさん、彼女をどのようなウマ娘だとお考えでしょうか?ぜひそのお考えのほどをお聞かせください!」

 

 お、ラッキー。私への質問じゃないじゃん。トレーナーはどう答えるのかな?

 

「こいつは身体の体幹、バランス感覚が優れていて勝負勘も悪くない。非常に高い水準で走れるウマ娘です。しっかり実力を発揮できれば三冠だって通過点になりうるくらいの優秀な子なので、俺はその個性を支えてやるのが仕事だと思ってます。クラシック三冠路線、こいつから目を離さないでください!」

「えっ待っ「す、すすす……素晴らしいですッ!担当ウマ娘を信じて疑わないその姿勢、感服いたしました!担当ウマ娘のためならば粉骨砕身、たとえ全財産を失っても支えるという覚悟ですね!?」………????」

 

 いきなり何を言い出してんだコイツ(トレーナー)って思ってたらなんか記者も共鳴して訳の分からないことを言い出した。それに乗じて記者会見のボルテージもなぜか上がり始めてしまった。というかそれ以前に!いつのまにかクラシック三冠路線に進むのも決まってることになってるの全く納得行かないんだけど!トレーナー???

 

 その後も何個か質問に対して(トレーナーが)答えて最後に写真を撮って会見は終了になった。いやほんとになんだったのこの時間…?なんか私の思ってない方向にばっかり転がっていく…。




おやすみ中にお気に入り200件超えてました!これからも頑張ります。誤字等ありましたら報告してもらえると幸いです。

水着のダイスちゃんなんとか完凸できて良かったなって気持ち。ギリギリでしたね、ええ。
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