ヴァルゴ杯…?知らないですねぇ…。
今回もよろしくお願いします。
「ふーん、マックイーンさんは実家のために走ってるんだ。あ、これ美味しい」
「まぁそうなりますわね。…ゴールドシップ、そっちのパフェを取ってくださいます?」
「……2人とも、太るぞ?」
「「
「イヤナニモイッテナイデス」
サウジアラビアロイヤルカップが終わってはや数日、私とマックイーンさん、あとゴルシの3人はトレセン学園の近くのスイーツ屋さんに来ていた。トレーナーが「今日は全員休み!」と宣言してからなんだかテンションの高いゴルシに拉致されるまで、たった30分の出来事だった。ちなみになんでかわからないけど個室に通された。私、個室のあるスイーツ屋さんって初めてなんだけど。
「クラシック三冠より天皇賞に重きを置く、そういう家系もあるんだねぇ。…あ、店員さん。秋のスペシャルマロンパフェをお願いします」
「名家の矜持、というものでしてよ。…私はフローズンピーチパフェをお願いいたしますわ」
「…なぁおい、そろそろ辞めとかないか?アタシがトレーナーに怒られるんだけど…」
「「
「……はぁ」
レースの前に(勝手に)一緒に行こうとは言っていたけど、まさか本当に行くとは思ってなかった。しかも提案したゴルシが『可愛い後輩の祝勝会だ!アタシとマックイーンが全額負担してやろーう!!』なんて言った時はマックイーンさんと顔を見合わせて耳を疑ったよね。私、耳いいけど。マックイーンさんは完全にとばっちりじゃんと思ったけど、なにやら黒いカードがチラッと見えたので気にしないことにした。
「こちら、スペシャルマロンパフェとフローズンピーチパフェになります」
「「ありがとうございます!!」」
「…どう言い訳すっかなぁ」
「ゴールドシップ?貴女は食べなくていいんですの?」
「……お前らが食ってるの見てたら腹膨れてきたわ」
……ゴルシが1つ食べる間に私達3つくらい食べてるんだけど、ゴルシって甘いの苦手なのかな。
「…あら、このパフェも美味しいですわね。そういえばメルクーリさんはいつウイニングライブの練習をしてらっしゃいますの?デビュー戦といい、今回といい振付が完璧で驚きましたわ」
「お母様が子供の時から指導してくれたから体に入ってる。私のお母様、昔レースに出てたらしいんだよね。G1も勝ったことがあるらしいよ。…栗美味しい」
「えっ?メルクーリさんのお母様もG1を勝ったことがあるんですの?」
パフェを頬張りながら喋っていたら私のお母様の話に話題が移ってきていた。そんな大した話できないんだけどな。
「……らしい。お母様はあんまり自分が走ってた頃のこと教えてくれなかったけど、一回だけ勝負服のお母様がトロフィー持ってる写真を見せてもらったことがあるんだよね」
「へぇー、どのトロフィーだったんだ?流石に写真見ればわかんだろ?」
「というかメルクーリさんのお母様の名前を検索すれば出てくるのではなくて?」
ゴルシの質問にうんうんと頷きながら続けるマックイーンさん。まぁそうだよね。私も小さい時によく探したもん、似たようなトロフィー。
「………それが。全然知らないし見たこともないトロフィーだった。盾じゃなかったから絶対天皇賞じゃないし有マとか宝塚でもないんだよね。名前に関しても本名と登録名が違うらしくてデータが出てこなかった。…トロフィーに関してはきっと昔のデザインとかなのかなぁとは思うけど、なにせ昔のことを話さない人だからよくわからないんだよね」
探偵に調査を依頼するとかデータベースを見るとかすればまた新しい情報が出てくるのかもしれないけどね。もっともそこまでする意味もないし、何よりお母様自身が隠してるものをわざわざ暴くのも何か違う気がしたから余計な詮索をしてない。
「…なんだか話を聞いてるだけでもメルクーリさんと似てるのがわかりますわね」
「…えーっと?それはどういう意味で言ってる?」
「ふふっ。さて、どういう意味でしょう?ゴールドシップもそう思いますわよ…ゴールドシップ?」
「…ゴルシ?」
マックイーンさんの声にふと目を向けてみると、なぜか遠い目をしているゴールドシップがいた。
「……んぁ?わりぃ、あんまりにもお前らがパフェを食い過ぎてたからその…伝票が、な?」
重なりすぎてひらひらというよりはバサバサって擬音が似合う感じで伝票を振るゴルシ。さっきまで全然見てなかった気がしたんだけど…そんなに衝撃的なお値段になってたのか。
「…私も出すよ?たくさん食べさせてもらったし。2人にだけ払わせるのもなんか申し訳ない気が」
「んあー後輩の祝勝会なのにその後輩に払わせるわけないだろ?変なとこで気ぃ使うんじゃねえよ」
「そうですわ、ここは私たちにお任せ下さいまし」
「いやお前も食ってた側だろ、何被害者みたいな面してんだ」
「なっ!?」
…個室で良かったのかもなぁ。今のゴルシとマックイーンのバ鹿騒ぎを普通のお店でやったら出禁になるよ、多分。
〜〜〜〜〜〜
「……落ち着いた?」
「…えぇ、面目ないですわ」
「…アタシ何も悪くなかったよな?ウマッターでアンケート取ってやろうかな」
しゅんとしてるマックイーンさんとそれと反対に耳をしぼってるゴルシを見比べる。……ホントどっか似てるよね、この2人。……ってあっ。
「…トレーナーから次の出走レースをスピカのウマッターアカウントで投稿しとけって言われてたの忘れてた」
「「えっ…」」
「というか私ウマッターもウマスタもやってないから放置してたんだけど。もしかしてまずい?」
「まずいかまずくないかでいうとまずいな、かなりまずい。ちょっとウマホ貸してみ、アカウント作ってやるよ」
「あっ」
くっそ、ゴルシの体格が良すぎてウマホを取り返せない…!なんでコイツ身長170センチもあるの?全然届かないんだけど!!マックイーンさんも『しょうがない』みたいな顔で食後の紅茶啜り始めたし…!
「か、え、せ…!ゴルシィ…!!」
「アカウントできるまで返しませーーん!!そしてもうアカウントがもう出来まーす!これで通知をオフにしてっと、よーしこれでメルも立派なウマッタラーとウマスタグラマーだ!そんでこれがスピカのIDとパスワードだ、投稿の時は最後に名前入れて投稿しろよ!ほいっ!」
「出来ました?なら私もフォローさせていただきますわ」
そうこうしてる間にゴルシはウマッターとウマスタのアプリのインストールを済ませてID登録まで済ませやがった…器用な奴め…!
帰ってきたウマホを見ると『スバルメルクーリ @Pleiades_Mer』という文字といつ撮ったか覚えてないマヤノとテイオーと3人のプリクラ写真が貼られていた。これがアイコンなのかな。
…もっとマシなのあるでしょ、って思ったけど私が写ってる写真これしかないな。他の写真は全部風景写真だし、写真自体全部で20枚も撮ってないし。ゴルシが少し呆れた表情してた理由はこれか。
「…ウマッターもウマスタもやってない、自撮りも撮ってないってなんのためにウマホ持ってんだメルちゃんよぉ」
「……電話と地図、あと天気予報のためだけど」
「…かぁーっ!これだから常識知らずのお嬢様は。いいか、今日のことをちゃんと投稿すること!アタシとの約束だぞ!」
「…なにを投稿すればいいの?」
「『ゴルシとマックイーンさんとご飯行きました』とでも言っとけ!ほらマックイーン、写真撮るぞ!」
言いたいことを言うが早いか、ゴルシはマックイーンさんを引き寄せて「びすぴーす」という合図を出してシャッターを下ろしていた。
〜〜〜〜〜〜
その夜、ウマッターに2つの投稿が行われた。
【公式】チームスピカ!@Spica_info
スバルメルクーリの次回出走予定レースは朝日杯フューチュリティステークスを予定しています。よろしくお願いします。(スバルメルクーリ)
スバルメルクーリ@Pleiades_Mer
ゴールドシップさんにやれと言われて始めました。ゴールドシップさんとメジロマックイーンさんとご飯に行きました。
(1枚の画像を表示)
困惑したような表情のメルクーリとそれを満足げな表情で挟んだ2人の画像を添付した初ツイートは瞬く間に拡散され、7万回のリツイートと『メルクーリちゃん』、『ゴルシ』、『マックちゃん』、『120億』などがトレンドに載る事態になったが当のメルクーリは全く気づくことなくウマッターを閉じていたのだった。
次回は間話的な何かだと思います。次回もよろしくお願いします!