そのウマ娘が“白銀の突風”と呼ばれるまで   作:乃亞

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ウマ娘世界、ハロウィン早くないですか…?アレ10月末のイベントでしたよね…?
シンプルかつあらゆる意味でクリークさんが怖いなと思いました、はい。
今回もよろしくお願いします。


第24話 淡い緑の輝き: Pistachio Nose

 今更な話ではあるが、ウマ娘のレースというのはれっきとしたスポーツ興行の1つとして世界的な人気を博していて、その中でも日本のトゥインクルシリーズというのはレベルが高く、大きなG1レースともなると世界中から挑戦者が来るものもある。

 

 そんな日本のトゥインクルシリーズであるが、今現在の重賞レースの種類は150あるかないか。それに対して日本の中央トレセン学園の生徒数は2000人を超える。これがどういうことを表すかというと…。

 

「メルクーリさん、サウジアラビアロイヤルカップ勝ったんだって?すごいね!走り方のコツ教えてよ!」

「メルクーリちゃんあの追込の仕方かっこよかった!次の朝日杯も追込なの?」

「メ〜ル〜、今からマックイーンいじりに行こうぜ〜」

「………」

 

 

 四方八方から注目の的にされてます。あとゴルシはそこにしれっと混ざらないで。注目される側のウマ娘でしょ、あなた。

 一応ごめんなさい、また今度と謝ってから教室を出る。……なんでこんなに最近騒がしいんだ?やってられないってことで私の絶好のサボりスポットその1こと屋上に行こうとしたんだけど……。

 

 

「あっ、スバルメルクーリちゃんだ!思ったよりちっちゃくて可愛いなぁ」

「あの子が学園七不思議寸前の子?目立ちそうなのに不思議ねぇ…」

「あの体ですごい逃げもすごい追込もできるんだって!憧れるよねぇ〜」

「………ッ!」

 

 

 なんだ?なんで?なんでなんだ…?なんでこんなに異常な目の引かれ方をしているんだ…?流石にこの状態で屋上にいってサボろうものならエアグルーヴさんがすっ飛んで来るに違いない…!そうなると少し、いやかなり厄介だ…。

 

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 …帰るか、やってられないこんなの。校外なら流石の女帝様も追ってこないでしょ、多分。

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

「…ふぅぁあ、少し勝ったくらいで騒ぎすぎでしょ」

 

 なんとかかんとか注目されずに荷物をまとめて抜けてきたけど、流石に疲れた。河川敷にでも行ってゆっくりしようかな。

 

 

「あら、もう帰るのですか?ずいぶんお早いお帰りですこと」

 

 

 ……どうやら今日の私は本格的に厄日らしい。なんか私だけ厄日多くない?あくびをして細めていた目を開いてチラッと見上げると、濃い茶色の髪に黒い耳、名前通りの木の実を模した耳飾りを左耳につけ、抹茶を思わせる色の瞳をたたえたウマ娘が校門の横で私を見ていた。

 彼女はピスタチオノーズ、私の同期……らしい。あんまりにも突っかかって来るから流石に名前は覚えた。

 

「…止めに来たの、ピス。相変わらず良い子ちゃんだねぇ」

「貴女が私との勝負から逃げるから追ってるだけでしてよ!」

「私が逃げる?アンタが追いつけないの間違いでしょ?まぁ、そもそも私はアンタと勝負なんかした記憶ないけどね」

「…貴女って人は…!!」

「怒った?あー怖、帰るわ」

 

 

 …なんでこんな時にコイツに出くわすのか。結構速いからイヤなんだよコイツ。さっさと逃げよう、昔の中国の偉い人も逃げろって言ってたし。

 

 

「待ちな…さいッ!メルクーリさん!」

「待てって言われて待つほどアンタと仲良くないわ!ついてくんなッ!!」

「なにを……ッ!」

 

 

 確かコイツ結構良いとこのお嬢様なはずなのに全くその気品を感じさせないんだよね。マックイーンさんを見習えマックイーンさんを。

 とりあえず真剣に逃げようかな…!

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

「はぁっ…はぁ、っ!やっと止まりましたわね!!」

「……いつまでついて来るのさ」

「貴女が勝負に負けるまでですわ!覚悟なさい!」

「…はぁ」

 

 

 逃げ続けてなんとか予定通り河川敷まで来たけど、ピスは執念というかなんというかともかくここまで追ってきた。何がそんなに彼女を突き動かしてるのかわからないけど怖いよ。

 

 私とピスタチオノーズ…ピスが最初に出会ったのは彼女曰くリギルのチーム選抜レースの時らしい。らしいってのは私の方は特に認識してなかったからなんだけど、どうやらその時に私に負けたのを根に持っていて、それなのに私がリギルに入らずにのんびりしてるのにピスが腹を立てて突っかかってきたのが始まり。どうやらその次の選抜レースでリギルに入れたらしいしそれで良いじゃんって私は思うんだけど、どうやらそういうことじゃない、とは彼女の弁。

 

 …うーん、全くもってよくわからない。目の敵(ターゲット)にするなら私じゃなくてもっと強い人相手にすれば良いのにね。ちょうどリギルの先輩にいい人いるじゃん、会長サマとか怪鳥サマとか。

 

 

「私、年末のG1は阪神ジュベナイルフィリーズに出すっておハナさんに言われたの。これがどういう意味かわかりますの?」

「…知らないよ、いきなり追っかけてきて言いたい放題な奴め。私は疲れてるの、早く帰ってくれない?」

「……私はおハナさんに『今の実力ではまだ貴女やマヤノトップガンさんに追いつけない』って思われてるってことよ。だから貴女たち2人の出走するレースに私を出してくれなかったのよ」

 

 

 …きっと体を震わせてるんだろうなぁ、見なくてもわかる。あからさまにプライド高そうだもんコイツ。

 

 

「だから今日はメルクーリさん、貴女に宣戦布告しにきましたの!」

「……はぁ?」

「良いですか、その素晴らしく良い耳をかっぽじってお聞きなさい!!私は来年必ず貴女を超えて見せますわ!その時に吠え面かいても知りませんことよ!」

 

 

 …あーやだやだ。熱いねぇ、このお嬢様。季節考えなさいよまったく。…いやそろそろ本格的に寒くなるから暖房的な意味では合ってる…?まぁいいか。

 

 

「……はぁ、ちなみにピスさんや。気付いてる?」

「???何のことですか?」

「時計見てみ。……もう昼休み終わるよ」

「えっ…?あっ!貴女って人は…!帰りますわよ!ほら早く立ちなさい」

「いや私は帰らないけど?トレーニングオフだし。ほらほら、早く帰らないとこわーい怖いリギルのトレーナーに怒られるよ〜??」

「…ヒッ!覚えておきなさい!」

「…ふっ、おやすみなさい」

 

 さっきまでの勝ち気な態度はどこへやら、一気に顔を青くしたピスがUターンしてトレセンへの道を本気ダッシュして行った。『覚えておきなさい』なんて捨て台詞を本気で言う人、本当にいるんだねぇ。

 

 ちなみにここからトレセン学園は最短でも信号機が5つあるから今から昼休みの時間内に帰るのはほぼ無理なんだよね。…もしかしたらあいつの足なら間に合うかもしれないけど、その場合は無駄に走って消耗したことを怒られるんじゃないかな。つまり、この河川敷にたどり着いた時点で私の勝ちってわけ。

 

 

 物凄い勢いで走り去ったピスの方向を見ると、爆走してるピスとそれに驚いてるヒトが遠くに見えた。掛かりまくってるなぁ。

……それにしてもなんでこんなに注目を浴びてるんだ。同じチームのマヤノはともかく、ピスとか他の人にまであんなに見られる意味がわからない。…とりあえずここには誰もこないだろうし、ゆっくり寝よう。




機嫌が悪い時って煽りスキル少し上がるよねって話。
ピスちゃんの元ネタは名前を前後に分けたらわかりやすいかもしれませんが明言はしません。ほぼ別物だし。
いつものことですが感想、お気に入り、評価、誤字報告等ありがとうございます。
それでは次回もよろしくお願いします!
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