そのウマ娘が“白銀の突風”と呼ばれるまで   作:乃亞

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チャンピオンミーティング、わかってた話ですが全く勝てなさすぎて悲しくなりました。
週末の菊花賞は推しの子が2頭出走するのでそれを応援したいと思います。
それでは今回もよろしくお願いします。


第30話 冬の曇り空と少女の夢:Her distortion

 夢。

 時には叶えたい目標のことを指したり、またある時には寝ている時に見る虚像だったりするもの。

 

 …昔の偉いヒト曰く、『ヒトは、そしてウマ娘は夢を見、夢に生きる生き物』らしい。なんでも寝ている時に見る夢にも全部意味があるとかないとか。例えば花畑を走る夢を見た時には恋愛運が上がったり、逆に花が散る夢を見た時には身近な人と別れる暗示だったりするらしい。

 

 

 

 ……では。自分の昔のことばかり見てしまう私の夢には、いったい何の意味があるんだろう。

 

 

 〜〜〜

 

 とある病院の部屋。汗で塗れたお母様とタオルに包まれた私、そして助産師のお姉さんがいた。

 

『よく頑張りましたね!元気なウマ娘ちゃんですよ!綺麗な銀色のウマ娘ちゃんです!』

『……よかった、無事に生まれてきてくれてありがとう』

『…にしても銀の髪なんて珍しいですねぇ。私も長く仕事してますが、神社の巫女さんのウマ娘ちゃん以外で初めて見ましたよ!』

『昔から銀髪の子は珍しくて生まれただけで吉兆とされてきましたものね。でもそんなことなんか関係なく私の子ですもの。きっと優しい子に育ちますわ』

 

 

 ーーやめて。

 

 〜〜〜

 

 またある時。私はとあるウマ娘と話をしていた。

 

『わたしはメルクーリ!メルって呼んでね!あなたは?』

『わたしは…その…』

『んー?』

『………フルールドール、です』

『うーーん、じゃあルゥちゃんだ!よろしくね!ルゥちゃん!』

『……えっと、よろしくお願いします。…メルちゃん』

 

 

 ーーーーやめて!!!

 

 〜〜〜

 

 また別の時。私の家にルゥが来た。

 

『メルちゃん、遊びに来たわ!』

『いらっしゃいルゥちゃん!今日は何する?』

『お庭借りて走る練習がしたいわ!東京のトレセン学園ってすごいレベル高いんでしょ?』

『わかった!じゃあ練習のシューズとってくるね!』

『あっ、待って!なんかお母様がメルちゃんにお話ししたいことがあるんだって』

 

 

 ルゥの後ろからよく似た大人のウマ娘の方がにゅっと顔を出した。その大人は先にルゥを外に出して私と2人きりになった。

 

『えっ…?あっ、ルゥのお母様ですね!ごきげんよう!』

『はじめましてメルクーリちゃん。…その、ありがとうね』

『???どういうことでしょうか?』

『あの子があんなにいい笑顔をするようになったのは貴女と出会ってからだから。だからありがとうね』

『私こそ!ルゥと一緒に遊べていつも楽しいです!』

 

 

 その言葉を聞いて大人のウマ娘は心からの笑顔を向けてくれた。それを見て、届かないとわかっていても叫ばずにはいられなかった。

 

 ーーーーーーやめてッ!!!!」

 

 

 目が覚めた私の目に飛び込んできたのはいつもの寮の部屋。……また昔の夢を見てたのか。

 

「…へっく!……うへぇ」

 

 

 どうやら寝ている間にドッと汗をかいてしまったらしい。…シャワー浴びよう…。

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

「「「たこ焼き!お好み!かにどーうらーく!」」」

「お前らなぁ…今日はメルクーリのレースの応援に来たんだぞ?あとマヤノは今度すぐレースだろ!!」

「えー!マヤ、関西のご飯食べたいもん!たこ焼きとか!」

「……たこ??」

 

 

 ニッコニコで謎の歌を歌ってるマヤノ、テイオー、ゴルシに呆れながら隣を見るとだっらしない顔を晒しているスペさんとマックイーンさんがいた。このチームはもう走るレースじゃなくて大食いレースにでも転身した方がいいのではないだろうか。

 

 …思わず私が空を見上げると、ほぼ1週間ぶりにきた阪神レース場は満天の曇り空だった。どこまでも締まらないなぁ…。……とはいえ、雪が降らなかっただけましってことにしようかな。うん、そうしよう。

 

 ってボーッとしてたら立ち止まってしまっていたらしく、後ろのスカーレットさんにぶつかってしまった。

 

「…あっ、ごめんスカーレットさん」

「大丈夫、メルちゃん?初めてのG1で緊張しちゃってる?」

「おいおいスカーレット、お前じゃないんだから大丈夫だろ〜。な、メル?」

「何ですってぇー??」

 

 

 ある意味いつも通りなスカーレットさんとウオッカさんに安心する。なんたって先週見たような小競り合いを今日の新幹線でもずっと続けてるんだもん。

 

 ……そういえば、あいも変わらず当日入りなのはトレーナーがホテル代出せないからなんじゃないかと最近疑いはじめてるんだけど、そこんとこどうなんだろう。

 

「よーし、メルクーリはパドックの準備のために着替えてこい!お前らもそれを手伝ってやれ!」

「「「「「「はい!」」」」」」

 

 

 〜〜〜

 

「よし、ちゃんと着こなせてるな」

「…ついこの前測ったばっかりなんだから着られないわけないでしょ」

「…今度スペにそれ言ってみ?」

「えっ??」

 

 

 最後に手袋をしっかりはめて手に馴染ませつつ、ゴルシの軽口に付き合ってたらなんかスペさんに刺さる発言をしてしまったらしい。一体何があったのさ。

 

 鏡の前に立って身だしなみの違和感がないか確認してるけど…普段の服より見なきゃいけない所が多くて大変だな、これ。

 

「よーしメル!こっち向け、こっちだ!そんでピスピースってやってみ?」

「あっゴルシちゃんずるい!こっちだよメルちゃん!」

「………2人とも何してんの?いや変なとこでカメラ構えてるテイオーもいるから3人か」

「ぴぇっ……バレてた!?」

「…カメラ構える暇あるなら、変なとこないか見てほしいんだけど」

 

 

 なんでテイオーはそんなコスプレ衣装を持ってるのさ。スーツはまだいいとしてそのサングラスは…ふふっ。

 

「えっ、なんでボク笑われてるの!?そんなに変だった?」

「大丈夫だテイオー。お前はいつも変だよ」

「ぷぷぷ、ゴールドシップさんに言われたら終わりですわよ」

「にっ!?ゴルシにマックイーンまで!!」

 

 

 …………素直に自分でチェックした方が良さそうだね、これは。って思ってたら隣からシャッター音が響いた。隣を見るとニッコニコ顔のマヤノがしたり顔でピースしていた。

 

「…この前も撮ったよね、マヤノ」

「えへへ〜、カッコかわいいメルちゃんと写真撮れちゃった!……大丈夫、変なとこは無いよ、メルちゃん。あとはお披露目の時にマントを飛ばしすぎなきゃ完璧でーす◎」

「……マントは気をつける」

「ちなみにマントはテイオーちゃんの受け売りだからお礼言うならテイオーちゃんに言ってあげて!」

「わかった」

 

 

 そういえばテイオーの勝負服にもマントが付いてるんだっけ、あんまり知らないんだけど。

 …ふと気づけば私は喉元の紅白のまだらのバラのチョーカーに手を当てていた。……大丈夫、きっと大丈夫。

 

 

「……行ってくる」

「行ってらっしゃい☆」

「頑張れ!メルちゃん!」

「おう!一発かましてこいメル!」

「ファイトですわよ!」

 

 

 みんなの声を背に私は控室を出た。そしてパドックまでの廊下の向こうまで誰もいないのを確認して目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……あぁ、全て私なんかに相応しくない。

 朝日杯なんて大きな舞台(G1)も。この勝負服も。マヤノとかテイオーとかみたいな優しい友達も。

 

 

 この場所はそれはそれは眩しくて……やっぱり私なんかには相応しくないよ。こんなことを口に出したら多分マヤノとかテイオーとかはぷりぷり怒るーーいや、怒ってくれるんだろうけど、その優しさが却って眩しく感じちゃう。

 

 

 

 光を浴びるべきでない私なんかが日の元に晒されている事実。これが苦しくて苦しくて仕方ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから。

 

 

 

 

 

 

 

だから
 
だけど
私は…。




日刊ランキング、2日も載せてもらったみたいです。正直、物凄く嬉しいという気持ちとそれ以上の困惑でいっぱいです。
これも皆様のお気に入り登録、感想、評価、誤字訂正等々のおかげだと思います。本当にありがとうございます。
それでは次回もよろしくお願いします!











日刊9位って何事ですか!?!?目を疑いましたよ、本当に。
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