そのウマ娘が“白銀の突風”と呼ばれるまで   作:乃亞

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宝塚の時よりクロノジェネシスさんが体感シロノジェネシスさんになってた気がする。ドイツのトルカータータッソさんおめでとうございました。
それでは今回もよろしくお願いします。


第26話 彼女を輝かせるための布石:Trainer's distress

「よーしじゃあ次は背中合わせで腕組んでみるかー!!あーそうそう、いいぞいいぞー!次はそのままこっち指差してみろ!あーいいな、メルもマヤノもカメラに表情ちょうだいちょうだい!」

「…なにこれ?」

「…マヤもわかんない」

 

 

 マヤノと2人で着替え終わって扉を開けて一番目を引いたのはサングラスをかけてジャージを脱いでプロデューサー巻きをしたゴルシだった。寒いって言ってたの絶対それが原因じゃん…。

 そしてそのままずんずん部屋の中に入るが早いか「よーしお前ら、この天才カメラマンゴールドシップ様に全て任せな!」とかなんとか言ってこのトンチキな撮影会が始まった。

 

 私もマヤノもこれでもかというほどにぱしゃぱしゃ撮って満足したかと思いきや今度は2人一緒に撮影するとか言い始めて今に至る。トレーナーも止めようとしないあたり何か考えがある…あるのかなぁ。多分あるんだろうけど。

 

「お、トレーナー!これとかいいんじゃねぇか?」

「ん〜どれどれ…。おお、いいなこれ。これとこれとこれをピックアップしとけ」

「おっす!」

 

 

 …どうやらようやく満足したらしい。現像をするために部屋を出て行ったゴルシを見送りつつ思わずぺたりと椅子になだれ込んだ。……ってゴルシが現像をするの??

 

「トレーナーちゃん、あんなに写真撮って何かに使うの?」

「あぁ、取り敢えず今度月間トゥインクルの取材があるからそこで提供する写真が欲しいってのと、あとはメルクーリのメディア対応の練習だな。ありのままのお前もファンは知りたいだろうが、最低限はできるようにしないとな」

「…はい」

 

 

 メディア対応ねぇ…。マヤノはそういうの好きそうだし実際上手いと思う。選抜レースの時に配信をしてるみたい話もしてたし。

 私?昔はそういうのに憧れてた時期はあったけど今はそんなに見なくなっちゃったからなぁ。ウマッターもウマスタもゴルシに言われるまでやってなかったんだからさもありなん、って感じでしょ。そういえば最初に投稿してから触ってないんだけどどうなったんだろう、変なことなってなきゃいいけど。

 

「さて、今日はこのまま少し座学をしてからジャージに着替えて練習するぞ。メルクーリは2回、マヤノは1回レースに出たわけだが2人とも次のレースは一味も二味も違うレースになる。さて、なんでかわかるか?」

「…これまでは2レースとも左回りだったのが今回は右回りになるから」

「マヤは初めての重賞レースだし距離も少し伸びるからそこが不安かも〜」

「…お・ま・え・ら!今着てるものは何か答えてみろ!」

「えへへ〜勝負服!マヤわかってるよ、G1だからファンのみんなの声援も大きいしライバルも強いんだよね!どんなレースができるかすっごく楽しみ!」

「………あー」

 

 隣のマヤノの自信満々な表情を見る限り、どうやらしっかりわかった上でボケたらしい。正直私からはマヤノみたいな答えは出せなかった。左回りか右回りの次点で関東か関西かの違いって答えるところだったし。

 

 

「……メルクーリ?お前さてはわかってなかったな?」

「ぃえっ?全然完璧にかっちりとわかってましたよ…?」

「お前なぁ…」

 

 トレーナーの呆れた目がイヤに突き刺さる。ついでにマヤノにも。…なんだかやけに私だけマヤノに呆れた顔で見られることが多い気がする。多分ゴルシよりも呆れた目で見られる頻度が高いと思う。それは流石に不満なんだけどなぁ…。

 

「…まぁ、見てくれる人が多いって話の次に右回りの話はしようと思ってたわけなんだが。お前らも知ってる通り、東京レース場以外はほぼほぼ全部右回りだ。しっかり右回りの練習をしておかないと自分の実力を出せずに負ける。そこでだ!今日からお前たちにはこれをやってもらう!他のメンバーは先に準備をしてやらせてるからそれに混ざれ!」

 

 

 なんかドヤ顔のトレーナーに渡されたプリントを眺めると『今日からお前も右回り!チームスピカ直伝!右回りプログラム!』という文字と懐中時計の絵が描かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …センスねー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …はっ!思わず絶句してしまったのは許してほしい。マヤノもあんまりいい顔はしてなかったし多分共通認識だと思うんだ、これ。多分懐中時計の絵は時計が右回りだからなんだろうけど…ねぇ。

 

「…着替えよっか、マヤノ」

「あっ……うん、そうだねメルちゃん。流石にマヤもこれはどうかと思うの」

「まぁ待て待て、表紙はともかく中身は「「さっさと出て、トレーナー(ちょっと出てて、トレーナーちゃん)!!」」ちょっ!」

 

 

 話が長くなりそうだったのでこの前のゴルシみたいにトレーナーを俵抱えして外に出してあげた。

 ……着替えるかぁ……。

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

「着替え終わったけど、みんなに混ざれば良いのね?」

「おう、先輩の言うことは聞くんだぞ〜」

「…トレーナーは?」

「俺か?俺はゴルシが現像した写真を確認しないといけないからな。先に行っててくれ」

「メルちゃんお待たせ!一緒に行こ?」

「うん」

 

 

 着替えが終わったメルクーリとマヤノを見送りつつ、トレーナーはわずかに目を細めた。

 

 2人ともジュニア級らしからぬ技術と強みを持っているのは言うまでもない。レースでいろんな作戦を採れるというのは相手にマークされにくかったり、レース場や馬場に合わせた走り方を選べたりするという点で送り出すトレーナー的には安心できるのだ。

 

(…だがなぁ、メルクーリは危うすぎるんだよなぁ)

 

 

 今日だってそうだ、マヤノはわかった上でメルクーリにのってボケたんだろうが、メルクーリは本気で右回りと左回りの問題だと思っている表情をしていた。つまり、彼女はG()1()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ということになる。

 

 本来、自分の教え子にこういう言葉を当てはめるべきではないのだろうが、このままではいつか彼女は間違いなく()()()。その前にうまく折り合いをつけられるようにするのがトレーナーである自分の役目であることを自覚していた。

 

 …そもそもの話、メイクデビューもサウジアラビアロイヤルカップも本当ならあそこまで大差で勝てるようなレースではなかったようにトレーナーには見えていた。それでもぶっちぎりで勝ったのは(ひとえ)に彼女の才能の大きさによるものだともいえるが。

 

 

(……ただ、ああいう鈍感さっていうのはどんなレースでも自分を見失わない強さにもなり得る。現にアイツはこれまでのレースで我を通したレースをすることで勝ってきたわけだし、ある意味自分のことを理解してるといえる…か?

…多分『これまでのレースで一緒に走った奴わかるか?』って聞いても『わからないです』って返ってくるんだろうなぁ…。それはそれでこっちは困るんだが、俺のやることとしてはあいつのあのブレない鈍感さを上手く活かしながら、なおかつ勝負に向かう気持ちを養わせる。…難しいなぁ、『ヒビの入ったダイヤモンドの原石』たぁおハナさんもよく言ったもんだ)

 

 

「おーいトレーナー!写真上手く現像できたぞ!」

「おーうサンキューゴルシ。どれどれ…おお、やればできるじゃねえか」

 

 ゴルシから出来立ての写真を受け取る。マヤノとメルクーリが背中合わせでピースをしながらウインクをしている写真がしっかりと輝いていた。

やればできるじゃねえかという言葉に反応してドヤ顔をしているゴルシに内心でお前じゃねぇよと思いつつ、トレーナーは懐から新しい棒付き飴を取り出した。




サポカの凸アイテム取るの大変すぎて泣きました、ぴえん。
感想、お気に入り登録、評価、誤字訂正等いつもありがとうございます。なんかいつのまにかお気に入り600件突破してました、びっくり。
それでは次回もよろしくお願いします!
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