そのウマ娘が“白銀の突風”と呼ばれるまで   作:乃亞

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低気圧に負けた…私は弱い…。今からでも5月9日47時ってことになりませんか?…無理、ですよねぇ。
1日遅れの誕生日記念、あるいは怪文書。エイプリルフール同様、時系列的には本編のかなり後の話になります。

それでは今回もよろしくお願いします。


間話 スバルメルクーリ誕生日記念

「メルちゃんメルちゃん!今からデート行こ!」

「……はい?」

「見たい映画あるんだー☆メルちゃんも一緒にテイクオーフ!」

「……あーれー」

 

 

 久しぶりのおやすみの日。いつものようにお昼寝をしようと屋上に行こうとしていた私はマヤノに呼び止められたかと思ったのも束の間、半ば引きずられるように外に連れ出されてしまった。

 

「……あのー、マヤノさん?聞きたいことが2、3点あるんですけど…」

「ちょっと上映まで時間ないから走るよメルちゃん!」

「あっ、ちょっと!……はぁ、しょうがない」

 

 〜〜〜

 

 寮から1番近い映画館に着くなり、ささっとチケットを交換してきて食べ物まで買ってきているマヤノを私は肩で息をしながら見守っていた。かなり速いペースで20分は走ってたはずなのになんであんな元気なの……?

 

「ギリギリセーフ!!やっぱり映画鑑賞にコーラとポップコーンは欠かせないよね☆」

「……はぁ、はぁ…。で、どれ観るの?」

「んとね…これ!はーいうぇーいとぅーろーでんじゃーぞーん!」

 

 

 あー、これ新作出てたんだ。昔お母様と一緒に見たけど、戦闘機がびゅんびゅん飛び回って戦ってるのがカッコいいやつだよね。

 

 

 ちなみに私、映画館で映画を観た記憶がほとんど…というか全くない。耳のことがあったから映画を見るっていえば実家のホームシアターで見ることを指してた。

 

 …まぁ、いっか。たまにはこういうのも。今はこの耳も昔よりはうまく扱えるようになったし。

 

「はい、これメルちゃんの分!」

「……ん、おいくら?」

「いいからいいから!1番いい席とったんだ〜♪」

 

 

 なにより。目の前の親友がこれだけワクワクしてるのを見て嫌な気持ちになるわけがないよね。

 

「……入ろっか」

 

 

 〜〜〜

 

「ん〜〜〜よかった!!F-14ってやっぱりカッコいいなぁ〜!!メルちゃん知ってる?F-14ってね、可変翼の動きが猫の耳の動きに似ていることからトムキャットって呼ばれてるんだって!」

「……知らなかった。マヤノは詳しいね」

「えっへへ〜♪マヤねマヤね、この映画楽しみにしてたから色々調べてたんだ!あとはねー、スタントマンを使わないで主役の人本人があのアクションやってるんだって!」

「……本当にヒト?お母さんがウマ娘だったりするのかな」

 

 

 マヤノの話を聴きながら映画に集中しすぎて食べきれなかったポップコーンをフードコートでつまんでいると、ぱしゃり。隣でシャッターを切られてしまった。

 

「ふに"ゃっ。……まーたそうやって写真撮る」

「メルちゃんのご飯食べてる写真って反響すごいんだよ?ウマスタにあげていい?」

「……撮られてあげるから。ウマスタにあげるのは一緒に写ってる奴にしなよ」

「わーい!アイコピー♪」

 

 

 寄ってきたマヤノがカメラを構えるのに合わせてひょこっと顔を傾ける。これくらいの角度なら撮りやすいでしょ。

 マヤノが自撮りのボタンを押そうとしたその時、タイミング悪く電話の通知がひょこっと画面上に出てきてマヤノの手がブレてしまった。

 

「あちゃー、あとで撮り直そ?ね?ね?」

「……早く出てあげな。言われなくても待ってるからさ」

 

 

 ……そういえば私、映画館に入るときにスマホの電源切ったきりだったな。写真もらったら久しぶりにウマスタに投稿しとこっかな。

 

『マヤノと映画を観に行きました』…ってね。

 

 

 〜〜〜

 

 あの後、夏に向けての新作コスメを見たいというマヤノに付き合っていたらあっという間に夕方。

 

 

 …なんだけど、当のマヤノの様子がさっきからちょっとおかしい。コスメの店に入っても蹄鉄ショップに入ってもずっとソワソワしっぱなしで落ち着かない。そのくせ何かあったのか聞いても「な…なんでもないよ!?」の一点張り。それはなにかある子の動きなのよ。

 

 

「……マヤノ?」

「わっひゃい!」

「なんだそりゃ。…じゃなくてそろそろ帰ったほうがよくない?寮長に怒られるのは嫌でしょ?」

「……わわ、もうこんな時間!…そろそろ大丈夫かなぁ

 

 一体なにが大丈夫なんでしょうか。小声で聞こえないようにしてるのはわかるけど、聞こえてるからね?

 

 こういう時のマヤノは大体なんか隠し事してるんだけど、いかんせん本人が真っ直ぐな子だから隠せてない。というかマヤノに限らず私の周りには嘘とか隠し事が苦手な子が多くない…?

 

 

「……マヤノさーん?」

「えっ!?あー帰ろっか!」

 

 

 〜〜〜

 

「マヤちんメルちゃーん、ランディーング!」

「……危なかったぁ。最悪窓から入っちゃえば良いけど、面倒だしね」

 

 

 結局行き同様に走るハメになっちゃったけどそこは流石にG1を勝ったウマ娘。玄関に滑り込んだ私たちはフジ寮長に苦笑いされながらもなんとか事なきを得た。

 

 軽く伸びをしながらチラリとマヤノを見る。……今なら行けそうかな。

 

 

「……ふぁぁ。映画面白かったね」

「ほんと!?オトナの映画館デート作戦、大成功だね!」

「ほんとほんと。んで何隠してたの?」

「えっとね、ゴルシちゃんにお願いしてメルちゃんの部屋をこっそり開けて……ってあっ!」

 

 

 手で口を覆うマヤノをジトっと見ながら高速で思考を回す。今不穏な言葉が聞こえたんだけど。私の部屋を、どうしたって?

 

『おうメル!今日からお前の部屋はこの『GGS』な!ゴー(G)ャス!ゴール(G)ド!シ(S)プ!略してGGS!あ、改装費用として5640万円を頂戴しまーす!』

 

 ……。

 

 …………。

 

 ………………。

 

 こうしちゃいられない!何やってくれたんだゴルシの奴!

 

 その時の私の表情はレースでも出ないような鬼気迫るものだった、と後にゴルシは語っていた。

 

 

はぁぁぁぉぁぉぁぁぁぁぁッッッッ!!!

「あっ!!待ってメルちゃん!」

 

 階段を5段飛ばしで一気に駆け上がり、自分の部屋の前に仁王立ちをしながら耳を澄ませる。

 ……中にいるのは、テイオーにゴルシに…マックイーンさんもいる?っていうかスピカの面子ほぼ全員いない?まさかチームぐるみでGGS計画を…!!

 

 

 ……ふぅ。息を深ぁぁく吸い、年一回出すか出さないかの大声を出しながら私はドアを開けた。

 

 

くぉぉぉぉらぁぁぁぁぁ!!!!……ってあれっ?」

「んぉ、なんだなんだ?…ってメルじゃねぇか、よく帰ってきたな!」

「……ええっと。GGS計画は…?」

「は、じーじーえす計画ぅ?なんだそれ?」

 

 

 完全に脳内が空白で満たされて立ち尽くす私に、うしろから追いかけてきたマヤノが話しかけてきた。

 

「はぁ、はぁ…。メルちゃん速いよぉ…!」

「……マヤノ、これは?」

「んぁ、マヤノまだ説明してねぇの?」

「説明しようとしたら先にいっちゃって…。メルちゃん、今日の日付わかってる?」

「そりゃあ5月9日……ってあっ」

「そうですわ、今日はメルクーリさんの誕生日…って貴女自分の誕生日忘れてたんですの!?」

「だからマヤノにお願いしてメルちゃんを外に連れ出してもらって、その間にボクたちが誕生日会の準備を進めてたんだ!はい、帽子!」

 

 

 ゴルシの後ろからひょっこり出てきたテイオーに帽子を被せられ、『本日の主役』と書かれたタスキをかけられながら部屋の中に連れ込まれる。

 

 依然として頭が真っ白な私が部屋の中央に入ったのを確認してからゴルシが音頭を取り始めた。

 

「はい!それではメルの誕生日を祝しまして…ってこれじゃ宴会だな、ミスミース。それではみなさん声を合わせまして、お誕生日おめでとう!メル!」

「「「「「「おめでとう!!」」」」」」

「……ええっと」

 

 

 ……実家でも誕生日は祝ってもらってたけど、どっちかというと身内で静かに祝ってもらってたからこういう感じのは初めてというか。…その、慣れてないというか。

 

 

 

 …えへへ。ちょっと、いやかなり嬉しい。だからちゃんとお礼は言わなきゃ、だよね。

 

「…ありがと、みんな」

 




ちなみに私乃亞は誕生日が長期休暇とダブってたせいで大学生になるまでこういう誕生日会の経験がありませんでした。

ヴィクトリアマイルはデアリングタクトさんを応援してます。(本当はジェラルディーナさんが来て欲しかった顔)
NHKマイル?知らん知らん、あんな毎年のように荒れるレース真面目に考えるだけ損ですわぁ…!

お気に入り登録、感想、評価等々いつもありがとうございます。
それでは次回もよろしくお願いします!
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