本編もよろしくお願いします。
サウジアラビアロイヤルカップは東京レース場で行われる1600mのマイル区分のレース。
距離的な話をすればメイクデビューの時より200m短くなっているから、追込で走るなら勝負をかける位置を考えないと届かないこともある……のかなぁ、多分。
…というかスタートとラストの長い直線といい、左回りといい、3コーナー前の登り坂といい、これ新潟のコースと似てるよね。実際の芝の状態とか気候とかの要素があるから単純な比較は出来ないけど、走りやすさの面でいえば似たようなレース場の方が走りやすい。マックイーンさんが好きらしい野球で例えるとホーム球場のマウンドの方がビジター球場のマウンドより投げやすいのを考えればわかりやすいかも。
「よーしメルクーリ、次はゴルシと併走だ!ゴルシ行けるか?」
「おっけ。よーし行くぞメル!アタシの追込の極意をお前に授けてやろーう!」
「…わかった」
そんな私は今トレーナーの指示のもと、ゴルシとマックイーンさんの2人と交互に併走トレーニングをしている。なんでも『追込と逃げができるなら、後はそれを先輩の走り方を見ながら洗練させるか!』とのことらしい。本当なら逃げはスズカさんの方が適任なんだけど、本人のレースの関係で今はアメリカに行っているために代役としてマックイーンさんに白羽の矢がたった。
レースに少しでも関わったことがあれば誰でも知っている話だが、追込と逃げは根本的に走り方が違う。スタートが1番大事な逃げに対して、仕掛けるタイミングが1番大事な追込。ハナを取り続けることが求められる逃げに対して最後にまとめて薙ぎ払うことを求められる追込。
この2つを交互に入れ替えれながら走るっていうんだからそりゃもう疲れる。ゴルシもマックイーンさんも普通に速いから力を抜く暇を与えてくれないし、なんならこの2人は入れ替わりで休憩してるから元気なのに対して私は走り通し。そろそろ疲れてきた…。
「オラオラオラァ!面白くなってきたぜぇ!」
「……ッ!」
…まずい、ゴルシが中盤でスパートをかけてきた。ゴルシの恵まれた体格から繰り出されるスパートは歩幅が大きくて踏み込みが強い。アレでよく最後まで保つな、とは思うけどアレで保つからゴルシはゴルシなんだろうね。……じゃなくて!
「……ふッ!!」
「ん?おおっ!?」
より一層体勢を低くして前に行ったゴルシを再び射程に捉える。コーナーを抜けるときに外に出て一気に差し切…あれ?
…思ったより伸びない。私の感覚だとゴルシのすぐ後ろにつけるはずだったんだけど、まだ数バ身離されている。もう1段階上げなきゃ追いつけない…!!
前を猛然と走るゴルシの外に広がって一気に追い抜こうとする…がやっぱり今ひとつ伸びない。
結局私とゴルシとの差は2.5バ身離れた状態でゴール代わりに突っ立っているトレーナーの前を通過した。
「ゴーーール!!たまには本気出さなきゃな!…っていてっ!」
「……はぁ、はぁ。やっぱりゴルシ速い…っていたっ!」
ゴールして息を戻していたらトレーナーとマックイーンさんが駆けてきてトレーナーは私の、マックイーンさんはゴルシの頭にそれぞれ手刀を落としてきた。
「もう何周もしてるのにそこから本気で走るバ鹿がいるか!怪我したらどうするんだ!」
「…………いや、でも最初に仕掛けたのゴルシだし」
「ゴールドシップさん?本気はナシってトレーナーさんに言われてましたわよね?少しは自重してくださいまし!」
「だってよぉ〜、メルが速いのが悪くねぇか?あんだけ速いとアタシも本気出したくなっちゃうじゃねぇか、な?マックイーンもそう思うだろ?」
「……メルクーリさんが速いのは認めますが、今回はあくまでメルクーリさんの調整のため。そこを忘れてはいけません!……それはそうとメルクーリさん、今度機会がありましたらぜひ私とも走っていただきたく…いたっ!」
あっ、今度はマックイーンさんにトレーナーの手刀が落ちた。
「お前までそっち側行かれたら収集がつかなくなるだろうが。…メルクーリは今日のトレーニング終了だ。それ以上走ったら本格的に怪我しかねない。あとお前最近寝れてないだろ、どうした?」
「……星や夜景が綺麗だからつい眺めてしまって。ごめんなさい」
さらっと寝不足見抜かれてるの怖っ…。とりあえず理由の半分だけ言っておいて、ちゃんと寝られるように寝る前ににんじんのスープ用意しようかな。
「…わかった。くれぐれも無理はしないでくれよ。ゴルシとマックイーンはメルクーリについて行ってやれ、少し目を離すとどっか行きかねないからな」
「
トレーニングからの帰りの途中、トレーニング場前にたい焼きの屋台が来ていた。さっきからゴルシがソワソワしてると思ってたけど、屋台が来るのを知ってたのかな。
「なぁマックイーン、メル!たい焼き食って帰ろーぜ!」
「食べませんわ!私はともかくメルクーリさんはレース前でしょう、体重の調整が必要な時期なのにたい焼きなんか食べてたら太ってしまいますわ!」
「とかなんとか言って〜ホントは自分が太りそうだから嫌なんだろ?なーなー、メルはどうだ?たい焼き食べてぇよな?な?」
マックイーンさんを攻略するために私に矛先が向いたね。まぁゴルシの遠回しの気遣いって奴なんだろうし、素直に受け取ろうかな。
「…食べたい。甘いの好きだし、誰かが変に本気出させたせいでお腹減った」
「よーし決まりだな!ほらマックイーンも食べようぜ、なぁ〜」
「もう、仕方ありませんわね。…でもメルクーリさんは本当に大丈夫ですの?ゴールドシップさんに合わせてあげてるんだったら無理しなくてもいいんですのよ?」
「大丈夫。私はむしろレース前に少し食べないとダメだし。……もうゴルシ注文してるしね」
そういってチラッと屋台の方を見やるとニッコニコ顔のゴルシがメニュー表を指差してあれこれ注文していた。あそこまでされてたらもうしょうがないよね。
私とマックイーンさんは目を見合わせて少し笑ってからゴルシの元に駆けていった。
その後、私がクリームのたい焼きを食べている間にゴルシとマックイーンさんはヒミツ味という名のからしのたい焼きを押し付けあっていた。仲良いなぁ。
ハーフアニバーサリーの福袋はファル子さんが来てくれました。ダートが潤うね!
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