今回もよろしくお願いします。
ゴルシとマックイーンさんによる鬼のようなシゴきを乗り越え、今日はサウジアラビアロイヤルカップ当日。………なのだが、その前に。
「今日はついにマヤのメイクデビューの日!燃料満タン!離陸準備オーライ!トレーナーちゃん、しっかりマヤを見ててね!」
「よーし、その調子ならしっかり勝ちに行けそうだな。お前の好きなように走ってこい、マヤノ」
そうなのです。私の走る前にマヤノのデビュー戦があるのです。私が2人にしごかれている間、マヤノはこのレースのための調整をウオッカさん、スカーレットさん、そしてテイオーに手伝ってもらっていた。
そんなマヤノはもうすでにパドックでのお披露目も終えてレース準備…マヤノ風にいうのなら離陸準備も万端なようで、トレーナーやメンバーからの応援をニコニコしながら聞いていたかと思うと急にこっちに向き直った。えっと…なんでしょう?
「メルちゃんメルちゃん!」
「どうしたのマヤノ?」
「マヤのレース、見ててね?」
「え?まあ準備しながらになるけど」
「いいから、そこのテレビのモニターでちゃんと見てて!……ね?」
……その時見たマヤノの目は、出会ってから見たことがないほど真剣だった。
「…うん、わかった。私が言うまでもないと思うけど、勝っておいで」
「……!!うん!マヤちん、テイクオーーフ!!」
ぴょーんと軽やかに弾むような足取りでレース場に出ていくマヤノを見て、私は何となく彼女の勝利を確信したのであった。
~~~~~~
『秋も深くなってきました東京に今日もメイクデビューを迎えたウマ娘たちが集いました。来年のクラシック戦線に向けていいスタートダッシュを切れるのはどの娘でしょうか!』
「始まりましたわね、マヤノさんのデビュー戦の中継。……マヤノさんは無事に勝てるでしょうか?」
「アタシたちはそこまでしっかり見れてるわけじゃねぇけどその代わりにウオッカとかスカーレットとかが見てたんだろ?ならヌルいことはしないだろ」
ゆっくりレースに向けた柔軟を続けている私の横で、ゴルシとマックイーンさんの二人がまったりしていた。
『……二人は直接見に行かなくてもいいの?』ってさっき聞いた時には、『目ぇ離したらお前どっか行きそうだろ?だからアタシたちが見守ってやろうってことだ!!』『とかなんとか言っておりますけど、ゴールドシップさんはメルクーリさんのことが心配なんですのよ。かくいう私もメルクーリさんには勝っていただきt……いたたたっ!ゴールドシップさん、私の頬をつねらないでくださいまし!!』『余計なことを言うのはこの口かぁ~~!?』とかなんとかじゃれ合いを始めていたんだけど落ち着いたようだ。
さすがに二人のじゃれ合いを見るのもなれたので足の爪を整えながら成り行きを見守っていたのだが、どうやら『私も含めた3人で今度フルーツパフェの専門店に行く』という結論に落ち着いていた。本当に仲がいいんだろうなぁと思うと同時になんで私も一緒に行くことになったのかは考えるだけ無駄だし考えることをやめた。何より提案したゴルシもされたマックイーンさんも満足げだったし、私が口をはさむのは無粋ってヤツだ。私も甘いもの好きだし。
『堂々の1番人気はチームスピカからの出走となりました、1枠1番マヤノトップガンです!先ほどのパドックでは元気いっぱいな様子を見せてくれました。チームスピカは来年のクラシック戦線に2人のウマ娘が出ることになりますね』
「ずずず…この緑茶うっめぇなぁ」
「メジロの実家から持ってきた緑茶ですわ。不味いはずがありませんわ」
「いや、本当にくつろぎすぎでしょ2人とも」
「「メルもどうだ?(メルクーリさんもどうですの?)」」
「……レース終わったらもらう」
二人と文字通りの茶番をしていたら、どうやらゲートインが始まっていたようだ。テレビ画面はゲートに入っていくウマ娘たちを映していて、その中にはマヤノの姿もあった。
「ほら、ゴルシもマックイーンさんも始まるよ」
『各ウマ娘、ゲートイン完了しました……スタートしました!!さぁ勢いよく飛び出したのはマヤノトップガン!!』
「おぉ~、やるなマヤノ!」
「キレイな飛び出しですわ、ゴールドシップさんも教えてもらったらどうですの?」
「うるせ~」
「………」
…ゲートが開くと同時に勢いよく飛び出したマヤノの様子に
『さぁ先頭は1番人気マヤノトップガン。快調に飛ばしていきます!』
『これは大分ペースが速いですね、少しかかり気味かもしれませんが最後まで保つのでしょうか』
「……なぁ、これって」
「……えぇ、これは」
「最初の3ハロンに思いっきり突っ込んでタイムが35秒1、か。これ、私の
「なんというか、マヤノさんらしい挑発の仕方ですわね」
マックイーンさんの言う通り、この短期間で私の走り方の真似をある程度再現できてそれを挑発に使うのはなんというかマヤノらしいといった感じだね。
テレビ画面では先頭をひた走るマヤノがコーナーを抜けようとしているところを映していた。私よりも髪が短い分、歯を食いしばっているのが分かりやすい。そりゃそうだ、マヤノ自身の走り方じゃなくて私に最適化した走り方をマネしているんだから体への負担は普通に走るよりも大きいはずだ。
『マヤノトップガン!速い速い!最後の直線でも伸びる伸びる!後ろとは6バ身は離して今ゴールイン!圧倒的な力を見せてメイクデビューを制しました、マヤノトップガン!来年のクラシック戦線での活躍がより楽しみなものになりました!2着は……』
「……さすがだったなマヤノのやつ。んで、どうすんだメル?」
“どうすんだ”ってのはそのまま、マヤノの挑戦に乗るかどうかって話だよね。
周りがよく見えているマヤノのことだ、メイクデビューを制してなおレースに対して気持ちが乗らない私にヤキモキしてたんだろう。そんな私を見ても一緒に走りたいと思ってくれたんだ。…マヤノはいい子だね、ホントに。
再び画面に目を向けると、勝利の喜びに顔をほころばせながら観客に向かって手を振っているマヤノの笑顔が映っていて、私にはそれがひどく眩しく見えた。
「悪いけど私はあれに乗れない。もちろんマヤノの気持ちはうれしいけどね。……そろそろパドックの時間だし軽く走ってくるね、マヤノが帰ってきたらおめでとうって伝えておいて」
でも、私はマヤノのそのまっすぐな
何か言いたそうな二人に背を向けて部屋を出る。…せめてマヤノが一緒に走りたいと思ってくれただけの走りの準備くらいはしないとね。
~~~~~~
メルクーリが出ていき扉がパタンと閉まった後、ゴールドシップとマックイーンは二人して顔を見合わせた。
「ったく、メルって本当に素直じゃねえよなあ。あいつの尻尾見てたか、嬉しそうにブンブン振りまわしてたぜ?」
「ええ、本当に。でもきっとマヤノさんもそのことはわかっているんじゃないですの?その上で『見ててね』って言ったのでしょう」
「考えすぎなんだよ、考えすぎ!もっと柔らかく受けとりゃいいのにな」
「それを言いたいならあなたはもう少しマジメにやってくださいまし。あなたとメルクーリさんが足して半分になればちょうどよくなるんでなくて?」
「うるせー」
「…メルクーリさんは大丈夫でしょうか」
「お、心配なのかマックイーン?…信じて待ってようぜ、それが仲間ってヤツだろ」
「……ええ」
ゴールドシップの言葉に同意したマックイーンは手持ち無沙汰になり、控室のお菓子をつまもうとしたがそれを察知したゴールドシップに没収されてしまい、しゅんとしてしまうのはまた別の話。
アオハル、全然システム理解してないのに評価点だけ高いの取れちゃうの怖い……。
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