そのウマ娘が“白銀の突風”と呼ばれるまで   作:乃亞

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良馬場書きたすぎてどうしようもなくなったので、つまりそういうことです。前後編です。前後編書いてマヤノのホープフル書いたら二章終わり!そんな感じです。
それでは今回もよろしくお願いします。



2021/11/21 予告していた通り、公開していた中編と合併しました。そのまま合併したため、内容に変更はございません。


第34話 降誕祭:Christmas(前)

「……へくちっ!」

 

 …東京の冬って本当に寒いと思う、本当に。特に夜はほとんど雪が降らないのが不思議に感じるくらい。

 実家もそこまで降る方じゃなかったからちょっと期待してたんだけどなぁ。今日も東京は突き抜けるような快晴です。

 

「メルちゃん風邪でも引いた?」

「…いや、体動かしてないから寒くなっただけ。そういうテイオーこそ寒くないの?」

「うーん、今日はまだあったかくない?」

「…そうかなぁ」

 

 

 朝日杯の直後に受けた診察で『うん、どこも異常ないね』という診断をもらった私は、トレーナーの判断で少なくとも年内のハードトレーニングは無しということでジョギングとかスタートの練習とか軽めの練習しかしていない。今日もテイオーと柔軟メインのトレーニングをのんびりとしている感じ。当然だけど走るのと比べて体はあったまってこないよね。

 

 

 …これだけ軽いことしかしないならさっさとサボり決め込んでもよかったんだけどね。ただ、朝日杯の後にあんなことを言った手前、ある程度はしっかりとやらないと筋が通らないのかなぁって思ったのが半分。

 

 

 

「マックイーンちゃん!ゴルシちゃん!もう一回!」

「精が出ますねマヤノさん、…行きますわよ!」

「しゃーねぇ!カワイイ後輩のためだ、行くか!」

 

 

 ……向こうでホープフルステークスへの調整をしてるマヤノとか今一緒に柔軟してるテイオーとか、とにかくスピカのみんなの走りを見ようと思ったのがもう半分。みんなの走り方からなんかヒントを得られるかもしれないし、丁度良い機会な気がする。

 

 体格を生かした大きなストライドで一気にまくるゴルシ。教科書に載ってるかのようなお手本の走り方のマックイーンさん。そしてそれを見ながら一瞬で自分に合うように改良しながら走るマヤノ。…多分足音的に少し強く踏み込むように変えたのかな。

 視線を横に移すとテイオーが私の横で二つ折りになっていた。こんだけ体柔らかかったらそりゃあんな軽快な走り方ができるわけだ。

 

 

「テイオーってホントに体柔らかいよね」

「にっしっし!ボク前屈の記録持ってるからねぇ、柔軟には自信ある…って何そのポーズ!?」

「蛍」

「訳わかんないよー!」

 

 …テイオーはなんか言ってるけど、前屈の記録って何…??ホントにあったとしてテイオーならホントに記録持ってそうで怖いな。……前屈って競うものだっけ。

 

 

「あーそうそうメルちゃんってさ明日の夜、予定ある?」

「…明日の夜?なんで?」

「ほら、今日の日付知ってる?」

「23日……あー、なるほど」

「そーそー、みんなでクリスマスパーティやるからメルちゃんもどうかなって」

 

 

 そういえば今日は23日か。つまり明後日は降誕祭(ノエル)…つまりクリスマス。…お母様にもしっかり連絡しないとなぁ。…朝日杯の時も連絡してないし、すっごく気が乗らない…ってかいつから連絡してないっけ。…手紙送ってるからいいかなって思ってたけど、そろそろまずいよなぁ…。

 

「おーい、メルちゃん?」

「わっ」

 

 

 柔軟に飽きてターフの上でぽーっと大の字になっていたらテイオーにおもいっきり覗き込まれて思わずびっくりしてしまった。テイオーとかマヤノってこういう時ぐいぐいくるからたまにびっくりする。

 

「どうしたの?」

「いや、実家にしばらく連絡してないなぁって思って。クリスマスパーティね、用意する」

「やったー!じゃああとで一緒にプレゼント見に行こ!」

「…わかった」

 

 

 …クリスマスに友達と遊ぶのっていつぶりだっけ。実家の時は基本家族パーティだったしなぁ。

 

 

 大の字のまま空を見上げる。クリスマスプレゼントって何渡せばいいんだ…??空に答えの1つでも浮かんでればいいんだけど、答えどころか飛行機雲一つすら浮かんでない。

 

 

 (こたえ)の1つくらい浮かんでればいいのに。あー、なんだかお昼寝したい気分になってきた。思ったより太陽が眩しいから寝づらいんだろうけど。

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

「「はちみーはちみーはっちっみー!」」

「…元気だね2人とも」

「もー!メルちゃんはクリスマスをわかってない!クリスマスを1番楽しんだウマ娘こそが、オトナのウマ娘になれるんだって!」

「…それはネイチャさんの受け売り??」

「え?なんでわかったの???」

 

 

 練習が終わってすぐにテイオーとマヤノに拉致されました。練習が終わって私服に着替えて学園を出てはちみーを買ってショッピングモールに着くまでなんと40分。…2人ともフットワークが軽すぎるよね。はちみーおいしー。

 

 

 …きっと私が見張っておかないとマヤノが大事なレース直前なのに甘いものとか美味しいものとか食べすぎてお腹を丸くする気がする。だから今日こそは私が監視役なのだ。いっつも見張られてばっかりだけど。

 

「…で、2人は何を見たいの?」

「ボクはね、新しい靴とか蹄鉄とか見たいかなぁ。あ、あとケーキ!はちみーケーキとかあるかな!?」

「うーん、まずコスメでしょ?お洋服でしょ?あとあと、ケーキは欠かせないよね〜!」

「「それと〜!プレゼント選び!」」

 

 

 ハモリうますぎでしょ2人とも。…じゃなくて!

 

「じゃあ洋服からね。ケーキは最後に時間が余ったら見よっか」

「「おー!!」」

 

 

 …これで時間切れを狙ってケーキを買わせずに買い物を終わらせるぞ…!

 

 〜〜〜

 

「あ!この靴とか良くない!?ボクのサイズあるかな…あった!よーしこれ買っちゃおーっと!」

「……」

 

 〜〜〜

 

「あっ!こないだシチーさんがオススメしてたコスメだ!これとこれどっちがいいかなぁ〜!むむむ、こっち買っちゃおーっと☆」

「……」

 

 〜〜〜

 

「あっ、メルちゃんテイオーちゃん!このお洋服どうどう?オトナなマヤちんの魅力がアップ〜☆って感じしない?」

「ボクはこれが欲しいかなぁ。どう思うマヤノ、メルちゃん?」

「……」

 

 〜〜〜

 

「よーし、あとはプレゼント選びしてケーキだ!」

「マヤねマヤね、ケーキ屋さんにも目星つけてるんだー☆」

「……えっと」

 

 

 まっっっずい!マヤノもテイオーもなんでこんなに選ぶの早いの!?あらかじめ欲しい物を決めてたのかな!?じゃあ早いのも仕方ない…じゃなくて!

 

 このままだと…

 

『どうしよメルちゃん!!レース前なのにケーキ食べすぎちゃった…』

『ボクも食べすぎてお腹出ちゃった…もう食べられないよ…』

 

 ……まずいまずいまずい!トレーナーからは私の管理不行き届きを怒られるし、マックイーンさんとかスペさんとかはスイーツ食べたがるし、ゴルシはゴルシ。

 

 

「んじゃ15分後にあそこのカフェの前で集合ね!遅れるなら連絡すること!」

「アイ・コピー☆」

「……んん」

 

 

 2人のお腹と私の名誉を護る戦いが始まる…!!

 

〜〜〜

 

「…どうしようかな」

 

 クリスマスプレゼントの選定をしながらなんとかマヤノとテイオーの意識をケーキから外すまでは行かなくても食べすぎないようにしないといけない。しかもアイデアを出す制限時間が15分ぽっきり。

 

 ……とりあえずプレゼント選びしながら考えよう。時間に余裕ないし。

 

 

 まずはパーティに出す用のプレゼントから考えよっか。あんまり大きい物は持って帰りづらいし、貰う相手のことを考えてナシ。かといって鉛筆とかノートとか渡すのも…ねぇ…?蹄鉄もサイズ合わなきゃ使えないし…。

 

 

 ……。

 

 …………。

 

 ………………。

 

 …プレゼント選びって難しくない?何を出せばいいんだろう。

 

 ……ショッピングモールだし一旦看板でも見ようかな。何売ってるか確認してから買う物を選ぼう、そうしよう!

 

「……むぅ」

 

 …名前がオシャレだったり難しかったりで何売ってるかあんまりよくわからない。…どうしよう。というかそもそもこのショッピングモールが大きいからお店の数も多すぎる…!

 

「あれ、あの子スバルメルクーリちゃんじゃない?ほら、あのベージュのトレンチコートの!みんなでお買い物かな?」

「えっ…マジでメルクーリじゃん!テイオーもマヤノも見かけたし、仲良いんだねぇ〜」

 

 

 ……えっ?

 看板と睨めっこしてたらなんか後ろで私の話をしてる人がいました。…この間の阪神JFのときの反省を生かしてトレンチコートに黒いキャップを合わせて髪を隠したんだけど。もしかしてあんまり効果ない…?

 

 いや待て、これはチャンスなんじゃない?あの女の人2人に聞けばきっといいアイデアがもらえるのでは…?

 

 

…あの

「えっ…私たち?」

はい。えっと…つかぬことをお聞きしますが、クリスマスプレゼントに友達からもらえて嬉しいものって何ですか?

「えっと…、友達からもらえて嬉しいものかぁ…。そういえばこれこいつから貰った奴だけど結構長く使えるしいいんじゃない?」

「あー、それあげたの2年前とかじゃなかった?」

 

 

 …あーなるほど、それならまだ大きさに融通がききそうだしそれにしよっかな。

 

すいません、ありがとうございます!

「…えっと、誰に渡すの?」

「…?パーティの時にくじ引きか何かで決めるみたいです

「…あー、気をつけてね?」

「……??はい、わかりました。ではすいません、失礼します

 

 

 …あんまり時間がないけど、アレを買いながらマヤノとテイオーの気を逸らす策を考えなきゃ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…うわぁ!マジで綺麗な銀髪じゃん」

「しかもめっちゃ速いねぇ〜、あれがG1ウマ娘の実力かぁ…!」

「てかさ、私たちさ」

「うん」

「「話しかけられちゃった〜!!」」

 

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 …よし、パーティ用のプレゼントは買えた。あの女の人たちには感謝しないとね。それで問題はあの子達なんだけど、さっきからアイデアが浮かんだり沈んだり。

 

 要はケーキの代わりになるようなものを先に渡しちゃえばいいんだよ、きっと。だから2人の好きなものを考えてプレゼントしちゃえばいいんだ。…と思ったんだけど……。

 

 マヤノの好きなものといえば…甘いものとか飛行機…?うーん…。

 テイオーの好きなもの…はちみーとか会長サマ(シンボリルドルフ)…??うーーーん……。

 

 

 私にどうにもできないことかスイーツくらいしか思い浮かばないし、方針転換するしかない気がする。つまり、私が何か考えて選ばないといけない。

 …迷惑にならないかなぁ。私、人にプレゼントなんてほとんどしたことないんだけど大丈夫かな。

 

 なんて考えながらぽーっとお店を眺めていると、とあるアクセサリーショップに目が止まった。

 正確にいうとそのショップのマネキンがつけているペンダントに。

 

「…わぁぁ」

 

 

 …あのペンダント綺麗だなぁ。マヤノの黄色、テイオーの青色もあるしちょうどいいんじゃない?走る時の邪魔にもならないようにもできるし…これにしよっかな。

 

 

あのー、すいません

「はい、いらっしゃいませ」

これとこれ、ください。できたらプレゼント用のラップもしてもらえると嬉しいです

「かしこまりました!…お客様の分はよろしいですか?」

「……えっ?いや、あの…私には似合わないので

「いえいえそんなことないですよ!こちらの商品とかお客様にピッタリお似合いですよ!」

「…いや、えっ…あの

「プレゼントはお友達にですか〜?それでしたらみんなで合わせたほうがゼッタイ良いですよ!」

「……えっと…あの…。はい…

「ありがとうございま〜す!」

 

 ……流れで銀色の奴まで買うことになっちゃった…。るんるん気分でラッピングしてる店員をどこか他人事のように眺めてた私は当然なあることに気づいた。

 

 

 …これ、私が払うんじゃん。普段あんまり使ってないから貯金はあるけど。

 

「お名前どうなさいますか?」

「……あっ、黄色い方をマヤノで、青い方をテイオーでお願いします。銀色のは名前いらないです

「はーい、お会計こちらになります!」

「…はい」

 

 

 …時間やばいけどまぁあの2人だし、大丈夫かな。ウインドウショッピングしてるでしょ?特にマヤノ。

 

「はーい、お待たせしましたお客様!こちらになります!」

「…ありがとうございます」

「ありがとうございました〜!」

 

 

 …とりあえず急ぐだけ急ごうっと。もう遅れかけてるし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれっ、マヤノとテイオー……??で、あの銀髪って…!!あれ、私とんでもない子に接客しちゃった…?」

 

 

 

 〜〜〜〜〜〜

 

「おっ、帰ってきた!」

「おかえり、メルちゃん☆いいの見つかった〜?」

「……頑張った」

 

 

 …2人とも時間内に帰ってくるとか早くない?絶対に時間延長すると思ってたんだけど、そんなにケーキ食べたいの…?

 

「とりあえずこのカフェ入ろ!マヤね、ここのブラックコーヒー飲みたいんだ☆」

「ボクもブラックコーヒーくらい飲めるし!メルちゃん入ろ?」

「…うん」

 

 

 ……2人ともわざわざ“ブラック”ってつけるあたり、コーヒー苦手なんだろうなぁ。私?ふっふっふ…。

 

 

 

「…うっ」

「……うへぇ…」

「……………にがっ」

 

 

 ………コーヒー苦手なんだよね。紅茶は好きだしよく飲むんだけど、コーヒーはあんまり美味しく飲めない…。にがいよぉ…。まぁ?2人にはおくびにも出しませんけど?

 

「マヤノもメルちゃんもこの味はまだ早いんじゃないの〜?」

「そういうテイオーちゃんこそダメなんじゃないの〜?顔が苦しそうだよ〜?」

「…………2人とも意地を張るのはやめた方がいいよ。私くらい味わって飲めるくらいになってから飲みなよ」

「「それはないと思う(な〜)」」

「にぇっ!?」

 

 

 むむむ…と3人で見合う。…もしかしてここが切り札の切り時なんじゃないかな?

 

「…あーあ、素直じゃない2人にはプレゼントあげられないなぁ〜。…ちゃんと選んだのになぁ〜。残念だなぁ〜」

「「えっ」」

 

 

 ……いやなんでそこで2人とも動きを止めてじっと見てくるのさ。

 

「……何さ、2人とも」

「…ボク、砂糖とミルクでも入れようかなぁ!いろんな味を楽しめるのがオトナだもんね、マヤノ!」

「うん、うんうん!これはこれで美味しかったけどお砂糖とミルクを入れるのも美味しいよね!はい、メルちゃんもお砂糖とミルクどうぞ!」

「……うん、ありがとう」

 

 

 マヤノからずずいっと押されたお砂糖とミルクを入れてから飲む。…これなら飲めるや。

 ちらっと2人を見ると、2人とも笑顔でコーヒーミルクを飲んでいた。…ネイチャさんにちょろかわ…って思われるのも納得だよね。

 

 …何はともあれ、ケーキからは意識を外せたから私の勝ちなんじゃないかな。流石にコーヒーだけで太るわけないし。いやぁよかったよかった。

 

「「じーーー」」

 

 

 …2人の目線がすごく刺さるんですけどね。……あっ、コーヒー飲み終わっちゃったし帰ろうそうしよう。

 

「じゃ、飲み終わったし私帰りた「そ・れ・で!メルちゃんはマヤたちに何をプレゼントしてくれるの?」「ボクも気になるなぁ〜〜??」ゎっゎっゎっ」

 

 

 席を立とうとしたら左右から肩を掴まれて着席させられました。ホントなんでそういう時だけ息ピッタリなのさ。……言うほどこういう時だけかなぁ、似たもの同士って言った方が正しいかも。

 

 

 なんかじりっじりっと2人からレースの時よりも強い圧をかけられてる気がする。普段他人の圧をあんまり感じない私が言うんだ、間違いない。掛かってしまっているかもしれません、うまく息を入れられたら良いのですが。

 

「……えっと、その。落ち着いてくれると嬉しいんだけど。私このままじゃ動けないしこのままなら潰れちゃうんだけど。…渡すから」

 

 

 …いてて、やっと解放された。2人の力どうなってるの…?あーいや、私の力が弱いだけか。

 

「…えっと…その、さ。2人にはいつも迷惑かけてばっかりだしさ。…あーいや迷惑かけてるのは2人だけじゃないんだけど。特に2人にはなんというか…いや、うん。…えぇっと」

 

 

 …渡すことは考えてたんだけど、渡すときに何話すか全然考えてなかった。…ええっと、こういう時って何言えばいいんだっけ。

 

「Merc……じゃなかった。えっと…いつもありがとね。マヤノ、テイオー」

 

 

 鞄からプレゼントを出してマヤノとテイオーに渡す。…これだけなのになんかむやみやたらに遠回りした気がする。

 

「やったー!ありがとメルちゃん、中開けていい?」

「…いいよ。マヤノもどうぞ」

「…わぁ…!!」

「あ、もう開けてるのね」

 

 

 …2人とも包装のラップを剥がすの丁寧で早いなぁ。んで2人ともペンダントやっぱり似合ってる。あくまで個人の感想だけど。…多分目の色と合わせてるからだと思う。何はともあれ2人も嬉しそうだし、買ってよかったんじゃないかな。

 

「…何渡そうか迷ったんだけど、なんか2人に似合う気がしたからこれにした。………なんでか私の分まで買わされたけど」

「えーっ、なんで出さないのさ!メルちゃんもつけよーよー」

「…私はいいの」

「良くないから、ほら☆」

 

 

 …さっきのことを考えると私がつけるまで身動きが取れなくなるやつだコレ。…仕方ない、つけるかぁ。

 

「………はい」

「「…おおー」」

 

 

 ペンダントをつけた私に拍手する2人。…どういう光景?

 

「…あぁもう、恥ずかしいから拍手やめて。疲れたし帰ろ?」

「あっ!それなんだけど…」

「メルちゃんにマヤとテイオーちゃんからプレゼントがありまーす!…っていってもこれから作ってもらうんだけどね☆」

「……えっ??」

 

 

 全然何も聞いてないんですけど。さっきの変な圧とは打って変わってニコニコな2人に両手を引かれてカフェを出ることになった。…一体どういうことなんでしょう。

 

 

 〜〜〜

 

 

「…えっと。ここは」

「じゃーん!耳カバー専門店!メルちゃんにぴったりかなって思って!」

「おとといマヤノとオトナの作戦会議をして決めたんだ!ケーキって言えば甘いもの好きなメルちゃんはついてきてくれるでしょ〜?マヤノはホープフルあるからケーキちょっと我慢しないとダメなの、気づかなかった?」

「…いや、気づいてたけど。まさかこういうことだとは思ってなかっただけで」

 

 

 ……これっていっぱい食わされた、って奴?

 っていうか甘いもので釣れると思われてるの私?…マックイーンさんほどじゃないと思うんだけど、むぅ。

 

「予約するの大変だったんだけど、メルちゃんの名前を出したらすぐにオッケー出たんだ☆」

「…予約必要なの、ここ!?」

「そりゃぁ人気のお店だし、クリスマスシーズンだもん!ほらほら入って、もうお金は払ってるから!」

 

 

 あっちょっと引っ張らないでテイオー、私まだこの状況に対応できてないから…!マヤノも…あぁ、ニコニコしてるわ。ペンダント似合ってよかった…じゃなくて!

 

「あーーれーー」

「すいませーん!予約したスバルメルクーリでーす!」

「いらっしゃいませ、お待ちしておりました。スバルメルクーリ様でよろしいですか?まずお耳のサイズから測らせてもらいますのでリラックスしてお掛けください」

 

 

 …やけにふかふかな椅子に案内されて困惑してる私をよそにテイオーとマヤノはハイタッチしていた。

 

 

「やったねテイオーちゃん!大人のサプライズプレゼント作戦、大成功だね!」

「折角だしボクとマヤノの目の色と合わせて右を青、左を黄色にしたらどう?」

絶対やめて!!…あっ、すいません…。髪と同じ色でお願いします。……縫糸はテイオーの言った通りでいいので」

「ふふっ、仲がいいんですね。かしこまりました」

 

 

 そこからトントン拍子で進んでいく耳当て作りに、私はただ座ってことの成り行きを見守ることしか出来なかった。

 

 

 〜〜〜

 

「ではすいません、こちらの方をかけてみてください。お耳の方、いかがでしょうか?」

「………すごい、全然衣擦れしない。かと言って聞こえづらくもないし外れないし」

「よかったです。いやぁ、あのサイレンススズカさんの後輩さんが訪ねてくるとは思ってませんでした!腕によりをかけて作っちゃいましたよ」

「……ん?」

「「あっ」」

 

 

 完成した耳カバーを試しに付けてみながら話をしていると、なにやら大事そうな一言が。2人とも凄い勢いで目を逸らしたんだけど、さては勝手にスズカさんの名前使ったな?

 …後でごめんなさいしとこうか。

 

「お直し等はいつでもお受けしますのでお気軽にご相談くださいね。代金の方もこちら既にいただいておりますので本日はこれで終わりになります」

「……あぁ、はい。ありがとうございます」

 

 

 お辞儀をしてお店を出るとまた2人が引っ付いてきた。…にしてもほんとにすごいなこの耳カバー。お辞儀しても脱げなかった。

 

「メルちゃんメルちゃん、こっち向いて」

「…??」

「よし!…ウマスタにあげていい?これ」

「……見せて」

 

 

 パシャッ。マヤノの方を向くと、狙い定めていたらしくウマホの…自撮り?で写真を撮られた。

 撮られた写真を見ると狙ってたマヤノはともかく、横のテイオーまでちゃっかりピースしてるんですけど。これは反応速度の違いなのか単に慣れてるのか。…なんかぽーっとした顔をしてる私と決め顔してるマヤノとテイオーって構成、多くない?まぁいっか。

 

「…ん、いいよ」

「やったー☆ウマスタ〜ウマスタ〜」

 

 

 なにやら文章を打ってるマヤノを見ながらショッピングモールを見回す。クリスマスシーズンなのにどこもかしこも人、人、人。元気な人たちで溢れかえっててびっくりする。

 

 

 

「……日本(こっち)のクリスマスってすごいね」

「毎年こんなもんじゃない?」

「…そうなの?」

「当たり前じゃん!毎年こんな感じじゃんね、マヤノ」

「うん!メルちゃんってあんまりクリスマスに外出たりしなかった?」

「…うん。家族で集まってご飯食べて木を飾り付けて終わりだったし、みんなそれが普通だったよ。なんかマーケットでご飯食べるとこもあったらしいけど私は…ほら、人混みあんまり得意じゃないから」

「なんか外国みたいな過ごし方するんだね、メルちゃんの実家」

 

 

 

 

 ……あれ?2人ともなんか不思議そうな顔してるけど言ってなかったっけ。それともなんか変な言い方したかな、私。

 

 

 

 

「…私の実家、フランスだけど」

「「……えっ?」」

「言わなかったっけ?私の実家はフランスにあるって。生まれたのは日本だけど。日本とフランスの国籍もってるんだよ、私」

「「……ええええええっ!?!?」」

 

 

 …あれ、この反応は知らなかったっぽい。別に隠すことでもなんでもないしなぁ。

 軽くフリーズしたマヤノとテイオーを再起動するのに数分かかったのはここだけの話。私はともかく、2人が寮の門限に遅れるのはちょっとまずいから少し焦ったよね。

 




衝  撃  の  事  実  (当社比)

メルちゃんの秘密の1つ(本人は秘密にしてる自覚なし)です。でも節々にちょっと出してたから気づいてる人はいるかも。

いつのまにかお気に入りが4桁に乗ってて毎度のことながらびっくりしています。拙文を読んでいただき、本当にありがとうございます。
それでは次回もよろしくお願いします!
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