そのウマ娘が“白銀の突風”と呼ばれるまで   作:乃亞

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すっかり寒くなってきましたがいかがお過ごしでしょうか。私は低血圧で死にかけです。
それでは今回もよろしくお願いします。


第28話 寒い季節に温かな差し色を:Buono!

「……ふぁぁ…」

 

 

 朝の日差しが眩しくてふと目が覚める。最近はすっかり寒くなってしまって朝起きるだけでも億劫になる。ただ寒いんじゃなくてありとあらゆる隙間から差し込んでくるかのような寒さというか、ともかくこの寒さは慣れる気がしない。

 

「…ねむい」

 

 

 手を伸ばして机の上のリモコンを操作し暖房をつける。生温い風が一気に吹いてきて思わず目を細めてしまった。……起きるかぁ。

 暖房をつけたばかりの部屋はまだ薄寒くて目がすぐに覚めた。今日は……何かあったっけ。無いなら面倒だしサボ「メルちゃんおきてるー?」……?

 

 

 コンコンとノックされた扉を開けるとテイオーがニコニコしていた。いや最初の話し声でわかったけどね、テイオーは特にわかりやすい声質をしてるし。

 

「おはようテイオー。朝早いね」

「メルちゃん、今日サボろうと思ってたでしょ」

「……はい?」

 

 

 なんで気付くのさ、早いとか遅いとかの次元じゃなくてエスパーだよそれはもう。

 

 

「にっしっし、メルちゃんわかりやすいからねぇ〜。ということで一緒に学園へごあんな〜い!その前にとりあえずご飯食べに行こ!」

「えっ、ちょっ暖房が……ああっ」

 

 

 そのまま私はルンルンなテイオーに連れて行かれてしまった。…アーメン、暖房。

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

「あっ来た来た!おはようメルちゃん!」

「お、ウワサの銀色のウマ娘さんじゃん、キラッキラしてるねぇ」

「マーベラース!」

「…えーっと」

 

 

 テイオーに引っ張られて来た食堂にはマヤノと……ええっと、誰だっけ。テイオーの同期の子とその同室の子…確か名前は。

 

 

「ナイス姉ちゃんさんとスーバラシさん?」

「…ナイスネイチャちゃんとマーベラスサンデーちゃんね、メルちゃん」

「あっはは…どもども、ネイチャでーす。よろしくね」

「マーベラース!」

「…スバルメルクーリです。よろしくお願いします」

 

 

 改めて姉ちゃん…じゃなくてネイチャさんとマーベラスさんを見る。鹿毛で赤いイヤーキャップを付けたのがネイチャさん。ゆるーい雰囲気を纏わせながらもしっかりと周りに目を配っているのがわかる。気配りが上手いんだろうね。んでその隣がマーベラスさん。目がキラッキラしててまるでしいたけみたいなんだけど、どういうシステムなの…?というか……すごいな。色々と。

 多分2人ともどっかで見たことがある気がする。…多分。

 

 

「……で、何で私呼ばれたの?」

「メルちゃんこの前お鍋一緒に食べよって言ってたじゃん?」

「あぁ、勝負服の試着の時の話ね。したした」

「それを今からしまーす!ということでこっちこっち!ちなみにボーノちゃんが今お鍋の用意をしてくれてまーす☆」

「……えっ?」

「まぁ言いたいことはわかるけどとりあえずこっち来なさいな。こういうときのマヤノたちは止まらないからとりあえず来るお鍋食べよ?」

 

 

 マヤノとネイチャさんに招かれ、テイオーに押されて椅子に座る。…朝ごはんにお鍋って重すぎない?私基本朝ごはんはビスケットとか甘めのパンとかで済ませてるんだけど私がおかしいの…?

 

「あっ、ちなみにボーノちゃんはお鍋の作り方の配信してるらしいから変なこと言わないように気をつけてね!」

「配信?…この前やってたビデオ電話みたいな奴?」

「「「ぶッ!」」」

「……???なんか変なこと言った?」

「朝早くにお鍋をみんなで食べる…マーベラスだね★」

「はぁ…」

 

 

 えっと…誰でもいいので誰か解説役いませんか?この中だと多分まともよりなネイチャさんは何がツボに入ったかわからないけどずっと笑ってるしこの場面では頼りにならなそう。

 …どうやら素直に待つ以外に選択肢は無いらしい。

 

 

「おっ、みんな揃ってるね〜。ということで今回の朝ボーノは素敵なゲストさんが沢山いるよー!」

「マヤちんでーす!」

「テイオー様だよ!」

「どもども、ネイチャさんですよ」

「マーベラース!」

 

 

 本当にお鍋と具材を持ってきたヒシアケボノさん(名前はマヤノに教えてもらった)がウマホで何か話しかけるとみんながそれに呼応して自己紹介した。その光景にキョトンとしてたら十の眼差しが私に突き刺さった。……えっと。これは私も自己紹介しろってことで合ってるのかな。

 

「おはようございます。スバルメルクーリです」

「っていうことで今日はこの6人で塩ちゃんこ鍋を作っちゃうよ〜」

「「「わーい!」」」

「おー」

「…おー」

 

 

 …えっと。さっきからずっと思ってるんだけど、なんでちゃんこ鍋なんでしょうか。口に出すのはあからさまに無粋だから言わないでおくけど。

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

「そして〜この鍋蓋を開けると!」

「「「完成だ〜!!!」」」

「お〜、なかなか美味しそうですなぁ」

「ほぇぅ〜」

 

 

 みんなで料理…という名の具材放り込みを終わらせて煮込んで早数十分。アケボノさんが鍋つかみをつけて開けるとそれはそれは立派なお鍋が完成していた。塩ちゃんこ鍋…というものがどんなものか知らないけど多分これが完璧な塩ちゃんこ鍋なんだろう。思わず気の抜けた声が出てしまったけど誰も聞いちゃいないでしょ。

 

「それじゃこれをみんなによそって…はい!」

「「「「「いただきまーす」」」」」

 

 

 もそ、もそ。鶏肉のお団子をお箸で摘んで口に入れる。瞬間、ふんわりとお肉とお出汁のエキスが口の中に広がった。

 

 ……。

 …………。

 ………………。

 

「…で「「「「おーいしーい!」」」」しーい

 

 

 びっくりした、みんな急に大声出すじゃん。朝からすごい元気だなぁ。…わかるけど。朝からこんなあったかいお鍋食べたら元気にもなる。にんじんも食べてみよう。

 

 

 もそ、もそ。

 …甘くておいしい。すこし甘めの人参でも使ってるのかな。もそ、もそ。

 

「「ちゃんこ〜♪ちゃんこ〜♪みんなでいっしょにちゃんちゃんこ〜♪」」

 

 マヤノとマーベラスさんがニッコニコで歌うのもわかる。それくらいの活力を与える力がこのちゃんこ鍋にはある。もそ、もそ。おいしい。もそ、もそ。ぱしゃっ。

 

 

 ……ぱしゃっ??

 

 

 音のなった方を見やるとしてやったり、と言う表情でウマホを振るテイオーがいた。

 

「にっしっし、気の抜けた表情のメルちゃん撮影せいこーう!」

「…変な表情してない?」

「さーて、どーでしょう?答えはボクのウマホにのみあるのだー!」

「……後で見せな」

 

 

 どーしよっかなぁとか言いながらお鍋のおかわりを注ぎ始めたテイオー。これ絶対見せる気がない奴だよね、後でなんとかしよう。マヤノとかうまく巻き込めば勝ちは固いでしょ。その横で「…いやはや若い子たちは元気ですなぁ」とか言ってるネイチャさんはどう言う立ち位置なんですかね。テイオーと同期なんじゃないの、あなた。

 

 

「今回は食べる子がみんなウマ娘だったからにんじんを多めに入れたんだけど、白菜とか大根とかでも全然おいしいからみんな好きな具材で試してみてね!みんな、ボーノ?」

 

 

 みんながニッコニコで食べてる横でアケボノさんが電話相手の人に色々説明しながらこっちに話を投げてきた。…これはアレだ、流石にわかる。

 

 

「「「「「ボーノ!」」」」」

「よかったー!ということで朝から元気に食べられちゃう、とってもボーノなちゃんこ鍋でした!みんな見てくれてありがと〜。ぜひぜひ作ってみてね!」

 

 

 ウマホに向かって手を振るアケボノさん。どうやらビデオ電話が終わったらしい。何分も喋り続けながら料理してたの朝から元気だなぁ。もそ、もそ。

 

 

 いつの間にか空っぽになっていたお鍋を見てびっくりするのはまた別の話だし、そのお鍋を洗うのを手伝ってから学校をサボるためにこっそり逃げようとしたらそれを見透かされてたのか、テイオーとマヤノに見つけられるのもまた別の話。




ちゃんこ鍋で鶏肉が多い理由って牛とか豚だと手足が地についてるってことでお相撲的に縁起がよろしくないかららしいですね。
箸休め的な話なはずなのに箸動かす話になったのは仕様です。気にしないでください。
いつものことですが感想、お気に入り登録、評価、誤字報告等ありがとうございます!
それでは次回もよろしくお願いします!
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